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パソコン業界の急激な変化はもう当たり前のものとなりました。このスピードに付いていけないところは脱落する。今1番でも明日は1番ではないかもしれない。大きなうねりが秋葉原をはじめとした日本のパソコン業界に訪れています。この1年を振り返ってみようと思いますが、今年の初めに筆者は「メーカー先取り情報で秋葉原パソコン市場を予想!」という記事を出しましたが、これの結果も見つつ振り返っていきたいと思います。
【CPU】Athlonを中心としたAMDの活躍が秋葉原の注目
今年1年はCPUにとって非常に激動かつ歴史に残る1年でした。IntelのPentium IIIの発表からはじまり、どんどん高速化していきました。そして秋葉原に新たな流れを作ったAMDのAthlonが登場、年末ぎりぎりまで繰り広げられたIntelとAMDのクロック争いと新製品ラッシュなどがありました。新製品がたくさん出るのは秋葉原のショップにとっては良いことでもあるのですが、製品のラインナップが増えるのも悩み物です。今年1年は過去最高と言えるぐらい、製品が出たのではないでしょうか?
筆者の今年初めの予想では
> AMDのさらなる躍進!? Intelを追い抜く日も近い!
としていましたが、AMDのK7ことAthlonが今年後半は特に目を見張る活躍をし、秋葉原における新たなシェアを獲得したのは間違いありません。特に、Athlonは大手PCメーカーから本体が出ず、DIYユーザーを中心にマーケットに受け入れられ、注目を浴びたといえるでしょう。Intel中心の展開だったショップにとって最高速CPUとして登場したAthlonは強力なアイテムとなったようです。といってもこれは秋葉原のパーツショップ系を中心とした流れであり、日本全国で見た場合Pentium IIIの売れ行きの良さと圧倒的なシェアは変わらず、相変わらずIntel強しという1年でした。また、Celeron 300Aで昨年から今年初めにかけてブーム最高潮になった“オーバークロック”は、今や当たり前の手段として定着してしまいました。オーバークロックでショップにとって困るのは、高いCPUの売れ行きが悪くなることです。参ったものです!
【メモリ】台湾大地震の影響から停滞気味?
今年1年で言えることは、台湾の大地震による価格の大変動が強烈なイメージにあります。このまま底知らずで価格が下落するかと思えたメモリ価格も、台湾大地震をきっかけに急激な値上がりをしました。さらにメモリ容量増加の勢いも一気に止まってしまいました。256MBや512MBが標準化するかと思いきや、結局今年の最後も128MBが標準的という落ち着いた1年になってしまいました。
【HDD】一気に20GB時代へ
HDDに関して言えば、今年1年でユーザーの容量は一気にアップしたことでしょう。秋葉原におけるHDDの主流はあっという間にに13GBや20GBになり、さらに7,200回転のHDDに人気が集まりました。
筆者の今年初めの予想では
> 20GB~30GB時代に突入
としていましたが、見事当たりました。UltraATA/66が主流になり、HDDの性能アップが急激に進んだことだと思います。逆に容量の少ない商品はだんだん人気が薄れてきています。まだまだOSもアプリケーションもそこまでの大容量を必要としていないのですが、大容量化だけが進化し、価格も下がっているのが原因でしょう。
ちなみに今年1年でSCSI HDDの人気が急激に落ちたことも印象深いです。大容量HDDはSCSIだけのものでしたが、IDEの低価格化と大容量化がここまで進むと、SCSIの存在意義はほとんどサーバー用途や一部の特定用途向けだけになりつつあります。秋葉原全体で見ても、SCSI HDDの売り上げ減や取扱店の減少は目に見えて現れています。ある意味、今年1年を象徴的に表していることの1つかもしれません。
【グラフィックカード】需要と供給のバランスが大きく崩れる
グラフィックカードの世界は昨年も相変わらず移り変わりの早い1年でした。ただ、今年前半の動きの早さに比べたら後半は以外とゆっくりしたものでした。RIVA TNT2、TNT2 Ultraの登場やVoodoo3の登場、Millennium G400、G400 MAXの登場など今年前半はあわただしい新製品ラッシュでしたが、後半はGeForce 256ぐらいが目玉商品でそれ以外は目立った新製品が出てきませんでした。
今年1年で特に印象的なのは新製品のビデオカードの品不足です。どの新製品も品不足が深刻で、ショップにとっては人気商品をたくさん確保できるかが売れ行きを左右したと言ってもいい状況です。「あのショップに在庫がある」なんて情報が重視されました。需要と供給のバランスが大きく崩れていた1年だったかもしれません。
【マザーボード】新しいチップセットの不発と定番化440BX
結論から言えば、秋葉原のユーザーが喜びそうな新チップセットは結局出ませんでした。強いて言えばAthlon用マザーボードくらいでしょうか? そのため、既存の440BXを使った数多くのユニークなマザーボードや、手堅くバージョンアップをした製品が売れ筋商品として定着しました。
今年後半で期待されたIntel 820チップセットもドタキャン騒ぎやRambusメモリの供給問題で全く盛り上がりを見せなかったのはショップとして非常に残念なところです。唯一売れ行きが延びたのはビデオやサウンドをオンボードにしたオールインワンマザーボード系です。不況を反映してか、安くマシンを作りたいというユーザーの動きに反応してSiS620やIntel 810オンボードマザーボードがそれなりに売れました。しかしながら、いまいち盛り上がりに欠けた1年でした。
【デスクトップ】10万円パソコンの大きな流れ
最初、秋葉原のショップやSOTEC等の一部メーカーだけが出していた10万円未満のパソコンは、他メーカーも巻き込み今年1年でより大きな流れを作り出しました。ユーザーの裾野が広がることは良いことなのですが、大手PCメーカーが参入したことにより、秋葉原だけで見ると市場は荒廃してきたように感じます。秋葉原のショップが作り出してきた市場が大手PCメーカーに荒らされたような感じを受けます。
筆者の今年初めの予想では
> 5万円以下の超激安パソコン
としていましたが、残念ながらそこまではいかず10万から9万円前後で推移しているような状況です。10万円パソコンに関しては、年明け早々の当コーナーにて細かく取り上げようと思います。
ショップにとっての'99年
今年のパソコンの出荷台数は過去最高を記録するようですが、秋葉原だけで見るとそれほど景気は良くないようです。パーツショップ系も決して好調とは言えず、比較的大規模なパーツショップにだんだん集約されてきているように感じます。ショップの数は増えましたが、今年最後には逆の流れの兆候も現れ始め、嵐の2000年を予感させるような状況です。果たして来年はどうなることやら。昨年と同じですが期待と不安を抱えつつ年明けを迎えます。来年早々にはまず、2000年の大予想を書きたいと思います。
[Text by AMUAMU]