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Intelがデュアルコア版Nehalem「Havendale」を延期した意味




●大きくスケジュールが後退したデュアルコア版Nehalem

 Intelの次期CPUマイクロアーキテクチャ「Core i7(Nehalem:ネハーレン)」の存在は、メインストリームPCでは比較的短命なものになりそうだ。Intelは、Nehalemファミリの中でメインストリームセグメント向けの中核となるデュアルコアでGPU統合型のCPU「Havendale(ヘイブンデール)」とモバイル向けデュアルコア&GPU統合型CPU「Auburndale(オーバーンデール)」の計画を後退させた。本来のスケジュールでは、来年(2009年)中盤に登場するはずだったHavendale/Auburndaleは、2010年の第1四半期まで遅れることになった。

 最初に登場する予定のハイエンド版クアッドコア「Core i7 9xx (Bloomfield:ブルームフィールド)」は、何度か遅延のウワサが出たが、まだ今年(2008年)11月第2週の投入予定の変更は伝えられていない。廉価版クアッドコアCPU「Lynnfield(リンフィールド)」とモバイル向けクアッドコアCPU「Clarksfield(クラークスフィールド)」は、いずれも2009年第3四半期投入の計画のままで変わっていない。デュアルコアのNehalem系CPUだけが、2四半期後退した。ちなみに、AMDもGPU統合型の「Accelerated Processing Unit(APU:コードネームFUSION)」の第一弾「Swift(スィフト)」の計画を後退させている。

 Havendale/Auburndaleの計画変更によって、Nehalemマイクロアーキテクチャがメインストリームデスクトップとモバイルに浸透する時期は、大きく後ろにずれる。Nehalemは、パフォーマンスデスクトップに登場してから、ボリュームゾーンに浸透するまでに1年と1四半期以上かかることになる。現在、Intelは2年サイクルで新マイクロアーキテクチャを投入する計画でいるため、Nehalemがようやく浸透する頃には、次の「Sandy Bridge(サンディブリッジ)」の登場が迫ることになる。結果として、メインストリームデスクトップとモバイルでは、Nehalemの寿命が比較的短いものになる可能性が出てきた。ちなみに、Intelは当初はサーバー向けにもHavendaleを導入する計画だったが、昨冬の時点で、この計画は大幅に縮小されている。

デスクトップ向けCPUの新旧スケジュール比較
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モバイル向けCPUの新旧スケジュール比較
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●実チップでの検証の結果で延期を決定か

 Havendale/Auburndaleの延期の原因は明確になっていない。Intelとしては、Nehalemマイクロアーキテクチャをボリュームゾーンへ迅速に浸透させたいはずなので、遅延の理由は製品自体に何か問題が発生した可能性が高い。投入予定から3四半期も前の段階で、スケジュールの延期をIntelが明らかにしたことは、その問題が、かなり本質的なものである可能性を示唆している。

 この時期では、実チップは完成しているはずなので、実際のチップレベルでの試験を行なった結果、延期を決定したことになる。新スケジュールは、現在から6四半期後であるため、IntelはこれまでのHavendale/Auburndaleから製品の計画をかなり変更した可能性もある。1年半では、チップを完全に再設計することは無理だが、もしIntelが代替プランを平行して走らせていた場合は、差し替えることも可能だろう。

 ちなみにIntelは、サーバー向けのNehalemについて、最初に投入する「Nehalem-EP(Gainestown:ゲインズタウン)」のスケジュールを6月のCOMPUTEX時に後退させている。Nehalem-EP(Xeon 5500シリーズ)は、今年(2008年)第4四半期から、来年(2009年)第1四半期へとずれた。Nehalemは、システムアーキテクチャを従来のIntel CPUから一新するため、システム設計上のハードルが高い。CPU側にノースブリッジチップ(MCH)機能を統合し、新しいチップ間インターコネクト「QuickPath Interconnect(QPI)」を導入するため、メモリの互換性やQPIによるコヒーレントプロトコルなど、さまざまなチャレンジがある。AMDが、K8アーキテクチャでノースブリッジチップ機能を統合し、システム構成を一新した時と同じ苦しみを、Intelは味わっている。

●CPUとGMCHを同パッケージに封止したHavendale/Auburndale

 Havendale/Auburndaleは、非常に変則的なCPUだ。Nehalemファミリのうち、上位のクアッドコアCPUと、デュアルコアCPUのHavendale/Auburndaleでは、CPUコア以外の部分のアーキテクチャが大きく異なっている。クアッドコアのBloomfieldとLynnfield、Clarksfieldは、1個のダイ(半導体本体)で構成されたCPUだが、Havendale/Auburndaleは2ダイで構成されたMCM(Multi-Chip Module)型CPUだ。

 クアッドコアNehalemでは、4個のCPUコアとメモリコントローラが1個のダイに納められている。それに対して、Havendale/Auburndaleでは、CPUダイとにはメモリコントローラは統合されておらず、CPUパッケージに収められた「GMCH(Graphics Memory Controller Hub)」のダイにメモリコントローラとGPUコア、PCI Express Gen2などのI/Oが統合されている。つまり、従来の3チップ構成の、ノースブリッジ(MCH/GMCH)をCPUパッケージに取り込んだのがHavendale/Auburndaleだ。

 Intelは当初、デスクトップ向けのHavendaleでは、GMCHダイを別チップとする3チップ構成を検討していた。モバイル向けのAuburndaleは当初から1パッケージにCPUとGMCHを納める計画だったが、デスクトップでは3チップを継承する方針を考えていた。しかし、この計画は早い段階で見直しとなり、HavendaleとAuburndaleは、ともに1チップにCPUとGMCHを納めた形態へと仕切り直された。

 MCMにすることで、IntelはHavendaleでCPUダイとGMCHダイを結ぶQuickPath Interconnect(QPI)をパッケージ内に納めた。その結果、高転送レートで、マザーボード上での実装が難しいQPIを、チップ外に配線する必要がなくなった。そのおかげでマザーボードの低コスト化を図りやすくなった。

Havendale/Auburndaleのシステムアーキテクチャ
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●新要素はあるがアーキテクチャ的には穏当なHavendale/Auburndale

 Havendale/Auburndaleを概観すると、変則的なCPUではあるが、技術的なハードルはそれほど高くないことがわかる。GMCHダイ自体の設計は、従来の外付けGMCHチップの流れを継承しており、大きくアーキテクチャを変えた部分は少ない。メモリコントローラはGMCH側にあるため、CPUとGPUコアやI/Oからのメモリアクセスの調停も、それほど大きな変更はない。CPUへのGPU型のデータ並列プロセッサの統合は、さらに進むと同じ、論理アドレス空間をシェアする形態へと向かうはずだが、Havendale/Auburndaleの時点では、依然としてメモリをパーティショニングする従来型のメモリ共有に留まると推定される。

 Havendale/Auburndaleでは、ディスプレイコントローラをCPUパッケージの外のI/Oチップである「Ibexpeak/Ibexpeak-M PCH (Platform Controller Hub)」側に出しており、GPUコアとの間を「FDI (Flexible Display Interface)」で結んでいる。しかし、FDIも高速ではあっても、片方向の単純なインターコネクトであり、GPUとDACをインターコネクトで接続していた時代に戻ったに過ぎない。

 新要素はあっても、CPU側にメモリコントローラを統合し、高速な狭インターフェイス幅のインターコネクトでCPU同士を直接続する上位のNehalemと比べると、技術的なハードルはぐっと低いように見える。明確な難ポイントが見あたらないため、現状では、どこでIntelがつまずいたのかがわからない。ちなみに、GMCHをCPUダイに統合するのは、Sandy Bridge世代になると見られる。統合のためには、CPU内部バスを一新する必要があり、拡張性の高いリングバスを備えると言われるSandy Bridgeを待たなければならない可能性が高い。

●Sandy Bridgeに追いつかれるNehalem

 原因はどうであれ、このスケジュール変更による影響は大きい。現世代のCore 2(Merom:メロン)系マイクロアーキテクチャは、2006年の中盤に登場すると、一気にメインストリームデスクトップPCとモバイルPCに浸透した。3四半期後にはバリューセグメントや超低電圧版モバイルにもCore 2アーキテクチャが行き渡り、完全に旧世代CPUを置き換えた。

 ところが、次のNehalem系マイクロアーキテクチャは、最初の製品が投入されてからバリューデスクトップPCとメインストリームモバイルPCにまで浸透し始めるのに、早くても1年1四半期かかる。そのため、ボリュームゾーンのデスクトップCPUを見ると2年半から3年、モバイルのメインストリームでは3年半もアーキテクチャの更新サイクルが空いてしまう。

 その一方で、次のSandy Bridgeは2010年後半から2011年には登場する見込みだ。そのため、ボリュームゾーンでのNehalemアーキテクチャの寿命は、2年保たないで、Sandy Bridge系に刷新されると予想される。また、2009年のビジネスでは、USで大きなシーズンである「バックツースクール」を逃すだけでなく、ホリデーシーズン年末商戦も逃すことになり、Nehalemの存在感はますます薄らぐだろう。

最新のデスクトップ向けCPUロードマップ
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【9月8日】【海外】モバイル版Nehalemが見えてきたIntelのロードマップ
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2008/0908/kaigai465.htm
【9月18日】【笠原】Intelが普及版Nehalemの量産を2010年Q1に延期
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2008/0918/ubiq227.htm

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(2008年9月22日)

[Reported by 後藤 弘茂(Hiroshige Goto)]


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