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DDR SGRAM搭載GeForce256ビデオカード登場



 NVIDIAの最新ビデオチップGeForce256を搭載するビデオカードとして秋葉原に最も早く登場した、クリエイティブメディアの「3D Blaster GeForce」。現在では価格もこなれてきてかなり買いやすくなってきており、これから購入しようと考えている人も多いことだろう。その3D Blaster GeForceに上位モデルの「3D Blaster GeForce Pro」が登場し、先週末から秋葉原で発売が開始された。ビデオメモリにDDR SGRAMを採用したことで、従来モデルからどの程度パフォーマンスが向上しているのか気になるところだと思う。そこで今回は、この3D Blaster GeForce Proを取り上げ、そのパフォーマンスを検証してみよう。


■ビデオメモリとしてDDR SGRAMを32MB搭載

 3D Blaster GeForce Proは、既に発売されている「3D Blaster GeForce」の上位モデルにあたるビデオカードで、ビデオメモリとして従来のSDRAMではなく、DDR SGRAMが採用された製品だ。先週の「AKIBA PC Hotline!」でも紹介されているように、搭載されているメモリはDDR SDRAMではなくDDR SGRAMである。この点はしっかりと頭に入れておく必要があるだろう。クリエイティブメディアは、GeForce256搭載カードの市場一番乗りを果たしたが、DDRメモリ搭載製品でも市場一番乗りを果たしたことになる。

 DDR SGRAMは、供給されるクロックの立ち上がりと立ち下がりでデータの入出力を行なう「DDR(Double Data Rate)機能」に対応したSGRAMである。従来のSGRAMでは、供給されるクロックの立ち上がり部分のみでデータの入出力が行なわれるが、DDR SGRAMではクロックの立ち下がり部分でもデータの入出力が行なえるため、2倍のデータ転送速度が実現できるというわけだ。

3D Blaster GeForce Proに搭載されるDDR SGRAM、Infineonの「HYB39D32322TQ-6」。DDR SDRAMではない点は注意
 3D Blaster GeForce Proに搭載されているDDR SGRAMは、Infineonの「HYB39D32322TQ-6」という32Mbitのモジュールだ。Infineonのホームページに掲載されているこのチップのスペックシート(PDF)を見ると、200MHz動作時に400Mbpsというデータ転送速度が実現されているとある。3D Blaster GeForce Proではこのメモリに150MHzのクロックを供給して150×2=300MHzを8個並列で動作させている。従来の3D Blaster GeForceではメモリの駆動クロックは166MHzであったため、メモリクロックは低下しているものの、メモリのデータ転送速度は格段に向上しているため、大幅なパフォーマンスアップが期待できるというわけだ。3D Blaster GeForce ProにはこのDDR SGRAMチップが8個、合計32MB搭載されている。

 従来製品とのハードウェアの仕様の違いは、メモリがDDR SGRAMになっている点のみで、メモリ搭載量やGeForce256上に取り付けられているファン、カードの形状などに大きな違いは見られない。「evolva」というゲームソフトとGeForce256のデモソフトが新たに付属となっているが、従来製品に付属していたDVD再生ソフト「PowerDVD」が省かれている。定価は39,800円、実売価格は33,000円前後だ。

「画面のプロパティ」の「BlasterControl」には、従来通りメモリクロックの設定機能が用意されている。270MHz~330MHzまで1MHz刻みで設定可能だ
 ところで、従来通りビデオドライバ「BlasterControl」にはメモリクロックの設定機能が用意されており、270MHz~330MHzまで1MHz刻みで設定できるようになっている(メモリに供給されるクロックはこの数字の1/2となる)。今回試した限りでは、搭載されているDDR SGRAMは供給クロック166MHzまでサポートしていることもあって、最大値である330MHzに設定しても問題が発生することは全くなかった。ベンチマークテストではメモリクロックを330MHzに設定した状態でのテストも行なっているので、どの程度パフォーマンスが向上するか参考にしてもらいたい。


■3Dパフォーマンスの向上を確認

 それでは、3D Blaster GeForce Proのパフォーマンスを、いくつかのベンチマークソフトを利用して測定してみることにしよう。

 ところで、今回から使用するベンチマークソフトとテスト環境を一部変更することにした。詳細は以下の通りである。今後しばらくは、この連載でビデオカードを扱う場合この環境でテストを行なっていくことにする。

 また、今回比較用のビデオカードとしてカノープスのSPECTRA 5400 Premium Edition(以下SPECTRA 5400 PE)、Matrox Millennium G400、ATI RAGE MAGNUM、3dfx Voodoo3 3500TVをそれぞれ用意して同じ環境でテストを行なうつもりであった。しかし、Voodoo3 3500TVは今回のテスト環境で正常に動作させることができなかった。CPUにCoppermineコアのPentium IIIを利用した場合、Windows 98上で正常な画面描画が行なえなかったり、アプリケーションが正常に起動できなかったりといった問題が発生したのだ。CPUにKatmaiコアのPentium IIIやCeleronを利用した場合にはそういった問題は発生しなかったため、おそらくCoppermineコアのPentium IIIとVoodoo3用のビデオドライバの相性が悪いものと思われるが、正確な原因は不明だ。また、Voodoo3用の最新ドライバ(バージョン1.03.04)では、CPUにPentium IIIとAthlonを利用した場合に3DMark2000が正常に動作しないことも報告されている。そのため今回はVoodoo3 3500TVを利用した測定は行なわなかった。今後ビデオドライバのバージョンアップなどでこの問題が解決されたら改めて測定したいと思う。

【テスト環境】
 CPU      :Pentium III 700MHz
 マザーボード :ABIT BE6
 メモリ    :128MB SDRAM(PC100)
 ハードディスク:Western Digital Caviar AC14300
 OS      :Windows 98 Second Edition

【ベンチマークソフト】
 WinBench 99 Version 1.1
 3D WinBench 2000
 3DMark2000
 TUROK2
 Quake III Arena Demo 1.09

【テスト条件】
ビデオドライバの設定は基本的に標準設定のまま。Turok2とQuake IIIではV-SyncをOFFに設定。また、リフレッシュレートは全ての画面モードとも85Hzに設定。
 WinBench 99 Version 1.1  :基本的に標準設定
 3D WinBench 2000      :基本的に標準設定
 3DMark2000         :基本的に標準設定
 TUROK2           :V-SyncをOFFにする以外は標準設定
 Quake III Arena Demo 1.09 :基本的に標準設定。テストにはDEMO001を利用

○2D描画パフォーマンス

 2D描画パフォーマンスの測定は、従来通りZiff-Davis,Incの「WinBench 99 Version 1.1」に含まれる「Business Graphics WinMark99」と「High-End Graphics WinMark99」を利用する。1,024×768ドット、リフレッシュレート85Hz、16bitカラーモードと32bitカラーモードで測定してある。

【1,024x768 16bitカラー】
Business Graphics
WinMark 99
High-End Graphics
WinMark 99
3DBlaster GeForce Pro295838
3DBlaster GeForce294835
SPECTRA 5400 PE294835
Millennium G400296848
RAGE MAGNUM249785

【1,024x768 32bitカラー】
Business Graphics
WinMark 99
High-End Graphics
WinMark 99
3DBlaster GeForce Pro293830
3DBlaster GeForce285827
SPECTRA 5400 PE286824
Millennium G400287831
RAGE MAGNUM211755

 結果を見ると、2D描画パフォーマンスは従来モデルと比較して全く変化していない。ビデオメモリのパフォーマンスが向上しているにも関わらず結果に違いが見られないということは、2D描画パフォーマンスが既に飽和状態にあることを裏付けているといっていいだろう。

○Direct3D描画パフォーマンス

 次に、Direct3Dベースでの3D描画パフォーマンスだ。こちらは、これまで利用してきたFutureMarkの「3DMark99 Max」に変わり、その後継ソフトであるMadOnion.comの「3DMark2000」に加え、Ziff-Davis,Incの「3D WinBench 2000」を利用することにした。

 これらのベンチマークソフトは、双方ともDirectX 7に対応しており、さらにジオメトリ演算のハードウェアアクセラレーション(ハードウェアT&L)もサポートしている。これによって、今後ゲームなどの3Dアプリケーションが採用する3D APIの主流になると思われるDirectX 7ベースのDirect 3D環境下における3D描画パフォーマンスを正確に測定できるようになったわけだ。もちろん、ジオメトリエンジンを搭載するGeForce256の本来のパフォーマンスも正確に測定できるようになったといっていいだろう。

 この双方のベンチマークソフトを使用し、1,024×768ドットと1,280×1,024ドットの16bitおよび32bitカラーモードにおけるパフォーマンスを測定した。

【3D WinBench 2000/3D WinMark 2000 (fps)】
1,024x768 16bpp1,024x768 32bpp1,280x1,024 16bpp1,280x1,024 32bpp
3DBlaster GeForce Pro92.370.763.142.5
3DBlaster GeForce78.952.352.531.0
SPECTRA 5400 PE59.741.538.923.5
Millennium G40046.433.231.120.0
RAGE MAGNUM26.419.417.911.6
3DBlaster GeForce Pro ClockUp94.174.565.046.6

【3DMark2000/3DMark】
1,024x768 16bpp1,024x768 32bpp1,280x1,024 16bpp1,280x1,024 32bpp
3DBlaster GeForce Pro4,5393,4813,2472,188
3DBlaster GeForce3,9182,6512,7231,619
SPECTRA 5400 PE3,2562,4202,2261,389
Millennium G4002,7182,2871,8641,369
RAGE MAGNUM1,4321,104 895 654
3DBlaster GeForce Pro (Pentium III)4,3523,7193,5122,406
3DBlaster GeForce (Pentium III)4,1102,9072,9861,738
3DBlaster GeForce Pro ClockUp4,6393,6783,3592,415
3DBlaster GeForce Pro ClockUp (Pentium III)4,3463,8913,6352,664

 結果を見ると、全ての項目で前モデルよりもパフォーマンスが向上していることがわかる。特に32bitカラーモードでは、3D WinMark 2000の結果が40%ほど、3DMark2000の結果が30%ほどと大幅に向上している。ビデオメモリのパフォーマンスアップによってレンダリング性能が向上したことがこの結果の主な要因と考えていいだろう。

 また、比較として用意したほかのビデオカードともかなりの開きがある。連載31回「後の3Dグラフィックスシーンを変えるか!? GeForce 256搭載ビデオカード登場」で3D Blaster GeForceを扱ったときのベンチマークテストで、3DMark99 Maxの結果が他のビデオカードの結果と大きく違わなかった時とは大きな違いだ。もちろん、DirectX 7環境下でDirectX 7対応アプリケーションを利用した場合、という条件は付くものの、今回の結果こそがGeForce256の本来のパフォーマンスといっていいだろう。

 ところで、3DMark2000には、ジオメトリ演算にDirectX 7が提供するハードウェアT&Lを利用するだけでなく、Pentium IIIに最適化した独自エンジンを利用することもできるようになっている。そこで、3D Blaster GeForce と3D Blaster GeForce Proで、ハードウェアT&Lを利用せずに、Pentium IIIに最適化された独自ジオメトリエンジンを利用したテストも行なった。その結果を見ると、ほぼ全ての項目において、ハードウェアT&Lを利用した場合よりも結果が向上している。

 GeForce256に内蔵されているジオメトリエンジンのパフォーマンスがNVIDIAが発表する通りであるならば、Pentium IIIの演算能力では到底対抗できないはずである。しかし、今回のテストの結果ではジオメトリ演算にPentium IIIを利用した場合の方が結果が良かった。これは、3DMark2000がDirectX 7のジオメトリ演算のハードウェアアクセラレーション機能に十分に最適化されていないか、ビデオドライバがGeForce256のジオメトリエンジンの能力を引き出せていないか、のどちらかが原因と考えられる。

 GeForce256に最適化された専用ソフトであればこのような結果になることはないはずだが、少なくとも現状の環境のままでは今後登場するであろうDirectX 7ベースの汎用ゲームソフトなどでも同様の結果となるだろう。場合によっては、ジオメトリエンジンの本来のパフォーマンスを十分に引き出せる環境を整えることが今後課題になってくるかもしれない。

○DirectX 6.1ベース3Dゲームの描画パフォーマンス

 DirectX 6.1ベースの3Dゲームソフトでの描画パフォーマンスはどうだろう。このテストでは従来通り「Turok2:Seeds of Evil」を利用した。3D Blaster GeForceではRIVA TNT2 Ultraを搭載するSPECTRA 5400 PEやMillennium G400の結果とあまり大きな開きは見られなかったが、3D Blaster GeForce Proでは、解像度が高くなり、カラーモードが32bitモードになるとかなりのパフォーマンス向上が見られる。特に、1,280×1,024ドット32bitカラーモードでは従来モデルの50%増しと、大幅なパフォーマンス向上となっている。ハードウェアT&LをサポートしないDirectX 6.1ベースのソフトでもこのようなパフォーマンス向上が見られたということは、やはりメモリのパフォーマンスアップによってレンダリング性能が向上したことを裏付けているといっていいだろう。

【TUROK2:Seeds of Evil】
1,024x768 16bpp1,024x768 32bpp1,280x1,024 16bpp1,280x1,024 32bpp
3DBlaster GeForce Pro80.378.977.560.1
3DBlaster GeForce79.170.073.341.9
SPECTRA 5400 PE78.465.164.737.0
Millennium G40072.768.658.943.9
RAGE MAGNUM55.441.833.422.0
3DBlaster GeForce Pro ClockUp81.680.779.867.3

○OpenGLベース3Dゲームの描画パフォーマンス

 最後にOpenGLベースのゲームソフトだが、こちらも先ほど登場したQuake III Arenaの最新デモ版「Quake III Arena Demo 1.09」を利用することにした。Quake III Arenaは、世界中で最も多くのプレイヤーにプレイされる3Dアクションシューティングゲームになると思われる。そういった意味でも、Quake III Arenaでのパフォーマンスは、ビデオカードのパフォーマンスのひとつの指標になるといっていいだろう。

【Quake III Arena Demo 1.09】
1,024x768 16bpp1,024x768 32bpp1,280x1,024 16bpp1,280x1,024 32bpp
3DBlaster GeForce Pro82.960.752.532.6
3DBlaster GeForce70.140.938.723.0
SPECTRA 5400 PE46.634.228.919.4
Millennium G40039.732.924.918.8
RAGE MAGNUM23.717.814.9
 9.7
3DBlaster GeForce Pro ClockUp84.565.053.836.5

 結果を見ると、3D Blaster GeForce Proは従来モデルと比較して全てのモードでパフォーマンスが向上している。また、他のベンチマークテスト同様、32bitカラーモードでの向上度合いが大きく、40~50%ほどと大幅な向上が見られている。


■3D Blaster GeForce Proは現状最速のビデオカードであることは間違いない

 今回のテストの結果では、DirectX 7が提供するハードウェアT&Lを利用できるソフトだけでなく、DirectX 6.1ベースのゲームソフトでも大幅なパフォーマンスアップが確認できた。少なくとも、現在発売されているビデオカードの中で最も高い3D描画パフォーマンスを備えているということは間違いない。

 ちなみに、販売価格は3D Blaster GeForce256と1万円ほどの差がある。しかし、アプリケーションベースで1~5割のパフォーマンスアップを考えると、それだけの差額を支払う価値は十分にあるといっていいだろう。

 ただ、ハードウェアT&Lをサポートするソフトがまだほとんど存在しないことを考えると、まだまだGeForce256の持つパフォーマンスを十分に引き出せる環境が整っていないという点は従来から大きく変化していないといわざるを得ない。また、ハードウェアT&Lを利用できるソフトでも、ジオメトリ演算をCPUに担当させたほうがパフォーマンスが高くなる場合もある。先ほども書いたとおり、今後はドライバやソフトなどといった環境面の整備が課題となってくるだろう。

□AKIBA PC Hotline! 関連記事
【12月11日号】DDRメモリを採用した「3D Blaster GeForce Pro」発売
DDR SGRAMを32MB搭載、実売価格は3万円強 http://www.watch.impress.co.jp/akiba/hotline/991211/geforcepro.html

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[Text by 平澤寿泰@ユービック・コンピューティング]


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