笠原一輝のユビキタス情報局

Intelが普及版Nehalemの量産を2010年Q1に延期




8月に行なわれたIDFで公開されたLynnfiled/Havendale用のSocket Hマザーボード
 IntelはNehalemの普及版としてデスクトップPC向けのHavendale、ノートPC向けのAuburndaleの2製品を計画していることをすでに明らかにしているが、元々の計画では2009年の第3四半期に予定されていた両製品の大量出荷が、2010年の第1四半期にずれ込むことが確実な状況になってきた。

 これにより2009年のクリスマス商戦に向けてHavendale、Auburndale搭載製品の投入を計画していたOEMベンダの計画は大きく狂うことになり、現在PC業界はこの事態を受けて製品計画の練り直しに大わらわの状況となっている。


●Socket B(LGA1366)、Socket H(LGA1156)の2段階でNehalemを立ち上げる

 IntelはNehalemを2段階で導入しようと考えていることはすでに本連載でもたびたび触れてきた。第一段階としてSocket Bと呼ばれるLGA1366とCore i7 Extreme/Core i7(開発コードネームBloomfiled、Socket BのBはBloomfiledのB)を2008年の11月に投入し、Nehalemアーキテクチャをハイエンド市場でまず立ち上げる。

 やや余談になるが、Core i7 Extreme/Core i7をハイエンドと書いたため、Bloomfiledは10万円以上の市場だけだと思っているユーザーも少なくないが、OEMメーカー筋の情報によればCore i7の2つのSKU、2.93GHzと2.66GHzの方は500ドル台と200ドル台後半の価格設定になっているという(価格は千個ロット時)。となれば、2.66GHzのSKUは3万円台前半ぐらいの価格設定になっており、自作PCユーザーであれば充分ターゲットとなりうるだろう。

 本題に戻ろう。BloomfiledでLGA1366を立ち上げた後、第2段階としてIntelは2009年の後半に新しいソケットを導入する。それがSocket Hと呼ばれるLGA1156だ。LGA1156にはクアッドコアのLynnfiled、デュアルコアでGPUまで統合したHavendaleの2つの製品が計画されている(ちなみに同じくSocket HのHはHavendaleのH)。なお、Lynnfiled、HavendaleにはノートPC版も用意されており、それぞれClarksfield、Auburndaleの開発コードネームで呼ばれている。

 それぞれの違いは以前も説明した通りで、Lynnfiled/Clarksfieldがクアッドコアでノースブリッジ(メモリコントローラとPCI Expressブリッジ)がネイティブに統合されているのに対して、Havendale/Auburndaleはデュアルコアプロセッサ、GPU、ノースブリッジがそれぞれ別のダイで、それらが基板レベルで統合された製品となる。

●GPUが統合された2製品は、2010年の第1四半期に大量出荷が延期

 IntelはこのSocket Hベースの製品の出荷を公式には2009年の後半に投入すると説明している。この2009年の後半という説明は、いわゆる“大本営発表”というもので、株主や証券会社に対してといった法的に責任が生じる場合を想定した公式見解になっており、実際にOEMメーカーなどに説明しているものよりもやや長めのレンジがとられている。通常どこの企業でもそうしたことを想定して公式発表を行なうようになっている。特に株主対策を重要視する米国の企業はそうだ。

 しかし、PC業界としては、半年間の間という悠長なことを言われていれば、具体的な製品計画を立てることができないので、もう少し細かな時期を確定して欲しいとIntelなどに求めることになる。具体的にどういうことかと言えば、2009年の後半ということは、7月〜12月まで長めにレンジとしてとられており、問題はそれが7月なのか、12月なのか、ということだ。

 OEMメーカー筋の情報によれば、8月に行なわれたIDF(Intel Developer Forum)の段階で、IntelはOEMメーカーに対してSocket Hに対応したLynnfiled/Clarksfield、Havendale/Auburndaleの4製品を2009年の第3四半期に出荷すると説明していたという。つまり、7月から9月の間のどこかのタイミングでこれらを出荷すると説明していたのだ。

 だが、Intelは9月に入ってからこの姿勢を転換し、HavendaleとAuburndaleに関しては、2009年中に出荷は開始するものの、大量出荷に関しては2010年の第1四半期になると通知してきた、とOEMメーカー筋は説明する。つまり、Intelの公式見解である2009年後半に投入することに変更はないものの、実質的な製品の投入は2010年の第1四半期になる。

 このため、Socket HベースのノートPCやデスクトップPCを2009年に出荷したい場合には、外付けGPUとLynnfiledかClarksfiledを組み合わせた製品にして欲しいと、OEMメーカーはIntelから言われているのだという。

●デュアルコア版だけが延期になったため、原因は統合されたGPU周りと推測される

 OEMメーカー筋の情報によれば、Intelはこの“延期”に関して、「Intelはその原因についてははっきりとは説明しなかった」(あるPCメーカーの関係者)という。Intelに近い関係者によれば、Intel社内でさえも、この原因に関しては知らされていない関係者がほとんどで、実際のところ何が原因であるのかははっきりしないのが現状だ。

 しかし、状況証拠からある程度の推測は可能だ。「GPUを統合したデュアルコア版だけが延期になったことなどから考えて、HavendaleとAuburndaleのGPU周りに何かが発生しているのではないだろうか」(前出の関係者)との通り、プロセッサコアにノースブリッジが統合されているLynnfiledとClarksfiledに関してはオンスケジュールで、基板のレベルでノースブリッジとGPUが別ダイで実装されるHavendaleとAuburndaleだけが問題であるのであれば、統合されるGPUやノースブリッジに何らかの問題が発生しているか、そもそも基板レベルの統合になんらかの無理があったのか、ということになる。

 例えば、GPUやノースブリッジを別ダイで統合する形になるHavendale/Auburndaleの場合、CPU、GPU、ノースブリッジがそれぞれ発熱し、ヒートスプレッダに熱伝導してCPUクーラーへと熱が逃がされることになる。従来の形のCPUであれば、中央にあるプロセッサのみが発熱する形になるが、HavendaleやAuburndaleの場合には、GPUやノースブリッジなどもそれぞれ発熱することになり、3つの発熱源から発生する熱を効率よく熱を逃がす必要があるのだが、それに成功していない可能性は充分に考えられる。あるいは、そもそもGPUそのものに何らかの設計ミスがあったということも当然考えられる。

 現時点では、推測の域をでないが、おそらくそれらが複合的に発生した結果、実質的に2四半期ほど大量出荷がずれ込むことになった、と考えることができるのではないだろうか。

●Socket B/H/Tの3つのソケットが併存していくことになる可能性

 いずれにせよ、Havendale/Auburndaleの延期が決定的になったことで、PCメーカーの製品計画は大幅な修正を迫られている。特に影響が大きいのは、2009年のクリスマス商戦で、HavendaleやAuburndaleを搭載した製品を投入しようと考えていたベンダは、現在ロードマップの書き換えに大わらわだ。

 なお、デスクトップPC、ノートPCともにクアッドコアでGPUを内蔵しないLynnfiledとClarksfiledに関しては予定通りなので、外付けGPUを実装することで、Socket Hそのものを立ち上げることは可能だ。しかし、いずれもクアッドコアになり、ハイエンド製品はGPUを外付けすることは可能だが、Havendaleで行こうと考えていたメインストリーム向けに関しては計画の修正を迫られることになる。

 現実的に考えれば、Havendaleで行こうと考えていたメインストリーム向けには現行のSocket T、つまりはLGA775ベースの製品に転換するしかないと考えられている。これにより、Socket Tプラットフォームが想定よりも長く続くと考える関係者は少なくない。また、Havendaleが遅れる以上、Socket BからSocket Hへの移行もなかなか進まないだろうと考える関係者が多く、Socket Bに関しても思ったよりも長く利用される可能性がでてきた。

 このため、2009年〜2010年のIntelプラットフォームは、Socket B、Socket H、Socket Tという3つのソケットが併存することになり、OEMメーカーとしても、マザーボードのラインナップを多数そろえなければいけないという意味で、頭が痛い日々が続きそうだ。

□IDF 2008 レポートリンク集
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2008/link/idf.htm
□関連記事
【8月22日】【笠原】Core i7 ExtremeとCore i7は11月半ばに登場か
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2008/0822/ubiq223.htm

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(2008年9月18日)

[Reported by 笠原一輝]


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