Microsoftは来年(2008年)の第1四半期にWindows Vistaの最初の大規模なアップデートとなるService Pack 1(SP1)を公開することをすでにアナウンスしている。日々Windows Updateなどで公開されているアップデータの集大成となるService Packは、新しいOSの導入を手控えている企業などにとって、信頼性や安定性を向上させる手段として注目を集める存在で、すでにテストを開始している情報システム関係者も少なくないだろう。 本レポートでは、Microsoftのβサイトを通じて公開されたService Pack1のβ版を利用して、その注目のアップデートポイントなどを紹介していきたい。 ●見た目で大きな変化は感じられないSP1 9月24日(米国時間)に、Microsoftは同社のβテスターサイトを通じて、Windows Vista Service Pack 1(以下SP1)のβリリース(ビルド番号6001)を公開した。公開されたのは、既存のWindows Vista RTM版に対するアップデート版と、最初からService Pack 1が組み込まれた状態の新規インストール用のDVDイメージで、既存のVistaからのアップデート、新規インストールのどちらもテストできるようになっている。 既存のRTM版にSP1をインストールする場合は、スタンドアローンパッケージを利用する。x86版とx64版(AMD64/Intel64)が用意されており、x86版が1.26GB、x64版が1.73GBもある。また現状では、インストールするにはOSのパーティションに7GBの空きが必要になる。ただし、MicrosoftのWindows Core Operating System部門担当上級副社長のJon DeVaan氏はMicrosoftのWebサイト上に公開されたレターの中で「インストール時の空き容量は7GB必要だが、リリースに向けてもう少し少なくなるように努力している」と述べている。 インストールは非常に簡単で、実行ファイル形式になっているのでそれをダブルクリックし、EULA(エンドユーザーライセンスアグリーメント)に同意するのチェックを入れるだけでインストールが開始され、数回のリブート後利用できるようになる。インストールにかかった時間はリブートなどにかかった時間を含めて約56分だった。
インストール後だが、特に見た目上の大きな変化は感じられない。まだβ版であるため、デスクトップの右下に小さく“評価コピー、ビルド6001”と表示されなければ、SP1がインストールされたVistaとは気が付かないほどだ。もっとも、それは無理のない話で、通常SP1はRTMで積み残した機能の拡張やバグの修正などが主目的であり、ユーザーインターフェイスなどに手が入れられることは少ないからだ。今回のWindows Vista SP1もその例に漏れず、どちらかと言えば、細かな機能のアップデートや信頼性の向上などに焦点が当てられている。 ●デスクトップ検索の自由度やBitLockerの改良などの機能向上を実現 機能のアップデートでは、いくつかの点の強化に気づくことができる。1つには、デスクトップ検索の検索エンジンの選択の自由度が向上していることだ。 Vistaでは、デスクトップ検索の機能がWindowsのシェルに統合されている。これにより、スタートメニューに表示されるダイアログボックスに何らかの文字を入力すると、それに関連するプログラムや文章などが、あらかじめインデックスされていた検索データから呼び出されて表示される。便利なこの機能なのだが、検索エンジンとして利用できるのはVistaに標準で搭載されているMicrosoftのエンジンのみで、ユーザーがGoogleなどのサードパーティが提供する検索エンジンをインストールしてもシェル統合機能は利用できなかった。 しかし、SP1ではコントロールパネルに用意されている“既定のプログラム”という設定ツールを利用して、デスクトップ検索のエンジンをサードパーティ製のものに変更できるようになっている。現状では、サードパーティからSP1用のプラグインが用意されていないため利用できないが、今後各社から提供されはじめれば、Googleデスクトップの検索エンジンをWindowsのシェルから利用したすることができるようになる。 また、Windowsの起動ドライブ自体を暗号化することができるBitLockerの機能も拡張されている。関連記事でも触れたように、BitLockerの暗号化はシステムが入っているパーティションのみが可能で、他のパーティションに暗号化を施すことができないという制限があった。このため、複数のHDDを備えるPCなどでは、すべてのパーティションを暗号化することができない状況になっていたのだ。SP1ではこの制限が撤廃され、OSシステム以外のパーティションに関してもBitLockerで暗号化することが可能になったのだ(ただし、起動用のパーティションはもちろん暗号化できない)。
●FAT32の制限を撤廃するexFATやDirect3D 10.1のサポート SP1ではこれ以外にも新しいハードウェアのサポートなどが追加されている。従来のRTMでは含まれていなかったハードウェアのドライバが含まれているほか、いくつかのハードウェア関連の拡張が行なわれている。 エンドユーザーに関係のある拡張としては、exFATのサポートだ。exFATでは、FAT32の2つの制限が取り払われている。それが1ファイルのサイズとしては最大4GBというものと、1パーティションサイズとして最大32GBというものだ。しかし、exFATではこのいずれもが撤廃される(新しい制限がどこにあるのかは不明)。とはいえ、このexFATはHDDをターゲットにしたものではなく(実際内蔵HDDではexFATは利用できない)、フラッシュメモリドライブ(SDカードやUSBメモリなど)をターゲットとしたものだ。 最近では、こうしたフラッシュメモリでも32GBを超えるものが出てきているし、今後デジタルカメラの動画サイズが大きくなっていけば、遠からず1ファイルで4GBを超える容量のものが出てくるだろう。そうした事態に備える仕組みとして用意されたのがこのexFATなのだ。もっとも、デジタルカメラやビデオカメラなどで、exFATをサポートしたものはないので、今後は機器ベンダ側の対応次第ということになるが。 exFATでフォーマットするには、リムーバブルなフラッシュメモリやHDDなどを用意する必要がある。実際、32GBを超えるリムーバブルHDDを接続してみたところ、フォーマット時にexFATの選択肢が表示され、フォーマットすることが可能だった。また、従来のFATでは格納できなかった4GBを超えるようなファイルも確かに格納することが確認できた。 このほか、デフラグツールで対象とするドライブを選択できるようになったり、SP1ではx64版でEFIからの起動、Direct3D 10.1のサポート、複数のネットワークカードがある場合に仮想的に帯域を増やせるMultihomingの機能などが用意されており、よりハードウェアの機能が引き出せるようになっている。
●βの段階だが、すでにベンチマークでは性能向上を確認 Microsoftによれば、信頼性のみならず性能も向上しているとのことなので、軽くベンチマークテストを行なってみると、下記のようにSP1をインストールした環境の方がパフォーマンスが向上していることが確認できた。
【テスト環境】
また、サスペンドやハイバネーションに入るまでの時間も改善されるとのことなので、それを計測してみた。
【サスペンド/ハイバネーション比較】
計測方法:メニューからサスペンド、ハイバネーションを選び、電源が落ちるまでの時間をストップウォッチで計測。5階計測し、その平均時間。テスト環境はグラフ1と同じ。 このように、若干であるが、確かにSP1の方が短い時間でサスペンド、ハイバネーションによる休止が行なえることがわかった。もちろん、これはβ版での結果であり、今後βテスターからのフィードバックなどを元にバグフィックスなどが行なわれ、さらに向上する可能性もあることを追加しておきたい。 ●SP1の登場はVistaの普及に弾みをつけることになるか このように、SP1はVistaに性能や信頼性の向上、そしていくつかの新しい機能を追加することになる。現在、βテスターからのフィードバックを受け付けている段階で、それらを反映し、来年の第1四半期に正式リリースを迎えるスケジュールとなっている。 すでにVistaが登場してから半年以上が経過し、大手PCベンダのPCに搭載されているOSはすでにほとんどがVistaへ切り替わっている。また、来年の1月31日にはOEMベンダへのWindows XPの提供が終了する予定になっており、Vistaへ移行しなければならないタイミングが近づいている。そうした状況に、SP1の登場は後押しとなることは間違いないだろう。 また、まだVistaへの移行をためらっているユーザーにとっても、SP1の登場はVistaへ移行するよいきっかけとなるのではないだろうか。すでに述べたように、RTMに比べて性能や信頼性なども向上しているSP1により、XPに留まり続ける理由は減少していくことになる。 そうした意味で、このSP1、Vistaの普及にさらなる弾みをつけるものとなるのではないだろうか。
□関連記事 (2007年9月27日) [Reported by 笠原一輝]
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