鈴木直美の「PC Watch先週のキーワード」
第191回:12月3日~12月14日


■■キーワードが含まれる記事名
●キーワード


12月13日

■■ ロジテック、IEEE 1394/USB 2.0両対応のDVD+RWドライブ
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20011213/logitec2.htm

●DVD+RW
 ディーブイディープラスアールダブリュー

 ソニー、Hewlett-Packard、Philips、三菱化学、リコー、ヤマハの6社が'97年に発表し、DVD+RW Allianceが推進する、DVD互換のリライタブルディスク。

 DVD規格は当初、読み出し専用のDVD-ROM、書き込み可能なDVD-R、書き換え可能なDVD-RAMの3つの物理メディアでスタートした。オーサリングに必須のメディアであるDVD-Rは、CD(CD-ROM)に対するCD-Rと同じように、ROMの物理的・光学的な仕様をできるだけ忠実に再現(※1)したのに対し、PC用のドライブとしての性能を追求したPDの発展形であるDVD-RAMは、物理的には全く異なる設計になっていた。DVD-RAM規格が正式にリリースされた'97年、CDに対するCD-RWに相当する書き込みメディアとして、パイオニアがDVD-RWを提唱。ソニー、フィリップス陣営は、ほぼ同じ指向性でDVD+RWを提唱。前者はその後、DVD Forumの正式規格となって'99年にリリースされたが、DVD+RWの方は、別団体の規格として歩むことになる。

 DVD+RWもDVD-RWも、レーザーを使って記録膜上に結晶状態と非結晶状を作り、両者の反射率の違いを利用して再生を行なう相変化記録という技術を使用してメディアの書き換えを行なっている。相変化記録では、プレスで凹凸を作るROMや、記録層を化学変化させるRの様な高い反射率が得られないのだが、DVD-ROMにはもともと2層メディアという低反射率のメディアが規定されており、どちらもこの2層メディアの反射率に合わせて設計。それ以外の物理的なパラメータや要求される性能は、ROMの仕様に合わせたものになっている。したがって、全てのドライブがポテンシャルとして、読み出す能力を持っており、既存のドライブに僅かな変更を加えるだけで対応することができる。基本的には、メディアを識別するためのIDをチェックして、サポート対象外のメディアと判定したり、1層のメディアを2層の反射率で読むことを拒まなければ、読めるはずなのだ。

 書き込まれたメディアを読み出すことに関しては、+RWも-RWも大きな違いはないのだが、書き込み関しては、両者の仕様は若干異なっている。書き込みメディアには、ピックアップをガイドするための案内溝(groove)とアドレス情報がプリフォーマットされている。案内溝は、ウォブル(Wobble)といって、回転制御用のクロックが検出できるように半径方向に僅かに蛇行させてあるのだが、このウォブルが、140kHzのDVD-RWに対してDVD+RWは817KHzと高い周波数に設定されている。アドレス情報の持ち方は、DVD-RWはDVD-Rと同じ仕様(※2)で、溝と溝の間のランドと呼ばれる領域にピットを配置するLPP(Land Pre-Pit)である。一方のDVD+RWは、CDのATIP(Absolute TimeIn Pre-Groove)を継承しており、先のウォブルにアドレス情報を重畳。これをADIP(ADdress In Pre-groove)と呼んでいる。DVD+RWは、CD寄りの技術を盛り込みつつ、書き込み精度を上げた仕様というわけだ。

 この精度の高さから、DVD+RWでは、追記や書き換え時に全く継ぎ目を作らないロスレスリンキングが基本となっている(※3)。追記や書き換えが、メディアを一気に書き込むDAO(Disc-at-Once)と同じ状態で行なえるので、例えばROM互換のフォーマットで書き換えを行なうといったことが標準で行なえる。このほかにも、1~2.4倍速やCAV(Constant Angular Velocity)が規格に盛りこまれていたり、1GBのデータを書き込まなければならないというしがらみ(※4)もない。

 このように、現時点では使い勝手の良いDVD+RWだが、DVD+RW Allianceに参加する企業も、製品も少ないという点が気がかりなところ。また、著作権保護の名のもとに、DVDドライブやプレーヤーが、不正なメディアを扱わないようにしようという動きもあるようだ。

※1 発表当時は、どの書き込みメディアもまだ技術的にDVD-ROMの容量を実現できず、DVD-RWは、DVD-Rと同じ片面3.95GB。DVD+RWは、3GBにとどまっていた(DVD-RAMは2.6GB)。

※2 DVD-R for Generalと同じアドレッシングで、アドレスが順方向に減少して行くスタイル(for Authoringは増えて行く)。

※3 DVD-RWには、ロスレス、2KB、32KBの3種類が既定されており、用途に応じて使い分ける。

※4 DVD-ROM規格では、ディスクの直径70mm(4.7GBメディアで約1GB)の位置までトラックが続いていることを要求している。このため、ROM互換で書き込みする場合には、通常、リードアウトが70mmを越えるようにダミーの書き込みを行なう。

【DVD-ROM/+RW/-RWの仕様】
DVD-ROMDVD-RWDVD+RW
単層2層
記録容量4.7GB/面8.5GB/面4.7GB/面4.7GB/面
記録方式ピットピット相変化記録相変化記録
レーザ波長650nm650nm650nm650nm
レンズ開口率(NA)0.60.60.60.6
反射率45-85%18-30%18-30%18-30%
トラックピッチ0.74μm0.74μm0.74μm0.74μm
最小ピット長0.4μm0.4μm0.4μm0.4μm
変調>0.6>0.6>0.6>0.6
データ変調方式8-16, RLL(2,10)8-16, RLL(2,10)8-16, RLL(2,10)8-16, RLL(2,10)
誤り訂正符号/ブロック長RS-PC/32KBRS-PC/32KBRS-PC/32KBRS-PC/32KB
チャンネルビットレート26.16MHz26.16MHz26.16MHz26.16MHz
プリフォーマットWBL & LPPWBL & ADIP
ウォブリング周波数140.645kHz817kHz
測定線速度3.49m/s(1x)3.84m/s(1x)3.49m/s(1x)3.49m/s(1x~2.4x)



□DVD Forum
http://www.dvdforum.org/
□RWPPI(RW Products Promotion Initiative)
http://www.rwppi.com/
□DVD+RW Alliance
http://www.dvdrw.com/
【参考】
□DVD-ROM
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/980127/key15.htm#dvd-rom
□DVD-RAM
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/980127/key15.htm#dvd-ram
□DVD-R
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/981029/key52.htm#DVD-R
□DVD-RW
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/991014/key94.htm#DVD_RW
□ATIP(Absolute Time In Pre-Groove)
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010409/key160.htm#ATIP
□DAO(Disc-at-Once)
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/980217/key18.htm#DA


12月14日

■■ 松下、単独でCD-ROMのバックアップが可能なドライブ
   ~DVD-ROMとCD-RWを各1基搭載
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20011214/pana.htm

●音楽用CD-R/RW
 おんがくようシーディーアール/アールダブリュー

 民生用のオーディオ機器として発売されているCDレコーダに使用する、私的録音補償金が価格に含まれたメディア。

 '92年に改正された著作権法('93年6月1日施行)により、それまで無償で自由に行なうことができた私的使用のための複製の中から、民生用のデジタル機器で政令で定められた機器を使用する場合には、著作権者に対して補償金を支払わなければならなくなった。オーディオ機器を対象とした補償金を「私的録音補償金」といい、'93年にDAT、DCC、MD、'98年にCD-R、CD-RWのレコーダとそれぞれのメディアが指定を受けている。

 これら機器のユーザが、そのつど権利者に補償金を支払っていたのでは、支払う方も受け取る方もあまりに煩雑になってしまうので、指定された管理団体が一括して回収し、権利者に分配するシステムが作られている。具体的には、オーディオメーカーを代表する電子情報技術産業協会(JEITA~Japan Electronics and Information Technology Industries Association~ジェイタ)とメディアメーカーを代表する日本磁気メディア工業会(JRIA~Japan Recording-Media Industries association)が、各社から補償金を回収。これを私的録音補償金管理協会(SARAH~Society for Administration of Remuneration for Audio Home Recording~サーラ)に支払い、SARAHから著作権者を代表する日本音楽著作権協会(JASRAC~Japanese Society for Rights of Authors, Composers and Publishers~ジャスラック)、実演家を代表する日本芸能実演家団体協議会(芸団協)、レコード製作者を代表する日本レコード協会(RIAJ~Recording Industry Association of Japan)の3団体に分配。各団体から、下部の団体や権利者などに支払うようになっている。

 私的録音補償金は、該当機器の卸価格(通常は標準価格の65%、車載機は47%と算定)の2%で、デジタル録音機能1個を内蔵する場合は上限を1,000円、2個内蔵する場合は1,500円までと規定。メディアは、卸価格(通常は標準価格の50%と算定)の3%と規定されている。メーカーは、この金額を民生用のCDレコーダやそのメディアの価格に上乗せした形で出荷しているので、これらを使用する限り、私的録音補償金をユーザが個別に支払う必要は無い。

 音楽用CD-R/RWには、1つだけデータ用のメディアと物理的に異なっている点がある。 ブランクメディアには、正確なトラッキングが行なえるように、あらかじめ盤面にグルーブ(groove)と呼ばれる案内溝が作られている。グルーブは、半径方向に僅かに蛇行しており、正確な回転数を保つためのクロック信号と、アドレス情報などが得られる仕組みになっている。グルーブに重畳された信号をATIP(Absolute Time In Pre-Groove)といい、ATIP情報の中には、DAC(Disc Application Code)と呼ばれるディスクを識別するためのコードも記録されている。音楽用(あるいはfor AUDIO)と書かれたCD-R/RWメディアには、このDACに音楽用の識別コードが書き込まれており、民生用のCDレコーダの場合には、この識別コードを持ったメディアにしか書き込まないようになっている。

 ちなみに、民生用のCDレコーダは、SCMS(Serial Copy Management System)にも対応しているので、一般的な「1回だけコピー可」のソースは、「コピー不可」として記録。コピーしたメディアを元に、孫コピーを作ることはできない。また、記録時には常に、メーカー、機種、製造番号から成るRID(Recorder unique IDentifier)と呼ばれる固有のコードを記録し、メディアから、それを作成した機器が特定できるようになっている。

【参考】
□CD-R
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/971224/key12.htm#cd_r
□CD-RW
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/971224/key12.htm#cd_rw
□SCMS(Serial Copy Management System)
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/990401/key71.htm#SCM

[Text by 鈴木直美]


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