会場:Las Vegas Convention Center、Las Vegas Hilton、Alexis Park International CESは初日を迎え、ソニーの安藤国威社長兼COO、Intelのクレイグ・バレット社長兼CEOによる基調講演が行なわれた。ソニーの安藤氏による講演は、僚誌のAV Watchをご覧いただくとして、本レポートではIntelのバレット社長の基調講演の模様をお伝えしていきたい。 Intelは昨日(現地時間、日本時間で9日)にBaniasプラットフォームのブランド名を「Centrino」(セントリーノ)に決定したことを明らかにしたが、当然バレット氏の講演では、Centrinoが話題の中心になった。 ●Intelはシリコンベンダーであり続ける バレット氏がInternational CESの基調講演に登場するのは初めてではない。今から2年前、2001年に開催されたCESの前日基調講演にも登場している。 ここ数年で、Microsoftのビル・ゲイツ会長兼CSA以外が前日の基調講演を行なうのは筆者の記憶が正しけばこの年のバレット氏ぐらいであり、実に珍しいことだっただけに非常に注目を集めた基調講演だったことを覚えている。 当時の基調講演でバレット氏は、MP3プレーヤーなど様々な一般消費者向けの機器を紹介し、Intelが一般消費者分野へ華々しく展開していくことをアピール。その後、Pentium 4のCMにも登場したパフォーマンス集団のBLUE MAN GROUPを舞台に登場させるなど、華々しい演出を行ない、“Intelらしからぬ”という感想を抱かせたものだ。 それから、2年たち、その内容はどう変わったのだろうか。結論から言えば、大きく変わったと言ってよい。 第一に、2年前にバレット氏が宣言した「一般消費者向け製品への進出」という内容は全くない。それはそうだろう、Intelは2年前に発表した一般消費者向け製品、例えばMP3プレーヤーやデジタル玩具などからすでに撤退しているし、その後新しい製品は発表していない。 実際、基調講演後の記者会見で、Intelは一般消費者向けの製品に興味はないのかという質問もでていたが、「Intelは、CPU、チップセット、ネットワークなどのシリコンを提供するベンダであり続ける」と述べるなど、Intelとしては、今後も一般消費者向けの製品に進出する予定がないという姿勢を明確にした。 ●一般消費者をケーブルから解放することが次の進化だ だが、派手な演出だけは、前回と同様に“Intelらしからぬ”もので、冒頭からラスベガスと縁の深いエルビス・プレスリーのそっくりさんが登場。エルビスの歌を歌いながらデジタル社会の歴史を振り返るパフォーマンスを見せた。 ひとしきり過去を振り返ったあとで、舞台袖に引っ込み、衣装を脱いでカツラを取ると、バレット氏が登場するという凝った演出。その後もM.I.T.(マサチューセツ工科大学)で研究を行なっているグループが登場し、コンピュータ制御によるパフォーマンスを披露するなど、とにかく賑やかな講演となった。 だが、メッセージの方は“Intelらしからぬ”ものではなく、“Intelらしい”ものとなっていた。今回のバレット氏のメッセージは「Innovation Unwires The Consumer(革新により一般消費者をケーブルから解放する)」だ。 バレット氏は人々が何を求めているか、というテーマのビデオを放映し、「多くの一般消費者はケーブルから解放されることを望んでいる。電話はかつて有線だったが、今は無線になり非常に便利になった。有線LANから無線LANへの進化により、同じごとがブロードバンドにも起きる」と述べ、すべてのものをワイヤレスとすることで、一般消費者のデジタル機器の使い勝手が大幅に向上すると強調した。
●Centrinoは3月にリリース その具体的な例としてバレット氏が取り上げたのが、昨日プラットフォームブランド名がCentrino(セントリーノ)として発表された、次世代のモバイル向けプラットフォームだ。 CentrinoはこれまでBaniasプラットフォームのコードネームで呼ばれていた製品で、CPUのBanias、チップセットのOdemないしはMontara-GM、無線LANモジュールのCalexico(キャレクシコ)の3つのコンポーネントで成り立っている。 昨日のプレスリリースではBaniasそれ自体のブランド名は発表されていなかったが、基調講演後のバレット氏の記者会見において、以前お伝えした通り、Baniasのブランド名はPentiumをベースにした“Pentium-M”に決定されたことが正式に明らかにされた。 なお、チップセットのOdem、Montara-GMに関してはOEMメーカー筋の情報によりOdemがIntel 855PM、Montara-GMはIntel 855GMであることが判っている。 Intelがこうしたプラットフォームに関するブランド名を導入した背景は、既報のとおり、CPUだけでなく、チップセット、無線LAN、そしてソフトウェアを組み合わせることでプラットフォーム全体としての価値を高めていこうという戦略がある。 Intelは今後モバイルにおいては、CPUよりもプラットフォーム全体としてのブランド名を重視していく方針で、CPUブランドよりもプラットフォームのブランド名であるCentrinoが大々的に発表されたのもそうした理由があるからだ。 今回バレット氏は、壇上にIBMのB5サイズの試作機(おそらくX30の後継機だと思われる)、DellのA4サイズのシン&ライトノートPCなど、Centrinoを採用したノートPCを持ってきて、ワイヤレスでインターネットにアクセスする様子や、ビクターが試作した無線ビデオカメラでストリームを流す様子などをデモした。 バレット氏は「Centrinoは3月にリリースする予定。無線機能はリリース時には11MbpsのIEEE 802.11bのみをサポートし、54MbpsのIEEE 802.11aとのデュアルバンド機能は第2四半期に追加する」と述べ、Centrinoのリリース時期を初めて公式に明らかにした。 デュアルバンド機能の追加が第2四半期とCentrinoのリリースに間に合わないのは、デュアルバンドのCalexicoの動作検証などが遅れていて、3月の出荷には間に合わないためだ。 Calexicoは11bのみのシングルバンド版と、11a込みのデュアルバンド版の2つが存在するが、デュアルバンド版の方は開発が遅れており、OEMメーカーに対して出荷時期の遅延が通知されていた。 バレット氏の今回の発表はそれを公式に認めたものだと言ってよい。従って、Centrinoは3月のリリース時には、PentiumーM、Intel 855PM(Intel 855GMは4月リリースの予定)、11bのみのシングルバンド版Calexicoの組み合わせでリリースされることになる。
●準備は整った、あとはOEMメーカーの魅力的な製品を期待するだけ 以上のように、Calexicoデュアルバンドの延期という残念なニュースもあるものの、Baniasプラットフォーム改めCentrinoは、ブランド名も決定し、あとはリリースを待つのみとなった。 しかし、今回の基調講演は、Centrinoで実際にどのような製品がリリースされるのか、という意味ではやや中途半端な印象だった。今回壇上で紹介された製品は、いずれも現在のフォームファクタの延長線上にある製品で、デザイン的にものすごく革新的な製品というのが見受けられたわけではないからだ。 エンドユーザーに、Centrinoが魅力的な製品である、ということをアピールするには、そうした革新的なノートPCは必須と言える。果たして、ノートPCベンダー各社から、今後どのような魅力的な製品がリリースされるのか、それがCentrinoが無事に離陸するための鍵となるだろう。 □2003 International CESのホームページ(英文) (2003年1月11日) [Reported by 笠原一輝@ユービック・コンピューティング]
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