Microsoftは12月5日(現地時間)に、Windows Vistaの最初の大規模なアップデートとなる“Service Pack 1(SP1)”のリリース候補版(RC)をβテスターなどに公開した。今回公開されたRC版は、以前公開されたβ版でのユーザーフィードバックなどを元にバグフィックスが加えられたものとなっている。 また、MicrosoftはSP1における改善点を説明したドキュメントをβテスターなどに公開しているので、それを元にSP1における改善点の中からエンドユーザーに関係するポイントを紹介していきたい。 ●スタンドアロン版とWindows Update版が用意されるSP1
今回βテスターなどに公開されたSP1 RC版(以下SP1 RC)はビルド番号が“6001、v668”とシステム情報には表示される。なお、11月の半ばに公開されたRC Preview版が“6001 v658”となっているので、若干のバージョンアップがされていることがわかる。 今回のSP1 RCには、2つのインストール方法が用意されている。それがスタンドアロンと呼ばれるフルパッケージを一度ローカルにダウンロードする方法、そしてもう1つがWindows Updateを利用する方法だ。ダウンロード時のファイル容量だが、スタンドアロン版では言語にもよるが、英語/日本語/仏語/独語/西語の5カ国語だけが入ったバージョンで450MB、それ以外の言語を含んだフルバージョンで550MBとなっている。Windows Updateを利用した場合には65MBに過ぎないので、スタンドアロン版が非常に大きなものになっているのは言語パックを含んでいるためだと考えられる。 なお、スタンドアロン版に言語パックを含んでいるのは、世界中に展開している企業などで、さまざまな言語のWindowsが共存している環境でも一括してサービスパックを適用できるようにするためだ。これまでであれば、各言語用パッケージをそれぞれ用意し、ユーザーにダウンロードしてもらう必要があったが、Vista SP1ではそうした言語間の違いを気にする必要がないのだ。 また、今回は提供されていないが、製品版では最初からSP1が適用されたフルパッケージ版も用意される。これを利用すると、SP1が最初から適用された状態でVistaをインストールできる。以後は、SP1のリリース後にPCを購入した場合や、Windows Vistaのパッケージ版やDSP版などを購入すると、SP1適用版のDVDがバンドルされている例が増えるだろう。
【表】Windows Vista SP1 RCの各バージョン
●新しいハードウェアサポートが追加されるVista SP1 それでは、以下にMicrosoftがSP1 RCと同時に公開したドキュメント「Notable changes in Windows Vista SP1 Release Candidate」から、Vista SP1の一般ユーザーに関係のあるバージョンアップポイントを紹介していきたい。 まずハードウェア関連の拡張点としては以下のようなポイントが上げられる。 ・64bit版におけるUEFI(Unified Extensible Firmware Interface)のサポートを拡張 EFIの実装は、特にワークステーション向け製品で始まっており、すでにいくつかの製品で登場している。Vista SP1では、EFIの特徴であるGPTフォーマットへのOSのインストール、レジューム、ハイバネーションなどが可能になる。 Direct3D 10.1はDirect3D 10の拡張として用意されているバージョンで、AMD ATI Radeon HD 3800シリーズなどがすでに対応している。今後リリースされる製品でもサポートされる予定だ。Direct3D 10.1を利用することで表現力などが向上し、より高品質で3Dゲームなどをプレイできる。
exFATに関しては以前の記事でも説明したように、USBメモリなどの外部メモリでFAT32の制限(1ファイル4GB、1パーティション32GB)を撤廃した新しいFATとなっている。また、SD ADMAはSDカードの高速転送モードで、対応しているリーダなどで利用可能だ。また、BDやHD DVDにも標準で対応しており、Windows ExplorerできちんとBDやHD DVDのアイコンが表示される。 Windows Media Center関連では、Windows Media Center Extenderの新しいデバイスタイプのサポート、標準MPEG-2デコーダソフトウェアのコンテンツ保護の実装やハードウェアアクセラレーション機能のサポートなどが追加されている。 このほかにも、32bit版において、メモリを4GB搭載した場合にシステムのプロパティで4GBすべてが表示されない件に関し修正が入るという。ただし、注意書きとして対応BIOSが必要になると書かれており、すべてのユーザーのシステムでこの表示が有効になるかは不明だ。それ以上の説明がないので詳細は不明だが、表示が4GBと修正された場合でも、32bit OSの仕組み上、4GBをすべて使えるわけではないので注意が必要だ。 ●ユーザーのフィードバックによりアプリケーションの互換性や信頼性が向上 Vista SP1ではこのほかにも、アプリケーションソフトウェアの互換性の向上や、OSとしての信頼性の向上が図られているという。 前出のドキュメントによれば、「SP1にはRTM版のリリース後に寄せられたさまざまな互換性に関する問題の修正が多数含まれている」という。また、OSが自動でエラーの原因を特定しMicrosoftに情報送信する“Windows Error Reporting”の仕組みを利用して寄せられたフィードバックも信頼性の向上に一役買っているという。こうしたフィードバックからWindows Calender、Windows Media Player、さらにデバイスドライバに含まれるバグフィックスなどが行なわれており、より信頼性が向上しているとのことだ。 また、セキュリティ関連のアップデートも多数加えられている。エンドユーザーに関連がありそうなところでは、64bit版ではサードパーティにセキュリティソフトウェアが利用できるAPIが追加されることがあげられる。このAPIは64bit版に実装されているカーネルパッチ保護の仕組みと協力して動作し、カーネルパッチ保護の仕組みが無効になったり脆弱になったりしないようにしながらサードパーティのセキュリティソフトウェアが利用できるようになるという。 ●環境によるが、おおむね20~25%程度の性能向上が実現できるVista SP1 このほか、Vista SP1では、性能向上と消費電力の改善が実現されるという。ユーザーがWindows Updateでどの程度のパッチを当てているかにより変わるが、おおむね20~25%程度の性能向上が認められるという。詳細に見ていくと、以下のような点で性能改善が認められるという。 ・帯域幅が十分でない時のネットワークフォルダブラウジングの性能の向上 と、書き出すのも大変なぐらいだが、とにかく性能面であちこちの改善が入っていることがわかる。 特にReadyDrive、ReadyBoost、SuperFetchなどの改善、ディスプレイ消費電力の削減やHDDアクセスの改善などはノートPCユーザーにとっては嬉しい改善といえるだろう。 ●エンドユーザー向けのリリースは第1四半期の終わり頃の見込み なお、これ以外にもいくつかの改善点がある。以前の記事でも説明したとおり、Windows標準のデスクトップ検索エンジンをMicrosoft製からサードパーティ製(例えばGoogleなど)に変更することが可能になっているほか、OSのインストール時に必ずパスワードのヒントを入力する必要があるように仕様が変更されたこと、先日発表されたライセンス認証に関する動作の変更などがVista SP1で実装されることになるという。 今のところ、MicrosoftはVista SP1のリリースは2008年第1四半期とだけ明らかにしている。 OEMメーカー筋の情報によれば、各PCメーカーは夏モデルからOSのプリロードイメージをSP1ベースにするというロードマップで動作しているという。例年、春モデルが12月の終わりから1月頃に販売が開始され、夏モデルが4月終わり~5月ぐらいに販売が開始されるというスケジュールであることを考えると、SP1の最終バージョンは2月あたりには完成していなければならないことになる。 そこからエンドユーザーに配布ということになると、さまざまな準備も必要になるだろう。エンドユーザー向けのリリースは3月あたりになると考えるのが妥当ではないだろうか。
□関連記事 (2007年12月7日) [Reported by 笠原一輝]
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