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元麻布春男の週刊PCホットライン

ソフトウェアDVDで5.1ch再生が可能に



■ソフトウェアDVDで5.1再生が可能に

 最近、徐々にサウンドカードでサポートが広がっているフィーチャーに、S/PDIFによるデジタルオーディオI/Oが挙げられる。以前はS/PDIFによる出力のみがサポートされていることが多かったが、新しい製品では入出力ともにサポートされている場合もある。

 このS/PDIFの使い道だが、ストレートに考えれば、PCのオーディオをMDやDATといったデジタル録音機器に出力する、ということになる。果たして、サウンドカードの内蔵MIDI音源の出力をデジタルで取り出したい人や、PCで各種のサウンドを編集したい人が、現実にどれくらいいるのかは分からないが、こうしたクリエイティブな使い方をしたいというユーザーが増えているのであれば、歓迎すべきことだと思う。

 あるいは、直接S/PDIFとは関係しないが、MP3の登場以来、PCのサウンド環境そのものが活性化している、ということがあるのかもしれない。いずれにしても、USBやIEEE-1394といったWintelが考えるデジタルオーディオインターフェイスの本命が離陸するまで、まだまだ時間がかかりそうなことを考えれば、S/PDIFのサポートは、たとえ「つなぎ」だとしても意味のあることだろう。またサウンドカードにS/PDIFがついたことで、別の新たな動きも見られる。それはソフトウェアDVDプレーヤーのドルビーデジタル対応だ。

 これまでソフトウェアDVDプレーヤーがサポートするオーディオ出力は、もっぱら2チャンネルステレオに限られていた。ほとんどのDVDタイトル(特に映画)がサポートしている5.1チャンネルのドルビーデジタルサウンドであっても、PC上のソフトウェアDVDプレーヤーで再生する場合は、2チャンネルステレオにミックスダウンされる、というのが相場だった。たとえ、ゲームでサポートされる3Dサウンドに対応し、4チャンネルのアナログ出力をサポートしたサウンドカードであっても、2チャンネルにミックスダウンした音声データを、サウンドカード上のDSP等で4チャネルのマトリックスサラウンドに再構成する、という処理を行なうものが大半。元々DVDに収録されているドルビーデジタルの5.1チャンネルサラウンド音声を損なうことなくストレートに取り出せるものは、ほとんどなかったのである。

■サウンドカードもS/PDIF出力をサポート

 ところがここにきて、ドルビーデジタルの5.1チャネルサラウンドをデコードし、5.1チャネルのアナログ出力として取り出せるサウンドカード、S/PDIF出力からドルビーデジタルの5.1チャネル音声(デコードする前のストリーム)をそのまま取り出せるサウンドカードが登場してきた。もちろん、こうしたハードウェアの機能を活用するにはソフトウェアによるサポートが不可欠であり、実際はこうしたサウンドカードをサポートできるソフトウェアDVDプレーヤーが登場してきた、と呼んだ方が正しいのかもしれない。

 というわけで、早速筆者もPCによるドルビーデジタルサラウンドに挑戦してみることにした。ドルビーデジタル出力をサポートしたソフトウェアDVDプレーヤーとしてカノープスWinDVDのR-4を用い、サウンドカードにはWinDVD R-4がサポートするサウンドチップの中からYMF744ベースのAOpenAW744Sを選んだ。AW744Sは実売4,000円弱程度で入手可能な安価なカードだが、S/PDIF出力(同軸/Coaxial)をサポートしている。ところが、筆者の手元にあるドルビーデジタルデコーダー(といってもちゃんとしたAVセンターではなく、サラウンドヘッドホンであるソニーMDR-DS5000なのだが、ドルビーデジタルデコーダであることに変りはない)は、光入力(Optical)しかサポートしていない。そこでやむなく、光-同軸アダプタを介したのだが、どうやらこれが間違いだった。音が途切れてしまうのである。

 テストに際しては、サウンドカード側、プレーヤー側ともにドルビーデジタルによるマルチチャネル出力を最優先にしてある(下画面)。これは、アナログ出力(ミックスダウンされた2チャンネル音声)が、デジタル変換されてS/PDIF出力されるのを聞いて、うまく動いていると勘違いするのを防ぐためだ(ちゃんと動いていることが確認できれば、以後は必ずしもこの設定にしておく必要はない)。しかし、確かに音は出ているものの、途切れ途切れにしか聞こえない。あまりに見事に途切れるので、これはプレーヤーソフトやサウンドカード自体の問題ではない、という気がしたのである。

■サウンドカードを交換

 できれば同軸対応のドルビーデジタルデコーダが用意できれば良かったのだが、残念ながらそれはできなかった。代わりに、サウンドカードを光出力をサポートしたものに変更した。韓国HOON TechSoundTrack DIGITAL-XGだ。

 筆者は大昔、韓国から直接個人輸入で同社のSoundTrack OPL4 PCIを購入したことがあるが、その時の経験はあまり芳しくなかった。同社が開発したPCIバス上でSound Blasterの互換性をもたらすというインターフェイスチップと、マザーボード間の互換性問題にほとほと手を焼いたのである。だが,時は流れ、もはや誰もリアルモードでのSound Blasterの互換性を気にしなくなるとともに、HOON Techも他社製のサウンドチップを使うようになった。昔のようなことはあるまい、と考えたわけだ。

 サウンドカードから直接光出力を出すようにしたところ、音が途切れる問題は完全に解消した。どうやら筆者の手元にあったコンバータは、S/PDIFのステレオ音声専用でドルビーデジタルの変換はできないもののようだ(すべてのコンバータがそうかどうかは分からないが)。民生用AV機器でOpticalが普及しているのに対し、PC用サウンドカードでOpticalをサポートしたものは少ない。PCでドルビーデジタル再生を考えるユーザーは、このことに注意した方が良いかもしれない。

 それはともかく、YMF744ベースのサウンドカードを2種使ってみて、1世代前のYMF724/740から確実に進歩していることが分かった。中でも筆者にとって印象が強いのは、ドライバがイニシャライズされる際のポップノイズが出なくなったことだ。YMF724/740では、ドライバが組み込まれチップを初期化する際に、耳障りなノイズが盛大に出る。筆者はWinHEC等でヤマハのエンジニアの方に会うたびに、このノイズをなくすこと、S/PDIFの出力だけでなく入力もサポートすることをしつこくお願いしてきた。別に筆者が言わなくとも、正常進化の結果としてこのように改良されたとも考えられるのだが、何となく自分の願いがかなったようで、悪い気はしないのである。

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[Text by 元麻布春男]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当pc-watch-info@impress.co.jp