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連載第6回 : 台湾大地震の影響はどこまで出るか?



■ 台湾大地震起こる

 すでに各所で報じられているように、台湾中部を震源とした強い地震が9月21日に発生しました。台湾ハイテク産業各社の工場の多くは震源地から離れており地震による直接の被害は無かったようですが、間接的な被害がいくつか発生し生産における問題も出てきたようです。日頃、台湾製造の製品を多く扱い、密接な関係にある秋葉原のマーケットにもその影響が出ており、また世界的なPCマーケットにも影響を与えています。今回は、この地震の影響がどうなっているのか取り上げます。


■ 地震の影響による部品の値上がり

 地震によって、台湾で製造されている多くのPCパーツの状況が狂ってきました。地震直後の混乱はもちろんありましたが、地震から時間が経つにつれ徐々にその影響が表に出てきています。PCケースなどは多くが中国生産に切り替わっていたため大きな影響はありませんが、では、実際にはどんなことが問題になっているのでしょう?

 表沙汰になっている大きな問題としては、台湾の半導体メーカー各社が地震の影響により操業が出来ない状況に陥っているということです。0.0μ単位の精度が要求される半導体製造において地震による大きな揺れは、半導体製造装置に微妙なズレが発生する可能性があり装置の再調整の必要が出てきます。これにはかなりの時間がかかるようで、1カ月から2カ月の調整とテストの繰り返しが必要なようです。一口に半導体と言ってもメモリだけでなくチップセットや各種コントローラーチップ、ビデオチップなど多岐にわたりますし、半導体を搭載していないPCパーツは非常に少ないでしょう。これらの多くに影響が出てきており、半導体製品が品不足になってきていることと、地震後に操業できなかった分の利益を確保するために半導体製品の値段が上がってきています。

 顕著に表れているのはメモリの価格であり、すでに報じられているように地震前と地震後では2倍近い価格に跳ね上がっているような状況です。メモリは顕著に表われやすい商品ですが、それ以外でもビデオチップやコントローラチップ、チップセットなどが軒並み品不足となり値段が上がっています。あるビデオカードでは1.5倍の値段に跳ね上がっている状況です。
 これらの値上がりはこれから影響が出はじめ、秋葉原のショップ価格にも徐々に反映されてくるでしょう。
 また、半導体製品以外にも台湾で主に製造されている部品類も、製造が潤沢に出来ない事や、地震前に受注している分を生産・出荷することに追われているようで、新規の発注が止まっている部品メーカーもあるようです。
 いくつかの部品が品不足になることにより、より大きな問題として表面化してくるようになってきました。


■ そして品不足へ

 例えばマザーボードの場合。マザーボードはいくつもの部品が組み合わさってできあがっています。ベースとなる基板、チップセット、各種コントローラーチップ、スロット等の物理的コネクタ、抵抗やコンデンサなど数多くのパーツがあり、どれか1つ欠けてもマザーボードは完成しません。今回の地震において、単純に大きな完成品メーカーの工場にダメージが無くても、最終的な完成形に至るには細かいパーツが必要であり、これらの細かいパーツを製造している全てのメーカーのパーツ工場が問題なく操業できる体制に復旧している必要があります。これは、ビデオカードやドライブ類など全てのパーツに言えます。
 いくつもの部品メーカーの工場で製造状況が好転していないことが現在の一番の問題点です。実際、筆者が聞いたところによると、コンデンサ等の細かいパーツが不足しており、生産が思うように伸びていないメーカーが多いようです。

 地震直後は、各社が在庫で持っていた分を供給していたため表面化してきていませんでしたが、徐々にPCパーツの品不足が表面化してくるようになってきました。また、これを予期してか、大手PC本体メーカがパーツを片っ端から買い漁っているという噂まであります。世界的に見た場合12月のクリスマス・年末商戦に向けて、現在は部品の仕込みをしている真っ只中であり、その真っ只中に地震が起きたという状況です。今後の商戦に向けて、さらに品不足は深刻化してくる可能性があります。そして品不足になると価格は上がるという、悪循環に陥ってきています。

 先ほどの例でも、マザーボードが多くの基本パーツから組み合わさって完成するように、PC本体も数多くのパーツを組み合わせて完成させます。やがてPC本体の価格も値段が上がってくる可能性があります。地震の影響は予想を超える大きさになっています。


■ さらに今後どうなるか

 多くの人たちが「大きな影響が出るのはこれからだ」と言っています。これから、さらに影響が大きく出てくる可能性があります。これまでは台湾メーカーや流通が持っていた在庫が流れていたため地震の影響はそれほど表には出てきませんでしたが、これから深刻化すると思われます。品不足や値上がり等の影響が出るのは今月下旬から来月中旬がピークではないかと言われています。秋葉原のショップによっては企業努力等により影響が出ないようにがんばるところもあると思いますが、PCマーケット全体としては影響が出てくるでしょう。「後藤弘茂のWeekly海外ニュース」で報じられているように820チップセットの出荷が遅れれば、Intelの最新CPUであるCoppermineの売れ行きにも影響が出てくると思われますし、今年の年末商戦がどうなることかと心配です。

 しかしながら台湾の人たちのパワーは素晴らしいものがあります。筆者が個人的に思うところでは、かなり早いペースで復興、復旧し何事もなかったようになると思っています。台湾の人たちを秋葉原のショップからさらに応援していきたいと思います。

[Text by AMUAMU]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当pc-watch-info@impress.co.jp