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かつてない速さで進むPrescottへの移行
~40種以上が混在する来年のPentium 4ロードマップ




●にぎやかな2004年前半

 2004年前半のIntelのデスクトップCPU戦略は過激だ。まず、Intelは、現行の0.13μm版Pentium 4(Northwood:ノースウッド)の周波数を3.4GHzに引き上げ、さらに3.4GHz版のPentium 4 Extreme Edition(Pentium 4 XE)も投入する。

 その一方で、次世代デスクトップCPU「Prescott(プレスコット)」を“バーゲン価格”で発売、トップツーボトムで揃えることで一気に普及を狙う。2004年の第2四半期末までには、Pentium 4の3/4近く、Celeronの半分近くを地滑り的にPrescottコアに持っていってしまうつもりだ。また、FSB(フロントサイドバス)533MHzも延命させ、新たに、PrescottコアにFSB 533でHyper-Threadingなしのバージョンを用意する。

 この戦略の結果、2004年前半のIntelプラットフォームには、CPUコアとパッケージとFSBとキャッシュが異なる8バリエーションのPentium 4が登場してしまうことになった。業界関係者でさえ、もう把握しきれない数だ。これにさらにPrescottのTDP(Thermal Design Power:熱設計消費電力)スペック(Prescott FMB 1/1.5/2)が加わるため、CPUとマザーボードの組み合わせは複雑怪奇な状況になる。また、チップセットでは、PCI Express世代で「Grantsdale(グランツデール)」と同時に、パフォーマンス版チップセット「Alderwood(オルダウッド)」を投入する。

●かつてない速さで進むPrescottへの移行

 まず、全体的な流れでは、NorthwoodからPrescottへの移行は、かつてない速度で進む。Intelは、2004年第1四半期中にはPentium系CPUの出荷量の25%を、第2四半期には70%をPrescottにすると伝えているという。Intelは、バリューPC向けのCeleron系CPUでもPrescott化を促進する。こちらは、第2四半期には40%までをPrescottに置き換えてしまうつもりだ。

 通常、OEM向けの出荷とコンシューマの手に届くまでにはやや時間差がある。しかし、こうしたCPUの移行は、コンシューマ向けモデルやチャネルで速く進む。そのため、Intelの計画通りなら、来年の秋口までには店頭では、ほぼPrescottに置き換わってしまうことになる。

 この推移の模様を、Pentium III(Coppermine/Tualatin)からPentium 4(Willamette/Northwood)への移行と比較すると、その早さはよくわかる。前回の移行は、Pentiumブランドでは約1年、Celeronブランドでは約2年ちょっとかかった。今回、IntelはそれをPentiumで2四半期半、Celeronでは1年程度でやろうとしている。それも、前回のCoppermine→Willametteの移行では、やっかいなプロセス技術の移行はなく、純粋にコアの移行だった。

 このことは、Intelが90nmプロセスの歩留まりにかつてないほど自信を持っていることを示している。90nm+300mmウエーハで、生産数が一気に増大するため、一気にPrescottを普及させることができるというわけだ。

 もっとも、Prescottはもともと今秋には出荷されているはずだった。それが、バス回りの問題で出荷が約1四半期(1月末~2月頭)遅れてしまった。つまり、もともとの計画通りなら、移行期間は約1四半期長かったはずだ。

IntelデスクトップCPUコア移行図
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●40種類以上のデスクトップCPUがあるIntelの2004年

 急速な移行と、やや混乱した製品計画の結果、IntelのCPUロードマップは、かつてないほど複雑なものになってしまった。それを整理したのが下の「Northwood to Prescott」図だ。

 現在から2004年末までのPentium 4からCeleronまでのラインナップで、デスクトップCPU製品は全部でなんと40種類以上(!)に上る。周波数の違い以外に、CPUコアは3種類、キャッシュサイズは5種類、パッケージ/ソケットは2種類、FSBは3種類、Hyper-ThreadingのON/OFFの違いがある。これらの組み合わせによるバリエーションは全部で11種類で、周波数の違いを合わせて41種類というわけだ。

 さらに厳密にいうと、Prescottには同じ周波数でもTDP(Thermal Design Power:熱設計消費電力)が異なり、対応するマザーボードのデザインのガイドライン「Flexible Motherboard (FMB)」が違うバージョンがあるという。だから、実質的にはCPU種は45種類近くになる。これだけバージョンが増えると、複雑過ぎてメーカー側も発注に悩みそうだ。PCを作る側にとっては、迷惑このうえない。

 もっとも、同時期のAMDも、CPUコアは3種類、キャッシュサイズは3種類、ソケットは4種類、FSB(速度)は5種類となる。CPUのバリエーションは周波数の違いも合わせれば、CPUは20数種類になる。だから、Intelを非難できないだろう。「同じ3000+で4種類もCPUがある」とある業界関係者は言う。両社とも、シンプルな1~2プラットフォームという戦略は、完全に崩れている。

NorthwoodからPrescottへの移行
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Prescottロードマップ
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●Prescottが目立たなくなった2004年第1四半期

Prescottの価格戦略
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 もう少し詳しく見て行こう。

 PrescottはNorthwoodに対して、L2キャッシュ2倍やSSE3命令(PNI)、Hyper-Threadingの性能向上といった拡張がある。しかし、Intelは今回、Prescottのそうしたフィーチャを差別化しない。あくまでも、Pentium 4ファミリの新コアとして投入するつもりだ。

 Prescottは予定通り2004年第1四半期に最高3.4GHz(他に2.8/3/3.2GHz)で登場する。しかし、Intelは同時期にNorthwoodの3.4GHzと、Pentium 4 XEの3.4GHzも投入することにしたため、Prescott 3.4GHzのインパクトは薄い。もともと、Intelは3.4GHzはPrescottだけを出し、NorthwoodやPentium 4 XEは3.2GHzに留めることで明確に差別化する予定だった。しかし、現在は計画を変更している。

 Pentium 4 XE 3.4GHzは、Intelがこのラインの高価格デスクトップCPUを継続するというサインかもしれない。Pentium 4 XEは言うまでもなくAthlon 64 FX対策だが、周波数を引き上げることで、より高周波数のAthlon 64 FXに備えることが可能になる。また、Intelは、どうせ大容量L3コアをサーバー用に製造しているわけで、その派生品を高価格デスクトップ用に投入するのは、コスト効率のいい製品差別化になると考え始めたのかもしれない。

 一方、Northwood 3.4GHzは、やや役割が不鮮明だ。おそらく、Intelの現在の0.13μmプロセスでは3.4GHzもある程度の量は採れると思われる。これまで出さなかったのは、Prescottのスタートが3.4GHzで、それと競合しないようにという配慮だったと推定される。そのため、Northwoodで3.4GHzのスピードビンを出すのは、Prescottだけだと3.4GHzの数量が足りないと考えているからか、Prescottを目立たせないようにしようと考えているか、そのどちらかだと考えられる。

 いずれせによ、こうした方針転換のため、2004年第1四半期については、Prescott系とNorthwood系が、同じ周波数帯で完全に並ぶ。同じmPGA478パッケージ/FSB 800MHz/Hyper-Threadingで、3つのコアがあることになる。

キャッシュSSE
Pentium 4(Prescott)1MBSSE2+3
Pentium 4(Northwood)512KBSSE2
Pentium 4 XE(Gallatin改)512MB+2MB L3SSE2

 IntelはPrescottとNorthwoodが同周波数で並ぶ場合には、“E”をつけて区別するつもりらしい。つまり、同じ3.4GHzでも、NorthwoodはPentium 4 3.4GHz、PrescottはPentium 4 3.4E GHzとなる。

 また、同時期にIntelはPrescottでもFSB 533でHyper-ThreadingをOFFにした2.8GHzバージョンを出す(キャッシュ量やフィーチャは同じ)。これは、Pentium 4 2.8A GHzとなる。一方で、FSB 533で唯一Hyper-ThreadingをONにしていたNorthwood 3.06GHzは打ち切りとなり、それ以降はFSB 800=Hyper-Threading、FSB 533=ノンHyper-Threadingという区分けとなる。


●Prescottを一気に押し出す2004年第2四半期

 Prescottの次の波は春、PCI Expressチップセットファミリの投入と同時期になる。Prescottに3.6GHzを投入、一方、Northwoodは3.4GHzに留めることで、ようやく周波数でもPrescottが明確に差別化されるようになる。もちろん、この背景には0.13μmのNorthwoodでは、3.6GHzは十分には採れない(だろう)という事情もある。しかし、それ以上に、この第2四半期からPrescottを強力にプロモートしようという意図が見える。

 それは、Prescott LGA775+PCI Expressという強力な引きがあるからだ。この時点で、IntelはPrescottのパッケージをmPGA478からLGA775へと切り替え始める。具体的には、2.8/3/3.2/3.4/3.6GHzの全ラインでLGA775版とmPGA478版を発売する。IntelのGrantsdaleはLGA775しかサポートしないため、IntelチップセットでPCI Expressに移行しようとしたら必然的にLGA775 CPUに移行することになる。

 Intelは、LGA775+PCI Expressを転換点と見なしている雰囲気がある。だから、ここでPrescottの存在感を押し出すということなのだろう。逆を言えば、それまでのmPGA478版Prescottは、単にPentium 4の一バージョン的な位置づけに近い。ちなみに、Prescottへの移行がより加速するのも2004年第2四半期からで、Northwoodの大半は第3四半期のある時期以降は出荷が絞られるようだ。また、Northwood/Gallatinコア系のPentium 4 XEも3.6GHzは今のところ予定されていない。Pentium 4 XEを継続するとしたら、この後はPrescott系コアになると思われる。

 また、IntelはLGA775版でもFSB 533でHyper-Threadingディセーブルバージョンの2.8GHzを投入する。つまり、2.8GHzでは継続してPentiumブランドでもHyper-Threadingなし版が提供され続けることになる。そうしたニーズも根強いため、どうしても残しておく必要があるという。

 また、第2四半期にはIntelはPrescottコアのバリュー系CPUも一気に投入する。2.53/2.66/2.8/3.06GHzで、これらはいずれもFSB 533/256KB L2キャッシュとなる。ただし、いずれもmPGA478版であり、Intelチップセットとの組み合わせではPCI Expressへ移行できない。

 Intelは、NorthwoodコアのCeleronも投入し続ける。そのため、2.8GHzまでの周波数レンジでは、ここでもNorthwoodとPrescottが並列することになる。そのため、この2004年第2四半期は、Intel CPUがもっとも種類が多く混乱する時期となる。これは、Intelが移行を急いだためのトレードオフだ。

 2004年後半になると、Prescott移行への混乱は収まり始める。2004年第3四半期には、Prescottは3.8GHz版を加えるだけだ。そして、3.8GHzから上の周波数は、全てLGA775になる。もっとも、Intelは2004年中はmPGA478版も提供し続けるため、しばらくは両パッケージは並存することになる。

 2004年第3四半期にはバリュー系CPUにもLGA775版が登場する。ただし、こちらの場合は、完全に同じ周波数でmPGA478版とLGA775版が提供される。つまり、LGA775だけの周波数はない。

IntelデスクトップCPUロードマップ
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【10月27日】【海外】Prescottの遅延理由ついに判明
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/1027/kaigai038.htm
【8月12日】【海外】IntelがPrescott戦略を加速、来年第2四半期には低価格版も投入
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/0812/kaigai011.htm

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(2003年11月12日)

[Reported by 後藤 弘茂(Hiroshige Goto)]


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