購入後、しばらくPEG-UX50を使っているのだが、それまで使っていたPalmのTungsten Cと比べていいところもあるが、不満な点もある。今回は、詳細なUX50のレポートをお届けする。 ●バックアップは省電力機能で
従来のクリエには、本体メモリの内容をメモリースティックにバックアップするソフトウェアが付属していたが、UX50では、バックアップ専用のメモリを本体内部に搭載している。これは、環境設定の「省電力」で行なう。省電力機能を使うと、メインメモリを専用のフラッシュメモリ領域に待避したうえで、電源を完全に切ってしまう。Palm機では、電源オフの状態でもメモリに通電して内容を保持しており、またCPUはほとんど停止状態ではあるが、アラームや電源ボタンなどですぐに起動できる状態になっていて、完全に電源がオフになっているわけではなかった。 省電力機能を実行することで、専用のメモリにメインメモリがバックアップされる。次回電源オン時には、フラッシュメモリからデータが回復され、ソフトリセットがかかったときと同じようにシステムが回復する。なお、ハードリセット(電源ボタンをオンにしながらリセット)を行なったときにも、待避してあるデータからの回復が可能になっている。 これで、バッテリ切れでメインメモリの内容が失われてしまうことが基本的にはなくなる。もともとPalmOSでは、バックアップはPCに行なうようになっており、最後にHotSyncしたときの状態に戻すことはできる。しかし、最近では非PCユーザーもPDAを使う機会があり、必ずしもPC上にバックアップが残っているとはいえない状態にある。そこで、メモリースティックなどの外部メディアに状態を保存するわけだが、この方法は、別売りのメディアが必要なこと、ユーザーがバックアップを意識的に行なう必要があり、バックアップを忘れてデータを失うといった事故は防げない。UX50の省電力機能は、バッテリが一定以下になったときには自動的にメインメモリを待避するようになっている。このため、PCにバックアップがなくても、データを失うことはないわけだ。 ではなぜ、メインメモリをフラッシュメモリにしないのかというと、動作速度の問題があるからだ。Palm OSでは、いわゆるメインメモリをストレージヒープ(RAMディスクのようなもの)とダイナミックヒープ(ソフトウェアのワーク領域)として利用する。スケジュールや住所録といったデータはストレージヒープに置かれ、この部分には頻繁にアクセスする。このため、読み書きの速度が遅いフラッシュメモリだと、OSやアプリケーションが遅くなってしまうのである。こうした理由のために、UX50では必要に応じてフラッシュメモリ側にメインメモリ(ストレージヒープ)を待避するようになっているわけだ。 もう1つ、この機能はメンテナンス時にも、ユーザーデータを壊しにくいというメリットがある。後述するように分解してみたが、直前に省電力機能でメモリを待避しておけば、バッテリを外しても完全に元の状態に戻る。 ●増えたメモリ
UX50は、Palm OS 5.2を採用している。5.2の最大の特徴は、管理できるメモリが大きくなったほか、アプリケーションが実行時に利用できるメモリも大きくなったこと。Palm OSでは、前述のようにメモリをストレージヒープとダイナミックヒープに分けて利用するが、5.2以前のPalm OSでは、メモリ全体の最大値が16MBとなっており、ダイナミックヒープも800KB程度と制限されていた。 Palm OS 5.2では、ダイナミックヒープを大きく取ることが可能で、UX50では、7MB程度確保されている。これとは別に16MBのストレージヒープがあり、その他に22MBの内蔵ストレージがあり、さらにメモリースティックスロットを使ってストレージ領域を拡大することもできる。 UX50のスペックでは、メモリとして約104MBという記載がある。なんだか半端な数である。ユーザーから見えるのは、16MBのメインメモリ(データ格納領域)と、内蔵ストレージの約30MB。しかし内蔵ストレージは、初期状態で残りは22MBとなっている(これがカタログに記載されている容量)。 発表時のソニーの説明によると、データを失わないように別にデータ保管用のメモリが用意されているという。これは、おそらくメインメモリ16MBを待避しておくもので、この部分は最低でも16MBあると思われる。 調べてみたところ、プログラムの実行に使われるダイナミックヒープは約7MBあり、ROMとしてメモリが16MB搭載されているようだ。Palm系OSでは、プログラムのアップデート用にROMがフラッシュメモリとなってることが多い。もし、そうだとすると、これも前述の104MBに含まれている可能性がある。 これを整理すると、表1のようになる。
合計は、フラッシュメモリと思われるものが約62MB、DRAMと思われる部分が約23MB、計約85MBが用途のわかっているメモリとなる。 また、発表時の資料により、搭載のCPUであるHandheld Engineは、8MBのDRAMを搭載していることがわかっている。このメモリには、グラフィックコントローラーやLCDコントローラ、カメラインターフェースが接続されているので、この部分は、画面表示や、高速処理を必要とするデータの置き場所として使われているはずで、上記の85MBには含まれないと思われる。 基本的には、メモリデバイスの容量は、2のべき乗(もしくはその整数倍)となる。これから考えると、フラッシュメモリが64MB(表1の3~5はフラッシュとなるため)、DRAMが32MB(1および2)、これにCPUが内蔵している8MBを足すと丁度104MBとなる。
●分解しました
で、どうにも気になったので、UX50を分解してみた。メイン基板は、キーボードの下、左側にあり、右側にはメモリースティックスロットと電池がある。このメイン基板は、UX50の半分よりも小さい。残りは、電池やメモリースティックスロットなどで使われている。 無線LANとBluetoothのアンテナは、キャプチャボタンのあたりにある。よく見ると、この部分はケースが別部品になっている。本体はマグネシウム合金だが、アンテナ部分を金属で覆わないようにここはプラスティックになっているのだと思われる。 メイン基板は、両面に部品が実装されており、底面側には無線LANやBluetoothのデバイスが、キーボード側にはCPUなどがある。 これでわかったことだが、底面側にはM-Systemの「DiskOnChip Plus」と呼ばれる64MBのフラッシュメモリがあった(ちなみにM-Systemのサイトには、同社の製品がUX50に採用されたとのプレスリリースがあった)。これは、フラッシュメモリとコントローラーを一体にした半導体ストレージデバイスだ。また、反対側になるCPU側に置かれているSAMSUNG製のチップは、256Mbit(32MB)のSDRAMである。メモリとしては、32bit×8MBになっている。 UX50では、DiskOnChip Plusの64MBを不揮発性のメモリとしてプログラムやメインメモリの保存用に使っているようだ。DiskOnChip Plusに保存されたデータは、必要に応じてDRAMへ読み出してくる必要がある。このため、32MBあるSDRAMのうち、ストレージヒープとダイナミックヒープの16+7MBだけがユーザーに見えており、残りの部分にプログラムを置いて実行しているのではないかと推測される。UX50が動作周波数の割に高速なのは、プログラムも高速なDRAMに置かれて実行されるからではないだろうか? カシオのLagendaなども、Windows CEを使いながらPocket PC版を採用せず、同様の手法を使って高速化している。通常のPalm機では、フラッシュメモリ上のプログラムを直接実行しているため、その分のオーバーヘッドがある。 こうしてみるとUX50は、従来のPalm機に比べるとかなりPCなどの標準的なコンピュータに近い構成になっている。またこの構成なら、プログラムのアップデートも簡単だし、対応するつもりならOSの完全なアップグレードも可能だろう。 ネジが小さいため、最近細かい文字が見えにくくなってきた筆者は、分解、組み立てにかなり苦労した。また、本体底面は、特殊なネジになっており、専用のドライバーが必要だ。組み立て終わって、電源が入ったときにはホッと一安心した。
□製品情報 (2003年8月27日)
[Text by 塩田紳二]
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