「Dothanのリリースは第2四半期へ延期する。これはより大量のプロセッサを製造可能にするために回路の改良が必要になったからだ」と、Intelのポール・オッテリーニ社長兼COOは、同社が14日(現地時間)行なった証券アナリスト向けのカンファレンスコールの中で突然、しかもさらっと発表を行なった。 すでにOEMベンダは、顧客に対してDothan搭載製品の情報開示を行なっており、多くの関係者が順調に進んでいるのだろうと考えていた中での突然の延期発表は、驚きと困惑を持って迎えられている。 ●昨年9月の予定から今年2月へ、そして再度第2四半期へ延期
昨年6月末の段階では、Pentium M“Baniasコア”の後継である、90nmプロセスの次世代プロセッサ“Dothan”は、9月末から10月上旬にリリースが予定されていた。 ところが、以前の記事でもお伝えしたように、突然このプランは破棄され、Dothanのリリースは2004年の第1四半期、つまり今四半期に延期されてしまった。 その後、Dothanのリリース時期は、昨年の末の段階で2月半ばと設定されたこともお伝えした。12月時点の記事では、2月の半ばに開催されるIntel Developer Forumにあわせて1.80GHzなどのクロックグレードでDothanが投入される予定となっていたのだ。 ところが、この予定はさらに延期されて第2四半期になってしまった。オッテリーニ社長は第2四半期のどの段階であるかは明らかにしていないが、ワーストケースで6月だった場合、実に9カ月も製品出荷が延期されることになる。 ●Pentium M 1.70GHzから1年近く新製品がでないという状況
このDothanの延期がいかに唐突なものであったかは、OEMメーカー側の反応を見ればわかる。実は主要なOEMベンダであるPCベンダの多くは、すでに顧客に対してNDA(秘密保持契約)ベースのDothan搭載製品の情報開示を行なっており、多くのベンダがDothan搭載製品を2月から3月にかけて出荷する春モデル製品の第2弾において投入する予定になっていたという。 だが、今回のDothanの延期を受けて、各OEMベンダはこの戦略を修正せざるを得ない状況となっている。OEMベンダは現在ロードマップを見直し、かつ製品情報の修正を顧客に対して急ぎ行なっている状況であるという。特に、春モデルにおいてDothanを搭載した製品をハイエンドモデルとして投入しようと考えていたOEMベンダには影響が甚大であるという。 また、すでに昨年の秋頃にPentium M 1.70GHzを搭載した製品を投入しているOEMベンダも、今後の製品計画について頭を悩ませているという。 Intelは昨年の6月にPentium M 1.70GHzをリリースしているが、仮にDothanの投入が今年の6月になるとすれば、1.70GHzのリリースから1.80GHzのリリースまで1年間近くも新製品がでないことになる。3カ月に一度製品のリフレッシュが行なわれるPCビジネスにおいて、新しいCPUが1年間もリリースされないというのは“異常事態”以外の何物でもない。 ●新しく修正されたシリコンを用意し、その準備が整う第2四半期に
それでは、なぜDothanの再度延期という事態が発生してしまったのだろうか? オッテリーニ社長はカンファレンスコールの中で、「出荷のボリュームを増やすため、回路に手を入れなければならなくなったため」とだけ説明している。 Intelに近い情報筋によれば、Intelは現在なんらかの問題を修正する新しいステッピングのシリコンを開発中で、このシリコンが大量出荷できるようになる第2四半期まで延期されるという状況であるという。 それではその“問題”とは何か。そのヒントは、同じ90nmプロセスのPrescottに発生した問題が参考になると思う。Prescottでは、バスインターフェイスの不具合が原因でCPUダイ自体とCPUパッケージの修正を行なわなければならなかったという(詳しいレポートは、後藤氏の記事を参照して頂きたい)。 同じμPGA478ソケットを利用するDothanでも同じような問題が発生している可能性は容易に想像できる。これは、オッテリーニ氏が「回路の改良」というのとも符合している。 もう1つは熱設計上の問題である可能性だ。IntelはDothanの通常電圧版において21Wという消費電力を実現するとOEMメーカーに言っているが、これが実現不可能ではないかと予測する関係者は少なくなった。仮にこれが実現できていないとすれば、やはりダイに手を入れる必要があり、1四半期延期した、これも十分あり得るストーリーだ。 おそらく、この両方が微妙に絡み合って、今回の延期劇につながったというのが真相に近いのではないだろうか。 ●90nmプロセスルールの本格的な立ち上がりは第2四半期へ
情報筋によれば、Dothanだけでなく、Prescottに関してもIntelはさらなる改良を続けているという。後藤氏が別のレポートでも触れているように、IntelはC0ステップを量産品として出荷する予定というが、このバージョンでは高クロック品の出荷数は限られたものになるとOEMメーカーに対して説明してきた。 OEMメーカー筋の情報では、今年に入って、IntelはDステップというさらに進んだステッピングを用意し、高クロック品の大量出荷はこのDステップまで待つ必要があると通知してきたという。Dステップの準備が整うのは、第1四半期の終わりから第2四半期の頭頃になる可能性が高いという。 このように、90nmプロセスルールが本格的に立ち上がるのは、デスクトップPCも、モバイルPCも実質的に第2四半期ということになりそうだ。 本来であれば、競合他社(例えばAMD)に対して1年近い差をつけられるはずであった90nmプロセスの導入も、度重なる延期で、結局半年程度の差に縮まってしまう可能性が高く、競合他社にとってはチャンスとなる。 Intelに近い情報筋によれば、この問題は第2四半期には解決し、両製品とも無事に本格的に立ち上がるとIntelは自信を見せているようだが、それまではIntelにとっても(そしてOEMベンダにとっても)頭の痛い状況が続きそうだ。 □関連記事
(2004年1月16日) [Reported by 笠原一輝]
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