インテルは6月28日に、Woodcrestの開発コード名を持つ「Xeon 5100シリーズ」を発表した。本連載で取り上げる順序はCore 2 Duo/Extremeと前後してしまったが、正式発表の順序ではCoreマイクロアーキテクチャ採用CPUの第一弾となる製品だ。5月に発売された「Xeon 5000シリーズ」との比較を中心に、その性能を見てみたい。 ●プラットフォームはBensley/Glidewellを継承 既報ではあるが、まずは現時点で発表されているXeon 5100シリーズのラインナップと主なスペックを表1にまとめている。
従来のXeon 5000(Dempsey)シリーズとのスペック上の大きな違いは、FSBが1,333MHzに引き上げられた点と、TDPが大幅に抑制された点である。TDPは最上位の5160が80Wで、ほかは65Wとなっている(図1)。また、マイクロアーキテクチャに依存する話ではあるが、L2キャッシュがコアごとに独立しておらず、2つのコアが1つのL2キャッシュを共有する格好となる。
このように、Xeon 5000シリーズから大幅に変更されてはいるが、チップセットは従来どおり、Intel 5000シリーズを利用することになる。実際、今回借用したXeon 5160の評価システムは、5月にお伝えしたXeon 5060の記事で使用したもの(写真1)とまったく同じで、CPUとFB-DIMMのみが置き換えられた格好になっていた。 当然、CPUもXeon 5000シリーズと同じくLGA771のパッケージとなる(写真2)。ただし、裏面のコンデンサの配置は変わっている(写真3)。Xeon 5060の背面はPentium Extreme Edition 965と酷似しているのに対し、Xeon 5160の背面はCore 2と大きく異なっているのも印象的である(写真3-2)。 CPUIDは「6F4」のB0ステッピングとなっている(画面1)。Xeon 5100シリーズとCore 2シリーズは同じコアであるとは思われるが、Core 2の記事で利用したCPUではB1ステッピングが採用されていた。今後、WoodcrestもB1ステッピングに移行する可能性はありそうだ。 もう1つの違いとして挙げたメモリは、前回のXeon 5060を搭載したシステムではDDR2-533のFB-DIMMが搭載されていたのに対し、今回のXeon 5160搭載システムにはDDR2-667のFB-DIMMが搭載されている(写真4)。
●32bit Windowsでのベンチマーク結果 それでは、ベンチマークの結果を紹介したい。テスト環境は表2のとおりで、Xeon 5160/5060とDDR2-667/533をそれぞれ組み合わせた環境と、Opteron 285環境を用意。Opteron 285環境については、写真5~8の各パーツを借用してテストを行なっている。 なお、データの一部をXeon 5060のテストから流用し、そちらのベンチマークと統一するために、一部のテストは古いバージョンのベンチマークソフトを利用している。
●CPU性能 まずはCPUの演算性能を見るために実施した、「Sandra 2007」の「Processor Arithmetic Benchmark」と「Processor Multi-Media Benchmark」である(グラフ1)。おおよそ、Core 2とPentium XEを比較したときと同じような傾向を示しており、浮動小数点演算テストであるWhetstoneでXeon 5060に劣る点も同様だ。 Opteron 285に対しては、Xeon 5060は整数演算で弱さを見せているものの、Xeon 5160は全テストにおいて上回る演算性能を見せている。 続いては「PCMark05」のCPU Testの結果である(グラフ2、3)。ここもシングルタスクテストの結果を示したグラフ2については、Core 2のテストと同じような結果である。クロックの差から、Pentium XE 965(3.73GHz)の結果よりもXeon 5060(3.6GHz)のスコアがやや低く、Core 2 Extreme X6800(2.93GHz)をXeon 5160(3GHz)がやや上回る。 グラフ3はマルチタスクのテストとなるが、ここではCoreマイクロアーキテクチャのデュアルプロセッサ環境の良さが光っている。特に4タスク同時実行テストは、強さが目立つ結果となった。
●メモリ性能 続いてはメモリ性能のチェックだ。テストはアクセス速度を見るために実施したSandra 2007の「Cache&MemoryBenchmark」(グラフ4)と、メモリレイテンシの測定のために実施した「EVEREST Ultimate Edition 2006 Version3.0」のCache&Memory Benchmarkのレイテンシテスト結果(グラフ5)である。 まずはSandra 2007の結果に触れると、Xeon 5160とXeon 5060では、FSBの差と、DDR2-533とDDR2-667の差がはっきり分かる。メモリレイテンシはメモリコントローラをCPUに内蔵するOpteron 285の良さが目立っている。 なお、Xeon 5060+DDR2-667の環境で、L2キャッシュが最大限に引き出されていないほか、メモリレイテンシも同じパラメータで動作しているXeon 5160とは異なり、DDR2-553に比べて遅い結果を示すという、この環境の不安定さが伺える結果である。後述するアプリケーション系ベンチマークでも、この点が影響したと思われる結果が出ている。
●アプリケーション性能 次は、アプリケーションのベンチマークである。実施したテストは、「SYSmark 2004」(グラフ6)、「Winstone 2004」(グラフ7)、「CineBench 2003」(グラフ8)、各種エンコードテスト(グラフ9)だ。Xeon 5060の記事同様、CPUをXeon 5160に変更した環境でも、SYSmark2004のInternet Content Creationは動作しなかったことを付記しておく。 結果は、Xeon 5160デュアル環境の性能の良さが光った。Opteron 285デュアル環境は本連載では今回が初めてのテストとなるが、Xeon 5060×2環境を安定して上回っている。この点は、デスクトップ向けのNetBurst対K8とは違う構図だ。Xeon 5160はというと、すべてのテスト項目において最も良いスコアを出しており、Coreマイクロアーキテクチャの優秀さが見て取れる。 なお、先にも少し触れたが、Xeon 5060環境で、DDR2-533を利用したときのほうが、DDR2-667使用時よりもスコアを伸ばす傾向が見られる。これは、先のメモリ性能が十分に引き出されていない点が影響したと考えていいだろう。いずれにしても、今回のテスト環境に依存する結果と考えるのが妥当だ。 ちなみに、ビデオカードや一部テストのバージョンは異なるものの、Core 2の記事におけるCore 2 Extreme X6800と比較してみた。CPUとメモリの差が結果に大きく反映されるエンコードテストで、最大70%を超える性能向上が見て取れ、特にTMPGEnc 3.0 XPressを用いたMPEG-2エンコードと、MainConceptのH.264 Encoder V2を用いたH.264エンコードで大きく差をつけた。 クロック差もあるので単純にデュアルプロセッサやプラットフォームの成果だけではないが、マルチスレッド対応アプリケーションやマルチタスクを頻繁に利用する人にとっては期待できそうな結果といえるだろう。
●3D性能 続いては3D性能のテストだ。実施したのは「3DMark06 CPU Test」(グラフ10)、「3DMark06」(グラフ11)、「3DMark05」(グラフ12)、「3DMark03」(グラフ13)、「DOOM3」(グラフ14)、「SPEC Viewperf 9」(グラフ15)である。 結果を見ると、特にCPUの処理への負担割合が大きくなりがちな低解像度条件において、Xeon 5160環境のスコアの良さが目立つ結果だ。逆に高解像度の条件ではOpteron 285×2が差を詰めたり、逆転する結果を見せている。ビデオカードの負荷が大きいクオリティでゲームを楽しむならば、Opteron 285環境の方がより高いフレームレートを期待できる場面もあると言える。
●消費電力 最後に消費電力の測定である(グラフ16)。これは、コンセント部に市販のワットチェッカーを接続してのテストで、Windowsのデスクトップが表示されているだけの状態をアイドル、MPEG-2エンコード中に出した最大値をピークとして示している。 ただし、今回Xeon各環境とOpteron環境では電源やケースファンなどの諸条件が統一されていないため、比較には適さない。そのような事情があるので、このグラフから言えることは、Coreマイクロアーキテクチャの売りである通り、Xeon 5160がXeon 5060から大幅に消費電力を下げた点と、DDR2-667はDDR2-533よりも消費電力を多く消費する傾向にあるという点に限られる。
●現実的に入手可能なソリューションとしては最高の性能 以上の通り、ワークステーションとして利用するという視点での検証ではあるが、全体の傾向はCore 2の記事から得られたものと酷似した傾向を示した。コンテンツ作成からビジネスアプリケーション、動画エンコード、3D性能と、どの点を取ってもバランス良く優れた性能を発揮しているのが印象的な結果である。 当然ながらコンシューマユーザーにとっての注目は、Core 2シリーズということになるだろうし、アプリケーションによってはデュアルプロセッサにしても数%程度の性能向上という場合もあるので、XeonをPCとして利用するのは贅沢な使い方なのは間違いない。 しかしながら、価格よりも性能を追求する層が存在するのも事実で、そういった人にとっては、間違いなく現時点における最高の製品といっていい。すでにXeon 5100シリーズに必要なパーツはショップでの販売も開始されており、自作ユーザーが導入する下地はできている。導入する気がない人でも、Core 2よりも高い性能を発揮する製品を、現実的に導入可能である点は、いざデスクトップ向けCPUでの性能に不満を感じたときのためにも、頭の片隅に置いておくといいだろう。 □関連記事 (2006年8月1日) [Text by 多和田新也]
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