開催期間:2月23日~25日(現地時間)
●昨年以上の賑わいを見せた“GAMESTOCK 99”
米Microsoftが世界中のマスコミを集め、最新のゲームおよびジョイパッドなどのゲームデバイスを発表するコンベンション「Microsoft GAMESTOCK 99」が米MicrosoftのRedWest Campusで2月24日(現地時間)に開催された。
このコンベンションは毎年行なわれており、これまでにも最新の3D技術を駆使したゲームやオンラインゲーム、新しいアイデアを駆使したゲームデバイスがいち早く発表されることもあって年々注目度を増している。今年も、マウスとコントローラが一体となった新感覚デバイス「Zulu(コードネーム)」や、“Wing Commander”シリーズの制作に参加したことでも知られるゲームデザイナーErin Robert(Digital Anvil)が制作しているリアルタイムシミュレーション「Conquest:Frontier Wars」など注目の新作がズラリと並んだ。
●「マウスの操作感をコントローラで再現できたら……」
今年も登場した新感覚デバイス「Zulu」
GAMESTOCKの主役はもちろんゲームソフトなのだが、毎回これまでにない斬新なシステムとデザインを採用したゲームデバイスも発表され、その重要性は年々増している。昨年は傾けるだけでアナログ入力が可能となるジャイロセンサー搭載ゲームパッド「Tilt(コードネーム)」こと「SIDEWINDER FreeStyle PRO」が発表された。
今回のGAMESTOCK 99では、ボタンの付いたゲームパッドの右側部分を縦横にクルクル回すことでマウスのような操作感を実現したゲームパッド「Zulu(コードネーム)」が初のお目見えとなった。
ハードウェアの開発者と「Zulu」。操作感がマウスに比べて若干、煩雑な感じを受けた。発売までにどこまでチューナップされるか? | 新ゲームパッド「Zulu」。写真は左右への動きで一番閉じたときの形。ちなみにカラーリングはすべて黒。この写真のモデルは試しに作ってみたもの。限定版として販売の可能性もあり | こちらは左右への動きで一番開いた所。この他前後にねじることも可能 |
「Quake」などの3Dアクションシューティングをプレイする場合、もちろんゲームパッドやキーボードだけを使って遊ぶこともできるが、“振り返る”などの一部動作をより高速に行なうために、キーボードとマウスを併用する操作方法がスタンダードとなっている。この操作感をひとつのゲームパッドで実現できないかと考案されたのが「Zulu」だという。これまでと同じ通常のボタンのほか、シフトボタンが用意され、このボタンを押すことでマウス機能部分の機能を一切受け付けないようにすることもできる(シフトボタンを押すと右側部分をくるくるまわしても画面は一切切り替わらない)。会場でのデモプレイでは「Half-Life」を使い、十字キーで前後左右、右マウス部分で視界の制御を行なっていた。
インターフェイスはUSB。これまでの最新デバイスではシリアルを採用し、USB接続コードを付属するという手法をとっていた。今回USBだけを採用したことに関して開発担当者は「ゲームデバイスはそろそろ新しい領域に進むべきだと感じたからだ」としている。また、ドライバとなるSideWinder game controller softwareも最新版の4.0にバージョンアップする。4.0では、チュートリアルなどがよりわかりやすくなるという。発売はこの秋を予定している。
アナログ/デジタル両対応の「SideWinder Game Pad Pro」実は左右非対象だったデザイン |
発表の最後には、ForceFeedback機能についても触れ、発売当初の'98年では50タイトルにも及ばなかった対応タイトルが、'99年には100本、2000年には200タイトルとなると宣言している。
●新作ゲームを大量に投入
Digital Anvilの新作「Conquest:Frontier Wars」ついに登場
新作ゲームで特に注目を集めていたのは、昨年のGAMESTOCKでMicrosoftの元でゲームを作っていることが発表されたDigital Anvilが制作しているリアルタイムシミュレーションゲーム「Conquest:Frontier Wars」。
敵エイリアンが新たな住み処を求め地球に戦争を仕掛けるというのがストーリーで、ゲームの具体的な目的としては提督艦を中心に艦隊を編成し敵船隊との戦いに勝ち抜いていくことが目的。舞台は宇宙で、時は未来……だが、戦いそのものはむしろ第二次世界大戦に近いという。開発を担当しているErin Robertによると「歴史的な戦いを取り込み、最新の3Dグラフィックスによって未来の進むべき道を描いていく」という。用意されているユニットも第二次世界大戦当時をベースにしたものばかりで、その世界が好きな人にはたまらないかも。また、操作などのシステムまわりも練り込まれており(拡大縮小も自由自在)、簡単な操作で奥深い戦闘が展開できる。船隊は戦いを勝ち抜いていくたびにより強く強化されていくなどの、いわゆる成長システムも採用されている。一人プレイはストーリーを追ったミッションクリアタイプだが、そのミッションは早く敵を倒すなどの単純なものではなく、より複雑で歯ごたえのあるものが用意されるという。
また、Digital Anvilは同時にいくつかのゲームの開発を行なっている。プレーヤーはバウンティハンターとなり依頼されたミッションをクリアしていく3Dアクションアドベンチャー「Loose Cannon」や、宇宙空間を部隊とした3Dシューティング「Starlancer」などが今回発表されている。特に「Loose Cannon」はプレーヤー自身がTombRaiderのように街の中を歩き回り、スコープ付きのライフルで敵を撃ち殺したり出来るほか、車に乗り込み搭載した武器で敵車を破壊することも出来る。自由度は高いが、なかなか楽しみなタイトルだ。
「Conquest」を制作したDigital AnvilのErin Robert | 宇宙空間を舞台にしており、グラフィックも3Dだが、立体的な戦略行動はない。あくまで2D空間 | 数多くのフィーチャーがあるのだが、どれにも簡単な操作で実現できる |
●完成が楽しみな新作たち
やっぱり目玉は「Age of Empire II」
昨年のGAMESTOCK 98で熱狂的に迎えられた「Age of Empire II」が今年も出展された。話によれば昨年の会場で公開されたものよりもかなりの進化を遂げ、さらにE3バージョンとも違ったものに仕上がりつつあるという。
文明を育てる一方で、敵部族と戦ったり交渉しながら自分の種族の生き残りを果たすという前作Age of Empireは、大ヒットし、全世界で200万本を越える売り上げを記録した。1本目のヒットからプレッシャーもあったというが、どこをどう改良すれば従来のユーザーも新規ユーザーも楽しめるか十分検討してきたという。
そういった点を踏まえた上で開発された今作で用意された文明は、フランス、ドイツ、イギリス、アラブ、日本など13文明。勿論それぞれの民族、建物、武器などのグラフィックが違うほか、簡単な母国語を話すという(サムライなら日本語!)。また、1本目の対戦プレイでは戦いよりも商取引などの交渉に人気が集まっていたという。こういったことを踏まえ「~II」ではより“金”の重要性が増し、より多くの金を獲得することが勝利への第一歩となる。
このほか、部隊のフォーメーションを変更することができるのだが、フォーメーション一覧のボタンをクリックするだけで簡単に何度でも、状況に応じて変更することができる。実際に起きた歴史的なイベントがシナリオとして収録されるほか、シナリオエディタでシナリオをある程度はカスタマイズできるという。
また、兵士は搭載されるAIに従って行動するのだが、このAIを制御するスクリプトがパッケージに収録されるという。このAIスクリプトは普通のテキストエディタで変更することが可能で、自分だけのスクリプトとして保存し、次回ゲームプレイのときにオプションから選択することができるという。
完成は今年いっぱいということで、またまた延期された感じだが、その分満足の行く作品に仕上がりそうだ。
「Age of Empire」を製作したBruce Shelley。かなり有名なゲームデザイナー | 「Age of Empire II」の最新グラフィック。西洋風だろうか? 大変細かく描き込まれている | 同じく「Age of Empire II」から。日本の建物、兵士(サムライ)なども登場する |
この他注目の作品といえば、シカゴの街並みを完全に再現し、その街の中を10種類の車に乗り込み自由に走りまわる事ができるカーアクションゲーム「Midtown Madness」。Madnessと付くことからもわかるとおり、同社の「Madnessシリーズ」の最新作となる。ただし3Dエンジン他すべて一から作り上げられており、これまでのシリーズとは一線を画すものに仕上がっている。街中の再現度は驚異的で、制作担当者によれば「“メールBOX”から“ごみ箱”の位置にまで気を配った。もしシカゴの人がこのゲームを遊べばどこをどう走っているかわかるほどだ」という。もちろんそこには人が住み、街中を歩いている(某ゲームのようにひき殺すことは絶対できない)。乗ることができる車種はトレーラーやバスなどの大型車のほか、米国では大ヒット中のフォルクスワーゲンの新型ビートル(シアトルでも実際にあちこちで走っている)など、実際の車も含まれている。
「Midtown Madness」から。フォルクスワーゲンの最新のビートルも登場する | 「Midtown Madness」から。結構ぶつけまわることになりそう。 |
用意されるステージは残念ながらシカゴだけで、これから追加シナリオとして東京やロンドンなどの各都市が用意されることもないというのはさみしいが、街一つをすべて再現するというリアリスティックな手法を採用しながらも、ゲーム的な楽しさにあふれた演出が満載された「Midtown Madness」は会場でも人気の高いゲームのひとつだった。ちなみに完成は最も早く、この夏になるという。
この他では、武器を搭載した車に乗り込んで敵と戦う、近未来を舞台にしたカーアクションシューティング「Full Auto」や、350種類以上のパズルを収録した「Pandora's Box」が出展された。また、米国市場では大きなパーセンテージを占めるといわれるスポーツゲーム「Baseball 2000」「Microsoft Football」「NBA Drive 2000」「Microsoft Soccer」などが出展された。Microsoftはこれからもスポーツゲームに力を注いでいくようだが、日本のマイクロソフトによれば、これらのタイトルの日本語化は未定だという。
●海外と日本、ますます温度差が広がるネットワークゲーム事情
会員数400万人のMSN Gaming Zone!
今回発表されたタイトルの多くはもちろん通信対戦に対応しているが、他にも通信専用のゲームもいくつか出展されていた。この一つの理由としては、日本では信じがたいほどのオンラインゲームの成功が背景にある。
今回発表された数字を引用すれば、'96年5月に1,500人でスタートしたインターネット対戦サイト「Gaming Zone」は現在400万人、メンバーは2000年には1千万人にまで達成するだろうと予測している。現在毎日、20万人がこのサイトを通じてゲームをプレイし、常にアクセスしている人は3万人。90ものゲームのZoneが存在し、毎週何らかのイベントが行なわれ500ものコミュニティが活動している。25のパートナー企業とともに運営され、課金されるプレミアムゲームの切り札として「Fighter Ace(戦闘機に載って戦うフライトアクション)」が投入されて以来4月から販売の成長は400%アップしているという。こういった数字だけを見ていると驚異的なまでの成長が伺えるし、全世界的には確実に通信対戦の時代となりつつあることが実感できる。
こういった事情から、3Dネットワークロールプレイングゲーム「Asherron's Call」や、宇宙を舞台とし、編隊を組んでしか遊ぶことができないという3Dスペースシューティング「Allegiance」などは人々の興味を集めていた。日本のマイクロソフトによれば、2バイト圏の問題、通信費が高いことなどマイナス要因から、まだ積極的に参入する予定はないという。これから海外と日本ではどれほどの差が広がっていくのだろうか?
MSN Gaming Zoneで最も人気のあるタイトルのうちの一つで「Spade」 | 「Asherron's Call」昨年も公開された。自由な動きを実現できる操作法と、独特のマジックシステムを持つ | 「Allegiance」から。ハデハデなグラフィック。開発者によれば、オンラインゲームに特化した3Dエンジンを作成したという |
●まだまだある隠しダマ
実は開発中ながら今回発表されなかったタイトルがいくつか存在するという。すでにDirectX 7.0のリリースでも触れられている「Flight Simulator」の最新版などがそれで、それらも順を追って発表されていくはずである。今回の発表会をみると、大きな資本力と多くの協力の下、Microsoftはエンターテインメント分野でも覇権を握ろうとしているように感じた。だが、ゲーム好きとしてはいいゲームが登場することが最良の願いである。今回レポートした新しいゲームの登場を待ちたいと思う。
□Microsoftのホームページ(英文)
http://www.microsoft.com/
□GAMESTOCK 99のホームページ(英文)
http://www.microsoft.com/games/gamestock99/
('99年2月26日)
[Reported by funatsu@impress.co.jp]