Intel 820チップセットは、0.18ミクロン版Pentium IIIプロセッサ(Coppermine:カッパーマイン)と同時には登場しない。複数の業界関係者からの情報によると、Intelは、OEMメーカーにそう通告したという。
Intelは、米国時間の先週金曜日から、OEMメーカーに820についての最新情報を伝え始めた。それによると、Intel 820はCoppermine発表日には間に合わず、出荷日程も依然として不確定だという。Intelから直接説明を受けたあるOEMは、米国時間10月15日で日程が確定するだろうと告げられたという。ちなみに、Intelは、現在、米国時間の毎週金曜日に820関連情報をアップデートするとOEMに通告している。次のアップデートは15日だ。
先々週の終わりから先週にかけて、820のリリースが11月の最初の週になるという情報がいたるところから届いた。だが、それは確定した情報ではなかったらしい。今のところ、まだ11月最初の週の可能性が消えたわけではないが、これだけ情報が混乱しているところを見ると、かなり厳しいことはたしかだ。
820搭載マザーボードで量産に最短の距離にあるのは、Intel製マザーボードだと見られている。しかし、Intelが新たに推奨する2つのRIMMスロットだけを備えた820マザーボードデザインは、現在のところ、まだ検証作業中だという。ただし、Intelはメモリエラーの根本原因を特定することには成功し、その技術資料も配布すると通知したという。Intelは、820の出荷日程は原因を突き止めてからとしていたため、これで、日程を明確にできるメドが立ったことになる。
●Intelは820でSDRAMオンリーのマザーボードも推奨
また、今回の情報アップデートでは、「2+2」という名称で知られていたマザーボードデザインも、3つのRIMMスロットを備えたマザーボードと同様にメモリエラーが発生することが明確になったという。2+2は、「MTH(Memory Translator Hub)」と呼ばれるRDRAM/SDRAMのインターフェイス変換チップを搭載、2つのRIMMスロットと2つのDIMMスロットを搭載する820マザーボードだ。Intelは、この2+2を公式の推奨プランから外し、新たに「0+2」デザイン、つまりDIMMスロットだけを備えたデザインを推奨することにしたという。
これは重要な変化で、Intelはこれまで820マザーボードでは公式に0+2を認めていなかった。それは、0+2ではSDRAMしか使えないため、Direct Rambus DRAM(RDRAM)アップグレードの道のない820マザーボードとなってしまうからだ。つまり、RDRAMの立ち上げを阻害する可能性があるというわけだ。また、820の0+2システムでは、440BXよりメモリ性能が落ちるため、システムとしての魅力を出すのも難しくなる。
だが、実際にはマザーボードメーカーは、0+2デザインの製品計画を持っている。今回のIntelの決定で、マザーボードメーカーは0+2デザインを大手を振って推進できるようになったことになる。また、Intel自身も、密かに0+2デザインをスタートさせていたという情報もある。だとすると、2+2での問題も、かなり前から明らかになっていた可能性がある。
●Coppermine 750MHzも投入へ
じつは、2+2デザインに限らず、今回の820の延期について、一部のOEMメーカーはIntelが通知する前から、延期の可能性も含めて、ある程度の情報を掴んでいたようだ。実際に、マザーボードメーカーの中には、2RIMMへのデザインチェンジを先行して進めていたところがあると言われる。こうした動きは、8月の時点からすでに始まっていたらしい。だが、その一方では、3RIMMで取り残されたメーカーもある。どうやら、メーカー間の情報格差はかなり大きかったようだ。
また、820が揺らいだためか、IntelのMPUロードマップも揺れている。最新の情報では、Intelは急きょ来年1月に750MHz版(100MHz FSB)を投入することにしたという。この750MHz版は、同時期に登場する予定のAMDのAthlonプロセッサ750MHz版対策だが、そこに100MHz FSB版を持ってきたことは、440BXプラットフォームの強化を意図している可能性もある。
どうやら、今回の820騒動はまだまだ尾を引き、その影響はチップセットを越えて大きく広がりそうだ。
('99年10月13日)
[Reported by 後藤 弘茂]