塩田紳二のPDAレポート

ソニー「クリエ PEG-UX50」詳細レポート
【ソフトウェア編】



 大きくハードウェアの変わったUX50だが、内蔵ソフトウェアに関しては、従来機種とほとんど同じである。基本的には、

  1. Palm OSのPIM系ソフト
  2. ソニーが開発したクリエ用ツール類
  3. その他

である。また、PC側で動作するクリエDesktopもCD-ROMに同梱されている。

 従来機種との大きな違いは、UX50では付属ソフトが予めすべてインストールされており、ユーザーがインストールしなければならないのは、辞書やサウンドファイル程度になったという点である。特にWebブラウザであるNetFrontやPicsel Viewerは、Palm用としては巨大なアプリケーションなので、インストールも大変だった。最初から組み込まれているなら、リセットやバッテリ切れでアプリケーションを失う可能性もないし、すぐ使い始めることができて便利だ。

Clie 3D Launcher。唯一の3D機能を使ったアプリケーションでもある。画面右上のスライダを動かすことで、アイコンを円筒を横から見たように配置させることができる。使いやすいのかというとそうでもなく、以前の機種にあったジョグダイヤル選択のラウンチャーとそう違いはない 画面の左側には常にステータスバーが出ており、時計やメモリースティックを表すアイコン、無線LANの電波状態、音量調整ボタンや電池状態を表示する。上にある上下矢印は、ジョグダイヤルと同じような働きをする。メモリースティックアイコンをタップすれば、情報が表示され、ここからClie FileやData Importを起動できる
UX50では、フォントサイズを3段階に切り替えることができ、さらに、ボールド体にすることも可能。最もフォントを小さくすると横に48文字、縦に17行表示できる

●標準PIMソフトウェア

【表2 Palm OS標準アプリケーション】
PIM系アドレスツール系HotSync
メモ帳カード情報
辞書環境設定
電卓初期設定
予定表
ToDO
辞書

 PalmOSに搭載されている標準ツール類(表2)は、UX50のハイレゾリューション画面に対応している。アドレス帳プログラムは、顔写真などの画像ファイルに対応しているほかは、基本的に従来のものと同じ。

 ただし、同じ5.2を採用しているTungsten Cとは、若干違っている。Tungsten Cに搭載されているPalm OS 5.2では、いくつかの標準ツールやシステムモジュールが更新されているのに対して、UX50では、従来のPalm OS 4.0と同じツールやモジュールが使われている。

 たとえば環境設定プログラムは、TungstenCでは新しいユーザーインターフェースに切り替わっているが、UX50のものは従来と同じものが使われている。そのほか、Network経由でHotSyncを行なう「ネットワークHotSync」は、UX50ではバージョン4.0であるのに対し、Tungsten Cでは5.0となっている。Tungsten Cでは、ローカルネットワーク内をスキャンして見つかったホストのリストから、HotSync先を指定できるのに対し、UX50では従来通りIPアドレスなどを指定してやらねばならない。また、HotSync先となるプライマリPCの指定で、ホスト名が指定してあると、無線LAN経由でHotSyncができないバグも従来と同じ(このときは、プライマリPC名として“!!”を指定して、IPアドレスだけを設定しておく)。

 細かくは検証していないが、UX50はカーネル部分にPalm OS 5.2を採用しているが、Palm OSの標準ツールに関しては、ほとんどPalm OS 5.0のものを使っているようだ。もっとも、Grafity2など、Palm OS 5.2から導入された機能も取り込まれてはいるので、全部が全部、5.0のものというわけでもない。


●ソニーのツール

 ソニーが追加しているソフトウェアには、表3のようなものがある。このほかにラウンチャー画面には、クリエStyleとクリエDEMOの2つのアイコンがあるが、前者はNetFrontが起動し、後者はFlashプレーヤーで再生が始まる。

 細かいバージョンアップはあるが、基本的には従来のクリエシリーズとほとんど同じだ。今回のUX50では、前回解説したように動画再生機能などが向上しているので、持ち歩きAVプレーヤーとしては、ほぼ完成の域に達したといえるかもしれない。実際に、録画したテレビなどをメモリースティックに入れて外出先で見てみたが、再生に違和感はなく、十分使えた。

 もっとも便利に使えるのは、バイオと組み合せた場合だ。筆者の環境では動画を変換する手間がかかるので、そんなには使わないだろうと思っている。

【表3 ソニーオリジナルアプリケーション】
名称バージョン概要
AudioPlayer4.1音楽再生
Clie Album1.2アルバム作成
Clie Camera2.2デジタルカメラ(静止画)
Clie Files1.1.1ファイル/データベースブラウザ
Clie Mail2.1.1メールソフト
Clie Memo1.2.1手書きメモ
Clie Viewer1.2マルチメディアファイルビューア
Data Import1.1USB経由でPCからメモリースティックを読み書き
Image Upload Utility1.0.3イメージステーションにデータをアップロードするツール
Movie Player1.1動画再生
Movie Recorder1.3動画撮影
Photo Editor1.1フォトレタッチ
Photo Stand1.5スライドショー
Remote Camera1.0.1Bluetooth経由でデジカメを制御
Sound Utility1.23音声再生、管理
Voice Recorder1.2音声録音
World Alarm Clock1.13世界時計


●その他のツール

【表4 サードパーティアプリケーション】
名称概要
ATOKかな漢字変換
Decuma Japanese日本語手書き文字認識
Macromedia Flash Player 5Flashコンテンツ再生ツール
NetFront v3.0WWWブラウザ
Picsel Viewer for クリエファイル閲覧

 組み込まれているサードパーティのソフトウェアには、表4のようなものがある。このうち、NetFrontやPicsel Viewerは、バージョンアップもあるが、ヒープ領域が大きくなったこともあって、体感速度やデータ量限界が上がったようである。たとえば、NZ90に付属していたPicsel Viewerではサイズが大きすぎて読み込むことができなかったファイルなども、UX50では表示が可能になっている。

 最近クリエシリーズに付属するようになったDecuma Japaneseは、いわゆる日本語の手書き文字認識システムだ。これによりアプリケーションへの入力を手書きで行なえるようになるが、キーボードがあるのであまり必要性を感じない。

 NetFrontは、画面が横480ドットになったこともあって、さまざまなWebページが見やすくなった。また利用できるメモリも大きくなったためか、大きなページを読み込んでも黙ってしまうことが少なくなった。ただし、相変わらず、別ウィンドウを開くページには未対応だ。シャープのLinuxザウルスSLシリーズ用では、タブで別ウィンドウを表示できるようになっている。メモリなどの問題もあるのだろうが、このあたりなんとかしてほしいところだ。

 Picsel Viewerも、メモリや液晶の横幅が広くなった関係で、やはり使いやすくはなっている。ただし、一部のPDFファイルなどでは、英単語間のスペースが崩れて文書が読めなくなることがある。日本語ではスペースが無いので問題は起きないが、筆者は各種の資料などをPDF化しているため、これはちょっと痛いところ。もっともPDFのバージョンやPDF Makerの問題という可能性もあり、必ずしもPicselの責任ともいえない。

 Picsel Viewerは、以前クリエシリーズに登載していたDocument To Goと比較すると、ファイルの編集はできないものの、対応するフォーマットが多く、ドキュメントの表示品質も高い。どっちがいいのかは使い方によりけりだが、Adobeが日本語版のPalm OS用Adobe Readerを出荷していない(年内には日本語版が出るという話だが)現状では、Picsel Viewerのほうがバンドルソフトとしては正解と思われる。なお、Document To Goの日本語版は、エクセルソフトが販売しているので、必要ならば入手が可能。これに対してPicsel Viewerは、現時点ではパッケージ販売が行なわれていない。

Picsel Viewerは、メモリが増え、より大きなファイルも扱えるようになった。また、横方向の解像度が上がったため、文書も見やすくなっている Picsel Viewerでは、一部のファイルで、単語間のスペースがおかしくなり、このような表示になってしまう。遠目にみると普通に見えるが、実際には、単語がくっついてしまっていて全然読めない WebブラウザであるNetForntでは、PC Watchのページ程度であれば、横スクロールなしに表示が可能

●Tungsten Cと比べて

 同じように無線LANを内蔵しているTungsten Cを筆者は常用していたのだが、これをUX50に乗り換えるかどうかで迷っている。ハイレゾリューション画面はやはり魅力的で、Webブラウザの表示などを見るとUX50にしようかとも思ってしまう。これに対してTungsten Cには、PPTPに対応したVPN機能があり、外出先からの自宅のメールサーバーのチェックなどに重宝している。UX50にはVPN機能がないため、自宅へのアクセスができない。プロバイダのメールサーバーへのアクセスは問題ないが、筆者のようにVPNを多用するユーザーには辛いものがある。

Tungsten Cの5Way Navigationキー

 操作感は、UX50のキーボードがかなり良くなったので、細かい違いしかない。具体的には、ジョグダイヤル対5Way Navigationキーである。筆者の好みは5Way Navigationキーだ。というのは、GUIに対する操作は5Way Navigationキーのほうが自然なのである。

 たとえば、アドレス帳への入力時、5Way Navigationキーを下に押せば、次のフィールドへカーソルが移る、そのまま下げていけば画面がスクロールする。しかし、ジョグダイヤルでは、画面がスクロールするのみでカーソルは移動しない。編集を行なうには、別途画面をタップする必要がある。UX50のカーソルキーを使ってもカーソルは移動しない。カーソルを前後のフィールドに移動させるためには[Ctrl]+[O]/[Ctrl]+[P]を使うが、これは両手を使うためにちょっと操作が面倒だ。こういう細かい点で、5Way Navigatinキーのほうが使いやすく感じる。

 VPNとキー操作以外は、機能、性能ともUX50のほうが上なので、乗り換えてもいいかと思っているのだが。

□製品情報
http://www.sony.jp/products/Consumer/PEG/PEG-UX50/
□関連記事
【8月27日】【PDA】ソニー「クリエ PEG-UX50」詳細レポート【ハードウェア編】
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/0827/pda25.htm
【8月12日】【PDA】ソニー「クリエ PEG-UX50」ファーストインプレッション
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/0812/pda24.htm
【7月17日】ソニー、自社製CPUを搭載したクリエPEG-UX50
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/0717/sony2.htm
【2月17日】無線LAN内蔵 キーボード付きPDA Palm Tungsten C
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/0528/pda16.htm

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(2003年8月28日)

[Text by 塩田紳二]


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