いよいよゲーマーにうれしいシーズンがやってきた。今冬は、「Crysis」や「UnrealTournament 3」などのDirectX 10(以下DX10)対応ビックタイトルが揃う。さらに、Core 2 QuadやDDR2メモリの値下がり、GeForce 8800 GTとRadeon HD X3870の登場など、コストパフォーマンスに優れたゲーム向けパーツも出揃った。そこで年末お買物特集の第2弾では、ゲーミングプラットフォームの構築を考えてみたい。 ●ビデオカード、マルチコアCPU、ペリフェラルがキーワード
まず、DX10ゲームをストレスなく快適に楽しむための基本的なハードウェア要素について改めておさらいしておこう。全体的なトレンドとしては、(1).ハイエンドビデオカードの必需化、(2).マルチコアの対応、(3).快適なユーザーインターフェイス、の3点が考えられる。 (1)についてはもっとも重要だ。最近のゲームをプレイするのはミドルレンジ以下では性能が不足する点だ。これまでミドルレンジのビデオカードは常にハイエンドビデオカードの約7割の性能を持っており、ゲームプレイに最適なコストパフォーマンスを提供してきたが、DX10対応のビデオカードでは性能差が開いてしまっている。例えばGeForce 8600 GTSは8800 GTXの約半分の性能しか持っていないのは、ベンチマークを見て明らかだろう。これはRadeon勢にも言えることである。 これは、ハイエンド向け製品とミドルレンジ向け製品に搭載されるGPUのトランジスタ数に関係する。例えばハイエンドの8800 GTXでは6億8,100万トランジスタを集積しているが、ミドルレンジの8600 GTSでは2億8,900万個しか搭載していない。このため演算ユニットが大きく減っており、性能差の根本的原因となっている。 さらに、DX10対応のミドルレンジ製品は、DX9世代のハイエンド製品に匹敵するほどの性能を持ち合わせていないのも問題だ。従来のミドルレンジ製品では、1世代前のハイエンド製品相当の性能を持っていたのだが、DX10世代に来てトランジスタの多くをH.264デコードなどの処理に割り当てるようになってしまい、3Dアプリケーション性能をそれほど重視しなくなっている。よって、ゲームに重視するならハイエンド製品しか選択肢がなくなったのだ。 (2)は改めて説明する必要もないと思うが、FPSゲーム「Quake 4」以降、マルチコアCPUへの対応が進んでおり、最近のゲームでは「ロストプラネット エクストリーム コンディション」の対応が記憶に新しい。マルチコアCPUの特徴は、低クロックでもコア数を増やすことで性能向上が得られる点で、CPU業界のトレンドとなっている。今後もゲーム性能がそのままCPUのコア数に依存するようなものが出てきそうだ。
(3)は各種ペリフェラルデバイスだ。この中にはマウスとキーボード、ゲームパッド、液晶ディスプレイなどが含まれる。これらはゲームの楽しさを直接ユーザーに伝える部分であり、ゲームを快適に遊ぶための中心となるデバイスだ。今回はこれについてもいくつかチョイスしていく。 以上の3点を踏まえて、各ジャンルごとに最適なパーツを考えつつ、年末の予算から、コストパフォーマンスも考慮した構成としていきたいところ。しかし、無難な選択肢ばかり選んでしまい、ショップブランドと同じ構成のPCができたのではつまらないので、できるだけ個性的な製品を選択していくとしよう。 また当然のことながら、メモリとHDDは高速でかつ大容量であることに越したことはない。メモリもHDDも低価格化が進んでおり、これらが予算上のネックとなることはないと思うが、最低限でもゲーム中にスワップが発生して動きがギクシャクするようなシーンがないことを保証したいし、たくさんのゲームをインストールためのスペースぐらいは確保しておきたい。 ●ビデオカード
ゲームを遊ぶ上でもっとも重要なビデオカード。先述のように、快適に遊ぶならDX10対応とハイエンドであることが必須。ということで、ここはXFXの「GeForce 8800 GTS 320MB Fatal1ty」を薦めたい。実売価格は45,000円前後と、コストパフォーマンスに優れると言われているGeForce 8800 GTより1万円前後高いものの、2スロットクーラーの採用で冷却性に優れており、稼働音が静かな点に評価できる。また、8800 GTと同等もしくはそれ以上の性能を発揮する点にも注目したい。 8800 GTは発売後、1スロットクーラーの冷却性能の不足が指摘されてきており、一部のショップが8800 GTのクーラーを換装するためのキットを発売するほどだ。しかし8800 GTと高価なクーラーを組み合わせると結局4万円を超えることになるし、メーカーの保証も無くなってしまう。その点、GeForce 8800 GTS 320MB Fatal1tyであればその心配はない。
そしてなんと言っても、本製品は有名プロゲーマー「Fatal1ty」のお墨付きであることだ。彼とコラボレーションPCパーツとしては、2004年に発売されたAbitの「Fatal1ty AA8XE」が有名だが、2005年からはCreativeの「Sound Blaster X-Fi Fatal1ty」、2006年からはXFXの「7600GT Fatal1ty Professional Series」も手がけている。 これらのPCパーツは「Fatal1ty」のブランドを冠した時点で通常製品とはやや異なる性質を持っている。共通して言えることは“赤い”こと、そして“速い”ことだ。今回の製品に関してもご多分に漏れず、赤いヒートシンクカバーを備えており、コアクロックは650MHz、メモリクロックは2GHzと、リファレンスから150MHz/400MHzも速いスペックとなっている。ゲーマーとして、Fatal1tyの製品を持っておくことは誇りだと思うし、満足できるスペックの製品であることに間違いない。 次点を挙げるとすれば、先日より発売開始されたSapphireの「Radeon HD 3870 512MB GDDR4 PCIE」だろう。絶対性能こそGeForce 8800シリーズには及ばないものの、実売価格は37,000円前後と安価な上、DX10.1とCrossFire Xへの対応、低消費電力などの点は評価できる。もちろんDX10.1対応タイトルは未知数ではあるが、将来に渡って長く付き合えるだろう。 「PCでゲームはやるけれどそこまでハイエンドなゲームはやらない」というユーザーもいるだろう。そこでおすすめしたいのはGALAXY Technology製の「GF P86GTS-CH/256D3」だ。ミドルレンジなので絶対性能はハイエンドに届かないものの、実売価格は22,000円前後でありながら、高性能のヒートパイプ付きクーラーを装備し、静音性にも優れる。コアクロックも720MHzとリファレンスより高く、同クラス製品と比較すれば性能が高い。MMORPGなどをプレイするのには最適だといえる。
□関連記事 ●CPU
CPUについては先述のように、マルチコアが必須だ。デュアルコアの高速製品でもいいが、ここは素直に「Core 2 Quad Q6600(2.4GHz)」をベストチョイスとしたい。クアッドコア製品でありながら、実売価格34,000円前後という低価格が魅力的で、対応ゲームであれば2006年のベストセラーだった「Core 2 Duo E6600」より確実に性能が高いからだ。TDPも95Wと低消費電力で、これといった欠点は見あたらない。FSBは1,066MHzであり、一部のFSB 1,333MHz非対応のIntel P965マザーのアップグレードとしてのベストな選択肢でもある。 もちろん、クロックを重視して「Core 2 Duo E6850(3GHz)」を購入する手もある。しかし近年のゲームソフトのマルチコア対応への移行や、コストパフォーマンスなどの点、従来のシステムでもほぼ問題なく運用できる点などから、Q6600を薦めたい。 一方、お金をかけてもいいから最強を手に入れたいのなら、無論「Core 2 Extreme QX9650(3GHz)」(実売価格13万円前後)を薦める。45nmプロセスで製造されているため消費電力や発熱が減っており、導入しやすいからだ。また、高速除算命令「Radix 16」や、128bitの2つの数値中にあるデータの選択や入れ替えなどが可能な「Super Shuffle Engine」などを備えており、既存アプリケーションも性能が向上している。新たに付属する大型のCPUクーラーも目玉だ。ただし、現時点では爆発的な人気がありやや入手困難である。
また、新たに発売されたAMDの“ネイティブクアッドコア”の「Phenom 9600(2.3GHz)」(実売価格35,000円前後)にも期待したいところ。こちらは発売されたばかりということもあり、ゲームにおいての性能などについては未知数だが、長らくPhenomの登場を待っていたユーザーにはお勧めできる。 さらに、既存のSocket AM2マザーボードでほぼBIOSのアップグレードのみで対応できる点も良い。安価にクアッドコアプラットフォームを構築するのに最適な製品といえるだろう。 □関連記事 ●ペリフェラル キーボードやマウスまで重視している人は少ないかもしれないが、実はこれらはゲームをプレイする上で重要なデバイスだ。これらのユーザーインターフェイスはユーザーの操作をゲームに伝え、ゲームの楽しさをユーザーに伝えるために必須であり、ゲームをプレイする上で決して軽視できない。 とは言っても、これらの製品は、使用するユーザーによって感想が大きく変わる部分でもあり、一概に機能が多いからといっておすすめできるとは言い難い。例えばキーボードならキータッチは好みがあるし、マウスも重さで操作感が変わる場合がある。よってここでは代表的な製品をいくつか紹介したい。 今ゲーミング向け製品にもっとも力を入れている有力メーカーといえばやはりロジクールだろう。現行品でおすすめなのがゲーミングキーボード「G15 Gaming Keyboard」(型番:G-15S)とゲーミングマウス「G9 Laser Mouse」(G-9)の組み合わせである。実売価格はそれぞれ12,000円前後、1万円前後とやや高価だが、徹底的にゲーマー向けに作られた機能を盛り込んでいるとともに、入力デバイスとして一定の品質に定評がある。G15のLCDディスプレイは他に例を見ない独自機能であり、ゲーム中でもさまざまな情報を表示可能だ。G9の高度なカスタマイズも至れり尽くせりな仕様であり、これで実現できない機能はないと言っても過言ではない。
マイクロソフトも「SideWinder」のブランドがついにマウスで復活した。こちらも高度なカスタマイズ機能を用意しており、ヘビーゲーマーにも満足できる仕様となっている。実売価格も8,000円前後とG-9に比較してやや安価だ。一方、キーボードは未だSideWinderブランドでは登場していないものの、Razerとの共同開発による「Reclusa」がおすすめだ。マクロキーやカスタマイズ性ではG15にやや譲るが、実売価格6,000円前後で購入できるためコストパフォーマンスに優れている。
液晶ディスプレイについては製品が多く、スペックもある程度共通化してきているし、これと言った「ゲーマー向け液晶ディスプレイ」があるわけではないので、ここでの選別は難しい。ゲームで重要視されている応答速度も近年確実に高速化されているので、実際には店頭で画質で決めるとよいと思う。 しかし、ゲーム市場のトレンド的には「フルHD」が当たり前になってきているし、先述のGPUであればほぼこの解像度でのプレイは問題ない。そういった観点から、1,920×1,200ドット以上の解像度を持つ24型ワイド機以上は欲しいところだ。24型ワイド液晶ディスプレイについては、第1回の特集で取り上げているので、こちらを参照して欲しい。 □関連記事 ●そのほかの周辺機器 そのほかの製品に関しては、直接性能には関わりが少ないので、ここではゲーマー色が強い個性のあるものについて取り上げていく。あくまでも参考程度として見てもらいたい。 マザーボードは、高性能CPUとGPUにマッチする「Fatal1ty FP-IN9 SLI」がおすすめ。Core 2 DuoとQuadに対応するとともに、NVIDIAのnForce 650i SLIを搭載しており、2枚のビデオカードでNVIDIA SLIが構築可能だ。目を引く赤い基板も特徴的。実売価格も16,000円前後とコストパフォーマンスに優れている。 AMD向けであれば、最近発売されたAMD 790FX搭載マザーボードがおすすめ。特にMSIの「K9A2 Platinum」は、マルチGPU技術「CrossFire X」に対応する4本のPCI Express 2.0x16スロットや、独自の冷却機構「CIRCU-PIPE」を搭載するハイエンド仕様でありながら、実売価格は25,000円前後と非常にコストパフォーマンスに優れている。Phenomと一緒に購入するならぜひこのマザーを試していただきたい。
メモリは最近値下がりが著しく、特にDDR2であればどのメーカーのどの容量帯であれお買い得だ。ここでは動作実績のあるCorsairの「TWIN2X2048-6400」をおすすめしたい。1GB×2枚モジュールであり、実売価格は8,000円前後。バルク品と比較すれば高価だが、安心して利用できる。 HDDは大容量化が進んでおり、1TBでも3万円を切る製品が出ているが、ゲーム用途であればとにかくロード時間を短縮するために高速性を優先し、10,000rpmの「Raptor X」をおすすめしたい。実売価格は25,000円前後と、150GBの容量からすればかなり高価だが、高速である上に、現時点では世界で唯一ヘッドが見えるHDDだ。大抵のPCケースへ組み込んでしまうとヘッドが見えなってしまうのが欠点だが、ロジテックから発売されているクレードルタイプの“HDDリーダー/ライター”「LHR-DS01SAU2」(実売5,000円前後)を使うなどして、ビジュアルを工夫してみたい。 これらを収めるPCケースでも、いくつかゲーマー向けを謳う製品がある。例えばAntecの「Nine Hundred」(実売価格15,000円前後)やZalmanのFatal1tyケース「Fatal1ty Computer Enclosure(FC-ZE1)」(実売価格49,800円前後)などだ。前者はリーズナブルであり、後者はアルミ採用で高級だ。いずれも側面パネルはアクリル製で、中身が見える仕組みとなっている。他人に十分のPCの中身をアピールするのにもってこいのケースである。
以上で一通りゲーマー向けパーツを見てきた。では具体的に例えば上記から主なおすすめパーツを抜き出して1台マシンを組み立てるにしても、
とそれほど高くはない。もちろんこの中にはOSや光学ドライブ、電源などが含まれていないが、それらを含めても20万前後で本体が完成できる。一般的なビジネス向けPCと比較すれば高価であるのは変わらないが、自分で組み立てたマシンでゲームをプレイする楽しみ、他に類を見ないオリジナリティという観点からすれば妥当だ。 もちろん、上記の構成はあくまでも一例に過ぎず、いろんなパーツを自分好みにアップグレードして性能向上を目指したり、ダウングレードしてコストパフォーマンスを追求したりできる。そして何より、自分が苦労して組み立てたPCでゲームをやれば、ゲーム機にはない、別の満足が得られることだろう。 (2007年12月5日) [Reported by ryu@impress.co.jp]
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