多和田新也のニューアイテム診断室

デュアルコアAtom搭載Mini-ITXマザー
「Intel D945GCLF2」




 自作シーンのみならず今年のPC業界を席巻しているAtomプロセッサ。そのデュアルコア版となる「Atom 330」を搭載するデスクトップ向けマザーボード「Intel D945GCLF2」が9月21日から自作ショップなどで発売になり話題となっている。さっそく、編集部でも1枚購入したので、そのパフォーマンスをチェックしてみたい。

●CPUだけでなくマザーボード側も一部の仕様変更

【写真1】IDFで展示されたAtom 330。2個のダイを1つのCPUとしてパッケージしている

 今回テストするのは、デュアルコアAtomとなる「Atom 330」を搭載する、インテル製マザーボード「Intel D945GCLF2」。型番からも分かるとおり、シングルコアのAtom 230を搭載した「Intel D945GCLF」の後継となるモデルだが、出荷数が少なく”争奪戦”となった旧モデルに比べると、わりと潤沢に製品が出回っており、入手性が向上した点は、まず素直に歓迎できる。

 CPUとなるAtom 330は、Atomプロセッサの2個のダイを1つのCPUパッケージとする、Pentium 4のPreslerコア以降、同社ではおなじみの手法でデュアルコア化している(写真1)。動作クロックは1.6GHzとなっておりAtom 230と同等。キャッシュ容量もコア1個当たりの容量は同じで、そのコアが2個となったことで総容量が倍になっている。

 また、Hyper-Threadingに対応している点も同様で、デュアルコアであるAtom 330では、コアそれぞれがHyper-Threadingに対応することで、OS上で利用できる論理CPUは4個となるのも大きな特徴といえる(画面1〜3)。

【画面1】Atom 330におけるCPU-Zの結果。CPU-ZのDBにないため不正確なデータも含まれるが、「Threads」欄が4になっているのは確認できる 【画面2】こちらはAtom 230におけるCPU-Zの結果。CPUIDや動作電圧などはAtom 330も変わっていない 【画面3】参考までにD945GCLF2のBIOS設定画面のトップ

 土台とマザーボード側は、型番からも想像できるとおり、外観やおおまかな仕様はIntel D945GCLFに近い(写真2〜4)。チップセットはIntel 945GC+ICH7の構成で変わっておらず、メモリスロットも1本(最大2GB)で同じだ。ただ、細かいところでは変更が多い。

 1つは電源周りである。CPUがシングルコアからデュアルコアになったことで、消費電力も増加。その目安ともいえるTDPは4Wから8Wへと倍増している。メインのATX電源が20ピンから24ピンへ変更されているほか、CPUのVRM部のコンデンサも増やされた。電源端子の変更は、電源ユニットの選定においても重要となるが、よほど古い電源ユニットでなければ24ピンに非対応ということは少なくなっている。昨今の高効率電源を組み合わせるほうが本製品の性格ともマッチすることを考えれば、この点はあまり気にする必要はないように思う。なお、ATX12Vの4ピン電源も相変わらず必要としている。

 このほか、ロットによって違いはあるかも知れないが、テストした機材ではPLLも変更されていた。D945GCLFではRealTekのRTM862-410が使用されていたのに対し、D945GCLF2ではSILEGOのSLG84410Bになっている(写真5)

【写真2】D945GCLF(左)に対して、D945GCLF2のパッケージは大幅に小型化されている 【写真3】Atom 330を搭載するIntel D945GCLF2
【写真4】こちらは旧製品となった、Atom 230搭載のIntel D945GCLF 【写真5】D945GCLF2のPLLはSILEGO製チップが採用されていた

 ちなみに、D945GCLFではDDR2-667サポートにも関わらず、多くのメモリでDDR2-533しか動作しないという症状が話題となった。本製品もそのあたりは変わっておらず、今回テストに使用したUMAX製のDDR2-800 2GBモジュールも、DDR2-667で動作させることができなかった。このメモリでは、手動設定でもDDR2-667を選択することもできない。この面は大きく変更されていないようである(画面4)。

 外観上の違いでもっとも大きなものはクーラーの変更だ。TDPが4Wから8Wへ上昇したことで、CPUクーラーは大幅に大型化した。一方でチップセットクーラーは小型化された(写真6、7)。D945GCLFではチップセットクーラーが極端に高い作りになっていたが、D945GCLF2ではCPUクーラーとチップセットクーラーの高さが統一され、高さも抑制されたことから、小型のケースでも収めやすくなったといえる。非常に意味ある変更だ。

 機能面の変更も多く、LANのGigabit Ethernet化のほか、TV出力端子、オンボード上のUSBヘッダとS/PDIF出力端子が追加されている(写真8〜11)。いずれの機能も実用的な進化であり、本製品はマザーボードとしても一歩ブラッシュアップされている印象を受ける。

【画面4】今回のテスト環境でもDDR2-667動作は不可で、手動設定も行なえなかった 【写真6】D945GCLF2のヒートシンクの高さ。CPUクーラーとチップセットクーラーの高さが統一され、高さもIOパネルの最高部よりも低くなっている 【写真7】D945GCLFではチップセットクーラーが極端に高く、ケースによっては干渉することもあったが、モデルチェンジによって改善されたといえる
【写真8】D945GCLF2のI/Oリアパネル部。テレビ出力端子の追加が目立った特徴 【写真9】D945GCLFのI/Oリアパネル部
【写真10】D945GCLF2のLANはGigabit Ethernet化されている。チップはRTL8111Cが採用されている 【写真11】マザー上のPCIスロット付近はD945GCLF2の強化点が目立つ部分。S/PDIF出力や右下のUSBヘッダはD945GCLFでは空きパターンとなっていた部分だが実装された。写真上方にあるCH7021Aはテレビ出力のエンコーダチップである

●Atom2製品とVIA Nanoで比較

【写真12】VIAのNanoを搭載するリファレンスボード。同社のEPIA SNをベースに、CPUをNanoへ置き換えたマザーボードとなる

 それではベンチマーク結果を紹介したい。テスト環境は表に示したとおりで、ここでは前述のAtom搭載マザー両製品に加え、VIAのNano L2100を搭載したリファレンスボードもテストに加えている(写真12)。

 なお、メモリに関してだが、今回はCPUの評価だけでなく、CPUとマザーボードを合わせた環境の比較という意味合いも強いので、いずれもDDR2-800メモリを装着したときのデフォルト動作のままテスト。Nano環境はDDR2-667、Atom環境はDDR2-533となっている。

 このほか、オンボードグラフィックがメインメモリ上に占有するフレームバッファは、いずれの環境もBIOSから128MBに指定している。

 まずは、CPUベンチマーク関連の結果から見ていきたい。テストは、Sandra 2009のProcessor Arthmetic Benchmark(グラフ1)とMulti-Media Benchmark(グラフ2)、PCMark05のCPUテスト(グラフ3、4)である。Sandra 2009のArthmetic Benchmarkでは、ベンチマークソフト側のマルチスレッド、Hyper-Threadingを無効にした状態の結果も掲載している。

【グラフ1】Sandra 2009 (Processor Arthmetic Benchmark)
【グラフ2】Sandra 2009 (Processor Multi-Media Benchmark)
【グラフ3】PCMark05 Build 1.2.0 (CPU Test-シングルタスク)
【グラフ4】PCMark05 Build 1.2.0 (CPU Test-マルチ)

 一目で分かる傾向としては、Atom 230ではNano L2100に対して明らかに劣る傾向にあるのに対して、Atom 330はNano以上の性能を出せているシーンが多いということだ。とくにマルチスレッド処理が行われるSandraの各テストや、PCMark05のマルチタスクテストで優れた結果を残しており、非常に分かりやすいデュアルコア化の効果といえる。

 ただし、シングルタスク/シングルスレッド時のパフォーマンスはAtom 230と同等になるため、例えば、Sandra Arthmetic BenchmarkやPCMark05のシングルタスクテストにおいては、やはりNanoが強い。

 また、面白いところでは、SandraのMulti-Media Benchmarkにおいて、Double型の処理ではAtom 330よりもNanoのほうが依然として高い性能を出している。Nanoは浮動小数点演算の性能を強くアピールしているが、この結果からも一定のアドバンテージを感じる。

 ここでは紹介していないが、Sandra 2009には暗号化処理の性能を測定する機能が追加された。AES256処理ではAtom 330が51MB/secに対して、Nano L2100が941MB/sec、SHA256のハッシュ処理ではAtom 330が86MB/secに対して、Nano L2100が442MB/secと、言葉の通り桁違いの処理性能を見せている。浮動小数点を中心にコア単体の性能としてはNanoの良さが光るが、Atom 330はデュアルコアによってカバーする、という図式になっているわけだ。

 続いてはメモリ周りのテスト結果である。テストは、Sandra 2009のCache & Memory Benchmark(グラフ5)と、PCMark05のMemoryテスト(グラフ6、7)だ。

 SandraとPCMarkで180度異なる傾向が出ているのが特徴的だ。例えば、L1キャッシュ性能はSandraではNanoが非常に優れているほか、メモリテストもマルチスレッド化されているSandraではL2キャッシュ部分もAtom 230よりは高い性能を持っていると見ることができる。ただ、PCMark05では全般にAtom両製品のキャッシュ性能が優れている。他方、メインメモリの性能においても、SandraではNano環境が優れているのに対して、PCMark05ではAtom環境が好結果を見せている。

【グラフ5】Sandra 2009 (Cache & Memory Benchmark)
【グラフ6】PCMark 05 Build 1.2.0 (Memory Test)
【グラフ7】PCMark05 Build 1.2.0 (Memory Latency Test)

 各ベンチマークソフトにおけるメモリアクセス方法が違うことに起因するものと思われるが、利用シーンやアプリケーションによって逆転する程度の差しかない、ということもできる。とくにAtom環境においてDDR2-667動作が難しいというのは気になるポイントではあるのだが、両テストからは、この点にそれほどこだわる必要もないという印象を受ける。

 次にHDD周りの性能チェックだ。テストはSandra 2009のFile System Benchmark(グラフ8)、PCMark05のHDDテスト(グラフ9)、PCMark VantageのHDDテスト(グラフ10)である。

【グラフ8】Sandra 2009 File Systems Benchmark
【グラフ9】PCMark 05 Build 1.2.0 (HDD Test)
【グラフ10】PCMark Vantage Build 1.0.0.0 (HDD Test)

 HDDテストは全般に誤差が大きい傾向にあるが、各テスト結果で大きな差が付いている部分は少ない。一部でNano環境のアクセス速度がストンと落ちている部分があり、目立つところではSandraの書き込みテストの性能が大きく劣っている。ただ、PCMark05の書き込みテストでは悪くない性能を見せており、ドライバ側のライトキャッシュの実装が不安定などの理由で、性能が安定しない可能性はありそうだ。Atom両環境の安定感は評価できるが、極端に善し悪しが出ているとも言い切れない結果だ。

 ここからはアプリケーション関連のベンチマーク結果を紹介していく。

 まずPCMark Vantage(グラフ11)、CineBench R10(グラフ12)、動画エンコード(グラフ13)では、Atom 330のマルチコア化の効果が非常に分かりやすく出ている。比較対象として面白い存在になっているNanoであるが、Atom 230ではマルチスレッドの効果が高いテストでしかHyper-Threadingの効果を生かし切れず後塵を拝するシーンが少なくない。しかし、Atom 330では多くのテストでNanoを上回る結果を見せた。

【グラフ11】PCMark Vantage Build 1.0.0.0
【グラフ12】CineBench R10
【グラフ13】動画エンコード

 また、今回テストしてみた、WMV再生時のCPU使用率もAtom勢が良好な結果だ(グラフ14)。これは、640×480ドット/1.2MbpsでエンコードしたWMV9動画を、Windows Media Playerで再生したさいのCPU使用率を1秒ごとにトレースし、3分間の平均値を出したもの。Atom勢の好結果はチップセット側の再生支援の影響も大きいと思われるが、Atom 230からAtom 330になることの効果も非常に大きく、動画を見ながら何をするといった作業がより現実的になる。

【グラフ14】WMV動画再生中のCPU使用率

 ただし、WMV9動画でも、Advanced Profileを使って1080iでエンコードしたものはチップセット側の再生支援も得られないためか、Atom 330であってもコマ落ちが激しく視聴できるレベルではなかった。この点も付記しておきたい。

 続いての、3D系ベンチマークソフトは、プラットフォームが3Dにフォーカスしていないこともあってシンプルなテストに留めている。実施したのは3DMark06(グラフ15、16)、3DMark05(グラフ17)、FINAL FANTASY XI Benchmark 3(グラフ18)だ。

【グラフ15】3DMark06 build 1.1.0(CPU Test)
【グラフ16】3DMark06 build 1.1.0
【グラフ17】3DMark05 build 1.3.0
【グラフ18】FINAL FANTASY XI for Windows - Vana'diel Bench 3

 3DMark06のCPUスコアはAtom 330、Nano、Atom 230の順に並ぶ。この結果を見る限り、ゲームエンジンのCPU処理がマルチスレッド化されていなければNanoのほうが高い性能を出せる可能性も高く、マルチコアの効果があるゲームならAtom 330のほうが良い性能となるだろう。

 そのほかのスコアは非常に低く推移しており、内蔵グラフィックでゲームを楽しむというのは非現実的だ。それでもあえてゲームをしたいと思うならば、グラフィックカードを追加することになるだろう。その点で、シングルスレッドでもある程度の性能が期待でき、ビデオカードの選択肢が広いPCI Expressスロットを持つNano環境は、なかなか面白い存在になりそうだ。

 最後に消費電力の測定である(グラフ19)。電源はSeasonicのSS-700HMを使っている。冒頭でも触れたとおり、TDPがAtom 230の4Wに対して、Atom 330は8Wに倍増。マザーボード側の機能強化が図られたこともあって消費電力が現状維持に留まるようなファクターはないに等しいわけで、当然のように消費電力は増してしまっている。

【グラフ19】消費電力

 Nanoと比較した場合、Atomは非常に優秀に映る。アイドル時の消費電力はNanoのほうがよく抑制されている印象を受けるものの、負荷がかかったときの消費電力はAtomのほうが全般に低い。

 面白いのは、Nano環境の消費電力が作業に関わらずアイドル/ロードで大きく二分されるのに対し、Atom環境は作業によって大きく消費電力が異なる点である。おそらくチップセット側の消費電力の幅の違いによるものと思われるが、CPUに極端に負荷がかかるようなCineBench R10に比べて、チップセット内蔵グラフィックの負荷が高まる3DMark06の消費電力が10W前後というレベルで増えてしまっているあたり、とくにこのクラスの製品の場合はチップセットの消費電力に対しても注視する必要があるということになる。

●旧製品からトータルバランスで魅力を高めたD945GCLF2

 以上のとおり結果を見せてきたが、マルチスレッド/マルチタスクであれば、シングルコアのAtom 230に対して、デュアルコアのAtom 330の性能は大きく伸びる、ただしシングルスレッド/シングルタスクではAtom 230相当という結果に収まった。ライバルとなるNanoの存在によって、このデュアルコア化の効果が大きくクローズアップされた今回の結果といえるだろう。

 とはいえ、Nanoという存在を差し引いても、D945GCLF2は旧製品に比べて格段に良くなっている。それはスペック面の向上はもちろんだし、実際に使っていても、エクスプローラを複数枚開くといった非常に単純な作業においても挙動が明らかに軽快。これはAtom 330に変更された効果と見て間違いなく、体感速度に与える影響も大きい印象を受けている。

 このセグメントの製品においては消費電力の増加は気になるところだが、ここは、性能を取るか、より低い消費電力を取るかという、個々のニーズにも依存するとは思う。筆者としては、得られるパフォーマンスに比べて、この程度の消費電力増であれば、Atom 330を搭載したIntel D945GCLF2のほうが魅力に映る。

 価格面では旧製品に比べて数千円高い傾向にあるようだが、これも性能、機能のトレードオフと考えれば納得できる範囲だ。さらにいえば、潤沢に出回っているという入手性の高さもあり、さまざまな意味で魅力を高めた製品をいえる。

□関連記事
【9月22日】Intel、ネットトップ用デュアルコアAtomを出荷
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2008/0922/intel.htm
【7月30日】【笠原】低消費電力と高性能のバランスが取れたVIAの「Nano L2100」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2008/0730/ubiq222.htm

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(2008年9月25日

[Text by 多和田新也]


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