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モバイル版Nehalemが見えてきたIntelのロードマップ




●モバイルにクアッドコアとGPU統合デュアルコア

 Intelの次期CPU「Core i7」(Nehalem:ネハーレン)は、はたしてノートPCに載せられるのか。Intelは問題がないと考えている。Intelの現在の計画では、来年(2009年)の第3四半期から、通常電圧版のパフォーマンス系モバイルCPUをすべてNehalem系CPUに転換して行く予定だ。つまり、TDPで25〜45WのCPUは、現在のPenryn(ペンリン)系からNehalemへと置き換わる。

 Intelは、8月19〜21日に米サンフランシスコで開催した技術カンファレンス「Intel Developer Forum(IDF)」で、モバイル向けNehalemとしてクアッドコア「Clarksfield(クラークスフィールド)」とデュアルコア「Auburndale(オーバーンデール)」を導入することを公式に明らかにした。デスクトップCPUでは、メインストリームとバリューの一部までNehalemへと切り替わるのと軌を一にして、モバイルへもNehalemが投入される。

 デスクトップ向けの廉価版クアッドコア「Lynnfield(リンフィールド)」はClarksfieldと同じダイ、デスクトップ向けのデュアルコア「Havendale(ヘイブンデール)」がAuburndaleと同じダイだと推定される。LynnfieldはウエーハがIDFで公開された。ちなみに、最初に投入されるパフォーマンスクアッドコア「Bloomfield(ブルームフィールド)」とLynnfieldは別ダイと見られる。

 下がモバイルCPUのロードマップ図だ。クアッドコアのClarksfieldは、Penryn系クアッドコアCPUを置き換え、デュアルコアのAuburndaleは、デュアルコアのPenrynを置き換える。Penryn系の構成がそのままNehalem系にスライドする形だ。ただし、クアッドコアの位置づけは、2008年とは異なる。

IntelモバイルCPUロードマップ
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モバイルCPU比較
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Nehalemファミリの内部構成
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●モバイル版クアッドコアは半額以下のプライスに

 Intelは、2008年中は、モバイル向けクアッドコアの価格を極めて高く保つ。ブランドではExtreme系を冠した「Core 2 Extreme QX9300(2.53GHz/12MB/FSB 1,066MHz)」だけでなく、パフォーマンスブランドの「Core 2 Quad Q9100(2.26GHz/12MB/FSB 1,066Mhz)」も投入する。しかし、モバイル版Core 2 Quadの価格レンジは実際にはデュアルコアのExtreme系ブランドと同じ。価格はそのままでブランディングを変えたのが2008年のモバイル版Core 2 Quadだ。2008年のモバイルクアッドコアは、従来のデュアルコアモバイルCPUの枠をはみ出した高付加価値CPUという位置づけだ。

 しかし、Intelは来年(2009年)第1四半期になると、路線を多少変える。廉価版のモバイルクアッドコア「Core 2 Quad Q9000(2GHz/6MB/FSB 1066MHz)」を投入するからだ。Q9000は周波数も2GHz、キャッシュも6MBと低く抑えられているが、価格も安く、400ドルを軽く切る設定が予定されている。価格的には、ハイエンドのデュアルコアより安く、T9550(2.66GHz/6MB/FSB 1,066MHz)と同レベルとなる。

 Q9000の投入で、モバイルクアッドコアの価格は一気に半額になる。簡単に言えば、Q9000でクアッドコアは、ウルトラハイエンドの特殊なノートPCだけでなく、通常のノートPCの高級版に搭載できる価格レンジに入る。ただし、廉価なQ9000も、TDP枠は他のクアッドコアと同様に45Wとなる。つまり、IntelはTDP 45W枠のノートPCで、より廉価なバージョンを作れと言っているわけだ。

 Intelのガイドラインでは、Penryn Q9000の投入でクアッドコアの比率は来年(2009年)第2四半期には6%以上になると見ている(2008年中は1%程度)。もっとも、Penryn Q9000は、2四半期後にNehalem系のClarksfieldが迫っている。そのため、実際にはClarksfieldの露払い的な役割でしかない。2009年のクアッドコアの市場設定は、Clarksfieldのためのものと考えた方がよさそうだ。まとめると、Intelは、2008年はクアッドコアを特殊な高価格品として扱うが、2009年からはクアッドコアをある程度まで浸透させる。

●2ダイの間で電力を制御するAuburndale

 通常電圧版Penrynを、Nehalem系に置き換えるIntel。もちろん、最大の懸念材料は消費電力だ。

 Intelは、従来CPUのTDPに対して、モバイル版NehalemのTDPは10W高い値で、ラフに言って、同じレベルの冷却機構にフィットすると説明していたという。これはちょっと古い情報だが、基本ラインが大きく変わるとは思えない。だとすれば、Penryn QCのTDP 45Wエンベロープ(枠)はClarksfieldではTDP 55Wに、PenrynのTDP 35WはAuburndaleでは45Wに、PenrynのTDP 25WはAuburndaleでは35Wに相当することになる。

 なぜTDPが10W高くなっても問題が発生しないのか。話は簡単で、Nehalemファミリがノースブリッジチップ機能をCPUに統合しているからだ。ディスクリートのMCH(Graphics Memory Controller Hub)は10Wまで、グラフィックス統合のGMCH(Graphics Memory Controller Hub)はSKUにもよるが10W以上の電力を消費する。それがCPUに取り込まれたため、CPUのTDP枠自体も変更する必要があるというわけだ。Penrynでの、CPU+ノースブリッジチップのTDPが、NehalemのTDPに相当するとIntelは計算している。

 もっとも、Auburndaleの場合は、実際にはCPUダイ(半導体本体)の中にGMCHは取り込まれていない。デュアルコアのCPUとGMCHの2個のダイをワンパッケージに納めたMCM(Multi-Chip Module)だ。CPUコアは4MBの共有キャッシュを搭載し、QuickPath Interconnect(QPI)でGMCHダイと高速接続している。GMCHダイには、デュアルチャネルDDR3インターフェイス、PCI Express Gen2 x16、GPUコア、DMIインターフェイスなどが実装されている。パッケージは「rPGA989」で、これはClarksfieldも同様だ。

Auburndaleのシステムアーキテクチャ
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 2ダイを持つAuburndaleのTDPは、それぞれのダイの合計のTDPとなっている。そのため、片方のダイの実際の電力消費が小さければ、もう片方のダイのTDPを上げることができる。TDPの余裕分、動作周波数を上げてパフォーマンスをアップできる。

 ただし、通常は各ダイ上のホットスポットの、ジャンクション部分の温度「Tj(junction)」を一定までしか上げることができない。Tjの制約から、2個のダイの合計TDPが35Wを下回っても、周波数を上げられないケースが出てくる。Auburndaleでは、熱抵抗値を下げることで、Tjに余裕を持たせて、TDP枠の中でより周波数を上げることができるようにする計画だった。

 この計画に変更がなければ、Auburndaleでは35WのTDP枠でも、CPUとGMCHそれぞれが、単体のTDP枠に縛られた性能以上の性能を発揮できることになる。CPUが25W、GMCHが10Wと固定されたTDPではなく、CPUが15Wしか使わない時は、GMCHが18Wを消費するまで性能をアップするといった、動的な制御ができることになる。特にGMCHではこの効用は大きい。これは、GPUコアへの負担が大きいWindows Vistaでは意味がある。

NehalemのもともとのTDPプラン
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AuburndaleのもともとのTDPプラン
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●ソフトウェア側の積極的な支援が必要なターボモード

 IntelはNehalemにC6ステイトやパワーゲーティングといった強力な省電力機構を搭載、また、Atomと同様にCPUコア内部のメモリについては、従来の6トランジスタSRAM(6T SRAM)セルから、8トランジスタSRAM(8T SRAM)セルへと切り替えることで、CPUコアをより低電圧駆動できるようにした。また、回路設計では電力消費の小さいスタティックCMOSで全ての回路を構成することで、動作時の電力も下げた。

 こうした省電力機構によってNehalemは電力効率の高いCPUとなっているとIntelは説明する。さらに、Intelは「Intel Turbo Boost Technology」と名付けたターボモードをNehalemに実装した。Nehalemのターボモードは、Penrynの「Intel Dynamic Acceleration Technology(IDA)」とは異なり、CPUコアがスリープしているかどうかに左右されない。全てのCPUコアがアクティブであっても、ターボモードで周波数がアップする可能性がある。

 具体的には、重いワークロードに対してOSがアクティブコアのプロセッサパフォーマンスステイト(P-state)を最上位の「P0ステイト」に設定する。すると、Nehalemが内蔵する電源制御プロセッサ「PCU(Power Control Unit)」が、TDP、CPUケース温度(Tcase)、電流量(Icc)をチェック、それらに余裕がある場合にはターボモードに入る。そのため、アプリケーション実行時に、CPUコアがスリープしないため、ターボモードに入らないという問題は軽減される。

 とはいえ、Nehalemのターボモードも、ビジーなCPUコア以外は、できるだけスリープさせた方が効果が大きいのは確かだ。特にクアッドコアの場合は、シングルスレッドアプリケーションの場合に、1CPUコアにスレッドをまとめてアクティブにして、他の3個のCPUコアをスリープにすれば、ブースト効果が大きくなる。そのためには、OS側がインテリジェンスを持って制御する必要がある。ソフトウェア側の支援がないと、フルの効果は発揮しにくい。

 ただし、将来はIntelはターボモードのトリガー要因を増やして行く予定だ。Sandy Bridge(サンディブリッジ)世代になれば、ソフト側からは完全にトランスペアレントで、CPU周波数をブーストできるチャンスが増えるだろう。

Nehalemのターボーモード
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クアッドコアでは2コアがアイドル時に残り2コアのクロックをアップできる
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フルロード時でもTDP、CPUケース温度(Tcase)、電流量(Icc)に余裕がある場合はターボーモードに入る
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●55Wと35Wからと推定されるNehalemコアの投入

 IntelはMontevina(モンテヴィーナ)プラットフォームからモバイルCPUのTDP枠のセグメントを微妙に変え始めた。従来は、エクストリーム系とクアッドコア系(パワークラスX/QX/Q)が44〜45W、パフォーマンス系(パワークラスT)が35Wだった。しかし、Montevinaからは25W枠のパワーオプティマイズドパフォーマンスセグメント(パワークラスP)と、パワーオプティマイズドパフォーマンスSFF(Small Form Factor)セグメント(パワークラスSP)を設けた。

 そして、Intelは現在、Nehalem系モバイルCPUを45W枠と25W枠それぞれのCPUのセグメントに導入しようとしている。ClarksfieldがパワークラスQX/QのPentium QCのセグメント、AuburndaleがパワークラスPのセグメントの枠にある。IntelがNehalemでは10W増しと設定するとしたら、Clarksfieldが55W、Auburndaleが35Wということになる。

 Intelは、もともとの計画では、45WのClarksfieldとAuburndaleも投入する予定があった。45WのNehalem系も後から登場するかもしれないが、Intelのフォーカスは、Clarksfieldが55W枠、Auburndaleが35Wだと推定される。

モバイルCPUのTDPロードマップ
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 ちなみに、Intelは低電圧版CPU群のセグメントもNehalem系に置き換えると明言している。次第に下のパワークラスSL(17W)やSU(10W)にもAuburndaleあるいは後継CPUが浸透すると予想される。

●モバイルでのNehalemは寿命が短い?

 IntelのCPUマイクロアーキテクチャは、現在、波のように一定期間置きに新世代へと置き換わっている。ロードマップ図中の赤いラインは、CPUマイクロアーキテクチャの境界ラインだ。図中の来年(2009年)第3四半期の赤ラインは、「Core 2→Nehalem」のCPUマイクロアーキテクチャの境界を示す。実際には、しばらくはCore 2とNehalemがオーバーラップするため、厳密とは言えないが、切り替え時期の目安にはなるだろう。

デスクトップCPUのロードマップ
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 前回の赤ラインは2007年第2四半期で、「Pentium M/Core→Core 2」へと切り替わった。Core Duo(Yonah:ヨナ)は実際にはPentium M(Banias:バニアス)マイクロアーキテクチャのデュアルコア版であり、マイクロアーキテクチャの変更はCoreとCore 2の堺にある。

 一目瞭然のように、前回の赤ラインと今回の赤ラインの間は3年開いている。それに対して、デスクトップでは、下のロードマップ図の通り、赤ラインの間は約2年しか開いていなかった。それは、Core 2はデスクトップとモバイルの両方に同時に投入されたのに対して、Nehalemはデスクトップが先行し、モバイルは3四半期遅れるためだ。

 Core 2がモバイルとメインストリームデスクトップに最適化されたバージョンが先行したのに対して、Nehalemはハイエンドデスクトップ&サーバーに最適化されたバージョンが先行した。そのためデスクトップとモバイルでは間が開いている。しかし、ミッドレンジにまで浸透する時期は、デスクトップもモバイルも変わらない。このことは、Core 2開発チームが2010年を目指して設計している次のSandy Bridgeで、もし、モバイルとメインストリームデスクトップに最適化されたバージョンが先行するなら、モバイルでのNehalemの寿命は短くなることを意味している。

 モバイルとデスクトップの違いは、Nehalemの浸透時期だけではない。ロードマップ図中の青いラインはCPUコア数の境界ラインだ。2008年のところから引かれている青ラインが、「デュアルコア→クアッドコア」の境界を示す。青ラインは現在の計画では300ドル台の中盤の価格セグメントで止まっている。同様に「シングルコア→デュアルコア」の青ラインは200ドル台のところで止まっている。これは、「デュアルコア→クアッドコア」が200ドルライン、「シングルコア→デュアルコア」が100ドル以下にまで下がっているデスクトップとは大きく異なっている。

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【9月4日】【海外】HavendaleとLynnfieldでNehalemを一気に浸透させるIntel
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2008/0904/kaigai464.htm

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(2008年9月8日)

[Reported by 後藤 弘茂(Hiroshige Goto)]


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