本城網彦のネットブック生活研究所

第4回 「プラス2万円の幸せ」、SSDとメモリ2GBでパワーアップ!




エプソンダイレクト「Endeavor Na01 mini」、SSD「PhotoFast G-Monster」、SO-DIMM 2GB


 一般的にPCをパワーアップする方法は、「メモリ増設」、「HDD交換」、「ビデオカード交換」、この3つが王道だ。メモリを増設すればOSやアプリケーションの動きに余裕ができ、遅くなる原因のディスクへのスワップも激減する。HDDの交換は多くの場合、容量不足から行なうケースだ。しかし、新しく購入したHDDは、もともと本体に付いていたHDDより世代的に新しく、結果アクセス速度もアップする。そしてビデオカードの交換は言うまでもなく性能向上に直結。直接眼に触れる部分でもあるので、感覚的にも分かりやすい。

 そこで今回はネットブックのベーシックな性能を上げるべく、メモリの増設とHDDの交換を行なうことにした。ただ残念なのはグラフィックエンジンはGMA950に固定され、拡張スロットも無くどうにもならないことだ。あまり速くないエンジンなだけに何とかしたい部分であるが、そこはネットブックの悲しさ。割り切ってメモリとHDDに的を絞ってパワーアップしてみたい。

●これからネットブックを買うなら

 ここで1つポイントがある。それは、「メモリとHDDを簡単に交換可能か?」だ。例えば「Eee PC 901-X」はメモリ交換は簡単であるが、システムドライブはSSDで、もともとHDDは非搭載(901-16Gの登場はかなり悔しい)。「Aspire one」は、メモリすら裏から交換できず、本体を分解する必要があり、筆者でさえも面倒と思ってしまう。

 メモリそしてHDDを簡単に交換可能なネットブックはいろいろあるが、手持ちは、「Eee PC 1000H-X」とエプソンダイレクト「Endeavor Na01 mini」。今回はEndeavor Na01 miniで試すことにした。このネットブック、何と言っても最大の特徴は価格が46,800円と、安価なネットブックの中でも更に安価な戦略的モデル。派手さは無いが、使えば使うほど味が出るタイプだ。実に堅実な作りでいかにも国内メーカー製と言った感じである。気になる点は、他のネットブックと比較して、Hyper-Threadingや内蔵デバイスのON/OFFが出来ないなど、BIOSで設定できる項目が極端に少ないこと。あえて隠していると思われるが、できればファームウェアのアップデートで対応して欲しいところだ。

 とりあえずHDDを交換する前に内蔵しているHDDのベンチマークテストを行なったところ、以下のような結果になった。

内蔵しているSeagate「Momentus 5400.5 160GB」での測定結果

 このSeagate「Momentus 5400.5 160GB」は、HDD内蔵タイプのネットブックでよく使われているモデルだ。速度はそれなり、ノイズは少なめ、省電力などの特徴を持つ。HDDを交換するにあたってネットブックでこれ以上容量があっても仕方なく、速いHDDもあるにはあるが、五十歩百歩。そこで価格が大幅に下がりお買い得度が増したSSDでパワーアップすることにした。とは言え、本体の価格とあまり変わらない高価なものは止めて、バルク品のSO-DIMM 2GBと合わせて2万円内で収まるものをピックアップする。

●今時のSSD

 2GBメモリの価格を考えると、SSDの予算は最大1.5万円前後。必然的に狙いは32~64GB/MLCとなるが、11月末に調べた時点では該当するSSDは数えるほど。PCの前で悩んでいても仕方がないので12月3日、秋葉原へ買出しに行った。

 ところが嬉しい誤算! 円高の影響なのか実際ショップで価格を見ると、64GB/MLCのSSDほぼ全てが1.5万円前後になって選択の幅が広がっている。「こんなことなら事前にいろいろなメーカーのベンチマークテストなどをもっとチェックしておけばよかった……。」と思っても後の祭り。結局カタログスペック「読込最大170MB/s 書込最大100MB/s」のコピーに負け、「PhotoFast G-Monster 64GB」(16,800円)を買う事にした。

 このSSD、ちょっと面白いのはSATAに加えてUSBポートもあり、外部HDDとしても作動するのだ。USB 2.0のスペックでは「読込最大35MB/s 書込最大30MB/s」となる。とりあえずEndeavor Na01 miniのUSBポートに接続して試した結果は以下の通り。読込み書込みとも、カタログスペックより約-5MB/sなのは偶然だろうか?

2.5インチのSSD。MLCタイプの64GB。インターフェースはSATA。USB接続も可能だ
とりあえずUSB接続での測定結果。まずまずスペック通りだ

●OSをリカバリそして期待の結果は

 実際HDDを入れ替えるに当たって、「外しやすさ」に加えもう1つキーポイントがある。それは「リカバリメディアの付属」と「HDDパーティションの構造」だ。例えばEee PC 901-X、同1000H-X、そしてEndeavor Na01 miniはROMメディアで同梱しているのに対して、Aspire oneは内蔵しているHDD内にリカバリ用の別パーティションがあり、単にHDDを乗せかえるだけではリカバリが出来ず、別の手順が必要となる。もう1つ、Eee PCはHDD(もしくはSSD)の先頭に小さいパーティションがあり、そこに「EFI」が入っている。単にリカバリだけであれば問題無いが、複数のパーティションを切り、何種類かOSを入れたい場合に少し面倒だったりする。

 ところが、このEndeavor Na01 miniは、普通にWindows XPがHDDに1パーティションでスッポリ入っているため、何も考えずにリカバリしたり、複数のOSを仕込むことが簡単にできるのだ。エプソンとして意図的にこのような構造にしたのかは不明であるが、SSDに即載せ替えるには適したネットブックとなっている。

Endeavor Na01 miniのHDDパーティション。ご覧の様に単純な1パーティションで、SSDへ入れ替えたい時は好都合だ

 実際の作業はご覧のように簡単だ。本体の裏にHDD側にネジ2本、メモリ側にもネジ2本があり、それを外すと外装が外れるので、単に付け替えるだけとなる。向きなども間違えようが無いため難易度は低い。あえて言えば、ネジが小さく作業中にどこかへ行かないよう、もしくは本体内に入り込まないよう、注意する程度だろうか。リカバリCDで本体を起動するには、別途USB接続のDVDドライブが必要なので用意する。今回はバッファローの「DVSM-P58U2/B-WH」を使って行なった。

載せ替え中のSSDとメモリ リカバリするにはUSB接続のDVDドライブが必要。BIOSでBootデバイスの変更も合わせて行なう リカバリ完了後のデバイスマネージャ

 メモリを2GBへ増量、HDDをSSD(64GB/MLC)へ交換し、リカバリ開始から待つこと小一時間。特にトラブルも無く、Windows XPが起動した。既にこの段階でHDDよりかなり速いことが分かる。

 環境などを整える前にまず、今回の主題であるSSDがどの程度速いのかが気になるので、速攻でベンチマークテストを行なった。結果を見ると驚きの数値が! 読込みはもちろん、書込みも内蔵HDDより速い結果となっている。安価なMLCタイプもこの速度が出れば申し分無い。 本音で言えば、「“書込最大100MB/s”なら、書込みがもう少し速かったら……。」と思うのだがSATAがIDE互換で動いているので仕方がないところ、いずれにしても大成功だ。バッテリー駆動時間は、使い方にもよるだろうが、消費電力はSeagate Momentus 5400.5が約2.5W、PhotoFast G-Monsterが約3W。バッテリ駆動時間は、あまり差が無いものと思われる。

SSD「PhotoFast G-Monster」搭載後のベンチマーク結果「HDBench」 同「CrystalDiskMark 2.2」 SATAとして動く他のマシンでのCrystalDiskMark 2.2。一段と速いのがわかる

 メモリに関してはネットブックで何を行なえば2GBも必要となるのか分からないが、とりあえずページングファイルのサイズを0とした。余計なディスクアクセスを減らすため、512MBほど内蔵メモリをRAMDISKへ振り、テンポラリファイル(環境変数TEMP、TMP)やWebブラウザのキャッシュをそのドライブへ割り当てるとより効果的だ。

 使用感は、とにかく何をしてもサクサク動く。内蔵HDDと交換したSSDの差は歴然。もう後には戻れない。年末から来年にかけ、更なるSSDの低価格化も予想できる。こうなると「容易にHDDが交換可能なネットブック」と言うのが、今後のキーワードになるのは間違いないだろう。一度コストを度外視して、爆速の「Intel X25-E Extreme SATA SSD」を試してみたいものだ。ベンチマークテストを見る限り、型破りの速度である。

●調子に乗ってVistaをインストール

 さて、これで今回のネタは終わったので、原稿を書き終われば良かったのだが、またしても筆者の大暴走。「メモリを2GB搭載して、SSDもこの速度ならVistaが普通に使えるかも!?」と考えてしまったのだ。せっかくリカバリしたにも関わらず、その状態は僅か数時間。Windows Vistaのインストールを始めてしまった。同じくUSB接続のDVDドライブからブートし、問題無くインストール終了。認識しないデバイスなどがあったので、Endeavor Na01 mini付属のドライバCDやネット上で検索しドライバを追加インストールした。付属のドライバCDは、基本Windows XP用なのだが、フォルダなどを眺めてみるとVistaや64bitに対応したものも“一部”入っている。GMA950のディスプレイドライバや内蔵LANドライバなどが無かったので、ネット上からダウンロードしてセットアップを行なった。

見事にWindows Vistaが起動。AeroもON。デバイスやファンクションキーも全て使える 一部アプリケーションもあるが、Windows Vistaに含まれないドライバのリストとして参考にして欲しい
エクスペリエンス インデックスの値。プロセッサ3.0、ゲーム用2.8以外は普通の数値だ。もちろんHDDは最高値をマーク VistaでのCrystalDiskMark 2.2の結果。Windows XPで実行した時より少し遅くなっているが、何故か512KBの書込みだけ速い

 一晩この状態でネットや動画を見ていたが、Windows XPでやっていたことと同じことはWindows Vistaでも同程度に行なえている。特に遅いとか重いといった感じは無く、Windowsエクスペリエンスの値にも納得だ。Aeroのキレも悪くない。もともと重い処理には向かないネットブックなのだが、2GB+SSDではVistaも普通に動くのは驚いてしまった。逆にVistaは2倍のメモリ、2倍速のファイルアクセスでやっとXPと同等という考え方もあるが……。いずれにしてもこれなら再来年早々にWindows 7が出てもそれなりに使え、マシンも延命できるだろう。


 ネットブックの使い方を考えるとHDDの容量が多くて困ることは無いにせよ、「160GBは多過ぎるのでは?」と日頃から思っている筆者にとって、64GBのSSDがこれだけ安くなるとかなり魅力的だ。大きなデータはNASへ逃がせば、場合によっては32GBでもいい。SO-DIMMも激安になっているので、バルク品であればSSDと合わせて買っても2万円を切る。もともとが安価なネットブックであるが、この程度の投資でこれだけの差が出るのであれば満足度も非常に高い。「プラス2万円の幸せ」だ。

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【12月5日】【Hothot】エプソンダイレクト「Endeavor Na01 mini」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2008/1205/hotrev389.htm
【11月28日】【平澤】IntelのSLC搭載SSD「X25-E Extreme SATA SSD」を試す
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2008/1128/hirasawa010.htm

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(2008年12月8日)

 [Reported by 本城網彦]


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