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Intelがデスクトップチップセットに無線LANを統合




●2004年のチップセットに無線LANを

 Intelは2004年のデスクトップPCに、無線LANを標準的なソリューションとして加えようとしている。そのため、無線LANチップを組み合わせたチップセットを、2004年春のGrantsdale(グランツデール)/Alderwood(オルダウッド)世代から用意する。組み合わせるのは「Caswell」と呼ばれるIEEE 802.11b/gチップセットで、これを組み合わせるICHは「ICH6W」と呼ばれる。つまり、Intelは、Centrinoで一応の成功を見たチップセットへの無線LANチップの統合を、デスクトップチップセットにももたらそうとしているのだ。

 Intelがデスクトップチップセットに無線LANチップを組み合わせるというウワサは、2002年の春頃からあった。また、Intelの幹部も、無線LANのデスクトップへの浸透を以前から予告していた。「無線は、モバイルだけでなくデスクトップの現象でもあるとIntelでは考えている。デスクトップとCentrino、PDA、デバイスベイステーション、ストレージなどの接続に応用できると考えている」とIntelのWilliam M. Siu(ウイリアム・M・スー)副社長兼ジェネラルマネージャ(Vice President and General Manager, Desktop Platforms Group)は今春のインタビューで答えている。

 つまり、ICH6W+Caswellは、規定の路線だったわけだ。ただし、2002年頃の情報ではデスクトップへの無線LAN統合はもう少し早いフェイズになるという話だった。もし、時期が当初の予定よりずれ込んだとすれば、それは無線LAN規格の標準がどう動くかを見誤った(IntelはIEEE 802.11aが主流になると考えていた)ことが影響していると思われる。

 ちなみに、ICH6系はMCHとの間を「DMI (Direction Media Interface)」と呼ぶ新インターフェイス(2GB/sec)で接続するため、従来のチップセットと組み合わせることはできない。

【図:Intel Desktop Chipset Roadmap】
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●若干遅れ気味のDDR2メモリ

 Intelの2004年ロードマップには、他にも微妙な変化が見える。まず、DDR2メモリのスケジュールが若干後退する気配が見えてきた。

 Intelは来年第2四半期からデスクトップでDDR2をサポートする計画だ。しかし、DDR2メモリのバリデーションの日程は遅れ続けており、DDR2メモリの供給量と価格もまだ不鮮明なままだ。そのため、「DDR2メモリのデスクトップでの実質的な立ち上がりは2004年後半のどこか」という意見が、業界関係者から出てきている。

 DDR2の後退を端的に反映するのは、Intelの自社マザーボード製品計画だ。Intelは以前の計画では、ディスクリートの「Grantsdale-P」チップセット搭載マザーボードはDDR2メモリベース、統合チップセットの「Grantsdale-G」搭載マザーボードはDDR2とDDRの両バージョンがあるという構成だった。しかし、現在ではGrantsdale-PでもDDRマザーボードがあり、DDR2マザーボードしかないのはハイパフォーマンスチップセットの「Alderwood」だけとなっている。

 マザーボードベンダーもDDR2への姿勢が若干後退して来ている。2003年9月の段階では、ボードベンダーは各社とも「DDR2の立ち上がりは問題ないはず」と言っていた。しかし、今はニュアンスが微妙に異なり、DDRとDDR2のコンボマザーボードを計画するベンダーもある。

 市場でのDDR2メモリで最大の問題はもちろん価格と供給量。「DRAMベンダーは『後出しジャンケン』で、DDR2の市場価格を探り合っている状態」(ある業界関係者)という。つまり、他のベンダーの価格設定を見て自社の設定をしようとうかがい合っているため、まだ流動的だ。立ち上げ時の量産価格については、関係者の間でも予測が大きく分かれる(かなり高価格を予測する人もいる)ため、今のところ見当がつかない。

 DDR2の意義も問題だ。現行DDRメモリで400Mtps(transfer per second)のDDR400が浸透してしまったため、DDR2はより高速なDDR2-533で立ち上げなくてはならなくなった。DDR2-533自体のスピード派生はいい(レイテンシサイクルが多くなるため)のだが、問題はPC側のFSB(フロントサイドバス)。FSBは現状では800MHzなので、帯域的にマッチするのはDDR400となってしまう。つまり、FSB 800MHzのままでは、DDR2-533の帯域はオーバーキルで、帯域上の利点を活かすことが難しいわけだ。

 DDR2-533メモリをフルに活かすには、FSBを1,066MHzに引き上げる必要が出てくる。しかし、Intelは800MHz以上のFSBについては2004年中には予定していないという。Intelは、もともと次々世代CPU「Tejas(テハス)」でFSB 1,066MHzをサポートするはずだったが、Tejas自体が2005年第1四半期(もとは2004年後半)へと後退してしまっているためだ。もっとも、あるメモリ業界関係者は「FSB 1,066MHzは技術的には可能。これだけ競争の激しい市場だから、IntelがFSB戦略を急に変更することもありうる」と期待をにじませる。

 もっとも、中期的に見るとDDR2メモリへの追い風はある。DDR400とDDR2-533を比べると、DDR2-533の方がアーキテクチャ的に安定性が高く、その分、いわゆるメモリの相性問題は減ると推測される。また、グラフィックス統合チップセットは2004年から一斉にDirectX 9世代コアになり、内部パイプ数なども増す(IntelのGrantsdale-Gは4パイプ)ため、その分、メモリ帯域に対する要求は高くなる。

●遅れるPrescottの本格立ち上がり

 また、ここへ来て次期デスクトップCPU Prescottにも問題が発生していることが明らかになり始めた。

 Intelは、9月のIDFで、Prescottを年内にOEMに出荷すると発表した。通常、デスクトップCPUの場合はOEM出荷からしばらくして、PCベンダー側の準備が整った段階で正式な発表が行なわれる。現在、顧客にはC0ステップのサンプルが配布されており、次のC1ステップが製品版として提供されるはずだった。

 ところが、ここへ来て、もうすぐ量産出荷されるはずだったC1ステップのスケジュールが遅れていることが明らかになった。C1の本格的な供給は、当初の予定よりかなりずれ込むという。そのため、Intelの説明していたPrescottのOEM向けの出荷はC0ステップ品になるらしい。

 しかし、これは大きな問題をはらんでいる。それは、C0ステップでは高周波数の製品派生が非常に限られていることだ。複数のソースによると、Prescott C0では、高クロックを潤沢に供給することができないとIntelは説明しているという。そのため、Prescottが本格的に提供され始めるのは、C1の量産が軌道に乗ったあとになると言われる。

 Intelは、Prescottについては、まず現行の0.13μm版Pentium 4(Northwood:ノースウッド)と、ソケットやFSBレベルでの互換性を保つと説明している。「(CPUの移行に)CPUソケットやチップセットの移行が伴うと、顧客がなかなか速やかに移行できない。しかし、Prescottの場合は(Northwood向けマザーボードに)大きな変更は必要ない。だから、Prescottへの移行は速やかだと考えている」とWilliam M. Siu氏は語る。

 つまり、過渡期には互換性を保ち、次のステップで互換性のないLGA775パッケージへと移行を開始するというのがPrescottの戦略だった。だが、C1ステップが遅れたことで、この2段階のPrescott戦略は崩れ始めた。ある業界関係者は、C1がずれた結果、Prescottの本格的な立ち上がりは事実上LGA775版からになってしまうだろうと言う。つまり、以前のレポート「Prescottの遅延理由ついに判明」で予測した通りのパターンに陥り始めている。

 元々Prescottは、2003年秋に投入される予定だった。しかし、度重なるトラブルで、結局本格的な立ち上がりは2四半期弱あまりずれ込んでしまうことになりそうだ。

□関連記事
【10月27日】【海外】Prescottの遅延理由ついに判明
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/1027/kaigai038.htm

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(2003年12月16日)

[Reported by 後藤 弘茂(Hiroshige Goto)]


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