以前の本レポートでは、2005年のDothanの後継CPUがデュアルコアになるという情報をお伝えしたが、その後の追加取材で、2005年のプラットフォームの開発コードネームが“Napa”(ナパ)、さらにはこれまで“Jonah”とお伝えしてきたDothanの後継CPUの開発コードネームの綴りが“Yonah”であることも判明した。 ここでは、IDF以降に明らかになった最新情報を交えつつ、今後数年間のIntelのモバイルプラットフォーム戦略をまとめていきたい。 ●Jonahではなく“Yonah”だった、Dothanの次世代CPUのコードネーム
これまで、Dothanの後継CPUの開発コードネームを“Jonah”(ヨナ)であると伝えてきたが、実は発音こそ同じだが、綴りが異なる“Yonah”である可能性が高くなってきた。この情報は、デュアルコアについて引き続き取材を続けたところ、ある情報ソースによりこの情報がもたらされた。 実は“ヨナ”というコードネームは、Intelにかなり近い情報筋が発音でだけ教えてくれたものだった。その後、筆者が別のソースに確認していく課程で“Jonah”ではないかということになり、Jonahとお伝えしていた。 ご存じのように、Baniasファミリーの開発コードネームは、開発が行なわれているイスラエルの地名に基づいたものとなっている。このため、Jonahで確認したところ、確かにイスラエルの地名であったので、この綴りで紹介してきた。 ところが、今回情報筋からもたらされた情報によれば、Intelの社内資料などでは、実際には“Yonah”の綴りが利用されているという。というのも、英語での“Jonah”をヘブライ語で記述すると“Yonah”になるからだという。そういう意味では、実質的には同じことなのだが、正式な綴りという意味では“Yonah”が正しい可能性が高い。従って、今後本連載でも“Yonah”の方を使っていきたい。 もっとも、Intelから正式発表されていない現時点ではなんとも言えないし、そもそもコードネームに正式もなにもあったものではないとは思うが……。 ●90nmに微細化されたDothanはBaniasプラットフォームの延長線上に登場
Intelは本来であれば2月に発表する予定であった90nmプロセスルールで製造されるDothanプロセッサの投入を第2四半期に延期した。 この理由について、Intel 副社長兼モバイルプラットフォームグループ ジェネラルマネージャ アナンド・チャンドラシーカ氏は筆者とのインタビューの中で、「実際に製品に搭載した段階で、いくつかのシステムで問題が発生することがわかり、これを解決するために出荷を延期して改善することにした」と述べている。 これに関しては若干の補足が必要になるだろう。以前の記事でも説明したように、Intelは昨年末の段階では2月にDothanを発表する予定だった。実際、日本のいくつかのOEMメーカーはDothanを搭載したシステムの出荷を予定しており、すでにCPUさえ来れば生産できるという段階までこぎ着けていたところもあったという。 ところが、OEMメーカー筋からもたらされた情報によれば、実際にOEMメーカーにDothanのサンプルを渡してテストしてみたところ、問題のないベンダもあったが、いくつかのベンダでは動作しないという状況が生じてしまったという。 Intelは、BaniasのシステムをそのままDothanに置き換えれば動作するとOEMメーカーに説明してきた。実際、システムバスはBaniasと同じ400MHzだし、熱設計消費電力(TDP)に関してはBaniasよりも低い21W(通常電圧版)に設定されており、Baniasが動作するノートPCであれば、そのままDothanのシステムとして動作するはずだった。 だが、そうはいかない状況が発生してしまったわけだ。そこで、この問題を解決するために、CPU自体に手を入れる必要性があり、その準備ができる第2四半期まで延期されてしまったというのが真相だという。 情報筋によれば、IntelはDothanは第2四半期に1.80GHzと1.70A GHz(Baniasの1.70GHzと区別するためにAがつけられる)を投入する計画であるという。当初は歩留まりの問題からハイエンド製品が供給され、第3四半期に2GHzと1.60A GHz、1.50A GHzと複数のグレードが投入され、徐々にBaniasからの移行が計られていくことになる。 低電圧版、超低電圧版は第2四半期にBaniasコアの1.30GHz(低電圧版)、1.10GHz(超低電圧版)が追加され、通常電圧版に1四半期遅れた第3四半期に、Dothanコアの1.40GHz(低電圧版)、1.10A GHz(超低電圧版)の2製品が追加される。 バリューPC向けのCeleron Mに関してもラインナップの強化が行なわれる。通常電圧版に関しては第2四半期にBaniasコアの1.40GHzが追加され、第3四半期に1.50GHzが追加される予定となっている。 Dothanに切り替わるのは第4四半期以降となるが、現時点ではクロックなどは明らかにはなっていない。超低電圧版は900MHzが第2四半期に追加され、第3四半期にDothanでL2キャッシュを512KBに制限した900A MHzが追加される予定となっている。
●Dothan/533MHzバス+Intel 915xM+Calexico2から構成されるSonomaプラットフォーム
第4四半期には予定通り、システムバスが533MHzに引き上げられたDothanと、新しいチップセットであるAlvisoが投入される。情報筋によれば、Alvisoの製品名はIntel 915xMで、グラフィックス外付けの単体版がIntel 915PM、グラフィックス統合版がIntel 915GM、内蔵グラフィックスのみのバリュー版がIntel 910GMLになるという。 製品名からもわかるように、Grantsdaleの製品名であるIntel 915と同じ型名になっており、AlvisoがGrantsdaleのモバイル版という位置づけがされていることが、これからも明らかだろう。GrantsdaleとAlvisoのスペック上の違いは、主にシステムバスと内蔵グラフィックスの仕様が若干異なる程度で、基本的な違いはほとんどないと言ってよい。 システムバスはGrantsdale(Intel 915G/PE)が800MHzまでサポートするのに対して、Alviso(Intel 915PM/GM/910GML)は533MHzまでのサポートとなっている。ただし、これはチップそれ自体がサポートしないというわけではなく、あくまでCPU側であるDothanが533MHzまでしかサポートしないためだ。 内蔵グラフィックスに関しては、コアそのものはIntel Extreme Graphics3となっており、Grantsdaleに内蔵されているものと変わりはない。ピクセルシェーダ2.0に対応したピクセルパイプを4本備え、最大で224MBをビデオメモリとして利用することが可能になっている。また、ビデオ出力(S端子ないしはコンポジット)、LVDSサポート、デュアルディスプレイサポートなどの機能も同等。 ただし、ビデオコアのクロックに関しては若干異なる。デスクトップPC用のGratsdaleが333MHzコアクロックであるのに対して、モバイル用のIntel 915GMでは、133MHz~333MHzの間でOEMメーカーが選択可能で、250MHz~333MHz時は1.5V駆動、133MHz~200MHz時は1.05V駆動が可能になっている。 例えば低消費電力が重要視されるモバイルノートでは最大200MHzに設定することで1.05Vで動作し、より処理能力が必要なノートPCでは最大333MHzに設定し、1.5Vで駆動させるなどの使い分けが可能だ。 無線LANはCalexico2の開発コードネームで呼ばれてきたIEEE 802.11a/b/gのすべての規格に対応したIntel Pro/Wireless 2915ABGが登場する。Intel Pro/Wireless 2915ABGでは、IEEE 802.11iのドラフト規格やIEEE 802.11eのWME転送のQoS機能、フレームバースティング、ハードウェアAESなどの機能が追加される。 さらにMurocと呼ばれるコードネームのソフトウェアが追加され、ユーザーインターフェイスがより使いやすいものになるという。Intel Pro/Wireless 2915ABGは第3四半期の終わり頃から第4四半期にかけてリリースされることになる。 情報筋によれば、IntelはIntel 915PM/GM/910GMLと同時(第4四半期)に533MHzバスのDothanを発表する。クロック周波数は、2A GHz、1.86GHz、1.73GHz、1.60B GHzの各クロックグレードになる。少し遅れて2.13GHzが第4四半期中に追加されるというのが現在のプランであるという。 ●2005年にYonahを利用したNapaプラットフォームへ移行
ノートPCベンダにとってSonomaは基本的にはオリジナルのCentrinoモバイルテクノロジ(CMT)、つまりBaniasプラットフォームの延長線上にある製品となるため、多くのベンダは現在のBaniasプラットフォームベースで作られているノートPCのシャシーを改良して、Sonomaプラットフォームを搭載する可能性が高い。しかし、Sonomaの次世代のプラットフォームとなるNapaプラットフォーム世代では状況が大きく変わりそうだ。 Napa世代ではチップセットはデスクトップPCのTejas向けにリリースされるLakeportとほぼ同じ世代のチップセットになる(Crestineというコードネームであることは以前お伝えした通りだ)。ただ、Lakeport自体はGrantsdaleからのアップデート部分はDDR2-667への対応と、Serial ATA-300へ対応したICH7という程度なので、Napa世代のチップセットは大幅なバージョンアップではなく若干の進化となるだろう。 だが、CPU側では大幅な進化がある。Napaプラットフォームは、すでにお伝えしてきたようにDothanのデュアルコア版となるYonahが投入される。 NapaプラットフォームではCPUの熱設計消費電力が45Wになると、IntelはOEMメーカーに語っているという。このため、各OEMメーカーは現在のDothanの25W/30W(533MHz版)から、大幅に熱設計を変えない限りNapa世代への対応が難しくなる。このため、各メーカーとも45Wに対応できるシャシー設計に取り組んでおり、2005年のNapaプラットフォームでは、これまでとは違ったデザインのノートPCが多数登場することになるだろう。 なお、最初の世代のYonahは40Wよりやや低いレベルの熱設計消費電力になるという情報が新たに伝わってきた。というのも、Napaの45Wという設計は、Napa世代のライフサイクルに登場するCPUすべてに対応できるよう余裕を考慮しているものであり、実際のYonahは最大でも40W前後という。 それでは、45Wという余裕ある熱設計はいったいどのCPUのためであるのかと言えば、Yonahの後継として予定されているMerom(メロム)のためであるという。
●MeromでDTRノートPCなどのメインストリーム市場へ展開、デスクトップPCの可能性は?
Meromに関してはもう1つ気になる話が伝わってきている。情報筋によれば、Meromには熱設計消費電力の違いで、45W版と、90W版が存在しているという。以前、昨年のCeBITの記事でもお伝えしたように、Meromはメインストリーム市場へも普及していくBanias系(言い換えればイスラエル開発)のコアであると情報筋は伝えている。 クロックをあげてもここまでの差はでないと考えられるので、考えられることはYonahと同じで90W版のMeromは45W版Meromのコア数が倍になったバージョンである可能性が高い。やはりSpeedStepのような機能を利用して、ロケーションに応じてコア数を動的に増減する仕様になっていると予想することが可能だろう。 Intelはこの90W版のMeromはメインストリーム市場向け、つまりノートPCでいえばDTR(デスクトップリプレースメント)の市場に投入することになる。 DTRノートに使えるのであれば、それをデスクトップPCに使おうという話も出てくる可能性があり(もともとDTRのCPUはデスクトップ向けのCPUを使っているわけだから、その逆も当然可能だろう)、一部のソースはTejas、そしてその65nm版であるCederMillの後継としてMeromをデスクトップPC向けに投入することをIntelが検討しているという可能性を伝えているところもある。 だが、仮にMeromをデスクトップPCに持って行くとすれば、問題になるのがクロック周波数だろう。Banias系コアの延長線上にあるMeromは、NetBurst系に比べるとクロック周波数が低いことが予想される。 現在でも日本を除く地域ではPentium Mがまだあまり浸透しない理由の1つとしてクロック周波数がPentium 4に比べて低いということがあげられることが多い。未だに“クロック神話”は健在であり、これが問題として浮上してくるだろう。 この問題になんらかのケリをつけない限りは、MeromをデスクトップPC市場に持ってくるのは困難が伴うことになるだろう。その問題をどう解決するのかが鍵だ。 □関連記事
(2004年3月11日) [Reported by 笠原一輝]
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