UX50は手持ちのNZ90を売り払って入手した。NX70VをNZ90に取り替えたときには、NZ90があまりにデカくてかなり後悔したが、UX50はかなりコンパクトになって持ち歩きやすくなったので、今度は取り替えてよかった気がしている。UX50は、この連載で紹介したソニー製PDAの中で一番小さい機種になる。ようやくPalmOS 5マシンもコンパクトなものになりはじめたということだ。 UX50のスペックなどについては、ソニーのサイトを参照頂きたい。
なお、8月11日に無線LAN用のアップデートプログラムが公開されたが、筆者が入手したパッケージにはすでに案内の紙が入っていた。アップデートプログラムの公開日はなんと8月7日。つまり、発売日の2日前。おそらく、かなり最後の段階で発見されたバグなのであろう。
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●本体デザイン 以前紹介したNZ90が初代ウォークマンなら、UX50は最近のウォークマンとでもいうべき大きさ(もっとも、MD再生専用機よりは大きいようだが)。 このシリーズの特徴でもある液晶部分の回転機構により、ノートPCのようなクラムシェルタイプと、液晶面を表に出したPDAタイプの2つの形で利用が可能。基本的なデザインは、シャープのLinuxザウルスであるSL-C750に似ている。特に表側が白いのに液晶のまわりの額縁のところが黒いというのもそっくり。
ただしUX50では、液晶表示は上下にひっくりかえるだけで、縦向きにはならない。つまり、あくまでも横にしたまま利用するようになっている。液晶のそばには、無線LANとBluetoothの動作を示すLEDが配置されている。
キーボード部分はゆるやかなカーブで上下しており、ちょうどキートップの部分が波の山になっている。このため、キートップは筐体と同じ面になっているものの、キートップがふくらんでいるのと同じであり、指の感触でキートップが判別でき、押しやすくなっている。
キーボード側の最も手前はふくらみが大きくなっており、全体として見るとこの部分は、筐体に円柱がくっついているようにも見える。この部分の左側が大型のハンドストラップリングとなっており、反対側にスタイラスが格納できるようになっている。スタイラスは、ロッドアンテナのように2段で伸び縮みするもので、ちょっと触ったぐらいでは抜けないようになっている。NZ90ではスタイラスがすぐ抜けてしまい、結局3本もスタイラスを無くしてしまったのだが、UX50ではそういうことはなさそうだ。ストラップリングは、大きな輪になっており、かなり太いひもも通すことができそう。もっとも、金属リングなどをつけてしまうと回りがキズ付きそうで怖いが……。首からかけて持ち歩くなんて用途にはいいかもしれない。
本体左側には、電源/ホールドスイッチ、IrDA、USB端子があり、反対側には、メモリースティックスロットが配置されている。電源スイッチは、本体手前側に押すと電源のON/OFF、奥に押せば画面を消し操作ができなくなるホールド状態となる。NZ90に比べると、電源スイッチは軽くなっており、操作すると指先が痛くなるようなことはない。また、側面がガードさているために、カバンの中などで間違ってONになるようなことはない。
個人的な好みからいえば、右手でON/OFFできるように本体右側に押しボタンスイッチ形式で付いていたほうが電源ONとキーボード操作を片手でできるのでありがたいのだが……。これは、今まで使っていたTungsten Cが丁度そうなっていて、かなり快適だったから。後述するが、キーボードの操作はNZ90までの機種に比べるとかなりよくなっているだけにちょっと残念なポイントである。
本体底面には、スピーカーおよび、充電用の端子、リセット穴があり、このほか、充電用クレードル固定用の穴もあいている。
細かい点だが、液晶部の両端の下側に小さなプラスティックの突起がついた。おそらくこれで本体を傷付けないようにという配慮ではないかと思われる。実は、NX70VやNZ90では、この部分が鋭角になっていて、回転時に本体をひっかいてしまうことがある。それを防ぐために、NX70Vは、本体側のハードウェアキーのところがシールのようになっているし、NZ90では、上下ボタンのところが窪んでいるのだが、今回は液晶側にプラスティックの突起が付いて、本体側を傷つけてしまうような事故を防ぐようだ。
●パッケージの中身は 製品パッケージに付属しているのは、
・充電用クレードル などである。NZ90などに比べると付属品は大幅に減っている。UX50には音楽再生機能があるが、リモコンヘッドフォンはなくなり、単なるヘッドフォンのみの対応となった。好みはあるかもしれないが、リモコンはポケットやカバンに入れたままで操作ができるので便利。AV機能を標榜するなら付いていておかしくない機能だが、なぜかこの機種では省略されている。このため、リモコンやヘッドフォンも添付されない。
どうせ充電でクレードルに接続しなければならないのなら、同時にUSB接続もできたほうが便利だと思う。従来の機種ならば、充電とホットシンクのための接続が同時に行なえたのに、この機種では、本体とクレードルを接続し、それとは別にUSBケーブルをつながなければならない。これはちょっと面倒だ。さらに面倒なことに、このUSBケーブルにはホットシンクボタンがないため、ホットシンクはUX50側でホットシンクアプリケーションを起動して行なわねばならない。
もっとも、解決方法としてBluetoothや無線LAN経由でのホットシンクという手もあるが、UX50自体の操作が必要な点は同じ。クレードルに載せて、ボタンを押すだけといったPalmの良さが取り込まれていないのはかなり残念な点だ。
●キーボードはかなり改善された? 今回のUX50のキーボードは、物理的なタッチや配列が改善されたほか、シフト関係の動作も変更されており、簡単にいえば、従来機種よりも使いやすくなったようだ。 まず配列でいえば、数字キーが独立したために数字入力がラクになったこと。このため、モードを変えるキーは、シフト、ファンクション(青キー)、コントロールの3つとなり、シフトキーは単独で押すと後続の1文字だけ、単独で2回押してシフトロックとなる。また、日本語モードや一部の記号を入力するためのファンクション(青キー)も同様に単独で後続のキーのみ、2回押しでロック状態となる。このキーは、一部の特殊記号や、ひらがな/カタカナ切り替え、日本語/英語切り替えなどの場合に使い、特に頻繁に使う日本語入力モードのON/OFFが片手でもできるようになった。 またハードウェアキーも、液晶に隠されない部分に常にあるために、いつでもこのキーで電源ONとアプリケーション起動が可能になる。NX70Vでは、液晶の下になってオープンスタイルでしか使えなかった。NZ90ではようやく液晶側にアプリケーションボタンが配置された。今回は、液晶がどういう状態でも常に利用可能なハードウェアキーとなり、使い勝手はさらに上がったようである。
今までNX70V、NZ90と使ってきたが、ここにきてようやく使い物になるキーボードになったという印象だ。
●内蔵カメラ NZ90では、カメラアプリケーション(CLIE Camera)の起動にかなり時間がかかっていたのと、消費電力が大きくて、電池状態によっては起動ができなかったのだが、UX50ではスムーズな起動が可能で、バッテリ状態によるカメラの起動制限もなくなった(Bluetoothや無線LANについてはバッテリ状態による制限あり)。これなら、とっさのときにちょっと写真を撮ることが可能。もっとも、これぐらいの機能なら最近では携帯電話でも可能なので、PDA付属のカメラはそろそろ携帯のデジカメ機能との差別化を考えないと、無用の長物になりかねない。 UX50の動画撮影は、バッテリフル状態で約1時間可能(バックライトは最大)で、128MBのメモリースティックに最大120分の記録ができる。ここまでくると、解像度は別としてビデオカメラ並に使えるわけだが、日常的に動画の撮影がちょくちょくあるのかというと難しいところ。2万円ぐらいのデジタル動画カメラでもこれぐらいは可能。オマケ機能として見れば優秀だが、何かの記録に使えるのかというとこの解像度だとちょっと難しい。
静止画の画質は初期のデジカメ並。最大でVGA解像度なので、人が2~3人ならんだスナップ写真をとって、顔が判別できる程度。レンズが小さいせいか、ところどころ色がにじむところがあり、最近の綺麗なデジカメに慣れた目からみると少しがっかりするかもしれない。まあ、ちょっとした画像メモ用というところか。あちこち撮ってみたが、ホワイトバランスはオートにしておくよりも、こまめに屋外、屋内などを切り替えたほうがいいようだ。
●液晶ディスプレイ 今回採用された液晶は480×320ドットで、ちょうどVGAのタテ半分となる解像度である(UX50では、これを90度回転させて使っている)。ディスプレイは横長であり、前述のように90度回転はしないために、常に横長の状態で利用する。 従来の160×160ドット対応のPalmアプリケーションは、縦横320ドットの領域に表示され、余った右側の部分にグラフティ領域が表示される。従来のCLIEでは液晶は縦長で使っていたので、たとえば、スケジュールなどを表示させると、1画面に表示される時間範囲が広くなったが、UX50では縦方向は従来のPalm機と同じで1行が長くなる表示となる。 Palm m505だと、最小のフォントでスケジュール画面は1行26文字程度だが、UX50では中サイズの文字で39文字、最小サイズのフォントで49文字の表示が可能。 横長の表示にもそれなりのメリットはあり、たとえば、従来2行になってしまったような表示でも1行に収まるために、より多くの情報が表示されることになる。好き嫌いもあろうが、筆者としては便利だと感じている。 ただ、画面左側に表示されるグラフティ領域はちょっと苦しい。実際に入力ができないこともないが、なにか違和感を感じ、入力にストレスがある。まあ、キーボード中心で使えば問題はないと思うが、グラフティに慣れてしまった人は実際に使ってみて善し悪しを判断すべきだろう。なお、UX50は以前紹介したTungsten C同様グラフティ2を採用している。 画面左側は常にステータス表示などに使われ、バッテリやメモリースティックのアイコンなどが置かれる。また、ここに常にホーム(アプリケーション起動画面)、メニュー表示のボタンが配置される。スタイラスを使っている最中にキーを押すのが面倒に感じられることがあり、ここにこの2つのボタンはこうしたときに便利に感じる。
液晶自体はバックライトを装備したTFTカラーディスプレイ。電源オフ時にはまっ黒になるので、透過型ではないようで、室内などではバックライトが必須となる(一応ON/OFFが可能)。 直射日光が当たるようなところでは、それなりに見えるのだが、中途半端な明るさ、たとえば、夏の日差しが強いときの日陰のようなところではちょっと見にくい。バックライトはON/OFFしても明るいところでの見えやすさは変わらないので、明るいところで使うときの節電用ということか。
液晶の発色はNZ90に比べると少しおとなしい感じ。NZ90では赤の発色などが少しギラギラした感じがあったのだが、それに比べると同じ写真でも赤の発色は少し暗めになっており、落ち着いた感じがする。
●その他 CLIEシリーズの特徴とでも言うべきジョグダイヤルだが、今回の機種は側面に置かれるホィールタイプではなく、最近のソニーエリクソンの携帯電話に多く見られる円筒形のローラータイプである。このダイヤルは、本体正面にあって、親指の腹で押せるときには使い勝手は悪くないが、UX50だと本体の左側に寄っていて、親指を斜めにかけるような感じで使う。このために、ダイヤルを押し込む動作や押し込みながら回すような動作にちょっとやりにくさを感じる。 円筒の半分より手前側を本体側に押し込むようになっており、半分より上側に指をかけてしまうと、かなり押しにくい。左手でUX50を持った状態では、本体を下から支えるような感じになるので、その方向とずれている本体奥側(本体と水平に近い角度でヒンジ側)へ押す動作には、なにか手が滑って落としてしまいそうな不安感があり、使ったときにストレスを感じる。たとえば、キャプチャボタンの隣とか、電源スイッチの位置にジョグダイヤルがあると良かったような気がする。 ざっと触った感じ、サイズとキーボードの改良など、今までにここで紹介した筆者が入手したCLIEシリーズの中では一番良い印象だ。ただ、クレードルでPCと接続できないのが欠点だ。 フルレートの動画表示がスムーズに行なえるなど、能力的にも十分である。これだと、たとえば、録画したテレビをMPEG-4に落として外出中に見るなんてこともでき、それなりの使い方が可能だろう。 CPUの速度も十分で、アプリケーションがもたつくようなことはない。もっとも、PalmOSやアプリケーションにはあまり重いものはないのだが。 ただ、出先でメールといった使い方を考えると、UX50は少し不便。UX50だけでは、ホットスポットへ行って使うか、入手困難なBluetooth対応携帯電話/PHSを使わざるを得ない。拡張端子らしきものは見あたらないので、CFカードアダプタなどがあとから登場することもありそうにない。
一応、ハギワラシスコムからBluetooth経由でPCカードタイプの通信カードが使える製品B-Portが出ているのが、選択肢が狭いことは間違いない。
□製品情報 (2003年8月12日)
[Text by 塩田紳二]
【PC Watchホームページ】
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