ConroeことCore 2シリーズの正式発表が近づき、いよいよプラットフォーム周りもにぎやかになってきた。NVIDIAは6月6日に「nForce 590 SLI/570 SLI」のIntel Editionを発表しているが、従来のnForce4 SLI X16のCore 2対応版もリリースし、搭載製品が近日中に出荷開始される見込みとなった。今回は、このチップセットとCore 2との組み合わせを試してみたい。 ●C1リビジョンでCore 2に対応するnForce4 SLI X16 NVIDIAは2005年8月に「nForce4 SLI X16」のIntel版とAMD版を発表。このチップセットは、SLI使用時であっても、2本のPCI Express x16インターフェイスが各々16レーンで動作するのが特徴だ。 今回リリースされる、Core 2シリーズ対応版の「nForce SLI X16 Intel Edition」も基本的なスペックは同一だ(図1)。1,066MHz FSBをサポートし、従来どおりPentium Extreme Edition(XE)/D/4、Celeronシリーズなどもサポート。PCI Expressインターフェイスは計40レーンで、SLI使用時にx16×2で動作させられる。サウスブリッジも従来の「MCP04」で、RAID0/1/10/5対応のシリアルATA×4、Gigabit Ethernet、USB 2.0×10などのスペックとなる。 ちなみに、Core 2対応のチップのリビジョンは「C1」となるようだ(画面1)。このC1リビジョンのチップは鉛フリー化のほか、DDR2-800以上の高速メモリへの最適化も行なわれているという。ただし、公式にサポートするのは、従来通りDDR2-667までとなっている。 さて、この新リビジョンのnForce4 SLI X16を搭載したマザーボードであるが、今回借用したのは、ASUSTeKの「P5N32-SLI SE」である(写真1)。基本的には既存の「P5N32-SLI」からスペックは変更されていない。PCBリビジョンはRev 2.02Gとなっており(写真2)、これがCore 2対応版であることを見分けるポイントとなりそうだ。 ●ハイエンド向けIntel 975Xとの比較 ここでは、P5N32-SLI SEでCore 2 Extreme X6800のパフォーマンスを検証してみたい。比較対象としたのは、同じハイエンド向けチップセットである、Intel 975X Expressである。 また、DDR2-667との組み合わせに加え、nForce4 SLI X16の新リビジョンがうたっているDDR2-800への最適化という点も見るために、各マザーボードのメモリクロックを800MHzに設定した場合のテストも行なっている。 Intel 975XはDDR2-800を正式にサポートしていないが、今回使用しているD975XBXはメモリクロックを800MHzに指定することができる。DDR2-800を正式サポートしているはずのIntel P965 Express搭載の同社製マザーボードではトラブルが発生しているようだが、トラブルもなくテストを実行できた。D975XBXのBIOSは前回同様、Version.1209である。 なお、Intel 975XとDDR2-667の組み合わせは、前回紹介したCore 2の記事とまったく同一なので、データの一部は流用して再掲載している。このほかのテスト環境は表の通りである。
●CPU/アプリケーション性能 まずはCPUテストやアプリケーションのベンチマーク結果を見て、各チップセットおよびマザーボードを利用したときのパフォーマンス差を見てみたい。テストは「PCMark05」のCPU Test(グラフ1、2)、「SYSmark 2004 SE」(グラフ3)、「Winstone 2004」(グラフ4)、「CineBench 9.5」(グラフ5)、動画エンコード(グラフ6)である。 このうち、PCMark05とCineBench95、H.264エンコードなどは、CPUへの負荷が高いが、環境の違いによるスコア差がほとんど出なかった。両環境とも、CPUの性能を同等程度に引き出せているということになるだろう。 動画エンコードも素直な結果といえる。CPU負荷が高いエンコード処理ほど全体の処理に対するCPU依存の割合が増えるので、メモリやプラットフォームの差による性能差があまり見られないが、MPEG-2のように負荷が軽めのエンコードではCPU以外、例えばメモリ性能などの影響が大きく表れてくる。ここではIntel 975Xが好成績を収める傾向にあり、動画エンコードのように、細かいデータ単位(動画1フレーム)で頻繁にアクセスするようなシチュエーションでの、メモリアクセス速度の良さが窺える。 ただ、SYSmark 2004 SEとWinstone 2004は、判断に苦しむ結果になっている。DDR2-667環境がDDR2-800環境を上回るスコアを見せることがあるのは、メモリ性能に依存しないテストでは、誤差として十分に発生し得る。だが、SYSmark 2004 SEの2D Creationや、Winstone 2004のBusiness Winstone両テストでは、nForce 4 SLI X16はDDR2-800がスコアを伸ばすが、Intel 975Xはスコアを下げるという、逆の現象が起こっているのだ。また、Multimedia Content Creation WindstoneのnForce4 SLI X16も誤差が小さいWinstone 2004としては、大きな落ち込みといえる。 これはDDR2-800設定での動作の不安定さが現われた結果といえるだろう。とはいっても、nForce4 SLI X16でDDR2-800時に顕著にスコアが下がったのはWinstone 2004程度。このあたりに、同社がDDR2-800へのチューニングを考慮している気配があるといえる。 総じて言うと、SYSmark 2004とWinstone 2004でnForce4 SLI X16が若干良いが、動画エンコードではIntel 975Xが良好な傾向にあり、一長一短あるスコアで甲乙はつけがたい。
●3D性能 続いては実際のアプリケーションの延長ということで、3Dベンチマークをテストしてみたい。利用したのは、「3DMark06 CPUTest」(グラフ7)、「3DMark06」(グラフ8)、「3DMark05」(グラフ9)、「3DMark03」(グラフ10)、「DOOM3」(グラフ11)、「Splinter Cell Chaos Theory」(グラフ12)である。 当然ながらビデオカードの性能に依存するテストが多く、いかにその性能を引き出せているかが1つのポイントとなる。結果はというと、特にビデオカードの性能が求められる高解像度条件において似たようなスコアを示しており、両製品ともそれなりに性能は引き出せていると考えて良さそうだ。 ただ、DOOM3の低解像度条件のように、CPU性能が大きく影響するテストでは、Intel 975Xが良好なスコアを示した。また、これはチップセットに限った話ではないが、DDR2-800にすることで、大きくスコアを伸ばすのも印象的だ。AI処理などを多用する3Dゲームにおいて、DDR2-800導入の効果を期待できる結果といえる。
●メモリ/HDD性能 今回はチップセットの検証ということもあるので、メモリとHDDの性能にも着目してみたい。まず、メモリの検証である。テストは「Sandra 2007a」のCache & Memory Benchmark(グラフ13)、「PCMark05」のMemory Test(グラフ14)、「EVEREST Ultimate Edition 2006 Version3.0」のCache & Memory Benchmark(グラフ15)である。 まずキャッシュについて、Sandra 2007aによる帯域幅とEVERESTによるメモリレイテンシを見ると、L1キャッシュはほぼ同程度の性能が引き出されているが、L2キャッシュはnForce4 SLI X16環境が若干ながら高速な結果になっている。このあたりはBIOSチューンによるところが大きいと思われるが、Sandra 2007aの結果からも分かる通り全領域において安定した差を付けていることから、無視できない性能差である。 メインメモリについては、Sandra 2007aのみ、ほかと違う傾向を示している。Sandra 2007aのメインメモリを使用する条件では、nForce4 SLI X16がIntel 975Xに対して大幅に劣る速度となっているが、PCMark05やEVERESTによるレイテンシの測定では、逆にnForce4 SLI X16の方が高速という結果になっている。 Sandra 2007aはあまりに低い数値で、デュアルチャネルでの転送が正しく機能していないかのようなスコアだ。これは、アプリケーションによっては、こうした極端に遅い速度に留まってしまう可能性を示唆しているといえる。それを含めても、ほかのテスト結果も併せて考えると、nForce4 SLI X16のメモリ性能はIntel 975Xを上回る可能性が高い、というのが今回のテストから見える傾向である。
最後にHDD性能について見ておきたい。テストは「Sandra 2007a」のFileSystem Benchmark(グラフ16)、「PCMark05」のHDD Test(グラフ17)、Winbench99のDiskWinmark(グラフ18)である。 今回の記事の主題はnForce4 SLI X16なのだが、このHDD性能のテストにおいては、Intel 975X(つまりICH7R)のスコアの傾向が興味深い。Sandra 2007aではっきり傾向が分かる通り、メインメモリ上のバッファを利用して読み出しを行なう場合のスコアが著しく速い。当然、メインメモリの速度も影響するので、DDR2-800環境のほうが高速になる。 バッファリードの場合は、HDDインターフェイス周りのドライバのチューニングも性能に大きく影響する。大容量のデータが読み出されるWinBench99 High-End WinBench99では、バッファリードの性能が効果し、高速なスコアとなるが、ドライバ読み込み前の段階であるPCMark05のWindows XPの起動は速度が遅くなっているわけだ。 一方、Sandra 2007aの各Writeテストや、PCMark05のFile Write書き込みのスコアで分かる通り、書き込みに関しては、やや遅い傾向にあることも判断できる。 これらの傾向を逆説的に捉えるなら、nForce4 SLI X16は、突出こそしていないものの、安定した性能を示しているということだ。PCMark05のGeneral Usageが示すように、読み書きをバランスよく行なうシチュエーションにおいては、nForce4 SLI X16の方が安定した性能を得られるといえるだろう。
●SLI対応のプラットフォームとして意義ある製品 一通り性能をチェックしてきたが、性能についてはIntel 975Xと甲乙つけがたい印象だ。NVIDIAのチップセット製品に関して、Intelプラットフォームにおいては、間違いなくIntelが最大のライバルである。Core 2であっても、そのライバルと同程度の性能は引き出せるということになる。 今回は同一環境の比較にならないためテストを行なっていないが、マルチGPUソリューションを考慮した場合の機能面で、nForce4 SLI X16に分があるのは確かだ。CrossFireに対応するもののPCI Express x8×2構成になってしまうIntel 975Xに対して、nForce4 SLI X16はSLI使用時でもPCI Express x16×2構成を実現できるからだ。 ところで、NVIDIAが、急遽nForce4 SLI X16のCore 2対応版をリリースしてきたのは、やはり戦略的な面が大きいと思われる。前回の記事でも見えてきた通り、Core 2の3Dアプリケーションにおけるパフォーマンスはかなり高い。Core 2シリーズの即導入を検討しているゲーマーに対し、CrossFireをサポートするIntel 975Xに対抗できるチップセットを用意しておくことが必須だったわけだ。 ただ、今回試したnForce4 SLI X16やIntel 975Xは、現役の製品ではあるものの一世代前のものである。NVIDIAはnForce 590 SLI/570 SLIを発表しており、Intelもセグメントは違うもののIntel 965シリーズを投入済みだ。これらの新しいチップセットでCore 2シリーズがどのようなパフォーマンスを見せるかも興味深いところであり、製品を入手でき次第、テスト結果をお伝えする予定だ。 □関連記事 (2006年7月21日) [Text by 多和田新也]
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