10フィート離れたところにあるディスプレイのGUIをリモコンで操作するのはけっこう大変だ。TVがインターネットにつながったとしても、その煩雑さは解決されない。そして退化したGUIに慣らされていく。 ●数値を入れてリンクを開くNUI インテル、クイックサン、ドリームポート、フェイスの4社が、デジタルコンテンツ配信の新ソリューション開発で合意した。そのプラットフォームとして使われるのが、クイックサンの開発したデジタルTVシステム「ROBRO」だ。このプラットフォームは、TVとWebコンテンツを、いかにシームレスなものにするかを追求している。 ROBROは早い話が、地上波デジタルチューナを搭載した普通のテレビパソコンだ。とはいえ、オーディオアンプっぽい外観で、リビングルームに置き、TVに接続してもあまり違和感がなさそうだ。 ROBROは普通のWindows VistaプレインストールPCなので、その操作はキーボードやマウスでできる。Officeも使えれば、Internet Explorer(IE)も動く。当たり前の話だ。 さらに、ROBROにはリモコンが付属する。このリモコンを使って操作することができるのだ。リモコンといっても、ありがちな、Windows Media Center用のものではない。そこがこのプラットフォームのツボだ。 専用のブラウザは、IEのエンジンをベースにしたもので、このビューアを使って、TV放送コンテンツ、インターネット経由のオンデマンドコンテンツ、そして、Webページをシームレスに楽しむことができる。ここでは、TVのチャンネルも、お気に入りのWebページもすべてがチャンネルだ。8チャンネルがフジテレビだとしても、9チャンネルにPC Watchのトップページと、TVとWebの間を行ったり来たりできる。 そして、Webの操作もリモコンでできる。ページ内に配置されたリンクを開けば、そのページにジャンプする。ブラウザなのだから当たり前だ。でも、その開き方がユニークだ。 リンクナンバリング機能をONにしておくと、ブラウザが表示するページ内にあるすべてのリンクに番号がつく。リモコンでその番号を入力すれば、そこをクリックしたのと同じことが起こるようになっている。いってみれば、Webページ内のリンクもまた、あるチャンネル下のサブチャンネルなのだ。 実際には、999個までという制限があるが、少なくとも3桁の番号を入れれば、任意のリンクを開くことができる。Flashを使ったコンテンツや、クリッカブルマップではこの機能が働かないのが残念だが、多くのページで、3桁の数字を入れるだけで、そのリンクが開けるというのは画期的だ。GUIとCUIをうまく融合させたアイディアだと思う。いや、Number User InterfaceだからNUIとでもいうべきか。 ●新たなポインティングデバイス 従来のリモコンを使ったGUIは、コンテンツに対してランダムアクセスすることが難しく、ページ内の任意の位置を自在にポイントするのは難しい。結局、矢印キーなどを使って順に注目点を移動させていくシーケンシャルな操作が強いられてきた。だが、3桁ナンバーを使えば、注目ポイントにランダムアクセスできるのだ。人間のインテリジェントのサポートが必要ながら、新たな考え方のポインティングデバイスであるといえる。 リンクに付加されるナンバーは、ページの表示ごとに自動生成され、ページ内に赤い数字として埋め込まれる。だから、ページによってはレイアウト的に多少印象が変わる場合もあるかもしれない。もちろん、この機能をOFFにすれば、番号は消え、IE本来のレンダリングでページが表示される。その際の操作はマウスモードとなり、リモコンでポインタを移動させるインターフェイスに切り替わる。 使ってみてナンバリング機能にモードがあるのが気になった。ONとOFFのモードの切り替えがけっこうめんどうくさいのだ。たとえば、これをモードレスにしたらどうだろう。つまり、何らかのボタンを押している間だけ、ナンバーが表示されるようにするのだ。オーバーレイするような方式にして、Flashコンテンツ内のリンクもうまく認識し、表示できるようになればもっといい。ナンバーは3桁なので、リモコンを操作する数秒間だけ覚えていられればいい。だから、常に表示されている必要はないのではないか。特定のボタンを押しっぱなしにする操作を強いるのはアクセシビリティとしてどうかという意見もあるかもしれないが、そこを救済するためには別のオペレーションを用意しておけばいいだろう。 ●人間がGUIの一部を補う そもそも、プラットフォームとしてのROBROが目指すのは、あらゆるコンテンツのシームレスな融合だ。だが、今の段階では、TV放送とWebページはある程度融合されているものの、録画したコンテンツや、購入したオンデマンドコンテンツとの融合度は、もう少し工夫の余地がありそうだ。 現時点でも、これらのコンテンツはすべてブラウザ上のリンクとして一覧表示され、ナンバリング機能によってナンバーが振られているので、その番号を入れれば、再生が始まる。 さらに、将来的には、4桁以上の番号を、なんらかの形で売買するビジネスモデルも想定されているそうだ。たとえば、ある特別な番号を入れると、それが専用のサーバーに問い合わせられ、その番号の持ち主のWebサイトに飛んだり、地図が表示されたりする。あるいは、TVショッピングで特定の番号が表示され、それを入力すると、その商品が購入できるページが表示されるといった具合だ。 画面に表示されているものを手で触れないというのはマウス操作によるGUIの限界であるともいえる。まるで、ガラス箱の中のケーキだ。それを補おうとしたのがタッチスクリーンやペンなどのポインティングデバイスだ。だが、これらは、10フィート離れることを前提とした利用形態には非力だ。 結局、リモコンを使うことになり、原始的な方法として、方向ボタンを繰り返し押しながらのメニュー選択となる。これではGUIの退化だ。 画面上の座標位置を伝えるのがポインティングデバイスの役割で、それがリモコンで難しいならそれを人間が補って伝えればいい。GUIを退化させずに、人間の知が、ポインティングデバイスの果たす役割の一部を補う。こういう方向性もありだなと思った。 □関連記事
(2008年2月22日)
[Reported by 山田祥平]
【PC Watchホームページ】
|