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企業のWindows XPからの移行を支援するAOSテクノロジーズ

 AOSテクノロジーズは、Windows XPのサポート期間が2014年4月9日に終了するのにあわせて、同社の主力製品である「ファイナルパソコン引越し」シリーズの販売強化に乗り出す。この分野で65%という高いシェアを持つ同製品は、コンシューマ向けのパッケージ製品のほか、50台以上のPCの移行を対象とした企業向け製品としてenterprise版を用意。これらの製品によって、今後は、Windows XPからの移行が遅れている中堅/中小企業の移行支援に力を注ぐ考えだ。

 AOSテクノロジーズ 取締役兼AOSソフトカンパニープレジデントの西谷考弘氏は、「Windows XP環境からの移行において、大きな課題となるのがアプリケーションやデータの移行。これを低コストで、短時間に移行させることができるツールとして訴求していきたい」と語る。2013年7月には、新製品として「ファイナルパソコン引越し10plus」を投入する計画も明らかにしており、現行製品向け更新プログラムの中で提供しているOffice 2013のサポートを、標準で搭載するなどの機能強化を図っている。ファイナルパソコン引越しシリーズの展開を追った。

 ファイナルパソコン引越しは、米Laplinkが開発したソフトウェアを日本語化したもので、2006年から、AOSテクノロジーズが国内で販売を開始。これまでに200万本の累計出荷実績を持つ。

 そのほかに、NECパーソナルコンピュータが発売するすべての個人向けPCに標準バンドル。日本ヒューレット・パッカードが企業向けモデルの一部に標準採用。さらに、デルやエプソンダイレクト、マウスコンピューターなどが、CTOのメニューの1つとして同製品を選択できるようになっている。

 現行製品は、2011年11月から発売した「ファイナルパソコン引越し9plus」(USBケーブル版が6,980円、LANクロスケーブル版が5,980円)および、同製品からデータだけを移行する機能を搭載した「ファイナルパソコンデータ引越し9plus」(価格3,480円)。そして、2012年2月からは、法人向け製品として投入した「ファイナルパソコン引越し9plus enterprise」を用意している。enterprise版は、50台以上のPCを導入している企業を対象に、ライセンス形式で販売している製品。同製品を活用してサービスメニューとして展開しているシステムインテグレータもあるという。1ライセンスで4,200円からの価格設定となっている。

AOSテクノロジーズ 取締役兼AOSソフトカンパニープレジデントの西谷考弘氏

 AOSテクノロジーズ 取締役兼AOSソフトカンパニープレジデントの西谷考弘氏は、「Windows PCの場合は、新たなPCに買い換えると、アプリケーションやデータなどを、人為的に引っ越しさせる作業が発生する。その点がMacとは大きく異なる。しかも、BIOS、OS、アプリケーション、自分のデータ、データ交換というように5つのレイヤーに移行が作業対象となるために、専門的な知識が必要になる」とする。

 例えば、旧OS環境で使用していたアプリケーションを新OS上に移行する場合に、新OSに対応しているのかといったソフトウェアの知識が必要であるほか、データ交換時にはアクセス権限を考慮する必要もあり、個別に対応する手間も必要になる。こうした専門知識を中堅・中小企業では蓄積できていないと、西谷氏は指摘する。また、日本マイクロソフトでも無償での移行ツールを用意しているが、ツールを活用するための習得に時間がかかるといった問題があるともいう。

 そして、「何よりも大きな問題は、多くの工数と時間を要する点である」と続ける。

 「当社の試算によると、PC歴10年のエンジニアでも1台のPCを移行させるのに実質3日~5日はかかる。特に、IT専任者がいない中小企業の場合、従業員1人1人が自ら移行作業を行なわなくてはならないというケースがあり、これが日常業務に大きな影響を及ぼすことになる」と語る。

 しかも、仮に外部の業者に委託した場合には、3~20万円程度の費用が発生することになり、これも中小企業にとっては、大きな金銭的負担となる。

 いずれにしろ、新OS環境への移行に伴い、企業の負担は大きいといわざるをえないのだ。

 周知のように、2014年4月には、Windows XPのサポート期限が終了する。IDCの調査によると、法人向けPCでは1,419万台、個人向けPCで1,170万台のWindows XP搭載PCが稼働しており、これらのPCは、サポート期限終了後には、セキュリティ更新プログラムが提供されなくなり、常に脅威にさらされることになる。これらのPCを最新OS環境へと移行することが、脅威から守り、安心してPCを利用できることにつながるが、これは逆算すれば、法人PCにおいては、実に4割がWindows XP搭載PCのままであり、そのうち、専門家がいない中小企業での移行の遅れが指摘されている。

 これから1年間の間に、多くの企業がWindows XPからの移行を検討し、実行しなければならない環境にあるのだ。

 AOSテクノロジーズでは、こうした環境を捉えて、とくに中堅・中小企業の移行を支援するためのツールとして、ファイナルパソコン引越しを訴求していく考えを示す。

 ファイナルパソコン引越しには、いくつかの特徴がある。

 1つ目には移行ツールとしては、唯一、アプリケーションソフトの移行を可能としている点だ。WordやExcel、PowerPointといったマイクロソフトのOfficeアプリケーションや、各種ブラウザ、メールアプリケーション、はがき作成ソフトなどのほか、Adobe Acrobat X StandardやPhoto Shopなども移行できる。一方で、アンチウイルスソフトやWindowsサービスを利用する弥生会計や勘定奉行などの業務ソフト、ATOKなどのFEP、PC購入時に付属しているアプリケーションの移行はできない。

AOSテクノロジーズ 志田大輔氏

 移行できるソフトウェアを確認する必要があるが、「PC内の必要なソフトだけ選択したり、すべてまとめて移行するといったことが可能」(AOSテクノロジーズの志田大輔氏)になっている。

 2つ目の特徴は、PCメーカーに依存しない移行が可能になるという点だ。もちろん、Windows XPからWindows 7やWindows 8への移行といったように、OSに依存しない移行も当然のことながら、可能となっている。

 特に、Windows XP搭載PCからWindows 7にアップグレードすると、新規インストール扱いとなり、デスクトップ設定やアプリケーションソフトはすべて初期化され、デスクトップがごみ箱だけになってしまうという問題が起こることになる。ファイナルパソコン引越し9plusでは、Windowsアップグレードアシスタント機能によって、アプリケーションソフトや、ファイル、設定などの情報をHDDに保存し、Windows 7をインストール後、保存した旧OS上のすべての情報を戻すといったことを可能にしているため、確実にアプリケーションやデータの移行が行なえる。

 3つ目が、3ステップで移行できる「おまかせ引越し」機能を搭載したことで、専門知識を必要とせずに、簡単に移行作業が行なえる点だ。

 「CD-ROMからソフトをインストールし、付属ケーブルを接続、おまかせ引越し機能を選択するだけで、必要なソフトウェアやデータを移行できる。従来製品では、ボタンを15回押す必要があったが、ファイナルパソコン引越し9plusでは7回ボタンを押すだけで移行ができる。PC歴が1年の事務員でも、1時間で移行作業ができる」(AOSテクノロジーズの志田大輔氏)という。

ファイナルパソコン引越し9plus enterpriseのメインメニュー
7回ボタンを押すだけで移行が完了する
移行作業は「おまかせ」での引越のほか、詳細を設定するメニューも用意
新たなPCに移行準備作業。いわば新たなPCの間取りを確認する作業
新たなPCと古いPCの接続には、いくつかの接続方法を用意
アプリケーションやデータの移行作業。「引越し荷降ろし」と表現

 4つ目は、PCが壊れてしまった際にも、新たなPCへの移行が可能である点だ。「55%のユーザーが、PCが壊れたためにPCを買い換えるとしている。バックアップをとっていればいいが、実際にはバックアップをとってないユーザーが多いのが実態。そうしたユーザーに対して効果的な機能となる」(AOSテクノロジーズ・西谷氏)とする。

 ファイナルパソコン引越し9plusでは、バックアップイメージファイルからの移行や、壊れたPCの内蔵HDDを取り出し、それを新たなPCに直接接続して、アプリケーションやデータなどを移行させることができるという。

ファイナルパソコン引越し9plus enterpriseのに搭載されているポリシーマネージャーの設定画面

 さらに、enterprise版ならではの特徴がある。

 それは「ポリシーマネージャー」を用意しており、管理者が事前に移行ルールを設定し、移行するアプリケーション、データ、設定環境を決定できる点だ。また、移行作業を社員が個別に行なう際も、必要とされるメニュー項目を設定することができ、移行作業をより簡便にすることができる。

 「移行ルールについては、アプリケーションごと、ユーザーグループごと、ユーザーごとといったように柔軟な設定が可能となっている。移行する台数分のライセンスを事前に認証し、プログラムをクライアントにインストールせずに直接実行することができるのもenterprise版の特徴」(AOSテクノロジーズ 志田大輔氏)とする。

 こうした機能も、従業員数100人~1,000人規模の中堅/中小企業にとっては有効な機能だと言えよう。

 「これからWindows XPの環境から移行する企業は、PCの専門知識を持たない企業が増加すると想定される。そうしたユーザーこそ、この製品を活用してもらいたい」と西谷氏は語る。

 同社では、ファイナルパソコン引越しenterprise版のライセンス価格を10%引きで販売するキャンペーンを実施するなど、Windows XPユーザーを対象とした移行促進支援を行なっていく考えであり、今後は、日本マイクロソフトとの連携も視野に入れている。

 さらに、同社では、7月にも最新版となるファイナルパソコン引越し10plusを投入する考えを示す。

 ファイナルパソコン引越し10plusでは、Windows 8への連携機能の強化、Office 2013への移行を標準対応としたほか、これまでは最新OSを搭載したPCに最初にツールをインストールする仕組みであったのに対して、新製品では古いPCに先にインストールする方法へと変更し、「インストールの順番を自然な流れにしていく」という。

 操作性については、ファイナルパソコン引越し9plusで大幅な改良を加えており、「基本的にはそれを踏襲したものになる」とする。

 ちなみに、Office 2013への対応などについても、すでにファイナルパソコン引越し9plusのアップデートで対応しており、新製品の登場を待つまでもなく、現行製品を活用しても問題なく移行は可能だ。

 Windows XPからの移行期限まであと11カ月あるとはいうものの、移行作業の手間などを考えると、早めに作業を開始した方がいいのは明らかだ。そのため、新製品を待たずに、早めに作業に取り組むことも必要である。

 管理者や現場の社員にも負担をかけずに移行作業を行なうためにも、こうした移行ツールを活用することは得策だといえよう。

(大河原 克行)