R-D1の最大の特徴は何と言ってもライカMマウントを採用していることだ。若干の制約はあるものの、ライカ用として製造されたレンズならほとんどの製品が装着できる。そこで私の所有するレンズを総動員し、どんなふうに写るのか確かめてみた。恐らくこんなにたくさんのレンズをR-D1に付けて撮影したカメラマンは、私が始めてではないだろうか。 まず撮影条件について説明しよう。撮影場所はインプレス社内のスタジオ。ここは、もともとテレビ撮影用なので天井にビデオ用の蛍光灯が備え付けられている。色温度は約3,000~3,500K。カメラのホワイトバランスはオート、撮影モードは絞り優先AE、ピンホールレンズを除きISOは200で撮影した。 記録方式はRAWで、添付される現像ソフト「Photolier」でJPEGに現像した画像をそのまま掲載している。現像時に色温度を3,300Kにセットした以外は、パラメータは変更していない。 使用した機材は量産前の試作機なので、量産機には外観、機構などに変更が加えられる可能性がある。またボディ側のファインダーが対応していない焦点距離のレンズでは、外付け式ビューファインダーを利用してフレーミングしている。 全部で47本と数が多いため、広角レンズ編と標準/望遠/特殊レンズ編に分けた。 ■超広角レンズ(16~21mm)ボディ側のファインダーがフレーミングに利用できないので、外付けファインダーを用意しなければならないが、このクラスのレンズは個性的で面白い製品が多い。 アベノンを除きレンズ構成は前後対称型。一般的にこの設計のレンズは周辺光量不足が目立つが、逆に広角レンズらしさを強調してくれる。また現像ソフトの補正機能を使えば修正することもできる。 ピント合わせは、リコーとアベノンを除き目測式。焦点距離が短く被写界深度が深いので、極端なピンボケになることはない。だが近距離での撮影には注意が必要である。 ●カール・ツアイス ホロゴン16mmF8 (コンタックスG用レンズ改造品) 今回試写に使用したレンズの中で最も焦点距離が短いレンズだ。このレンズはコンタックスGシリーズ用を、ライカMマウントに改造したもの。 ホロゴンは前後対称型超広角レンズの代表ともいえる製品で、超広角レンズにありがちなディストーションがほとんどない。ただし前後対称型に共通した特徴である周辺光量不足が多いことでも有名である。またレンズ後群が大きく出っ張っているので、R-D1に装着できるか心配だったが問題なく装着できた。 絞りはF8固定式なので、シャッタースピードはスローになり1/2秒になった。このレンズは距離計が連動しないので、ピント合わせは目測式。作例はやや後ピン傾向だが、瞳がやや不鮮明なのはモデルが露光中に動いてしまったたからだ。 このレンズはレンズ後群とCCDの距離が近いので、画面周辺部ではかなり浅い角度で光線が当たることになる。確かに周辺光量不足が目立つが銀塩の場合とそれほど違いはない。また現像ソフトにある焦点距離による補正機能を使えば、これを目立たなくできる。次の写真の右は、15mmに設定して補正したものだ。
●ルサール20mmF5.6 この製品はロシア製超広角レンズとして有名な製品。ホロゴンほど周辺光量不足は目立たたず、絞ってもそれほど差は出なかった。なお20mmクラスのフレーミングには28mm用の外付けビューファインダーを使うと便利だ。
●リコー リケノンGR 21mmF3.5 リコーの高級コンパクトカメラGR-21のレンズをライカスクリューマウントレンズとして発売したもの。不思議なことに開放で撮影したときのほうが、周辺光量不足が目立たない。現像パラメーターが何か影響を与えているのだろうか?
●フォクトレンダー カラースコパー21mmF4 リコーに比べると周辺光量不足が少なめ。目測のため、開放で撮影したカットが、やや後ピンになってしまった。
●アベノン21mmF2.8 このクラスで唯一、一眼レフと同じくレトロフォーカスタイプを採用している。そのため他のレンズに比べ周辺光量不足が格段に少ない。また銀塩で撮影したときよりR-D1のほうが、周辺光量不足が目立たなくなる傾向がある。開放F値が明るいので被写界深度も浅い。
■広角レンズ1(28mm)28mmは35mm判の42mmに相当。準標準レンズとして使いやすい焦点距離だ。またボディ内蔵のフレームが利用できるので実用的だ。レンズ構成はMロッコールを除き前後対称型。ピント合わせはオリオンだけが目測式だ。 ●カール・ツアイス ビオゴン28mmF2.8 (コンタックスG用レンズ改造品) このレンズは、コンタックスGシリーズ用レンズをライカスクリューマウントに改造したもの。絞り開放だとやや周辺光量不足が目立つが、1絞り絞るとかなり改善される。
●ミノルタ Mロッコール28mmF2.8 ミノルタCLE用に発売されたレンズ。開放からシャープで中古市場でも人気が高い製品である。開放で撮影した画像を拡大してみると、非常にシャープであることが分かる。デジタルカメラでも、高い性能が十分に発揮されている。
●オリオン28mmF6 カール・ツアイスのトポゴンをベースに'60年頃に製造されたロシア製広角レンズ。見事なまでの前後対称型設計だが、開放F値が暗いためか、周辺光量はそれほど目立たない。中間のトーンも良く再現されている。
●ミノルタ Gロッコール28mmF3.5 高級コンパクトカメラミノルタTC-1のレンズをライカスクリューマウント化したもの。他のレンズに比べ周辺光量が目立ち、絞ってもそれほど改善されない。
●リコー リケノンGR 28mmF2.8 リコーの高級コンパクトカメラGR-1のレンズをライカスクリューマウント化したもの。開放だと画質が甘いが、絞るとシャープになる。
●フォクトレンダー カラースコパー28mmF3.5 開放F値を3.5に抑えることで、コンパクトさと高画質を目指したレンズ。開放から十分シャープだが、F5.6以上に絞るとさらに画質がアップする。
■広角レンズ2(35mm)35mmは35mm判の53mmに相当する。今回、撮影に使ったレンズはすべて前後対称型。35mmはレンズの種類が多く、明るいレンズを選べば望遠レンズのような被写界深度の浅い表現ができるし、暗いレンズはコンパクトなので軽快な撮影が楽しめる。 ●ライツ ズミルックス35mmF1.4 今回用意したレンズは、M3用のメガネ付きレンズのため、R-D1に取り付けてもファインダーと距離計が利用不可能。よって作例なし。
●キヤノン35mmF2 '60年代に設計された大口径広角レンズ。開放だと像が甘く、F2.8に絞るとやや改善されるが甘さは残る。F4に絞るとかなりシャープになる。F値による画質の変化は、銀塩で撮影した場合と酷似している。
●キヤノン35mmF2.8 普及タイプの広角レンズ。開放F値が暗いので像は開放からシャープ。絞るにしたがって像のシャープさが増す。
●ライツ ズミクロン35mmF2 このレンズは現行商品の一世代前の製品である。非球面レンズは未使用だが、開放から高い性能を発揮する。他のレンズに比べ階調も豊かだ。
●ジュピター35mmF2.8 カール・ツアイスのビオゴンをコピーしたロシア製レンズ。ボケ味も良く絞り開放からシャープに写る。ただしレンズ後群が異様に大きいので、逆光のときにどのような影響が出るか不安が残る。
●三協光機 Wコムラー35mmF3.5 昭和40年代に一世を風靡した交換レンズメーカー、三協光機の製品。画面周辺部の画質が極端に落ちるなど銀塩カメラで使ったときの印象はそれほど良くなかったが、画面サイズの小さなデジタルカメラとは相性が良いようだ。レンズ開放から十分実用になる。
●フォクトレンダー カラースコパー35mmF2.5P / カラースコパー35mmF2.5C この2本のレンズは同じ設計のレンズをデザインの違う鏡筒に収めたもの。2本とも写りに差はなかったので、Pタイプで撮影したカットだけを掲載することにしたい。 開放からシャープだが、F2.5にしては、被写界深度が浅いように見える傾向がある。
□エプソンのホームページ ■注意■
(2004年7月7日) [Text by 中村文夫 / モデル 汐瀬 ナツミ]
【PC Watchホームページ】
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