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第14回 LSI・オブ・ザ・イヤー
シャープのワンセグ受信LSI、NECのC言語LSI設計ツールがグランプリに輝く

5月16日 発表



 マイコン組み込みシステムの開発技術に関する展示会「組込みシステム開発技術展(ESEC)」の初日(16日)午後4時、恒例の「LSI・オブ・ザ・イヤー」表彰式がESEC会場内で開催された。

 「LSI・オブ・ザ・イヤー」(主催:半導体産業新聞、共催:リード エグジビション ジャパン)は、1年間を通じて著しい成果を出したLSI製品/技術とLSI開発ツールを表彰することでその功績を広く知らしめることと、産業の発展に寄与することを目的としており、'94年に設立された。今回で第14回目になる。

 「LSI・オブ・ザ・イヤー」の表彰対象は、LSI製品/技術を表彰する「デバイス部門」とLSI開発ツールを表彰する「設計環境/開発ツール部門」に分かれている。各部門の優秀賞5点ずつがESECの開催前に公表されていた。表彰式では、優秀賞5点の中から最優秀製品である「グランプリ」とそれに次ぐ「準グランプリ」が発表され、優秀賞とともに表彰された。そして午後5時頃から、受賞製品の報道機関向け説明会がESECの開催地である東京ビッグサイトの会議棟で行なわれた。

 「デバイス部門」では、1,276点の候補から優秀賞5点が選出された。その中でグランプリを受賞したのは、シャープのワンセグ受信用マルチメディア処理LSI「LR38888」である。ワンセグTVチューナの後段に配置するLSIであり、入力信号(MPEG-2のTS)から映像信号(H.264)と音声信号(AAC)を復号化する。消費電力が150mWと非常に低いことと、製品化のタイミングが早かったことが高く評価された。シャープを始めとする国内数社の携帯電話機に搭載済みである。

選考委員長の安浦寛人氏(九州大学システムLSI研究センター センター長、九州大学 教授) デバイス部門のグランプリを受賞した、シャープのワンセグ受信用マルチメディア処理LSI「LR38888」の説明パネル グランプリの受賞企業を代表して挨拶する西岡寛氏(シャープ 電子デバイス開発本部長)

 デバイス部門の準グランプリはアームの組み込み用32bit RISCプロセッサコア「Cortex-R4F」である。アームの最新コア「Cortex」シリーズの中では、ミッドレンジに相当する。浮動小数点演算ユニットを実装し、整数演算と浮動小数点演算の2命令を同時発行するスーパースカラーアーキテクチャーを採用したことが特長である。アームによると、2007年3月時点で9社の半導体メーカーがライセンス導入済みだという。

 そして優秀賞は、フリースケール・セミコンダクタ・ジャパンの4Mbit磁気メモリ(MRAM)「MR2A16AT35C」、日本AMDのx86互換64bitプロセッサ「Opteron」と仮想化支援技術「AMD-Virtualization」、日本アルテラの次期ハイエンドFPGAファミリ「Stratix III」が受賞した。

準グランプリを受賞した、アームの32bit RISCプロセッサコア「Cortex-R4F」の説明パネル 優秀賞を受賞した、フリースケール・セミコンダクタ・ジャパンの4Mbit磁気メモリ(MRAM)「MR2A16AT35C」の説明パネル 優秀賞を受賞した、日本AMDのx86互換64bitプロセッサ「Opteron」と仮想化支援技術「AMD-Virtualization」の説明パネル 優秀賞を受賞した、日本アルテラの次期ハイエンドFPGAファミリ「Stratix Ⅲ」の説明パネル

 「設計環境/開発ツール部門」では、151点の候補から優秀賞5点が選出された。グランプリに輝いたのは、NECシステムテクノロジーのC言語ベースLSI設計ツール「CyberWorkBench」である。マイコンの標準的なプログラミング言語であるC言語でシステムLSIの設計と検証を可能にした、画期的なツールだ。

 システムLSIは従来、「ハードウエア記述言語」と呼ぶ独自のプログラミング言語を使って設計していた。ハードウエア記述言語ではレジスタ-レジスタ間遷移(RTL)をベースに処理を記述する。システム設計者がC言語で記述したアルゴリズムを、LSI設計者はRTL記述に細分化しなければならない。このため、システムLSIが複雑かつ大規模になるにつれ、ハードウエア記述言語によるLSI設計では設計と検証の負荷が著しく増加していた。そこでC言語から自動的にRTL記述を生成し、設計結果を検証できれば、LSI設計の手間が著しく減少し、開発期間を大幅に短縮できる。これを実現したのが「CyberWorkBench」である。

設計環境/開発ツール部門のグランプリを受賞した、NECシステムテクノロジーのC言語ベースLSI設計ツール「CyberWorkBench」の説明パネル グランプリの受賞企業を代表して挨拶する、西龍己氏(NECシステムテクノロジー 取締役執行役員常務)
「CyberWorkBench」の導入効果例。上はプロセッサを設計した場合。動作合成とあるのがCyberWorkBenchを使った場合。RTL設計は従来の設計手法。CyberWorkBenchの利用により、プログラムの行数は7分の1以下、シミュレーションの速度は200倍になる。ゲート規模の増大は5%で済んでいる。下は逐次処理アルゴリズムをハードウエア化した場合。ゲート規模が10分の1以下に減っている 「CyberWorkBench」開発の歴史。開発は'80年代にNECで始まった。ハードウエア記述言語によるLSI設計が普及していった時代である。C言語によるLSI設計のアイデアは当時、あまりに飛躍しており、ほとんど理解されなかった。それでも動作合成ツール「Cyber」を開発し、NECの半導体部門(現在のNECエレクトロニクス)が試用し続け、ツールの完成度を高めていった。'93年にはついに、NECの半導体製品の設計に採用された。2001年には松下通信工業がCyberを導入。2006年9月には、NECシステムテクノロジーが統合開発環境「CyberWorkBench」として販売を始めた。現在のNECエレクトロニクスでは、SoC新規設計の90%以上に「CyberWorkBench」を使用している

 設計環境/開発ツール部門の準グランプリは、日本ケイデンス・デザイン・システムズ社の低消費電力LSI設計支援ツールである。低消費電力設計の記述仕様「CPF(Common Power Format)」に準拠しており、機能検証やテストなどを含めた設計工程全体をサポートするソリューションとして提供する。

 優秀賞は、礎(いしずえ)デザインオートメーションの浮動小数点を固定小数点に変換するツール「FP-Fixer」、コーウェアの高速ハードソフト協調検証ツール「Virtual Platform」、TSMCジャパンの65nm設計対応製造容易化LSI開発システム「デザインエコシステム」がそれぞれ受賞した。

準グランプリを受賞した、日本ケイデンス・デザイン・システムズ社の低消費電力LSI設計支援ツールの説明パネル 優秀賞を受賞した、礎(いしずえ)デザインオートメーションの浮動小数点を固定小数点に変換するツール「FP-Fixer」の説明パネル 優秀賞を受賞した、コーウェアの高速ハードソフト協調検証ツール「Virtual Platform」の説明パネル 優秀賞を受賞した、TSMCジャパンの65nm設計対応製造容易化LSI開発システム「デザインエコシステム」の説明パネル

□組込みシステム開発技術展(ESEC)のホームページ
http://www.esec.jp/
□第14回LSI・オブ・ザ・イヤーのホームページ
http://www.esec.jp/jp/exhibit/lsi_prize.phtml
□関連記事
【5月16日】第10回 組込みシステム開発技術展が開催
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2007/0516/esec.htm
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【2006年5月19日】クアッドコアOpteronの詳細
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2006/0519/spf03.htm
【2006年3月31日】シャープ、ワンセグの長時間視聴を可能にするLSI-テレビ視聴時/待機時の電力を低減(AV)
http://www.watch.impress.co.jp/av/docs/20060331/sharp.htm
【2005年5月25日】AMD、仮想化技術「Pacifica」の仕様を公開
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2005/0525/amd.htm

(2007年5月17日)

[Reported by 福田昭]

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