第337回
VAIOに実装されたBlu-ray関連機能をテスト



VAIO type A

 富士通やエプソンダイレクトからBlu-ray(BD)ドライブ搭載PCが発表され、松下電器からも単体ドライブの発売およびOEM供給がアナウンスされたものの、BDに期待されるHD放送の録画に関しては、明確にサポートをうたった発表はなかった。

 しかし新型VAIO type Rおよびtype Aでは、コピーワンスで放送されたハイビジョン録画データのBD-REへのムーブが、PCとしては初めて可能になった。また、HDVなどのハイビジョンカムコーダからキャプチャした映像をBDAV形式(DVD-VRに相当するレコーディングフォーマット。対してDVD-Videoに相当するのはBDMV)でオーサリングするための「Ulead BD DiscRecorder for VAIO」も付属する。

 さらにBDMV(パッケージビデオ用)、BDAV(録画用)の両方のBDコンテンツを再生可能なWinDVD BD for VAIOも添付。ケース付きの従来型BD-REを除くと、2つの新型VAIOは家電・PCを通して初のBDコンテンツ再生可能機器ということになる。

 それぞれのハードウェアに関しては順次掲載されるであろうレポートを参照して頂くとして、VAIOシリーズに実装されたBD関連機能を一通り追いかけてみることにしよう。

●可能なこと、不可能なこと

type Aが採用する松下電器のBDドライブ

 まず搭載されるドライブだが、type R、type Aともに松下電器が発表したBDドライブが採用されている。BD-RE 2.0、BE-R 2.0の読み書き、BD-ROMの読み取りはもちろん、ケース付きDVD-RAM以外、すべてのDVD、CDメディアを使用できる。5.25インチドライブ採用のtype Rは記録型BDに2倍速書き込みが可能だが、スリムドライブを搭載するtype Aは等倍速のみの書き込みとなる。

 BDドライブ搭載VAIOで可能になる機能を整理すると

・コピーワンス録画データのBD-REへのムーブ
・録画されたBD-R/REの再生
・市販BDソフトの再生
・HDVなどHD映像ソースを用いたBDAVの作成


である。それぞれについて触れる前に“できないこと”について断っておきたい。

 コピーワンス録画はBD-REにしかムーブできない。当然、「なぜBD-Rはダメなのか?」という疑問が沸くはずだ。しかし、これは技術的な問題ではなく、単純に開発が間に合わなかったからとのことだ。ユーザーから見ればREでもRでも同じようなものだろうということになるが、規格上は別に定義されている。追記などの仕様にも若干の違いがある。

 このためソフトウェアがBD-Rへのムーブに対応すれば、(技術的には)BD-REと同じようにBD-Rに対して番組をムーブできる。ソニーにこの点を訊いてみたところ、やや歯切れは悪いものの対応の意向を示していた。

 歯切れが悪い理由はおそらく、BDへのムーブを行なう際に使用しているソフトウェアが、自社製ではない(Ulead製)だからかもしれない。しかし言い換えれば、同じソフトウエアを利用することで、他ベンダーからもムーブが可能なBDドライブ搭載PCが登場する可能性を示唆しているとは言えるだろう。

 ただ、実際にtype Aを使ってみたところ、CMカットはもちろん、チャプター位置の挿入など簡単な編集さえも全く行なえない。録画した番組を、単純にそのまま移動させることしかできない。おそらく、本機でBD-REにムーブしておいたディスクを、将来発売されるBDレコーダにかければ、カット編集やチャプター分割が可能になると思われるが、現時点では実機がないため確認できない。

 映画ファンでNHKやWOWOWの映画放送が録画ソースのメイン(この場合、BSデジタルが視聴できるtype Rを使うことになるが)ならば、編集が不可能でもさほど不便はないが、地上デジタルの番組を保存したいといった場合には少々不便かもしれない。なお本機で作成したBD-R/REは、裸ディスクに対応したプレーヤ/レコーダでも再生可能になる予定だ。

 また市販BDソフトの再生だが、これには「WinDVD BD for VAIO」を用いる。このソフトは「WinDVD」の名前は付けられているが、別仕立てのアプリケーションでプレーヤのスキンも異なる。BDMVとBDAVをともにサポートし、BDMVに関してはHDMV(通常メニュー形式のBDビデオ)とBD-J(Javaを用いたインタラクティブ機能を実装するBDビデオ)の両方を再生可能だ。もちろんMPEG-2、H.264、VC-1、すべてのビデオコーデックを再生可能で、音声に関してもDolby Digital PlusとリニアPCMをサポートしている。

 ただし、以前にこの連載でも述べたようにH.264に関してはメディア転送レート(BDドライブからの読み込み時のレート)が20Mbpsを超えると、GPUのアシストを利用しても処理が間に合わなくなる。VC-1に関しては再生負荷がH.264よりも少ないものの、同様に瞬間的にはコマ落ち発生の可能性がある。このため、本機ではH.264とVC-1でコマ落ちする可能性があるとソニー自身が警告している。

 実際にはどうか?というと、初期のソニー・ピクチャー製BDソフトは、すべて平均18〜19Mbps程度のMPEG-2でありコマ落ちは起きない。ただしすでにH.264あるいはVC-1での制作が進んでいる別スタジオの映像ソフトもある。常時コマ落ちして見にくいといったほどではないと思われるが、多少のコマ落ち発生は覚悟しておいた方がいい。なお、これはHD DVDドライブ搭載PCでも事情は同じだ。

●BDドライブ活用を行なうためのソフトウェア

 ではBDドライブを利用するソフトウェアの使い勝手について、各々、紹介していくことにしよう。

・StationTV Digital for VAIO Ver.4.0 + BD録画エクステンション

 VAIOでは昨年モデルから引き続き、ピクセラ製のデジタルハイビジョン視聴および録画・再生ソフト「StationTV Digital」が添付されている。Do VAIOとは全く異なる操作性だが、呼び出しはリモコンの「デジタルTV」を押すだけで、ストレスなく利用できる。

 BDからは話が逸れるが、今回からデジタル放送におけるAAC 5.1ch音声を、Dolby Digital 5.1chに再エンコードしてDVD化することが可能になった。音楽番組などで、映像はSDでもかまわないが、できればサラウンド音声は引き継ぎたいといった場合には大変便利だ。

 BDあるいはDVDへのムーブは、録画リストから目的の番組を選び「BD作成」あるいは「DVD作成」を選ぶだけ。ムーブそのものはStationTV Digitalではなく、外部のエクステンションモジュールで行なわれる。ところが、このモジュールがリモコン対応していないため、BD作成を指示するまではリモコン操作が可能なのに、その後はマウスによる操作へと移行するというやや不自然なユーザーインターフェイスになっている。改善を望みたい点だ。

 また複数タイトルのムーブを同時に行なうことも不可能で、1タイトルづつ順番にムーブしていかなければならない。このあたりの操作感が悪いことは、ソニー自身も自覚していると思うが、自社開発ソフトではないだけに簡単には対応できなかったのかもしれない。

 とはいえ、裸ディスクをサポートするBDレコーダの発売は、各社とも年末(おそらく11月ぐらい)と予想されることを考えれば、それでも魅力と感じる人も少なくはないだろう。家電製品とは異なり、内蔵あるいは外部ドライブでのHDD増設が可能な点もPCならではの長所と言える。

 願わくはPCならではのもう1つの長所、ソフトウェアのアップデートが容易という特徴を活かして、さらに使いやすい環境をこれから少しづつでも整えていくことを期待したい。

Station TV Digitalの画面。「BD作成」というボタンが追加されているのがわかる BD作成ボタンをクリックすると、このツールが起動する。ディスクのフォーマットを指示しない場合は常に追記動作となる。ドライブが松下製のBDマルチドライブであることがわかるはずだ


・Ulead BD DiscRecorder for VAIO

BD DiscRecorderはBDAV形式のディスクのみ作成可能。ビデオコーデックはMPEG-2のみが利用できる。SDビデオのBDAVディスクを作成可能なため、1クール分のドラマを1枚に収めるといったことも可能だ

 このソフト、基本的にはDVD Movie WriterのBD版である。ただしDVD Movie WriterはDVD-Videoを作成することが可能だが、BD DiscRecorderはBDMV形式(DVD-Videoに相当)を作成できない。作成できるのはDVD-VRフォーマットライクなBDAV形式だけだ。このため凝ったメニューなどは作成できない。

 これはBD-R/REでのアプリケーションフォーマットとして、BDMV形式が定義されていないためだ。ただし、それでは良くない、ということで、現在、BDアソシエーション内でタスクフォースが立ち上がっており、2〜3カ月で記録型BDでBDMV形式に準ずるメニューナビゲーションを利用する規格が決められることになっている。

 将来的にそのフォーマットに対応する予定はあるのかとソニーに問い合わせたが、明確な答えは現時点では得られていない。Ulead次第といったところだが、まずは規格が決まらなければどうにもならないということだろう。

 メニュー作成機能がないため、操作や機能はシンプルで、プロジェクトの動画形式を決めれば、あとはHDVやファイルから動画を追加してディスクの作成を指示するだけ。なお、HD映像だけでなくSD映像のディスクとすることも可能だ。最近のHDVカムコーダ市場の急速な立ち上がりを見ると、一定のニーズはありそうだ。1層同士の比較でBDはDVDの5倍以上の容量があるため、容量単価の高さはともかく用途によっては利用価値がありそうだ。

Station TV Digitalの画面。「BD作成」というボタンが追加されているのがわかる BDへと書き込みを行っているところ

・WinDVD BD for VAIO

 市販BDタイトルが発売されていないため、その機能やH.264再生時のパフォーマンスについては現時点で未知数である。今回はTV番組をムーブしたディスクとBD DiscRecorder for VAIOで作成したディスクの両方を再生させたが、MPEG-2に限って言えば普通のWinDVDとほとんど変わらないレスポンス、操作性である。

 なおリージョンコード設定の画面を見ると、北米と日本が同じリージョンになっていることが確認できる(HD DVDには現時点でリージョンコードがない)。このソフトを起動中はスクリーンキャプチャが行なえなくなるため、画面を写真で公開する。



WinDVD BDのセットアップ画面。BD-REに記録されたディスクであることがわかる 地上デジタル放送の録画をムーブ、再生させてみたところ、なぜかビデオのビットレートが20Mbpsと表示された。放送フォーマットに合わせて記録されるため、解像度は1,920×1,080ではなく1,440×1,080ピクセルと表示されている リージョンコードの設定画面。米国、カナダ、日本などはリージョンAで同一。中国、インドを除くアジア系はほとんどがリージョンAに属する

VAIO type AのBDドライブ 機能的には通常のWinDVDとほぼ同じ。ドルビーヘッドフォン機能も備えている

●本気でBDを楽しむならば

作成したBDMVディスクをWinDVD BDで再生した。右上にビットレートなどのインフォメーションを表示させることもできる

 他社製ソフトを使いながらも、このタイミングでよく製品としてまとめた、というのが正直な印象だ。家電製品よりも早くBDMV再生とデジタル放送番組のムーブに対応した点は評価すべきだろう。

 しかし紹介の中にも書いたように、まだまだ快適に使えるという状態ではない。とりあえず、必要最低限のサポートをこなしたところ。今後のアップデート次第で、良くも悪くもなるというスタート地点に立ったところだ。

 もしソニーが本気でBDドライブ搭載VAIOを強くアピールしたいなら、ここでひとつ“ここまではサポートしたい”リストを公開してはいかがだろう。最初の製品を購入する側は不安があるものだ。たとえば将来はBD-Rへのムーブを可能にする。将来はデジタル番組録画の簡易編集機能を実装する。高価な製品だけに、その程度は“やる”と宣言してほしいと思うのは筆者だけではないだろう。

 また今回、試作機でテストしている中で強く感じたことがひとつある。それはディスプレイ自身の改善が、今後強く求められるだろう、ということだ。本当にPCで高品質なHDパッケージソフトを楽しんでもらおうというのなら、フルHDならではの魅力ある映像が楽しめなければならない。

 ところが色再現性や階調性といった問題の前に、PC用のLCDでは応答速度が遅いなどの理由で、せっかく細かなディテールが含まれるHDの映像も、動きボケによってディテールがなくなってしまう。動画時の見かけ上の解像度が下がってしまうのだ。これはオーバードライブで多少、応答を速めても完全には対応できない。

 液晶TVの場合、オーバードライブによる応答速の向上に加え、最近は倍速駆動で間に黒フレームを挿入したり、コマ間補完を行なうことでフレームレートを上げるといった手法で動きボケを極力避ける工夫をしている。

 PCでこれらの手法を導入するのは難しいが、何らかの方法で動きボケに対応していなければ「PCでフルHD映像を見る」といっても、その魅力は100%引き出せない。機能や使い勝手の改善に加え、実際に目に入るディスプレイ上の画質についても、何らかの対策を施す必要がありそうだ。

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(2006年5月17日)

[Text by 本田雅一]


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