■標準レンズ(40~53mm)50mmは35mm判の標準レンズだが、R-D1に組み合わせると75mmになる。標準レンズは開放F値が明るい製品が多く、大口径中望遠レンズとして利用価値が非常に高い。 今回用意した標準レンズは全部で25本。だが、すべてのレンズに付いてコメントすると、誌面が尽きてしまうので特徴的なレンズだけを選んで解説することにしたい。 ●SMCペンタックス43mmF1.9 このレンズは35mm一眼レフ用として発売されたリミテッドレンズをライカスクリューマウントレンズにしたもの。開放時はややソフトな描写だが、一段絞るとシャープさが増す。
●ミノルタ スーパーロッコール45mmF2.8 '48年にミノルタが発売したレンズ。解像力が非常に高く、髪の毛の1本1本が見事に再現されている。ただし手前の花のボケにややクセがある。
●キヤノン50mmF0.95 過去、日本で発売された35mm用カメラレンズの中でいちばん明るいF値を誇る。 開放ではコントラストが低く、全体にふわっとした描写になる。被写界深度が極端に浅いことも、ソフトに見える原因になっいているようだ。ボケ味は銀塩で撮影したときよりと自然に見える。F2まで絞るとコントラストがアップし、シャープになる。 【追記】本来はキヤノン7専用だが、このレンズは私が自分でライカMマウントに改造したものだ。
●ニコン ニッコール50mmF1.4 '50年に発売されたニコン製大口径標準レンズ。開放だと全体にソフトな印象を受ける。この傾向はF2.8でも変わらず、F4まで絞るとシャープになる。
●ライツ ズマリット50mmF1.5 '49年に誕生したライカの大口径標準レンズ。開放で撮影すると軟調になることで有名である。 開放だとフレアが多く、やはりR-D1でもかなり軟調に写る。ただし全体の雰囲気は悪くない。F2.8に絞るとシャープになるが、ボケ味はそれほどきれいではない。
●ジュピター50mmF1.5 '61年に製造されたロシア製大口径標準レンズ。カール・ツアイスのゾナーのコピーと言われている。他の大口径レンズと同じように開放だとソフトで、2段絞るとシャープになるが、ボケ味は、はっきり言って汚い。
●キヤノン50mmF1.8 '52年頃に製造された製品。発売当初から鮮鋭度の高さで定評が高かったレンズである。評判通り、開放から緻密な描写が得られるが、絞ると一段とシャープさが増す。ボケ味も自然だ。
●ライツ ズマール50mmF2 今回使用した中で、恐らくいちばん古いレンズ。最初の製品の発売は'39年。なにしろ古いレンズなので前玉に細かいキズが付いている。そのため写りはかなりソフトだ。 開放からシャープさは抜群。ボケ味も良く、ソフトフォーカスレンズととらえれば、R-D1との相性は抜群と言える。
●ライツ ズミクロン50mmF2 ライカを代表する標準レンズ。製造年代によってバリエーションがあるが、このレンズは、'79年にカナダ工場で作られれたもの。開放から全体に鮮明な印象を受ける。ただし開放だとややソフトさが残るが絞るとシャープになる。ボケ味も美しい。
●ライツ デュアルレンジズミクロン50mmF2 このレンズは専用アタッチメントを取り付けると約45cmの接写ができるが 、残念ながらR-D1で距離計の基線長の関係で接写ができない。発売は'56年。 開放時、前出のズミクロンに比べる開放時のソフト感が強く、絞るとシャープになる。
●コニカ ヘキサノン50mmF2.4 高級コンパクトカメラのヘキサーに装着されていたレンズをライカスクリューマウント化したもの。開放からシャープで髪の毛の1本1本が尖鋭に再現されている。絞りによる画質変化も少ない。
●ライツ エルマー50mmF3.5 このレンズはいわゆる“赤エルマー”と呼ばれる後期型。発売は'50年代の終わり頃。マルチコーティングが施されているのでヌケが良く開放からシャープに写る。
●フォクトレンダー ノクトン50mmF1.5 さすがに最新のコンピュータ技術を駆使して設計されたレンズだけあって開放からコントラストが高く非常にシャープ。前後のボケも自然である。
■望遠レンズR-D1の内蔵しているファインダーが対応するレンズの焦点距離は50mmまで。それ以上の焦点距離のレンズを組み合わせた場合、距離計は連動するが、精度は保証されていない。 今回の撮影ではカメラを三脚に固定。被写体は椅子に座ったモデルと、ピント合わせのしやすい条件を作りだしたが、それでもピント合わせにはずいぶん苦労した。中にはピント外れの作例もあるが、この点を理解して、あくまでも参考としてとらえて欲しい。 ●フォクトレンダー カラーヘリアー75mmF2.5 開放でソフトっぽく見えるのは、恐らくピントが正確に合っていないから。F5.6まで絞ると被写界深度が深くなりシャープになる。
●キヤノン85mmF1.9 '52年頃に発売された大口径中望遠レンズ。開放で撮影したときの被写界深度が非常に浅い。開放のカットではやや前ピンになり前髪にピントが合ってしまった。
●ライツ ズミクロン90mmF2 今度は後ピンになり肩の部分の髪にピントが合っている。 大口径中望遠レンズを使った近距離撮影は、R-D1ではほぼ不可能と考えたほうが良いだろう。
●ライツ エルマー90mmF4(沈胴タイプ) 開放F値が4と暗いので、何とかピントが合った。90mmクラスではF4がピント合わせの限界のようだ。F値は暗いが見かけ上の被写界深度は意外と浅い。
●キヤノン100mmF2 F2という大口径レンズだが、奇跡的に開放でピントが合った。ほつれ毛が鮮明に再現され、レンズの解像力の高さを示している。ボケ味はやや二線ボケの傾向がある。
●フェド100mmF6.3 '40年代製造と思われるロシア製レンズ。銀塩フィルムで撮影すると緑色がかった変な発色になるレンズだか、デジタルで撮影すると違和感を感じなくなる。
●ニコン ニッコール135mmF3.5 ニコンが'50年頃に製造した望遠レンズ。ピントが合っている部分はシャープだが、ボケ味はそれほど美しくない。
●ライツ ヘクトール135mmF4.5 旧世代のライカの望遠レンズ。製造は、1950年代。前ボケが二線ボケになる傾向がある。
●シュタインハイル クルミナー135mmF4.5 '50年代にドイツのシュタインハイル社が製造した普及タイプの望遠レンズ。もともとこのレンズはフレアが多いが、R-D1でもその傾向が現れている。
■特殊レンズ●ケンコー ピンホールレンズ この製品は、光学ガラスに直径0.2mmの真円部分を残してエッチングを施しピンホールを作ってある。開放F値が250と極端に暗いためISO400でも8秒という長時間露出になった。しかも露出計の測光輝度範囲を超えているため露出不足になり、現像時にプラス1.5EVの補正をすることで適正露出となった。第一印象はソフトフォーカスレンズで撮影したように見えるが、ピンホールにしてはかなりシャープである。また光束が極端に細いためCCD上のゴミが見事に写ってしまった。
●メディアジョイ ピンホールレンズ この製品は、薄い鋼板に小さな穴を開けたオーソドックスなスタイルのピンホールレンズだ。ケンコー製に比べると像が不鮮明だ。
●メディアジョイ ソフトフォーカス90mmF2.8 球面収差を利用した本格的なソフトフォーカスレンズ。絞りを絞るとシャープさが増すはずだが、R-D1の場合、逆にフレアっぽくなった。デジタルカメラとの相性はあまり良くないようだ。
■マウントアダプターを介して一眼レフ用レンズを使うハンザが発売しているマウントアダプターを利用すると各社の一眼レフ用レンズがR-D1に装着できる。このアダプターはボディ側の距離計が利用できるので利用価値が高い。 ●SMCペンタックスM40mmF2.8 鏡筒が薄いパンケーキレンズとして有名な製品。この程度の焦点距離と開放F値なら、しっかりピントが合い十分実用に耐える。
●コムラーテレモア2× この製品はレンズの焦点距離を2倍にするリアコンバーターだ。一眼レフ用以外にもライカマウント用の製品も作られていた。 とりあえずズミクロン50mmF2と組み合わせて実験。この場合、合成焦点距離は100mm、開放F値は4になる。意外と言っては失礼だが、レンズ開放でもそれほど画質が落ちてない。あまり長い焦点距離のレンズと組み合わせるとピントが心配だが、50mm程度ならなんとかなるようだ。
■まとめ「ピントさえ合えば、古いレンズでもきれいに写る」 これが私の率直な感想である。R-D1がレンジファインダー機である以上、撮影者のレンジファインダーに対する慣れが、結果を大きく左右してしまう。私はかなり慣れているつもりだったが、やはり望遠レンズの撮影では苦戦を強いられた。やはり「実用」ということを考えれば、望遠撮影は50mmで止めておいたほうが良いだろう。また古いレンズの場合、距離計連動用カムが狂っている場合があるので注意が必要である。 銀塩フィルムではレンズによって発色の差が顕著に出るが、R-D1では、それほど大きな差は認められなかった。RAWで撮影しているので顕著な差が出ることを期待したが、CCDで得られた情報をデジタル化する際にデータが平均化されてしまうようだ。 これに対しフレアの出方は、銀塩フィルムと良く似ている。ただし大口径レンズを開放で撮影したときなどは、フレアの量が銀塩よりも強調される傾向がある。もちろんすべてのレンズが、これに当てはまるわけではないが、F値による画質の変化を楽しむならR-D1に優るカメラはない。 いずれにしてもR-D1には70年以上前レンズから最新のコンピュータ設計技術によって設計された最新のレンズまで装着可能。過去と現代の技術を結ぶ懸け橋として、今後たいへん大切な役割を担っていくことだろう。 □エプソンのホームページ ■注意■
(2004年7月7日) [Text by 中村文夫 / モデル 汐瀬 ナツミ]
【PC Watchホームページ】
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