鈴木直美の「PC Watch先週のキーワード」
第190回:11月19日~11月30日


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●キーワード


11月19日

■■ IEEEが54Mbpsの無線LAN規格「802.11g」の標準草案を承認(INTERNET)
http://www.watch.impress.co.jp/internet/www/article/2001/1119/ieee.htm

●IEEE 802.11g
 はちまるにーてんいちいちジー

 2002年10月を目標に標準化が進められている、2.4GHz帯を使った無線LAN「IEEE 802.11b」の上位規格。

 IEEE 802.11は、IEEE(Institute of Electrical and Electronic Engineers ~米国電気電子技術者協会)の802.11委員会で標準化が行なわれている無線LANの規格である。'97年に策定された最初の規格では、2.4GHz帯の無線と赤外線の2種類の物理層を使用。無線はさらに、周波数を高速に切り替える周波数ホッピング方式のスペクトラム拡散(FHSS~Frequency Hopping Spectrum Spread)と、擬似雑音を加えて広い帯域に拡散する直接拡散方式のスペクトラム拡散(DSSS~Direct Sequence Spectrum Spread)の2方式が規定されており、いずれも最大2Mbpsの伝送速度を実現する。

 '99年には、2.4GHz帯を使うDSSS方式の無線LANに、最大11Mbpsの伝送モードを追加した拡張規格IEEE 802.11bが承認。現在一般に使われている無線LANがこのタイプである。IEEE 802.11gは、この802.11bをベースに、20Mbpsを越える高速伝送モードをサポートする拡張規格で、基本仕様は、従来の802.11bに5GHz帯を使う802.11aの技術を合体させた規格になっている。

 2.4GHz帯の無線LANでは、無線パケットの最初にその後の信号を受信するために必要なさまざまな情報を、最下位のシステムが受信できる1MbpsのDBPSK(Differential Binary Phase Shift Keying)変調で送信している。転送速度や変調方式なども、ここに含まれている情報の1つで、802.11bなら1、2、5.5、11Mbpsといった転送速度と、802.11bで拡張された5.5、11Mbps用のCCK(Complementary Code Keying)、オプションのPBCC(Packet Binary Convolutional Code)といった変調方式を識別。その後に続くデータパケット本体を指定された方式に切り換えて復調するという、2ステップ方式受信していた。802.11gでは、これをさらに拡張し、新しい変調方式である802.11aのOFDM(Orthogonal FrequencyDivision Multiplex~直交周波数分割多重)モードを追加(※1)。データパケットの先頭にOFDMモード用の情報などを入れ、3ステップで6~54MbpsのOFDMモードに移行する。

 このように、802.11bの方式がそのまま継承されているので、既存の無線LANカードやアクセスポイントとは、これまで通りの802.11bモードで通信でき、なおかつ双方がOFDMモードをサポートしていれば、802.11aと同じ方式で高速な伝送が行なえる。 ただし、6Mbpsで送信が始まる802.11aに比べると、低速な手順が余分に加わるために、オーバーヘッドが若干増えてしまう。

 802.11bで使われていたDSSSは、1次変調された信号に擬似雑音を乗算し、使用帯域全体に拡散して送信する方式だった。802.11gに採用されるOFDMは、使用帯域全体を小さく区分し、独立した搬送波(サブキャリア)を立てて個別に変調。全体を使って送信するスタイルである。具体的には、20MHzの使用帯域(占有周波数帯幅は16.6MHz)に52本の搬送波を立て、そのうちの48本(残り4本はパイロット信号)を0.25MHzの変調速度で変調し、強力なエラーリカバリーが行なえるように符号化された信号を分散して乗せる。受信側では、全部を復調して、元のデータを復元するわけだ。

 2.4GHz帯は、国内では2.400~2.497GHzが使用できる。規格では、2.400~2.4835GHzを5MHz間隔で区切った13個のチャンネルと、2.484GHz帯の計14個のチャンネルを規定している。実際の通信には、連続する4チャンネル分を使用するので、1~13の間に最大3個のチャンネルと第14チャンネルの計4チャンネルが、互いに干渉しない完全に独立した通信チャンネルである。

【IEEE 802.11gの12種類の伝送速度】
1次変調2次変調転送速度必須
DBPSKDSSS1Mbps
DQPSKDSSS2Mbps
CCKDSSS5.5Mbps
CCKDSSS11Mbps
BPSKOFDM6Mbps
BPSKOFDM9Mbps
QPSKOFDM12Mbps
QPSKOFDM18Mbps
16-QAMOFDM24Mbps
16-QAMOFDM36Mbps
64-QAMOFDM48Mbps
64-QAMOFDM54Mbps


※1 802.11bの1次変調方式であるCCKをそのまま使ったOFDMモード「CCK-OFDM」と、PBCCの高速版(22、33Mbps)もオプションでサポートされている。

□802.11 Working Group
http://www.ieee802.org/11/
□ARIB(Association of Radio Industries and Businesses of Japan)
 社団法人電波産業会:国内の技術基準を策定している機関
http://www.arib.or.jp/
□TELEC(Telecom Engineering Center)
 財団法人テレコムエンジニアリングセンター:技術基準適合証明を行なっている機関
http://www.telec.or.jp/
【参考】
□IEEE 802.11a
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20011019/key185.htm#802
□IEEE 802.11b
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/991007/key93.htm#IEEE_802
□Wi-Fi(WIreless FIdelity)
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20001201/key145.htm#WiFi
□直接拡散方式
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/991125/key99.htm#DSSS
□周波数ホッピング方式
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20000622/key124.htm#FH-SS
□各種デジタル変調(Broadband Watch)
http://www.watch.impress.co.jp/broadband/column/infra/2001/09/26/


■■ COMDEX Fall 2001レポート そのほかパーツ編
   書換型DVDの真打ちがついに登場
   ~松下電器が「ランボー2」ことDVDマルチドライブを展示など
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20011119/comdex11.htm

●DVDマルチドライブ(DVD Multi Drive)
 ディーブイディーまるちどらいぶ

 DVD-ROM、DVD-RAM、DVD-RW、DVD-R for Generalの全てのメディアの読み出し、または読み書きに対応したPC用のDVDドライブ。

 DVDフォーラムが策定するDVDファミリーの規格は、大きく分けると、メディアの物理仕様を規定した物理フォーマットの規格。メディア上でファイルベースのアクセスを実現するためのファイルシステムの規格。DVDアプリケーションのためのアプリケーションフォーマット。著作権保護機構の4種類で構成されている。

 一般に使われる物理フォーマットは、DVD-ROM、DVD-RAM、DVD-RW、DVD-R for Generalの4種類。ファイルフォーマットは、OSTAのUDFがベースになっており、DVD-ROM向けの基本仕様はUDF 1.02に相当。ライタブルメディアには、ディスクを仮想アドレスで管理するVAT(Vertual Allocation Table)をサポートした、UDF 1.5相当のものが使われている(※1)。アプリケーション規格には、ビデオパッケージ用のDVD-Videoとオーディオパッケージ用のDVD-Audio、ビデオ録画機用のDVD Video Recording(DVD-VR)の3規格が規定されており、将来的にはDVD Audio Recording(DVD-AR)も予定されている。最後の著作権保護機構は、DVD-Video用のCSS(Content Scrambling System)、DVD-Audio用のCPPM(Content Protection for Pre-Recorded Media)、ライタブルメディア用のCPRM(Content Protection for Recordable Media)があり、これらの規格を組み合わせて、PC用のDVDドライブやコンシューマ向けのDVD機器が作られている。

 ユーザーにとっては、これらさまざまな規格のサポート状況などを意識することなく利用できれば良いのだが、規格化の時期やコスト、政治的な問題などのために、特にライタブルメディアに関しては、なかなか望むような状況には至らなかった。DVDフォーラムでは、メディアやアプリケーションの互換性を示す統一の呼称として、2000年6月に「DVDマルチ」を提唱。2001年7月に「DVD Multi Specification PRODUCT REQUIREMENT Version 1.0」としてまとめられ、リリースされた。

 この規格は、DVDマルチ機器の統一的な呼び名と、それぞれがサポートすべき最小限の仕様を規定したもので、PC用は「DVDマルチドライブ」と命名。読み出し専用機は、DVD-ROM/RAM/RW/R for General(※2)の読み出しを、ライタブル機はこれに加え、DVD-RAM/RW/R for Generalの書き込みをサポートすることを求めている。要するに、どのメディアも分け隔てなく読み書きできるドライブということだ。

 コンシューマ向けは、再生専用機を「DVDマルチプレーヤー」、録再機を「DVDマルチレコーダー」に分類。それぞれに、表のような名称とサポートすべき機能を規定している。

■コンシューマ向けDVDマルチ機器
カテゴリ名称DVD-ROMDVD-RAM/RW/R for General
DVD-VideoDVD-AudioDVD-VRDVD-AR(※)
DVDマルチプレーヤー DVDマルチビデオプレーヤー再生-再生-
DVDマルチオーディオプレーヤー-再生-再生
DVDマルチビデオ/オーディオプレーヤー再生再生再生再生
DVDマルチレコーダー DVDマルチビデオレコーダー再生-録再生-
DVDマルチオーディオレコーダー-再生-録再生
DVDマルチビデオ/オーディオレコーダー 再生再生録再生録再生


DVD-AR(Audio Recording)は、まだ規格化されていない

※1 DVD Video Recording規格では、ファイルストリーム(ファイルに関連付けられたストリーム内にさまざまな情報を格納できる機能)をサポートした、UDF 2.0を使用する。
※2 コンシューマ向け製品では、インクリメンタル(追記)のみのサポートで良いが、DVDマルチドライブの場合には、ディスクアットワンス、インクリメンタル、0B/2KB/32KBリンク(パケットライト時のリンクロス[ギャップ])すべてをサポートする。


□DVD Forum
http://www.dvdforum.org/
【参考】
□DVD-ROM
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/980127/key15.htm#dvd-rom
□DVD-RAM
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/980127/key15.htm#dvd-ram
□DVD-R
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/981029/key52.htm#DVD-R
□DVD-R for Authoring Ver.2.0
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20000907/key134.htm#Authoring
□DVD-RW
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/991014/key94.htm#DVD_RW
□DVD-Video
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/981029/key52.htm#DVD_Video
□DVD-Audio
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/990805/key87.htm#DVD_Audio
□DVD Video Recording
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/991014/key94.htm#DVD_rec


11月27日

■■ Intelがテラヘルツ・トランジスタ技術を発表
   ~ムーアの法則は2007年まで有効?
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20011127/intel.htm

●リーク電流(leak current, leakage current)
 りーくでんりゅう

 漏れ電流。

 電気の流れにくい、高い電気抵抗を持つ素材を絶縁体という。が全く電気を通さないというわけではなく、絶縁体といえどもごく僅かではあるが電流が流れる。この僅かに流れる電気を漏れ電流という。ちなみに、絶縁体に加えた直流電圧と流れる電流は、オームの法則にしたがっており、この時の絶縁体が持つ抵抗値を絶縁抵抗という。絶縁抵抗は、導体の抵抗と同じように、薄くなれば薄くなるほど低くなるため、リーク電流が増大する。

 回路が切れていいるにも関わらず、僅かに流れてしまう電流をオフリーク電流(待 機時漏れ電流)といい、高密度化、低消費電力化が進む半導体市場では、このオフリー ク電流の低減が盛んに研究されている。

[Text by 鈴木直美]


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