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Xbox2は“小さくクールで低コスト”がテーマ




●Xboxから方向性を変えるXbox2

Xbox

 デカくてパワフルでリッチな機能−−Xboxのこんな特徴は、次世代Xbox(Xbox2?)には、残念ながら(?)受け継がれないかもしれない。というのは、どうやらMicrosoftは、Xbox2開発では小さくクール(低消費電力)で低コストをポイントにしているらしいからだ。

 複数の情報筋によると、MicrosoftはXbox2について「ノートPC向けの部品を使って行く」「今回は、低消費電力に特に気を配る」といった説明をしているという。つまり、筺体を小さく、騒音を少なく、発熱を少なくしようとしているらしい。消費電力の高いチップを搭載すると、冷却のために筺体を大きくしなければならないからだ。もしかすると、トランスポータブル版Xbox2を出すことも視野に入れているのかもしれない。

 特に、Microsoftは、Xbox2のCPUでは、モバイル向けの低消費電力チップを考えていると言われている。まだ現段階では、MicrosoftはXbox2のCPUに何を採用するかアナウンスしていない。しかし、これまで同様にPCと同じx86系アーキテクチャのCPUを採用するつもりらしい。そうすると、モバイル向けの、低消費電力x86系CPUの選択肢は少ないため、ある程度の推測はできる。

XboxのCPU。Pentium IIIがベース

 Microsoftがゲーム機にモバイルCPUを選択する理由は、今のデスクトップPC向けCPUの技術トレンドを見ていると明白だ。デスクトップCPUのTDP(Thermal Design Power:熱設計消費電力)はロケットのように上がる一方だからだ。2005年時点なら、Celeronも「Prescott(プレスコット)」コアになり、TDPは少なく見ても80Wレベルに上がる。そうすると、リビングルームのAVラックに置くゲーム機に搭載するのはちょっとやっかいだ。筺体を小さく、かつファンを静かにと考えるとできるだけ消費電力は抑えたい。

 現在、Xbox2のCPUとしてPC業界内のウワサになっているのはIntelの「Pentium M系CPU」とVIA Technologies(Centaur Technology開発)の「C3系CPU(モバイル版はAntaurブランド)」。他にもTransmetaという選択肢はあるが、今のところそういう話は聞こえてこない。Pentium MとC3は、どちらも利点があり、Microsoftが選択する理由と可能性は十分にある。

 Pentium Mの利点は、Intelの安定した供給力と、高い消費電力当たりのパフォーマンス。それに対して問題はコストと価格だ。Intelは、現在のXboxにはPentium IIIを極端な安値で提供したと言われている。AMDとの競争の結果、大幅ディスカウントしたためだ。

 しかし、今のIntelがCPUのASP(平均販売価格)を下げる取引を受けるかどうかは疑問だ。Xboxに引き続き、20〜30ドルレンジの組み込みCPU並みの価格になるとすると、Intelとしては積極的には受けにくい。IntelにするとXbox2の成功の可能性が高ければ高いほど取引しにくい。大量にXbox2が出れば出るほど、Intel CPU全体のASPが下がってしまうからだ。


●有望? VIAのC3系CPUの搭載

NehemiahコアのC3

 それに対してVIAのC3/Antaurはどうなのか。Microsoftが求めているのは、単純にTDPの低いCPUという意味なので、VIAの場合にはC3(デスクトップ向け)系ということになるだろう。C3は1GHz時に約16Wと、十二分にTDPが低いからだ。

 VIAのC3系のCPUコアは、現在は0.13μmの「Nehemiah(ネヘミヤ/ニアマイア)」。これは、Centaurでは「C5XL」と呼んでいたコアで、1.4〜1.5GHzをターゲットにしている。さらに、Centaurは2GHzをターゲットにした「C5Z」も開発している。Xbox2に載せるとしたらこのどちらかになる。もっともありそうな選択は、Nehemiahで1.4GHzクラスといったところだろうか。それでも、TDPはPentium Mクラスに収まるはずだ。

 C3系は消費電力以外でも利点が大きい。それはコストと価格だ。Nehemiahのダイサイズ(半導体本体の面積)は52平方mmで、82.8平方mmのPentium Mと比べると一回り以上小さい。その分製造コストは低い。さらに、Intelのように高いASPを望んでいないVIAは、かなり低い価格でもOKする可能性が高い。

 こうした状況を考えると、MicrosoftがXbox2にVIAのC3系CPU(おそらくNehemiah)を採用する可能性は十分にある。実際、C3が有力と伝える情報筋もあるほどだ。

 しかし、C3系にも難点がある。それは、性能と供給能力だ。C3系はNehemiahですらシングルパイプで、3命令発行のIntelやAMDと比べると、ピーク性能には制約がある。結局、トランジスタ数が少ない(ダイが小さい)と、その分性能は削られる。VIAに、これまでXboxのような大規模アプリケーションにCPUを供給した実績がないことも懸念材料だ。

 また、Microsoftの選択は、いつも土壇場へ行くまでわからない。例えばXboxの時は、スペック発表の直前に、AthlonからPentium IIIへと逆転した。それを考えれると、今回もどう転ぶかまだわからない。つまり、もし情報が現時点で正しかったとしても、Xbox2のスペックが発表される時点で正しいかどうかはわからない。その意味では、まだXbox2のCPUがどうなるのかはわからない。

 ただ、ひとつだけ言えることがある。それは、モバイル系CPUを使うなら、Xbox→Xbox2では、CPU性能ではそれほど劇的なジャンプが起きないだろう、ということだ。

 Xboxの時は、登場時点でのデスクトップCPUのローエンドクラスの性能のCPUを搭載していた。XboxのCPUはPentium III 733MHzで、2001年末のデスクトップCPUはPentium 4 2GHz〜Celeron 800MHzだった。それに対して、Xbox2は、デスクトップCPUが5GHz弱〜3GHz弱の時に、おそらく1.xGHz程度の周波数で登場する。ぱっと見ただけでもギャップが開いたことがわかる。これは、デスクトップPC向けCPUが、TDPを犠牲にして性能を上げているためだ。

 しかも、モバイル系CPUは、マルチメディア系の性能が相対的に低い。つまり、ゲーム機向けCPUにいちばん必要な性能が弱いことになる。そのため、Xbox2が今業界でウワサされている通りなら、CPU性能に関しては、Xboxから、ゆるやかな発展ということになる。

 ちなみに、Xbox2がモバイル系のパーツで作られるなら、ハードディスクも2.5インチを採用する可能性は高いだろう。


●チップセットを作るのはどこか?

 MicrosoftはXbox2では、コスト削減にも注力すると言われている。現在のXboxでは、Microsoftは比較的高コストのボックスを、PlayStation 2対抗で安く売ったために、ビジネス的にはかなり厳しい結果となっている。原理的に考えても、自社Fabでメインチップセットの半分を製造しているソニー・コンピューターエンタテインメント(SCEI)に価格で戦っても勝ち目はない。Microsoftはこの点を反省、Xbox2ではコストを抑えて、価格競争をしても赤字にはならないようにしようとしているらしい。

 特に、Xboxでは、NVIDIAのXboxチップセット(XGPU+MCPX)の価格が高く、Microsoftはこの部分のコストを下げようと四苦八苦した形跡がある。そのため、Xbox2ではチップセット(グラフィックス統合ノースブリッジとオーディオ統合サウスブリッジ)のコストを下げようと図ると推測される。

XGPU(左)とMXPX

 実際、ATI Technologiesのグラフィックスコアという選択は、この線では理にかなっている。ATIの方がNVIDIAよりも、同等性能ならダイサイズが小さく、性能当たりのコストが低いからだ。もっとも今回の場合、NVIDIAの時と違ってATIがチップセットを作るかどうかわからない。ATIの発表を読む限り、ATIはGPU技術と設計を提供する形態を取ると思われる。そうすると、チップセットのGPU部分以外の設計を、ATI以外のベンダーが担当する可能性もある。

 PC世界の力学に従うなら、もしMicrosoftがコストを下げようと思ったら、ここで台湾チップセットベンダーに依頼する可能性がある。PCの低価格パーツを使って、低コストのXboxを作ろうとするなら、コスト競争力の高い台湾ベンダーをフル活用するのが早道だからだ。そして、もしそうだとすると、Microsoftの選択肢は限られる。台湾チップセットベンダーで現在の2強はSiSとVIAで、グラフィックス統合はSiSの方が得意だ。


●PlayStation 3に先行すると言われるXbox2のスケジュール

 Xbox2のスケジュールも、より具体化し始めた。多くの情報筋が、Xbox2は次世代PlayStation(PlayStation 3)より前になるだろうと伝えている。

 まず、複数の筋の情報を総合すると、PlayStation 3(PS3)は以前このコラムで想定したスケジュール(2005年中盤)より若干後ろになるらしい。もし、PS3の登場が2005年後半または2006年初めだとすると、Xbox2が2005年前半までに登場するなら、十分先行できることになる。

 Xbox2が2004年クリスマスまたは2005年前半とすると、グラフィックスコアの想定も変わってくる。ATIが提供するコアは、おそらく、「R450」クラスになるだろう。ATIのハイエンドGPUコアは、現在のRADEON 9800(R350)のあとに「R420」があり、そのあとにR450が続いている。R450は来年中盤と想定されるため、Xbox2に間に合う最新コアはR450となる。

 そうするとGPUアーキテクチャは、DirectX 9 Shader 3.0ベースになる可能性が高い。実際、MicrosoftがDirectX 9ベースでXbox2タイトルの開発をスタートするように伝えてきたと言う情報もある。


●方向性が異なるPS3とXbox2

 こうして、今の段階での情報から推測すると、同じ次世代ゲーム機でも、Xbox2はPS3とは大きく方向性が異なるだろうことがわかってくる。

 ハード面では、既存のコンピュータアーキテクチャも超えようとジャンプするPS3に対して、Xbox2が狙うのはあくまでもPCアーキテクチャのXboxの延長だ。PS3はCPU性能も大幅アップを狙うのに対して、Xbox2はどちらかというとGPUコアの方に比重が行っているように見える。また、PS3ではラディカルな新アーキテクチャをソフト面でも導入する(と推測される)のに対して、Xbox2はDirectXとWindowsのAPI/ライブラリを継続するらしい。PS3はゲーム機からホームサーバーなども含めたCellコンピューティングへと発展して行くのに対して、Xbox2は小さく安くとむしろゲーム機の原点回帰に近い動きをする。

 こうしてみると、次の世代では、両社の方向性の違いはかなり明瞭になってくると思われる。特に、目立つのは、PS3はコンピューティングのパラダイムまで変えようとしているのに、Xbox2はPC市場の経済スケールを活かすというXboxの戦略をさらに推し進めることだ。簡単に言うと“PS3はPCではできないこと”をやろうとし、“Xbox2はPCでなければできないこと”をやろうとしていると思われる。

 では、はたしてどちらが勝つのか? おそらく、もう両者は同じ土俵で測ることはできないだろう。つまり、勝ち負けの基準すら違ってしまうのではないだろうか。

【8月18日】【後藤】ATIが次世代Xboxに提供するGPU技術とは
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/0818/kaigai012.htm
【2月7日】NVIDIA、MicrosoftとのXbox用GPU/MCPの価格問題解決
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/0207/nvidia.htm
【2002年5月23日】【後藤】Xboxの秘密のベールを剥ぐ「Opening the Xbox」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/0523/kaigai01.htm
【2002年10月16日】【後藤】VIAの次世代CPU「Nehemiah」がMPFに登場
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/1016/kaigai01.htm
【2001年11月16日】Microsoft Xboxレポート
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20011116/xbox.htm

バックナンバー

(2003年9月11日)

[Reported by 後藤 弘茂(Hiroshige Goto)]


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