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冬季CPU購入ガイド
~Intel、AMDの現役全41種類CPUベンチマークデータ付き~



 冬のボーナス時期を迎え、新たにPCの自作するためCPUを買おうという読者の方も多いと思う。しかし、読者の多くが購入するだろうと思われるIntelとAMDという2つのメーカーだけでも、CPUは6種類(Pentium III(Coppermine、Katmai)、Celeron、Athlon、K6-III、K6-2)もあり、どれを購入すべきかの判断が難しい。そこで、今回は秋葉原で発売されているIntel、AMDのCPU製品を集めてベンチマークを行ない、そのデータを元に、最もハイパフォーマンスなCPUと、最もお買い得なCPUを考えてみた。


●実に種類が多い現役のCPU

 現在秋葉原のマーケットでは、Intel、AMD、Cyrix、IDTの4社のCPUが販売されている。このうち、Cyrix、IDT(正確には子会社のCentuar Design)の2社は台湾のチップセットベンダーであるVIA Technologiesに売却されている。今後はVIAがPGA370(いわゆるSocket 370)にフォーカスしていく事を明らかにしているものの、今後の展望は不透明な状態であり、現時点で積極的に両社のCPUを購入する理由はない。そこで、今回はIntel、AMDの2社の製品にターゲットを絞って検討していきたい。

 Intel、AMDの2社のCPUをCPUコアで分類した表が表1だ(CoppermineとKatmaiは別のCPUとしている)。こうしてみるとわかるように、現在市場には6種類のCPUがあることになる。これらのCPUはそれぞれ特徴を持っており、それを正確につかむことがCPUを理解する上での第一歩と言える。現時点ではCPUをバリューPC(いわゆるローエンドPC)といった低価格向けのセグメントと、パフォーマンスPC(さらに高い分類としてエンスージアストPCが定義されることもある)という性能重視のセグメントに分けられて検討されることが多い。

【表1:CPUスペック表】
K6-2K6-IIIAthlon(K7コア)CeleronPentium III(Katmaiコア)Pentium III(Coppermineコア)
CPUソケット/スロットSocket 7Socket 7Slot APGA370SC242SC242/PGA370
製造プロセス0.25μm0.25μm0.25μm0.25μm0.25μm0.18μm
コアクロック266~533MHz400/450MHz500~700MHz300~500MHz450~600MHz500~733MHz
FSBクロック66/95/97/100MHz100MHz100MHz(DDRで200MHz)66MHz100/133MHz100/133MHz
L1キャッシュ(命令/データ)64KB(32/32)64KB(32/32)128KB(64/64)32KB(16/16)32KB(16/16)32KB(16/16)
L2キャッシュマザーボード上に搭載256KB(オンダイ)512KB(BSB)128KB(オンダイ)512KB(BSB)256KB(オンダイ)
L2キャッシュクロック倍率CPUクロック同等1/2CPUクロックと同等1/2CPUクロックと同等
MMX対応
SSE対応××××
3DNow!対応*1*1×××
*1◎はエンハンスド3DNow!対応

●AMD-K6-2

 AMDの3DNow!テクノロジAMD-K6-2プロセッサ(以下K6-2)は、Socket7用のバリューPC向けCPUだ。K6-2はビジネスアプリケーションで多用される整数演算こそCeleronなどにひけをとらない処理能力が実現されているが、浮動小数点演算に関してはやや苦手という傾向を持っている。現在秋葉原では300MHz~500MHzまでが販売されており、そのほとんどは1万円以下で購入することができる。

 なお、先日AMDからは533MHzのK6-2が発表されたが、この原稿執筆時点では秋葉原では販売されていない。ただ、もし販売されていたとしてもFSBのクロックが97MHzとやや変則になっており、現在のSocket7マザーボードで対応できるものは限られているので注意が必要だ。

□関連URL
AMD 3DNow!テクノロジAMD-K6-2プロセッサ
http://www.amd.com/japan/products/cpg/k623d/index.html

●AMD-K6-III

 AMDの3DNow!テクノロジAMD-K6-IIIプロセッサ(以下K6-III)は、K6-2ではマザーボード上に搭載していたL2キャッシュ(256KB)をオンダイ(CPUコアに統合すること)にしたCPUで、動作クロックは400MHzと450MHzの2ラインナップが用意されている。L2キャッシュをオンダイ化したことにより、L2キャッシュの動作クロックが飛躍的にあがり(同じ400MHzで比較した場合K6-2の4倍)、整数演算能力が大幅に向上しているのが特徴だ。ただし、K6-2と同じように浮動小数点演算に関してはあまり得意ではない。当初はパフォーマンスPC向けと位置づけられていたが、Athlonが登場した今となってはバリューPC向けのCPUとして位置づけられている。

 なお、K6-IIIが登場した当時はコア電圧は2.4Vだったが、現在市場には2.2V版のK6-IIIも出回っている。K6-2からのアップグレード用途にCPU購入を検討している場合には有望な選択肢になるだろう。

□関連URL
AMD 3DNow!テクノロジAMD-K6-IIIプロセッサ
http://www.amd.com/japan/products/cpg/k6iii/index.html

●Celeron

 IntelのバリューPC向けCPUがIntel Celeronプロセッサ(以下Celeron)だ。Celeronの特徴は、基本的にはPentium IIのCPUコアを元にL2キャッシュ(128KB)をオンダイにしたCPUで、現在秋葉原では300A MHzから500MHzまでが販売されている。Celeronの特徴は整数演算、浮動小数点ともにバランスよく性能を発揮することだ。ただ、AMDのK6ファミリー(K6-2、K6-III)がマルチメディア系の拡張命令である3DNow!テクノロジに対応しているのに対して、CeleronはMMXのみとなっている。

 なお、Celeronも登場当初はSC242(いわゆるSlot 1)用のSEPP版と、PGA370(いわゆるSocket 370)用のPPGA版があったが、466MHz以降ではPPGA版しか用意されておらず、こちらが主流になりつつある。ただ、PPGA版でもSC242(Slot1)マザーボードで使えないわけではなく、マザーボードメーカー各社が発売している変換アダプタを購入すれば利用できる。

□関連URL
Intel Intel Celeronプロセッサ
http://www.intel.co.jp/jp/developer/design/Celeron/index.htm

●Pentium III(Katmai)

 IntelのIntel Pentium IIIプロセッサ(以下Pentium III)はCPUコアの違いで2種類がある。1つがKatmaiと呼ばれるCPUコアを利用したもので、もう1つがCoppermineというCPUコアを利用したものだ(以下、KatmaiコアのPentium IIIを「Pentium III(Katmai)」、CoppermineコアのPentium IIIを「Pentium III(Coppermine)」とする)。

 Pentium III(Katmai)は製造プロセスが0.25μmで作られており、L2キャッシュはオンダイではなく512KBがCPUボード上に搭載されている形状になっている。Pentium III(Coppermine)が発売された現在では、性能面ではあまり見るものはないが、その分価格は安くなっており、比較的コストパフォーマンスが高くなっているのが特徴と言える。このほか、Pentium IIIはマルチメディア系の拡張命令としてインターネット・ストリーミング拡張命令(以下SSE)に対応している。

□関連URL
Intel Intel Pentium IIIプロセッサ(Katmaiコア)
http://www.intel.co.jp/jp/developer/design/pentiumiii/index.htm

●Pentium III(Coppermine)

 Pentium III(Coppermine)は製造プロセスを0.18μmに微細化し、L2キャッシュ(256KB)をオンダイ化したPentium IIIで、従来のPentium III(Katmai)のL2キャッシュがハーフスピード(CPUコアの1/2)で動作しているのに比べてフルスピード(CPUコアと同等)になっており、整数演算能力が向上しているのが特徴と言える。動作クロックは500MHz~733MHz。また、Pentium III(Katmai)と同じようにSSEに対応している。

□関連URL
Intel Intel Pentium IIIプロセッサ(Coppermineコア)
http://developer.intel.com/design/pentiumiii/

●Athlon

 AMDのAthlonプロセッサ(以下Athlon)はAMDの新世代CPUとして今年の8月に発売されたばかりのCPUだ。CPUバスには旧DEC(現Compaq Computer)のAlphaプロセッサ用に開発されたEV6バスを採用し、整数演算、浮動小数点共に高い処理能力を持っている。クロックは500MHzから700MHzで、製造プロセスは0.25μmだ。L2キャッシュはオフダイで、CPUボード上に搭載されている(容量は512KB)。

 なお、既にAMDはPC用のCPUとしては最高のクロック周波数を持つAthlon 750MHzを発表している。ただし、現時点では秋葉原で発売されていないので、今回は特に評価などには加えていない。

□関連URL
AMD Athlonプロセッサ
http://www.amd.com/japan/products/cpg/athlon/index.html


●リテールパッケージと動作確認済みマザーボードをセットで買うのが安全

 以上のように、秋葉原で購入できるIntel、AMDのCPUは実質6種類があると言える。ただ、注意したいのは秋葉原で販売されているCPUにはパッケージの違いで2種類があることだ。1つは「バルク」と呼ばれる箱などに入っていない裸の状態で販売されているCPUで、もう1つが「リテールパッケージ」と呼ばれる化粧箱に入った状態で販売されているCPUだ。

 バルクは本来OEMメーカーに出荷されるために化粧箱などが省略されているCPUが、秋葉原のショップなどに流れてきた製品で、CPUメーカーが正規に販売を認めている製品でない場合が多い(少なくともIntelはバルクのCPUの存在を認めていない)し、メーカー保証も付いてこない。これに対して、パッケージはIntelおよびAMDがその正規代理店を通して販売しているパッケージで、きちんとしたメーカー保証が付いてくる。また、リテールパッケージではCPUクーラーがあらかじめついた状態で出荷されるので、追加でCPUクーラーを買う必要がないというメリットもある。CPUの機能としてはどちらも変わらないのだが、CPUメーカーの保証とCPUクーラーの有無が違いはある。ただ、最近ではリテールパッケージとバルクの価格差は千円か、2千円程度なので、ファンを購入するとすぐ同程度の価格になってしまうことを考えればリテールパッケージを購入した方がいいのは言うまでもない。

 また、出たばかりのCPUを購入する際には、もう1つ注意が必要だ。新しいCPUを古いマザーボードで利用するにはBIOSのアップグレードが必要になることがある。古いCPUを持っていればそれを利用してアップグレードということが可能だが、古いCPUを持っていない場合はそれができない。そうした事態に陥らないためにも、あまり自作経験がないユーザーはできるだけショップで動作確認がとれたマザーボードと併せて購入するようにした方がいいだろう。


●実クロック=パフォーマンスではない!

 CPUを購入するときに1つ知っておくべき事は、「CPUの処理能力=実クロック」ではないということだ。同じコアを採用したCPUの場合、クロックが高いCPUの方が処理能力が高いということは言うまでもないが、CPUコアが異なっている場合、同じクロックであっても処理能力は異なっている。例えば、現在「500MHz」のクロックを持つCPUは5種類ある。CoppermineコアのPentium III 500E MHz、KatmaiコアのPentium III 500MHz、Celeron 500MHz、Athlon 500MHz、K6-2/500がそうだ。これらのCPUの処理能力は同じではなく、それぞれ異なっている。それでは、実際の処理能力はどうやって知ればいいのだろうか? それを見る1つの「ものさし」となるのが、ベンチマークプログラムだ。

 ベンチマークプログラムとはPCに特定の処理をさせ、処理にかかった時間を計測することで、そのPCが持つ処理能力を比較するというプログラムのことを指している。人間が速い遅いを判断するよりも、PCにより客観的に判断することができるため、PCの性能を計測する場合に利用されている。ただし、これは理解しておいて頂きたいのだが、ベンチマークは万能ではないということだ。基本的にベンチマークプログラムは、PCに特定の処理(例えばワープロソフトで文字の置換や、表計算ソフトで計算など)をさせることで、結果を導き出している。従って、そのベンチマークが出す結果は、そのベンチマークと同じ処理をユーザーがしたときにはほぼ同じような差が出ると考えて良い。しかし、我々がPCで行なう処理は、実に多岐に渡っている。例えば、ワープロの処理が速くても、DVDのソフトウェア再生を行なった時にはあまり処理能力が高くないというCPUも実際に存在している。例えば、DVD再生がPCのメイン用途だという人にとっては、ワープロソフトの処理能力を計測しているベンチマーク結果は意味がない。残念ながら現時点ではユーザーがPCで行なうすべての用途をカバーするベンチマークプログラムは存在しない(というより、そんなものを作るのは不可能だろう)。従って、自分がどのジャンルのアプリケーションをメインにするのかをよく考え、そのジャンルのベンチマーク結果を中心に見ていくという作業が必ず必要になる。このように、ベンチマークの結果は必ずしも万能ではないということは理解しておこう。


●4つのジャンルにおけるそれぞれのベンチマーク

 今回はテストに4つのベンチマークプログラムを利用した。それがZiff-Davis,Inc.Winstone 99 Version1.2WinBench99 Version1.1MadOnion.com3DMark99 MAX、MultimediaMark99の4つだ。それぞれのベンチマークの内容と傾向を見てみよう。

(1)Winstone99 Version 1.2

 Winstone 99は2つのテスト(厳密に言うと3つなのだが、今回は利用しないので省略)から構成されている。それがBusiness Winstone 99とHigh-End Winstone 99だ。Business Winstone 99はMicrosoft Office97、Lotus SmartSuite(日本ではSuperOfficeに相当)やNetscape Navigatorなどのいわゆるビジネスアプリケーションの実在のコード(メーカーから提供された実在の実行ファイルなどがインストールされる)を利用して、ビジネスアプリケーション環境の処理能力を計測するベンチマークだ。同じように、High-End Winstone 99はAdobeのPhotoshop、Premiereといったフォトレタッチ、ビデオ編集、CAD、3D CGなどのいわゆるハイエンドアプリケーションの実在のコードを利用して、ハイエンドアプリケーションにおける処理能力を計測するベンチマークとなっている。

 Winstoneの特徴は既に述べたように、実在のアプリケーションのコードを利用して計測するため、ユーザーの体感に比較的近い傾向がでるという定評があり、PCの評価を行なうときには必ずと言ってよいほど利用される定番のベンチマークテストである。ただし、残念なことにWinstone 99は日本語版のWindows(Windows 98、Windows NT)では動作しない。このため、今回のテストはWindows NT 4.0+ServicePack4(いずれも英語版)という環境で行なっている。

Business Winstone 99 high-End Winstone 99
●テキスト版グラフ

●グラフィック版グラフ

●テキスト版グラフ

●グラフィック版グラフ

(2)WinBench99 Version1.1

 WinstoneがPC全体(CPU、チップセット、ビデオ、ハードディスク、メモリなどを組み合わせた状態)の処理能力を計測するのに対して、WinBench99はコンポーネント単位(例えば、CPU単体やハードディスク単体)の処理能力やデータ転送速度などを計測するテストだ。WinBench99にはディスクのデータ転送速度を計測するDiskWinMarkやビデオ周りの描画速度を計測するGraphics WinMarkなどのテストがあるが、CPU周りの処理能力を計測するテストとしてはCPUmark99、FPU WinMarkという2つのテストが用意されている。

 CPUmark99はZiff-DavisがWinstoneを解析して得られたよく利用される命令を実際に実行させて、その処理能力を計測するテストだ。このCPUmark99ではいわゆるビジネスアプリケーションで多用される整数演算系の命令を実行させているので、いわゆる整数演算能力を計測するベンチマークとして利用されることが多い。ただ、CPUmark99は別名「L2mark99」と揶揄されるほど、L2キャッシュの動作クロックなどに結果が左右されやすい。このため、L2キャッシュがオンダイになっていてクロックが高いCPUほど高い結果がでる傾向がある。このため、Winstone 99の結果とはやや異なる結果がでる傾向もあるので注意したい。

 ただ、Winstone 99がビデオやディスクなどの性能に結果が左右されるので、比較するにはすべてのCPUで同じ環境をそろえる必要があり、今回掲載した結果などを読者の自分の環境と比べるのが不可能であるのに対して、CPUmark99はディスクやビデオの性能にはほとんど左右されない。このため、自分の持っているPCの結果をWinBench99で計測し、今回掲載している結果と比較することは可能だ。Winstone 99がダウンロードできない(ファイルサイズが大きすぎるため。実費でCD-ROMを郵送してもらうことは可能)のに対して、WinBench99はグラフィックスのテストがないバージョンをZDBOpのホームページからダウンロードすることが可能だ(CPUmark99だけをダウンロードすることもできる)。

 CPUmark99が整数演算能力を計測するのに対して、FPU WinMarkは浮動小数点演算能力を計測する。浮動小数点演算はフォトレタッチやビデオ編集、3Dゲームなどのマルチメディア系の処理を行なう時に利用される演算で、最近はCPUの処理能力を測るときに重要視されることが多い。FPU WinMarkでは標準的な科学計算などで利用される浮動小数点演算を行なうことで、一般的な浮動小数点演算能力を計測する。FPU WinMarkは、IntelのPentium IIIで採用されているインターネット・ストリーミングSIMD拡張命令(以下SSE)やAMDやCentuar DesignのCPUで採用されている3DNow!テクノロジ(以下3DNow!)などの浮動小数演算の効率を向上させる拡張命令には対応していない。このため、そうしたSSEや3DNow!などに対応していない浮動小数演算の処理能力を計測していると考えるのがいいだろう。

CPUmark 99 FPU WinMark 99
●テキスト版グラフ

●グラフィック版グラフ

●テキスト版グラフ

●グラフィック版グラフ

(3)3DMark99 MAX

 3DMark99 MAXは3Dゲームにおける処理能力を計測するテストだ(なお、3DMark99 MAXには既に新バージョンが登場しているが、今回は時期の関係で旧バージョンを利用している)。3DMark99 MAXには最終結果として大きく2つの数値が表示される(もう少し細かな数値も表示されるが、今回は利用していない)。それが、3DMarkとCPU 3DMarkの2つだ。3DMarkは3Dアクセラレータの性能までも含めたそのPC全体の処理性能を示している。これに対してCPU 3DMarkは、3DゲームでCPUが処理を担当しているジオメトリ演算(最近ではT&Lなどと呼ばれることが多い)処理をCPUにさせて、その処理能力を計測している。ジオメトリ演算では浮動小数点演算がほとんどであるため、実際には浮動小数点演算を3D処理に特化して計測していると考えるといいだろう。

 注意しなければならないのは、同ベンチマークがSSEと3DNow!の両方に対応していることだ。このため、SSEと3DNow!に対応しているCPU(Pentium III、Athlon、K6-III、K6-2)では良いスコアがでるが、SSEには対応していないCeleronでは非常に悪いスコアしかでない。SSEや3DNow!非対応のゲームではこうはならないので、あくまでSSEや3DNow!に対応しているゲームでの処理能力と考えたほうがいいだろう。

3DMark 3D CPUMark
●テキスト版グラフ

●グラフィック版グラフ

●テキスト版グラフ

●グラフィック版グラフ

(4)MultimediaMark99

 MultimediaMark99はビデオのデコード、エンコード、フォトレタッチなどの処理を行ない、いわゆるマルチメディアアプリケーションにおける処理能力を計測するテストだ。ただ、MultimediaMark99はSSEには対応しているものの、3DNow!には対応していない。このため、現在ではあまり公平なテストではなくなっている。このため、今回は結果は掲載するが、あくまで参考データということにとどめたい。

MultimediaMark99
●テキスト版グラフ

●グラフィック版グラフ

●ベンチマーク結果総評

 結果だが、整数演算系のテスト(Business Winstone 99やCPUmark99)ではPentium III 733MHz(Direct RDRAM)がトップをとった。だが、同じクロックである700MHzのAthlonとPentium III(Coppermine)で比較してみると、Business Winstone 99ではPentium III(Coppermine)が上回ったものの、CPUmark99ではAthlonが上回った。こうした結果から考えて少なくとも整数演算系の処理に関してはPentium III(Coppermine)とAthlonは同等の処理能力を有していると言えるだろう。

Business Winstone 99
Pentium III 733MHz(RDRAM)38.9
Pentium III 667MHz(RDRAM)38.6
Pentium III 700MHz38.2
Athlon 700MHz37.9
※全データから一部抜粋

CPUmark 99
Pentium III 733MHz(RDRAM)66.2
Pentium III 733MHz(SDRAM)66.0
Athlon 700MHz65.0
Pentium III 700MHz62.4
Pentium III 667MHz(SDRAM)60.9
※全データから一部抜粋

 これに対して、浮動小数点演算能力が重視されるテスト(High-End Winstone99、FPU WinMark、CPU 3DMark)の処理ではAthlonの優位性が明らかになっている。High-End Winstone 99と3D CPUMarkではAthlon 700MHzはPentium III(Coppermine)733MHzをも上回ったほか、FPU WinMarkでは733MHzには及ばなかったものの、同クロックのPentium III(Coppermine)を上回っている。ほかのクロックで比べてみてもいずれもAthlonは同クロックのPentium IIIを上回っており、Athlonは浮動小数点演算においてPentium IIIを凌駕していると言っていいだろう。

High-End Winstone 99
Athlon 700MHz32.9
Pentium III 733MHz(RDRAM)32.0
Pentium III 700MHz31.9
Pentium III 667MHz(RDRAM)30.9
Pentium III 650MHz30.5
※全データから一部抜粋

FPU WinMark
Pentium III 733MHz(SDRAM)3,930
Pentium III 733MHz(RDRAM)3,920
Athlon 700MHz3,800
Pentium III 700MHz3,760
Pentium III 667MHz(SDRAM)3,570
※全データから一部抜粋

3D CPUMark
Athlon 700MHz12,164
Pentium III 733MHz(SDRAM)11,119
Pentium III 733MHz(RDRAM)11,106
Athlon 650MHz10,876
Pentium III 700MHz10,420
※全データから一部抜粋


●コストパフォーマンスではバリュー向けとパフォーマンス向けできっちり別れる

 今回も各スコア(Business Winstone 99、High-End Winstone 99、FPU WinMark、3D CPUMark)を購入価格で割った数値に10,000をかけて「1万円当たりのスコア」を出すことにより、各CPUのコストパフォーマンス度を見てみることにした。これまでは「CPU+マザーボード」の価格を購入価格としていたが、Direct RDRAMの登場によりメモリの価格が各プラットフォームで異なっている為、今回から「CPU+マザーボード+メモリ」の価格を購入価格として採用することにした(なお、CPUの価格データはAKIBA PC Hotline 1999年12月4日号「CPU最安値情報」の平均価格を採用した)。なお、グラフはスコア順になっている。

 さて、1万円当たりのスコアだが、やはり上位にはバリューPC向けのCPU(K6-2、K6-III、Celeron)が並ぶ結果となった。特に、Business Winstone 99では上側がバリュー向け、下側がパフォーマンス向けときれいに別れているのは興味深い。こうして見ていくと、Celeronが4つの結果のうち3つまで常に上位に位置しているのに注目したい。SSEや3DNow!などの拡張命令セットに対応していない為不利になっている「1万円当たりの3D CPUMark」を除き、残りの3つで常に上位にいるのはCeleronだ。これはK6-2、K6-IIIが一般的な浮動小数点演算能力が高くない為で、そのことはFPU WinMarkやHigh-End WinstoneではK6-2、K6-IIIが常に下位を占めていることからもわかるだろう

 なお、メモリの価格が現時点では驚くほど高いDirect RDRAMを利用したPentium IIIは、すべての「1万円当たりのスコア」で常に下位を占めた。このことからも、Direct RDRAMのプラットフォームが現時点ではコストパフォーマンスが悪いというのは隠しようがないだろう。

1万円あたりの
Business Winstone 99
1万円あたりの
High-End Winstone 99
●テキスト版グラフ

●グラフィック版グラフ

●テキスト版グラフ

●グラフィック版グラフ

1万円あたりの
Business Winstone99スコア
K6-III/4006.68
Celeron 433MHz6.68
K6-2/4506.56
中略
Pentium III 533B MHz(RDRAM)1.80
Pentium III 600B MHz(RDRAM)1.72
Pentium III 733MHz(RDRAM)1.63
※全データから一部抜粋。上位3つと下位3つを掲載

1万円あたりの
High-End Winstone99スコア
Celeron 433MHz5.35
Celeron 466MHz5.31
Celeron 400MHz5.27
中略
Pentium III 600B MHz(RDRAM)1.47
Pentium III 667MHz(RDRAM)1.46
Pentium III 733MHz(RDRAM)1.37
※全データから一部抜粋。上位3つと下位3つを掲載

1万円あたりの
FPU WinMark99
1万円あたりの
3D CPUMark99
●テキスト版グラフ

●グラフィック版グラフ

●テキスト版グラフ

●グラフィック版グラフ

1万円当たりのFPU WinMark
Celeron 466MHz582.3
Celeron 433MHz569.7
Celeron 500MHz557.7
中略
Pentium III 533EB MHz(RDRAM)158.4
Pentium III 600B MHz(RDRAM)157.1
Pentium III 533B MHz(RDRAM)152.7
※全データから一部抜粋。上位3つと下位3つを掲載

1万円あたりの3D CPUMark
K6-2/4501,546
K6-2/4751,525
K6-2/4001,483
中略
Pentium III 533EB MHz(RDRAM)
  473 
Pentium III 600B MHz(RDRAM)
  468 
Pentium III 533B MHz(RDRAM)
  462 
※全データから一部抜粋。上位3つと下位3つを掲載

【ベンチマーク環境】
 ★マザーボード
  Pentium III(Direct RDRAM):AOpen AX6C(Intel820)
  Pentium III(SDRAM):SOLTEK Computer SL-67KV(Apollo Pro133A)
  Pentium III、Celeron:ABIT Computer BE6(440BX)
  Athlon 700MHz:AMD FESTER(AMD-750)
  Athlon 500~650MHz:MSI MS-6167(AMD-750)
  K6-2、K6-III:FREEWAY FW-TI5VGF(Apollo MVP3)
 ★メモリ(容量はいずれも128MB)
  Pentium III(Direct RDRAM):PC800
  Pentium III(SDRAM):PC133 SDRAM
  Pentium III、Celeron、Athlon、K6-2、K6-III:PC100 SDRAM(Celeronは66MHzで動作)
 ★ビデオカード
  カノープス SPECTRA5400 Premium Edition(RIVA TNT2、32MB)
 ★ハードディスク
  Winstoneのみ:WesternDigital WDAC29100
  Winstone以外:WesternDigital WDAC14300
 ★OS
  Winstoneのみ:Windows NT 4.0英語版+ServicePack4
  Winstone以外:Windows 98 Second Edition 日本語版+DirectX 7.0


●この冬のお奨め自作PC向けCPUはこれだ!

 以上のようなベンチマークの結果から、この冬に自作PCユーザーが購入すべき筆者お奨めのCPUは以下のように決定したい。

AKIBA PC Hotline! HotHot Review
Best Performance CPU
of Winter 1999

Athlon 700MHz

 「AKIBA PC Hotline HotHot Review Best Performance CPU of Winter 1999」にはAthlon 700MHzをあげておきたい。確かに現時点ではAthlon用のAMD-750チップセット搭載マザーボードは、Pentium III用の440BX搭載マザーボードに比べて高価であるため、コストパフォーマンスではPentium IIIに一歩譲るのは否定できない。しかし、パフォーマンスPC向けCPUは、やはりコストよりもリアルパフォーマンスである。既にベンチマークの考察でも述べたように整数演算系の処理でPentium III(Coppermine)とほぼ同等で、浮動小数点演算では実クロックで上のPentium III 733MHzを上回っている。この点から考えて現時点でクロックではPentium IIIが上回っているが、実際のパフォーマンスではAthlonと結論づけていいだろう(特にリアルタイム処理が多い浮動小数点演算を利用するアプリケーションでの処理能力が高いという点は重要である)。そうした観点から今回はAthlon 700MHzを筆者のチョイスとしたい。

AKIBA PC Hotline! HotHot Review
Best Value CPU
of Winter 1999

Celeron 433MHz

 バリューPC向けのCPUとしては、性能とコストパフォーマンスのバランスがとれていることが何よりも重要だ。そうした意味では、「1万円あたりのスコア」で1部門(1万円あたりのHigh-End Winstone 99)で1位、2部門(1万円あたりのBusiness Winstone 99とFPU WinMark)で2位となったCeleron 433MHzこそ、その座にふさわしいだろう。確かに3D CPUMarkでは非常に低いスコアしか残していないが、これはSSEなどの拡張命令に対応していないためだ。拡張命令に対応していないことはCeleronの弱点とも言えるが、SSEや3DNow!に対応したアプリケーションが多いのかと言えば、必ずしもそうではない。そうしたことも考えて、バリュー向けのCPUとして割り切るべきだろう。以上のような理由から今年の冬、最もお買い得なCPUはCeleron 433MHzと結論づけたい。

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[Text by 笠原一輝@ユービック・コンピューティング]


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