クレイグ・バレット基調講演レポート
PCはより使いやすい“エクステンデッドPC”へと進化

キックオフキーノートを行なうIntel社長兼CEOのクレイグ・バレット氏
1月5日(現地時間)開催

会場:Las Vegas Hilton Theater


 「21世紀の頭を飾るCES(Consumer Electronics Show)のスタートが、コンシューマ(一般消費者)には本来無縁なはずの半導体メーカーであるIntelであるとは!」そんな驚きの声が、この講演のスケジュールが明らかになった時にあがっていた。

 しかし、IntelがわざわざCESの基調講演に登場するからには、Intelの家電(コンシューマエレクトロニクス)領域への進出など新しい発表があると見られていた。数年前より、PCは家電(コンシューマエレクトロニクス)化が進んでいくと言われていた時期があったが、現時点になっても家電と呼ぶにはほど遠い状況が続いていたのだ。

 しかし、今回の基調講演でIntel社長兼CEOのクレイグ・バレット氏は「PCはより使いやすいPCとして“エクステンデッドPC”へと進化し、さらに家電や家電的な周辺機器と共に利用することでよりユーザーはリッチなデジタルコンテンツを利用することができるようになるなど使い勝手が向上していく」と述べた。また、21世紀のPC、そして家電がそれぞれ協調して発展していくことで、より豊かな“デジタルライフ”を満喫できるというビジョンを明らかにし、Intelブランドによるコンシューマ向けPC周辺機器の本格参入を明らかにした。


●「エクステンデッドPC」はデジタル社会の中心であり続ける

 壇上に登場したバレット氏は「PCの未来について語りましょう」と述べ、これからのデジタル社会におけるPCの役割などについて語りはじめた。「オーディオ、ビデオ、カメラなどといったこれまでアナログだった機器もデジタルへの置き換えが進んでおり、デジタルの社会は広がりつつある」と述べ、バレット氏はPCだけでなくこれまでアナログだった分野の機器でも急速なデジタル化が進んでいることを指摘し、「そのデジタル化がコンシューマの生活を豊かにするなどのメリットをもたらす」と述べ、機器のデジタル化がコンシューマの生活を豊かにしていくということを指摘し、よりいっそうのデジタル化の重要性を訴えた。

 そうしたデジタル時代におけるPCの役割として、バレット氏は「デジタル化された機器、例えばデジタルカメラ、PDAなどのデジタル機器は、常にPCと一緒に使ってこそその存在価値がある。そうした意味では、PCにさまざまなデジタル機器が接続されているのが現状であり、今後もそうした状況が続くだろう」と述べ、デジタル社会を迎えたデジタル機器ネットワークの中心的な存在として今後もPCはあり続けるという見解を示した。

 そうしたデジタル社会時代のPCは、「より使いやすいPCとして“エクステンデッドPC”へと進化し、家電や家電的な周辺機器と共に利用することでよりユーザーはリッチなデジタルコンテンツを利用することができるようになるなど使い勝手が向上していく」とした。さらに、「PC側、家電側がそれぞれネットワーク化されてことによりデジタル社会はより加速されていく。IntelはCPUを販売していく会社であるのに、コンシューマ向けの周辺機器をリリースしたのは、そうした社会のデジタル化を押し進めていくためだ」と述べ、今回Intelが発表するさまざまな周辺機器がPCの売り上げに貢献し、さらには販売台数を拡張していくのに役に立つという点を指摘した。

●数々のコンシューマ向け製品を発表

 既に報道されているように、Intelは1月2日にポータブルオーディオプレイヤーの「PocketConcert」などのコンシューマ向けの商品を発表しているが、今回の基調講演でも「PocketConcert」、USB接続の顕微鏡である「QX3 Computer Microscope」、ボイスチェンジャーの「Computer Sound Morpher」などのコンシューマ向けブランドを再度紹介した。「コンシューマ向けの製品は、よりユーザーフレンドリーにし、よりユーザーができることが増えるなどPCの価値を高めてくれる。我々は、今後コンシューマ向け製品に関するキャンペーンを積極的に行なっていく」(バレット氏)とのべ、今後Intelがこうした製品を積極的に展開していく方針であることを明らかにした(各製品の詳細は後のレポートで)。

 引き続き、バレット氏はIntelが開発中ないしは今回のCESで発表したコンシューマ向けの周辺機器を利用したデモを行なった。最初に登場したのは「ePHONE」と呼ばれるBluetoothに対応した携帯電話で、BluetoothによりPC上のPIMとシンクロする様子がデモされた。このあともIntelが開発中のWebTabletを利用して、ホストになるPCをコントロールしたり、居間に座りながら検索ページにアクセスして好みの情報を検索するといったデモが行なわれた。

バレット氏の基調講演で展示されていた、IntelのChatPad 「ePHONE」と呼ばれるBluetooth対応携帯電話を利用しながら、PC(DELLのPentium 4搭載マシン)とデータをシンクロしているところ 「WebTablet」を利用しながら、リビングからPCをコントロールしたり、ホームページを検索したりできる Intelの「WebTablet」。Windows CEベースのペンオペレーションマシンで、CPUにはStrongARMを採用

●Pentium 4のメリットを強調することも忘れなかったバレット氏

 さらに、後半はPentium 4を搭載したマシンのデモに時間が割かれた。2000年8月のIntel Developer Forum Fallでパット・ゲルシンガー副社長が表明したPeer-to-Peer Computingの具体的な例として「POPstar」というビデオ配信のソフトを利用して、ピア・ツー・ピアでパーソナルビデオの配信が可能になると言うものだ。さらに、STEINBERGのClean!を利用したMP3のエンコードに関するデモなどが行なわれ、Intelが今最も売りたいはずの製品であるPentium 4に関するアピールは効果的に行なわれたと言える。

 家電のイベントであるCESでCPUに関するアピールを行なうことは、逆効果となってしまう可能性もある。つまり、IntelはCESという家電のイベントで、強引にPCのCPUを宣伝していったととられてしまう可能性だ。しかし、今回のバレット氏のPentium 4によるデモは、PCと家電の関係にきちんと言及したあとで、さらに家電ライクな周辺機器の紹介とデモのあとで行なわれた。そうした意味では、非常に効果的にかつスマートに行なうことができたと言え、Intelにとってポイントは高かったと言える。

Pentium 4搭載マシンを利用したデモ。POPStarというピア・ツー・ピアのビデオ配信ソフトを利用して、結婚式の様子を友人などにライブで中継するデモが行なわれた 「ePHONE」と呼ばれるBluetooth対応携帯電話を利用しながら、PC(DELLのPentium 4搭載マシン)とデータをシンクロしているところ

●BLUE MAN GROUPのパフォーマンスに参加するなどバレット氏らしからぬ派手な登場で会場をわかす

 なお、今回のIntelの展示のテーマは「Out of the blue」、さらにIntelのコーポレートカラーは青と、Intelは何かと青に関係することが多い会社である。そこで、という訳ではないのだろうが、ラスベガスを中心にパフォーマンスを行なっているBLUE MAN GROUPが最初に壇上に登場し、派手なパフォーマンスを行なった。

 途中、彼らが持っているボードを青いインクで塗ってみると「Intel」という言葉が浮き上がるなどのパフォーマンスを行ない、それが終わりに近づいた頃、1つの四角い箱が登場した。その箱に取り付けてあったバケツをBLUE MAN GROUPのメンバーが取り外してみると、その中からクレイグ・バレット氏が登場し、会場は盛り上がった。さらに、基調講演の終わりには、もう一度BLUE MAN GROUPが登場し、バレット氏に胃カメラを飲ませ、バレット氏の胃を見ていくと、最後にPentium 4のロゴが登場するという華々しい終わり方で幕が閉じられた。

 正直、今回のこの演出には少々驚かされた。これまでのバレット氏の講演と言えば、堅実な演出がほとんどで、派手さは少なく「紳士的」であるという印象を受けるものがほとんどだった。しかし、今回の派手な登場はそれを覆すものであり、翌日に登場するマイクロソフトのビル・ゲイツ会長兼CSAに負けないために意識的に演出を派手にしたと考えるのが正解だろう。これまでゲイツ会長の基調講演は、(実際に内容が伴っているかはともかくとして)世情を風刺したユニークなビデオなどにより演出は一般消費者を意識したものとなっており、良くも悪くも話題をさらってきた。今回、CESというコンシューマを相手としたイベントの最初の基調講演に登場するにあたり、その辺を意識してコンシューマにもうけるように意識的に演出を派手にしてみたと考えることができるだろう。このあたりにも、コンシューマへのアピール度をあげていこうというIntel首脳陣の考え方が伺える。

 以上のように、今回の基調講演は内容が盛りだくさんで、演出も大変派手と新しいポータブルオーディオプレイヤーでコンシューマ向けビジネスに乗り出していくというIntelの本気が感じられるものだった。もちろん、Intelのビジネスモデルの要であるCPU、つまりはPentium 4のアピールもきちんと行なわれ、非常に完成度が高い基調講演だったと言ってよい。「PCを売りたいのであれば、PCに接続することができる周辺機器に力を入れていくことは必須だ。Intelは“Intel Inside”キャンペーンと同じように、それらの販売キャンペーンにも力を入れていく」というバレット氏のコンシューマ向け製品に関する「本気」を示すメッセージは、詰めかけた聴衆に届いたのは間違いないだろう。

バレット氏の基調講演に先立ち行なわれたBLUE MAN GROUPによるパフォーマンス 白いボードに青いインクで「Intel」の文字が浮き上がったところ 彼らが持ってきた箱の中の蓋をあけると……
なんとでてきたのはバレット氏だった、というインテルらしからぬ演出だった 終了間際にBLUE MAN GROUPに胃カメラを飲まされるバレット氏 そしてバレット氏の胃の内部には「Pentium 4」が!なんとバレット氏も「Intel Inside」だったのだ!

□2001 International CESのホームページ(英文)
http://www.cesweb.org/
□Intelのホームページ(英文)
http://www.intel.com/
□基調講演のトランスリプト(英文)
http://www.intel.com/pressroom/archive/speeches/crb20010105ces.htm

(2001年1月9日)

[Reported by 笠原一輝@ユービック・コンピューティング]


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