Microsoft GAMESTOCK '99 レポート その2
~ Microaoftのソフト&ハード、その製作と品質管理体制 ~

タイトル 会場:Seattle Microsoft RedWest Campus

開催期間:2月23日~25日(現地時間)



 米Microsoftが、制作中の最新ゲームおよびゲームデバイスを発表するコンベンション「Microsoft GAMESTOCK 99」。このコンベンションでは新作ゲームの発表がメインとなるのはもちろんのことだが、ソフトの制作現場や品質管理、ハードウェアのデザイン工房などの見学会も毎年同時に開催されている。
 今年は、昨年の見学会と重複した部分もあるがソフトウェアの動作確認チェックや通信対戦テストの現場などいくつか興味深い部分を見学できたのでレポートする。

□関連記事
【'98年3月5日】Microsoft Gamestock '98 レポート その2
~Microsoft、ソフトウェア&ハードウェア制作の裏側~
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/980305/msgame02.htm




●すべてのマシンで、すべてのドライバで、すべての……
 すべてのパソコンで動作チェック

バグチェック1 バグチェック2
かなり狭い部屋にマシンがズラリと並べられている。ちなみにこの部屋だけでは収まらず、別のオフィスにまだまだ積み上がっているという。部屋の奥にはジョイスティックなどのゲーム周辺機器が無造作に積み上げてあった この画面がMicrosoftのバグチェックリポート「RAID(レイド)」
 どのメーカーでも同じだが、ソフト制作の最終段階で数多くのマシンでの動作チェックを行なうことだろう。Microsoftでは以前、外部に発注しこれらのテストを行なっていたという。だが、テスト効率や時間がかかりすぎるなどの理由から2年間かけて数多くのマシン環境を構築、マシン動作チェックを行なう部署を作り上げたという。

 Microsoftでは、新しいソフトが開発されるとこの部署を1週間ほど予約し、ひとつCPUを変えてはソフトを起動、ひとつビデオカードを変えてはソフトを起動、ひとつドライバを変えてはソフトを起動、ひとつDirectXのバージョンを変えては起動……と気長にすべてのマシン、すべての動作環境でテストを行なっていくという。ゲームの場合はもちろんジョイスティック、ジョイパッドなどの動作チェックも行なわれる。テスト内容は起動するだけでなく、A4レポート用紙5枚程度にビッシリ記入されたチェック項目をすべて調べ上げていく。
 ちなみに、ドライバの入れ替えなどでWindows環境などはどんどん汚れていくが、DOS環境下で一発で全環境を入れ替えてしまうソフト(マジックブート)を独自に開発、使用しているという。

 この部署で発見されたバグや問題はすべてバグリポートとしてデータベース化され、Microsoft内部だけでなく、ハードメーカなどにも公開されているという。そして、データベース(“RAID = レイド”と命名されている)をもとにソフト制作部署とメーカーが協力してバグを修正することになる。もちろんバージョンが上がればまた1からチェックを行なうことになり、気の遠くなるようなチェックが繰り返される。ちなみに1商品にかけるテスト期間は4人で1日12時間、1週間ビッシリとテストを行なうことになる。




●朝から晩まで一日中ゲーム大会!
 夢のような? “ネットワーク対戦テスト”

通信環境チェック1 通信環境チェック2
かなり狭い部屋にマシンがズラリと並べられている。ちなみにこの部屋だけでは収まらず、別のオフィスにまだまだ積み上がっているという。部屋の奥にはジョイスティックなどのゲーム周辺機器が無造作に積み上げてあった この画面がMicrosoftのバグチェックリポート「RAID(レイド)」。もちろん米国内だけでなく各国Microsoft写真ならば参照できる。
 Microsoftの持つデータによれば、PCをすでに持っている家庭の多くは2台以上のPCをすでにもっており、2001年には一般家庭の60%が2台以上のPCを持つことになるだろうという。そのうえ通信費も日本に比べ圧倒的に安い。こういった状況から現在、通信対戦ゲームが爆発的なのびを見せている。
 こういった状況もあって、GAMESTOCK 99で発表されたゲームの多くが通信対戦に対応しているが、Microsoft社内に通信対戦に関する専門のテスト部署が作られたのは意外に最近で、2~3カ月前のことという。

 この部屋には8台の全く同じPCが設置されている。PCの機能を統一することで、問題が起こった場合の原因を通信環境に特定するためだという。PCをチャンネルコントローラやパケットコントローラを介してつなぎ、バンド幅などを変更して各種通信環境をテストしていく。常に誰かが朝から晩までテストを行なっているという。
 まず一番狭いネットワーク環境と言うことでプライベートネットワーク上で通信対戦テストをおこない、プロバイダテストやWindowsのバージョンテストなどを経て、最終的にGameing Zone(Microsoftのインターネット対戦サイト)でテストすることになる。現在、通信対戦で対戦できるのは8人までなので、現在の部署の環境を拡張する予定はないというが、Gaming Zoneでは参加人数が爆発的に増えるので、より大きな環境を用意するかは検討しているという。




●マウスとゲームパッドが合体「Zulu」
 デザイン工房見学でわかった商品が完成するまで

 昨年のGAMESTOCK 98でも見学させてもらったハードウェアの制作現場。昨年は、傾けるだけでアナログ入力が可能となるジャイロセンサー搭載ゲームパッド「Tilt(コードネーム)」こと「SideWinder FreeStyle PRO」の制作現場だった。
 今年はマウスとゲームパッドが合体した「Zulu」。ちなみにこの“Zulu”はコードネーム。このへんてこな名前の命名理由は,開発者がアフリカ旅行に行った際、神の啓示にあったがごとく突然“ズールー族”から拝借したためという。

 Microsoftのデザインチームは8チーム計35人で、マウス、ジョイスティックから電話機、果てはActiMates Interactive Barney(Microsoftが昨年から発売している、PCと連動して話したり動く人形)まで、Microsoftのデザインを一手に引き受けている。
 ハードウェアの設計に関しては、新しい要素をあまり含まずこれまでの技術を流用して制作した場合、3カ月から4カ月程度で完成すると言うが、「SideWinder FreeStyle PRO」や今回の「Zulu」の場合は制作に14カ月はかかったという。製作工程としては、コンセプトに従いデザインを試しては使用感のテストを繰り返し、ハードのギミック的な要件を満たしたデザインを決定した段階で、色や素材をディスカッションで決定するという。もちろん予算も重要な要素だ。ラバーを使用すると手の中でズレないなど使用感は増すが、ゴムは高価でなかなか採用することはできないと言う。

 ちなみに「Zulu」の制作時、「3Dアクションシューティングを快適にプレイできる」ということがコンセプトだったため、テストでは当然のことながら「Quake」が採用されたそうだ。ところがこの「Quake」、市販のものではなくわざわざ特別なレベルを制作したという。できればこの特別レベルをパッケージに添付してくれないだろうか……なんてことを考えているのは筆者だけだろうか?

ハードウェアデザイン ハードウェアデザイン ハードウェアデザイン
写真向かって左側が制作の初期段階。右側に向かっていくに従い現状のデザインに近づいていく 開発当初はこういったジョイスティックも考案されていた。ジョイスティックの特許では任天堂とSEGAが数多くの技術を押さえているため、新規制作はかなり難しいとのこと こちらはSideWinder FreeStyle PROの初期デザインのひとつ。どこからでも持てるようになっている。なかなかおもしろいデザインだ
ハードウェアデザイン ハードウェアデザイン ハードウェアデザイン
デザインチームのチームリーダー。彼の後ろには色違いのコントローラーが並ぶ。色違いのハンドルもあってなかなかカッコイイのだが、商品化は難しそう 中で動作する仕組みがよくわかるトランスルーセント・タイプの「SideWinder Force Feedback Pro」 こちらもトランスルーセントタイプの「SideWinder FreeStyle PRO」。ぜひ商品化を!





●DirectX 7リリース、DirectX 8、そしてWindows 2000でのゲーム環境は?

 今回、このほかにもDirectX、Windows CE(Dreamcast)およびWindwos 2000下でのゲーム環境に関する説明会も行なわれたが、残念ながら新規要素が少ない上にゲームのデモも少なく残念なものだった。ちなみにDirectX 7.0のリリースはBeta1が4月、Beta2が7月、そしてリリースが7月末になるという。

 ほかには、Microsoftの理想のPC像なども公開された。この中で、ゲームにレーティングシステム(ESPRレーティング)を導入し、AIを搭載したインストーラでインストールさせたくないゲームを自動的にはじくなどの管理を行なうのだという。また、エラーが起きた場合、自動的に修正するなどの機能も必要だとも発言していた。ところが、「それではWindows 2000は絶対に落ちない完全に安定したものになるのか?」という質問に「NO」との答え。一応その状況に限りなく近づくとは言っていたが……。

□Microsoftのホームページ(英文)
http://www.microsoft.com/
□GAMESTOCK 99のホームページ(英文)
http://www.microsoft.com/games/gamestock99/
□関連記事
【2月26日】最新ゲームがズラリと勢揃い! Microsoft GAMESTOCK 99開催
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/990226/ms.htm

('99年3月2日)

[Reported by funatsu@impress.co.jp]


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