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見えてきた次期モバイルプラットフォーム「Napa」




●カリフォルニア州のワインカントリー巡り

 「Carmel(カーメル)」、「Sonoma(ソノマ)」と来て、この先は「Napa(ナパ)」を経て「Santa-Rosa(サンタローザ)」へと。Intelのモバイルプラットフォームのコードネームは、サンフランシスコ周辺に詳しければ、馴染みのある地名ばかりだ。「カリフォルニアのワインカントリーの地名に沿っている」とIntelのAnand Chandrasekher(アナンド・チャンドラシーカ)副社長兼事業本部長(Vice President/General Manager, Mobile Platform Group)はプラットフォームのコードネームを説明する。

 Sonomaが登場した今、次の焦点はNapaとそれに続くSanta-Rosaの姿ということになる。Napaは、デュアルコアCPUの「Yonah(ヨナ)」と、第2世代PCI Expressチップセット「Calistoga(カリストガ、ブランドは「Intel 945GM/PM/955XM」)、次期サウスブリッジチップ「ICH7-M」、PCI Express無線LANモジュール「Golan(ゴラン、ブランドは「Intel PRO/Wireless 3945ABG」)で構成される。Santa-Rosaは、第2世代デュアルコアCPU「Merom(メロン)」と、次々期チップセット「Crestline(クレストライン)」と、次々期無線LANモジュールの構成となるはずだ。

 Intelは、OEMメーカーに2005年中にNapaのパーツを出荷、2006年頭にNapaベースのノートPCが市場に登場するように計画している。Yonahは2005年4〜5月頃からエンジニアリングサンプルが顧客に提供される予定だ。ノートPCは設計期間が長いうえに、通常は新アーキテクチャCPUのサンプリングは早い段階から行なわれるため、特に余裕があるわけではない。

 チップセット側は今年早期にはサンプルが揃うため、Intelは「Kikayon(キカヨン)」と呼ばれる代替パーツをYonahの代用として一部に提供しつつあるらしい。Kikayonについては、まだ情報が入手できていない。しかし、Kikayonが旧約聖書に登場する“ごまの木”で、ヨナ(Yonah)を救ったあと枯れてしまうことから、Yonahの暫定的な代替モジュールらしい。

●Yonahは通常電圧版とLV版がまず登場

Yonahのダイ
 Yonahのうち、まず登場するのはPentium系ブランドの通常電圧版とLV(低電圧)版だ。2006年の第1四半期に、通常電圧版が4sku(製品構成)、LV版が2sku登場する。

 通常電圧版とLV版はどちらもデュアルコアで、コードネームは「Yonah-2M」となっている。Intelは、もともとデュアルコア版Yonahのコードネームを「Yonah-2P」(一部ではYonah-2Dとも呼んでいた)としていたが、現在はYonah-2Mに変わっている。これは、デュアルコア版のYonahが2MBのL2キャッシュを搭載しているためだと見られる。

 続いて、2006年第2四半期にはPentiumブランドのULV(超低電圧)版と、Celeron M系のバリュー向け版のYonahが登場する。Celeron M系は、通常電圧版とULV版の両方が第2四半期中に投入される見込みだ。

 これらのYonahは「Yonah-1M」と呼ばれている。Intelは、以前はULV版のYonahを「Yonah-1P」というコードネームで呼んでいた。これは、ULV版はシングルコアになるためだ。そのため、Yonah-1Mは、シングルコアで1MBのL2キャッシュ構成だと推測される。もっとも、Intelの場合、Yonah-2MとYonah-1Mを同じダイ(半導体本体)から作っている可能性がある。つまり、Yonah-1Mは、Yonah-2Mの片方のCPUコアとL2キャッシュの半分を動作しないようにしたバージョンである可能性もある。

 こうしてみると、Yonahは一気にIntelのモバイルの全製品ラインに渡って投入されることがわかる。ロードマップの詳細は、来週レポートするが、IntelはYonahを上から下まで(Top to Bottom)、一気に導入するつもりのようだ。

●スケジュールがずれ込みNapaと同期したYonah

 Intelは、もともとモバイルプラットフォームを中期サイクルで更新する計画を立てていた。「モバイルでは18カ月毎にプラットフォームを更新する」とChandrasekher氏は一昨年語っている。正確には12〜18カ月毎に新プラットフォームをリリースし、18カ月間プラットフォームとして提供するというサイクルだ。

 しかし、Intelの計画は後ろへとずれ込んでいる。初代CentrinoであるCarmelからSonomaの間は約18カ月のはずが、実際には2年近くかかってしまった。2004年9月の予定が2005年1月だから4カ月ずれたことになる。Napaも2005年第3四半期の予定だったのが、2006年頭に正式発表というスケジュールへ切り替わっている。2006年中盤の予定だったSanta-Rosaも同様に後ろへスライドしたと推測される。

 その結果、モバイルプラットフォームの移行は、モバイルCPUの移行とリンクし始めている。例えば、Yonahはもともとシングルコア版のYonah-1PがSonomaプラットフォームで先行して登場し、NapaでYonah-2Pが登場するはずだった。今はNapaとYonahは完全に同期している。今回のSonomaもDothan FSB533MHzと同期しているし、Meromも元はNapaで登場するはずだったがSanta-Rosaと同期する可能性がある。

 Yonahと同期したことでNapaは非常に重要なプラットフォームチェンジとなった。それは、CPUアーキテクチャが変わり、モバイルシステムのパフォーマンスとその方向性が変わる節目になるのがNapaだからだ。

Intel Mobile CPU移行予想図
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●YonahのCPUコアの機能拡張

 YonahのCPUコアは、Dothanをベースにしていると言われている。しかし、いくつかの重要な機能拡張も加えられている。

 命令セットでは、YonahではSSE3命令がサポートされるという。DothanではSSE/SSE2までの命令しかサポートしていなかった。SSE3命令のサポートは、リソースをそれほど増やす必要がないため、比較的容易だ。もっとも、Yonahでは浮動小数点演算性能と、SSE系のスループットも向上されたという。ただし、具体的な改善内容についてはわからない。

 アーキテクチャ上のフィーチャ拡張も行なわれる。Intelの4つの新テクノロジ“4 Ts”のうち、ハードウェアセキュリティ「LaGrande(ラグランド)」と、仮想マシン支援ハードウェア「Vanderpool(バンダプール)」がYonahには実装される。それに対して、64bit拡張である「EM64T(Extended Memory 64 Technology, コードネームClackamas)」と、NetBurstで実装したSMT(Simultaneous Multithreading)型の「Hyper-Threading」は実装されない。

 LaGrandeとVanderpoolは、CPU側のハードウェアはある程度共有されるため、この2機能の実装は事実上ペアになっていると考えていい。CPUへの実装も、リソースをそれほど食わないため、Yonahのコアに実装されたと推測される。Intelは、両機能のうち、まずVanderpoolから有効(イネーブル)にしていく計画のようだ。2006年頭にYonahが登場した時点で、Vanderpoolを利用できるようにすると見られる。

 LaGrandeを有効にしないのは、LaGrandeはMicrosoftの次期OS「Longhorn(ロングホーン)」に実装される「Next-Generation Secure Computing Base (NGSCB)」がないと当面は意味をなさないためだと見られる。逆を言えば、NGSCBの実装をテストするためのパーツとして、MicrosoftにはLaGrandeを有効にして提供するはずだ。

 IntelがEM64Tの実装を見送ったのは、EM64Tへ対応するには演算ユニットやレジスタファイルなど、ハードウェアリソースそのものの大幅な拡張が必要になるためだと推測される。64bit化すると設計期間が長くなる上に、ダイサイズ(半導体本体の面積)も大きくなるためだ。

 もっとも、Yonahについては、物理メモリアドレッシングが36bit(64GB)という報道も流れている(Dothanは32bit)。YonahがEM64Tを実装していないとすると、これは36bitまでをページングで実現する「PAE(Physical Address Extention) 36」によるサポートだと考えられる。PAE 36は実質的にサーバー向けなので、この36bitアドレッシングは、ノートPC向けではなく、ブレードサーバーソリューション時のためのものだと推測される。

 IntelはデュアルコアをSMTの進化形と位置づけており、YonahではSMT型のHyper-Threadingは実装しない。しかし、SMTはメモリレイテンシを隠蔽してCPUコアをビジーに保つ効果もある。そのため、デュアルコアとSMTの併存も、効果はある。それでも、Hyper-ThreadingをYonahに実装しなかったのは「消費電力的には不利になるため」とIntelのShmuel (Mooly) Eden氏(Vice President, Mobile Platforms Group, Director, Marketing )は語る。SMTはCPUコア自体の稼働率を上げるため、平均消費電力の上昇を招く。十分な「スレッドレベル並列性(TLP:Thread-Level Parallelism)」がデュアルコアで見込めるなら、SMTを実装することはないと判断したと見られる。

 YonahのL2キャッシュやFSB、またNapaの他のパーツの概要については、次のレポートで説明したい。

□関連記事
【2004年12月7日】【海外】Sonoma世代に刷新される来年のモバイルCPU
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2004/1207/kaigai139.htm
【2004年9月11日】【笠原】長時間駆動と高性能を兼ね備える2006年のノート
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2004/0911/ubiq78.htm

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(2005年1月21日)

[Reported by 後藤 弘茂(Hiroshige Goto)]


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