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しかし、ちょっと待ってほしい。よくよく考えてみれば、悪の魔王にだって悪の魔王なりの理由があって戦っているはずだ。ダンジョンの中で出会うクリーチャーたちも、上司とのしがらみや給与問題、穴掘り仕事や戦闘訓練で、意外につらい毎日なのかもしれない。
そもそも、プレーヤーは本当に「正義のヒーロー」なのだろうか? 身勝手な正義や出世欲、名誉欲を満たすためにダンジョンに踏み込み、殺戮と強奪を続ける勘違い野郎である可能性はないのか?
という、いままでのお約束とはまったく逆の立場で生まれたゲームが、'97年に発売された前作「ダンジョンキーパー」だった。そしてよりパワーアップした新作「ダンジョンキーパー2」が今回、発売された。
クリーチャーを配置し、罠を仕掛け、難攻不落のダンジョンを築け!!
手下モンスターその1、ファイアフライ。暗闇を素早く移動し、敵に襲いかかる | 手下モンスターその2、トロル。「工房」で新しい武器を作ってくれる職人 |
遊び方は、こんな具合だ。
プレイが始まると、まず最初に小さなダンジョンが与えられる。手下のクリーチャーも穴掘り専門の「インプ」のみで、とても戦える状態ではない。とりあえず通路を延ばして小部屋を作り、クリーチャーの寝る場所と食料庫を作る。クリーチャーはわがままで、居心地のいい寝室と豊富な食事がなければ、真面目に戦ってくれないからだ。続いて、呼び出したクリーチャーのレベルを上げるための訓練室や、新しい魔法を開発するための研究室、武器を量産するための工房などをあちこちに配置して、少しずつ戦力を貯えていかなくてはならない。
悩ましいのが、各部屋の配置と優先順位だ。掘ることができる場所は限られているため、どこに何を作るかが難しい。不用意に掘ってしまうと、後から新しい部屋を配置できなくなってしまうこともある。またプレイ中に使える予算には限りがあるため、どの部屋を先に作るかも考えなくてはならない。十分な数のクリーチャーを呼び出すには、広い寝室と大きな食料庫が必要だが、数が増えれば当然大きな訓練室も必要だ。かといって、魔法の研究室や武器工房を後回しにすることもできず、それもまた早めに作らなくてはならない。どの順番でどこに何を作るかが、まず最初の問題となるだろう。
そうこうしているうちに、「ヒーロー」とその手下が次々とダンジョンへ侵入してくる。防戦はクリーチャーが勝手に行なうが、プレーヤーが任意にクリーチャーを配置したり、特定のクリーチャーに「憑依」して直接戦うこともできる。あらゆる手段を使って侵入を防ぎながら攻撃部隊を編成し、最後に敵の親玉、つまり「ヒーロー」を倒せばその面は終了だ。逆に、ダンジョンの奥深くにある「ダンジョンハート」を侵入者たちに壊されてしまうと、プレーヤーの負けとなる。
エネルギーの源であるダンジョンハートを守りながら戦力を貯える | 穴を掘ってダンジョンを広げ、様々な施設を建設 | 木人相手に訓練を続ける手下モンスター。鍛え上げて強力な戦士に育てろ |
パズルゲームの難しさと、経営ゲームのおもしろさ
手下モンスターをつまみあげて、必要な場所に配置 |
しかしその反面、プレイの自由度は高い。少数精鋭で敵に挑むこともできるし、魔法中心で戦うこともできる。連鎖する罠を仕掛けて、侵入者を一気に葬り去るという手もある。特定のクリーチャーに乗り移って戦う「憑依」モードを使えば、自らが攻撃部隊のリーダーとなって敵に斬り込むことも可能だ。クリアの方法は必ずしも一通りとは限らず、思うままに戦えるところが楽しい。
モンスターに乗り移る「憑依」モードで敵と戦う | 侵入してきた「英雄」を魔法で攻撃。これ以上奥へは進ませるな!! | 倒した英雄から「ジェム」と呼ばれる宝石を奪い取る |
丁寧な日本語訳でわかりやすいチュートリアル
その面の敵とクリア条件が示される、ブリーフィング画面 |
しかし、心配はご無用。シングルプレイモードを最初から始めると、ゲームの遊び方や操作方法、次に必要なアクションやダンジョンの掘り進め方まで、順を追って教えてくれるのだ。メッセージどおりに続けていけば、3~4面進む間にほぼすべての操作を会得することができるだろう。あとは、わからないところだけをマニュアルで確認すればOK。複雑な割には操作もシンプルで、マウスだけでも十分遊べてしまうところがすごい。
日本語化が丁寧に行なわれている点にも好感が持てた。プロの声優を起用した、聞き取りやすいセリフとナレーション。ちなみにプレーヤーの手下「ホーニー」役は内海賢二氏が演じていて、「ブライキング・ボス」もしくは「ラオウ」張りの悪魔的な笑い声が最高にはまっている。「うんうん、わかってるじゃん!!」という感じでうれしかった。マニュアルやゲーム中に表示されるメッセージも、的確に訳されている。海外ゲームは、英語のメッセージや怪しい日本語訳がネックになることが多いだけに、これもポイントが高い。「日本語版というからには、こうでなくちゃね」という見本のような仕上がりだ。
全編に漂うブラックユーモア。観ていて飽きないムービー。複雑な指示ができるにもかかわらず、シンプルな操作性。絶妙なゲームバランスと、ついつい繰り返して試したくなるパズル性。シミュレーションゲームの大御所、BULLFROGの底力を感じる傑作。この夏休みにゲームでイレコミたいのなら、ぜひこの「ダンジョンキーパー2」をお薦めしたい。
(C) 1999 Bullfrog Productions,Ltd.
(C) 1999 Electronic Arts.
【筆者紹介】
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