前回の「チップベンダーに影響を及ぼすSGIのリストラ」で、筆者はNumber Nineの不確かな今後について言及した。果たしてSGIとNVIDIAが提携したこと、Number NineがPixelFusion製のグラフィックスチップを採用したことが、どのような意味を持つのか、ということだ。この件について、Number Nineからの返答が得られたので、さっそく紹介しておこう。
まず最初にSGIとNVIDIAの提携についてだが、半ば予想されたこととはいえ、現時点ではノーコメント、というのがNumber Nineの回答である。ただ、今のところSGIがRevolution IVベースの液晶ディスプレイキット(1600SW)の販売を続けることだけは間違いないようだ。またNumber Nineは他のディスプレイベンダと共同で、DVIやDFPに対応したバージョンの開発も進めているという。
一方、PixelFusion製チップを採用したことの意味だが、やはりグラフィックスチップの自社開発路線に対する終止符であった。すでに国内でもS3のSavage4 Proを採用した同社製カード(SR9)が販売されているが、これも自社開発路線の中止を受けてのものだった可能性がある。業界初の128bitグラフィックスチップとしてデビューしたImagine 128以来、同社はグラフィックスチップの自社開発を続けてきたものの、ついに大きな成功を収めることができなかった。競争が激しさを増すばかりの3Dグラフィックス市場において、限られたリソースで戦い続け、なおかつ成功を収めることは非常に難しいということなのだろう。この自社開発をやめるという判断は、新しい同社CEOであるWallace Smith氏が下したものだという。
ただ、自社開発路線は放棄するものの、グラフィックスチップを設計していたチームは、他社に売却したり解散することなく、引き続き社内に留まり、別のチップの設計中とのことだ。同社によると、これは他社製の3Dグラフィックスチップを補完するもので、これにより他の(同じグラフィックスチップを採用した)グラフィックスカードとの差別化を図るのだという。どんなものなのか、具体的には一切明らかにされていないが、可能性としては、DVPやDVIといったデジタルディスプレイインターフェイス関連、アナログビデオ(NTSC)のエンコーダやデコーダ、ジオメトリ処理用のコプロセッサ、複数の3Dグラフィックスチップの搭載を可能にするブリッジチップなどがすぐに思いつく。だがひょっとすると、筆者などが考えもつかないような画期的なものなのかもしれない。いずれにしても、Smith CEOによる新路線の成功を祈るばかりだ。
[Text by 元麻布春男]