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インテル、製造現場を高効率/低コスト化するIoTソリューションを紹介
~Edisonを搭載したIoTゲートウェイも登場
(2014/9/29 15:37)
インテル株式会社は29日、IoTへの取り組みや採用事例の最新情報を紹介する記者説明会を都内で開催した。
最初にインテルとIoTへの取り組みを説明した、米Intelセールス&マーケティング事業部副社長 兼 エンベデッドセールスグループ ゼネラルマネージャーのリック・ドワイヤー氏は「IoTはIntelだけでなく、業界全体の商機である」とし、IoTがもたらすビジネスチャンスについて解説。
IoT関連の説明では何度も取り上げられている通り、2020年には500億個のデバイス(モノ)がインターネットに繋がり、35ZB(ゼタバイト)のデータが生成される。そのデータを使って企業が価値を創出するところにビジネスチャンスがある。19兆ドルの市場規模になるとのCiscoの試算もあると言う。
また、米General Electricが、IoTによるデータを「1%の力」と位置付けて、さまざまな分野でどのような業績向上が見込めるか試算したホワイトペーパーを公開しているとの例も示した。例えば航空業界の例では、ジェットエンジンをモニタリングし、制御をより精密に行なうことで燃料を1%削減できたとしたら、15年間で300億ドルのコスト削減が果たせると言う。
こうしたIoTが生み出す価値を創出するために、ドワイヤー氏はIoTの原理/原則を守ることも重要とする。まずはセキュリティ、そしてリアルタイムのデータ発見やプロビジョニング、複数のアプリケーションでデータを共有するための正規化、分析、管理などが挙げられ、インテルの核はシリコン(半導体)チップにあるが、上記のような分野への投資も行なっていることをアピールした。
IoTにおけるIntelの強みとして、データを収集する末端のデバイスからデータを集約するクラウドまで、“エンド・トゥ・エンド”でソリューションを提供していることを改めて強調。
さらに、国内で5月に発表された、リファレンスシステムをベースに、必要なソフトウェアをパッケージングすることでライセンスや注文プロセスを簡略化したIoTゲートウェイの開発ソリューションにも触れ、ゲートウェイを利用することで既存機器のIoTデバイス化が可能で、エコシステムのパートナーは迅速にソリューションを提供できるとした。
またIntelでは、AT&TやCiscoらとともにIndustrial internet Consortiumを設立し、IoT関連の標準化を促進していくことを約束した。
Edisonの採用事例も早速登場
続いてはインテル株式会社 常務執行役員 事業開発本部長の平野浩介氏が登壇し、Intelのソリューションや製造業におけるIoTの活用例などを紹介。平野氏はIoTやビッグデータのトレンドについて「これまではマーケティングのバズワードとも言われてきたが、実際にビジネスとなり、それが成長する段階に来ている」と、国内市場も2018年には20兆円を超える規模になるとのIDC Japanの予測を紹介した。
そのIoTのために、Intelは“エンド・トゥ・エンド”のソリューションを提供するが、そのソリューションを使って、ユーザーに有益なサービスを提供し収益を生む、エコシステムのループを閉じることが重要であるとした。
続いて、各ポイントでのIntelのソリューションを紹介。まずエッジデバイス用として紹介されたのが、米国時間の9月9日に正式発表された小型プラットフォーム「Edison」で、日本では10月に発売する予定であるとした。
エッジのデバイスとして平野氏は、「産業分野でワークロードのコンソリデーション(統合)が始まっている」という例も紹介。これはプログラマブルロジックコントローラ(PLC)やヒューマンマシンインターフェイス(HMI)などの役割を持った別々の機器が用意されていたのに対し、マルチコアのCoreプロセッサやAtomプロセッサを利用して、1台の機器に機能を集約するというもの。実際にアルゴシステムが、ソフトウェアPLCやHMIソフトウェア、画像処理エンジンなどを1つに統合したAtom搭載機器を実現していると言う。
IoTゲートウェイとしては、AtomプロセッサとWindRiverのソリューションを採用したイノテックのゲートウェイや、プラットフォームが開発したEdison上でLinuxを動作させて実現している小型のIoTゲートウェイ「OpenBlock IoT」シリーズを紹介。ぷらっとホームからは、本日付けでニュースリリースが公開されている。
アナリティクスの分野については、2つの映像監視ソリューションの例を紹介。1つは、Nexcomのゲートウェイを使ったPFIの例で、エッジデバイス側で画像処理を行ない、かつディープラーニングを行なうというもの。ディープラーニングを行なうことで、性別や年代、持ち物などの認識精度を上げ、データを集積していくことができる。
もう1つは、イノテックのゲートウェイを用いたCiaoの例で、こちらはAmazon Web Service(AWS)をバックボーンに持つもので、画像データをクラウドへ順次アップし、クラウド側で画像処理/解析を行なう。こちらはAWSを使うことでコストとサーバー規模の調整が行ないやすいのが利点だ。
この2つの例で示されたように、エッジ側で高度な処理をするのか、クラウド側で処理をさせるかという役割のバランスは、今後検討していくべき課題の1つであると平野氏は指摘した。
また、オムロン株式会社オートメーションシステム統括事業部Sysmac推進センタ所長の越智直哉氏がゲストとして招かれ、同社の生産現場におけるIoT活用について紹介。
オムロンでも生産現場の一部では、10年前の数億倍規模のデータへ達しつつあり、その変化に対応するために、Intelプロセッサを利用して分散制御から集中制御へ移行。さらに高速に生み出される製品の検査を、コントローラが持つ加工時のデータと結びつけて品質改善に繋げるためのFA(ファクトリーオートメーション)ソリューションとして、クアッドコアプロセッサを採用したモデルを発売する予定であることを紹介した。
一方、Intelでもマレーシアのアセンブリ工場で、製造装置にセンサーを設置してモニタリングと解析を行ない、障害の予知や歩留まり改善を実現。年間900万ドル(日本円で約9億円)のコスト改善を実現したと言う。
このIntel半導体工場で導入されたシステムは三菱電機のPLCコントローラを利用しており、これをIoT技術を利用した予防保全ソリューションや次世代FAシステムとしてビジネスを展開すべく、両社が協業することを発表。2015年の商用化を目指すという。