Atom 330プロセッサを使ったパソコンを組み、Vista 32 vs Vista 64、WHS vs CentOSと、ソフトウェアネタが続いたので、最後はハードウェアネタでしめたい。Atomプロセッサとライバル関係にあると言われているVIA Nanoプロセッサとのvs企画だ。 ●VIA VB8001 Nanoプロセッサは、L2100(1.8GHz)、L2200(1.6GHz)、U2400(1.3GHz+)、U2500(1.2GHz)、U2300(1.0GHz)と全部で5種類ある。65nmのプロセスルールで作られ、パッケージサイズは21×21mm、ダイサイズは7.650×8.275mmのNanoBGA2パッケージ形式となっている。Atomプロセッサ同様、64bitの命令セットを搭載。新SSEや800MHz以上をサポートするVIA V4 FSBを採用したVIA C7シリーズの後継に当たる低消費電力が特徴のCPUだ。L2キャッシュは1MB。今回はその中でL2200を搭載しているMini-ITXマザーボード「VIA VB8001」を使ってみたい。
事務所に戻り、さっそく箱をあけたが、ちょっと面食らったのは、このマザーボード、紙のマニュアルが入っていない。CD-ROMの中かと、CD-ROMのフォルダで“Manual”がありクリックすると空っぽだった。オンボードのコネクタにシルク印刷のない部分が多く、マニュアルを見ないと電源スイッチのコネクタすら解らない。結局同社のWebからマニュアルのPDFをダウンロードした。また、オンボードのUSBコネクタはピッチが狭く、ケースに付属しているUSBコネクタと合わず、計6ポートもあるUSBをフロントパネルに出せなかったなど、少々癖を持っている。これら以外の部分については一般的なMini-ITX仕様なので、特に問題なく組み立てを完了した。さっそくWindows XP(32bit)をインストール開始。終盤にさしかかったところでブルースクリーン。再度インストールしたところ、今度は何事もなくWindows XPが起動した。 Nano L2200とAtom 330の速度比較はご覧のように下馬評通りで、Atom 330の方が2倍近く良いだ。ちなみにシングルコアAtom 230のCPU部分だけ抜粋すると「Integer: 94355、Float: 64758」(D945GCLF)となっている。つまり、Atom 230とNanoが、どっこいどっこいで、Atom 330は性能的には抜けているという結果だ。 さて、このNanoの環境を使ってみると、例えばネットでいろいろなWebを見たり、動画などを再生すると瞬間的ではあるが、CPUの使用率50%を超える。CPUのスコアがほぼダブルスコアのため仕方ないが、Atom 330のシステムとは差がある印象だ。気になる点としては画面の解像度を上げると少しノイズが乗る。同じ解像度でもD945GCLF2では見られなかった現象だ。ビデオのアナログ出力の質の差かもしれない。 ●PCI Express x16を使ってみる このVIA VB8001、最大の魅力はやはりPCI Express x16スロットが1本あることだ。ここにビデオカードを付け、トータル的なパフォーマンスアップを狙ってみる。最新鋭のGPUを搭載したモデルを試しても良かったのだが、それではさすがにバランスが悪く、5千円前後で購入できるファンレスのものにしたい。たまたまVB8001を入手した店内にこの条件を満たすものがあったのでピックアップした。 GeForce 9400 GTをPCI Express x16へ挿し、NVIDIAから直接ダウンロードしたWindows XP用のドライバをインストール。もちろん問題なく表示された。VB8001内蔵グラフィックと比較して色も若干綺麗なようだ。スタートメニューをマウスでクリックした瞬間から描画速度の違いに気付く。まったく違うパソコンを触っているような感覚となる。期待しつつHDBenchの結果を見るとBitBltが3倍も違う。これだけ違えば体感速度でもはっきりわかるのも当然だ。また、DVI出力があるので、大きな液晶ディスプレイを接続する場合も高画質なのは、Atom搭載システムにはない利点だ。ただし、ファンレスとは言え、動作中にヒートシンクを触ると結構熱い。ケース側の放熱はそれなりに考えた方がいいだろう。 Windows XPでのテストも一通り終わったので次は32bit版のWindows Vista SP1をインストールした。この時も先のXP同様、終盤で1回ブルースクリーンになっている。メモリとの相性なのか、BIOSの設定(ブートメディアの順番を変更した程度でほぼ工場出荷状態)で何処かを触るべきなのか原因は不明だ。2回目のチャレンジは特に何事もなく完了した。 Windowsエクスペリエンス インデックス結果は、素の状態だとさすがに分が悪い。また付属のドライバを使ったところAeroがONにならない。ドライバが古いのかと、同社のダウンロードページに行くと、Vistaの文字が見当たらないのだ。仕様のページに対応OSとして書かれているのは「Windows XP, Linux, Win CE, XPe」。Windows Vistaは今のところサポート対象外なのだろう。 GeForce 9400 GTのドライバはNVIDIAのサイトへ行き、OSをWindows Vista 32bitを選択してダウンロードしセットアップ。こちらは問題なくAeroもONになっている。CPUのスコアが3.0とは言え、メモリを4GB搭載し、GeForce 9400 GTで強化したWindows Vistaは、そこそこ動く環境になる。GPUが動画再生支援機能を持っているので、動画を再生してもCPUに負荷もかからない。非力なCPUの場合、画面描画が重くなるWindows Vistaは、PCI Express x16でGPUを増設するのが、かなり有効な手段だ。 さて、内蔵グラフィックのAero未対応が気になり、検索してみるとVIA Chrome9 HC IGPでAeroをONにしている話もちらほらある。http://www.viaarena.com/で探したところドライバが見つかった。ここのドライバをインストールしてAeroがONになったのが右の画面だ。「グラフィックス2.0、ゲーム用グラフィックス2.5」。低いとは言え、先に試したドライバよりは速くなっているのがわかる。しかし、本城氏の記事によると、Atom N270プロセッサ搭載のネットブックで32bit版Vistaを動かした時のWindowsエクスペリエンス インデックスは「3.0, 4.5, 4.2, 2.8, 5.9」となっている。今回のNanoの数字は、このシングルコアのN270と比較しても厳しいスコアだ。いずれにしても一度GeForce 9400 GTでの使用感を知ってしまうともう後戻りはしたくないし、これが可能なのがVB8001の最大のメリットと言える。 内蔵グラフィックのAeroも無事動いたので、最後に64bit版Windows Vistaでも同様のベンチマークテストを行なおうとインストールを始めたところ、セットアップ画面の初期段階でブルースクリーン。先に書いたようにXPとVistaをインストールする時も1回ずつ発生しているので、気を取り直して再挑戦したのだが何度やっても同じ場所で落ちる。BIOSで内蔵ビデオのパラメータやメモリ回りなどいろいろ試したものの効果なし。SATAのケーブルを用意して、USB経由のDVDドライブではなく、SATA経由のDVDドライブからでも結果は同じ。結局インストールできなかった。せっかくフルに4GBを使えるのにチェックできず残念だ。試にその3で使ったCentOS 5.2 x86_64は起動したので、Nanoプロセッサ自体の64bit対応は間違いない。先のhttp://www.viaarena.com/には64bit版XPやVistaのドライバがあることを考えると、たまたま手元にあるマザーボードの個体差かも知れないものの、お手上げ状態で断念した。
各ベンチマークテストを比較しやすいようにまとめたのがこの表だ。背景色のある方が勝っている部分となる。こうして横並びにすると、当たり前であるがPCI Express x16で後から増設した「GeForce 9400 GT/512MB」は圧倒的に速い。ただ筆者のようにゲームには全く興味なしのユーザーからみれば、Atom 330プロセッサの唯一の2点台はゲーム用グラフィックで、他は4点台以上とバランスが整っている。 以上のように、Nano L2200プロセッサを搭載したVIA VB8001最大の魅力とも言えるシステムの拡張性や4GBのメモリ空間などが、システムの不安定さ、そしてAtomシステムと比較しての価格差などで残念ながら十分に生かしきれてない印象を受ける。逆にこのあたりがしっかりすれば更に良くなる可能性を秘めている。冒頭で触れた新しいチップセットも気になる存在だ。この結果を踏まえ、拡張性は乏しいが安価で安定したものを求めるなら、シングルコアのAtom 230/N270を使ったシステム。更にパワーが欲しい時はAtom 330。そしてじゃじゃ馬を乗りこなすのも楽しみ(笑)と言えるパワーユーザーならVIA VB8001となるだろうか。いずれにしても良きライバルがいないとワンサイドゲームで面白くない。VIAには、ぜひ頑張って欲しいと思う。 ●Atomのブームは続く
左の写真は、もともとD945GCLF2用に買ったケースを、今回PCI Express x16カードを挿すためVIA VB8001に入れ替え、替わりにセンチュリー「CF-A6719」という安価なスリムなケースを購入、そこへD945GCLF2をセッティングしたところだ。安い割りに作りも良く電源も静か。お買い得の逸品だ。ただ一見スリムに見えるこのケース、薄型のDVDドライブと3.5inch HDD、そして電源ユニットが横に並ぶため、立てると丈があり過ぎ不安定、横にすると結構幅を必要とするのは計算外だった。
□VIAのホームページ (2008年12月24日) [Reported by 西川和久]
【PC Watchホームページ】
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