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■【'98年1月30日】大作RPG「Might and Magic」の最新作「The Mandate of Heaven」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/980130/game.htm#1
「え、〆切? もう?」ふとカレンダーを見て驚いた。前回の「トゥームレイダー3」から2週間。期間は、十分とはいえないまでも、たっぷりあったはずなのに……。しかも、今回は執筆時間が足りないのではなく、プレイしているうちに気づいたら〆切が迫ってきていたという状況。いや、どちらかといえばスケジュールも忘れてプレイしてしまったと言った方が正しいのかも。サンプルの画面を取り込まなければいけないのだけれど、ついついプレイに熱中して絶好のシャッターチャンスを逃がすこともしばしば。そんな状況でありながら、ゲーム自体は全体のほんの数%を進めたにすぎない。毎度のこととはいえ「マイト&マジック」のゲームの規模にはつくづく感嘆させられてしまう。
●歴史あるロールプレイングシリーズ「マイト&マジック」
「マイト&マジック」シリーズは「ウィザードリィ」や「ウルティマ」シリーズと並び、ロールプレイングゲームの定番として世界中で高い評価を受けている作品だ。Apple IIをプラットフォームに、最初の作品が産声を上げたのが10年以上前のこと。その後、PC/AT互換機(DOS)を経て、今回の「Ⅵ」ではWindowsをベースとしてリリースされることとなった。間に、同じ世界観でのシミュレーションゲーム「Hero of Might&Magic」2作をはさみ、ロールプレイングゲームとしては前作「Darkside of XEEN」(「V」というタイトルはついていなかった)以来、6年ぶりの登場ということなる。国内ではPC8801やPC9801などに移植されているので、以前からゲームに親しみのある方ならご存知なのではないだろうか。
当初から屋外やダンジョンを全て3Dで表示し、時間の経過の概念も導入。自由度の高いシステムとあいまって、基本的なスタイルは現在にいたるまで色褪せることなく継承されている。また、4作目の「Clouds of XEEN」がインストールされている状態で、前述の「Darkside of XEEN」をインストールすると世界が1つになり、新たに「World of XEEN」のオリジナルシナリオが出現するといった、他に類を見ないアイディアも盛り込まれている。そして、そのどれもが壮大なゲーム世界を有し、一筋縄ではいかないくらい大きなスケールを擁しているのも特徴だ。ハードディスクに対応し、ストレスなくプレイできるようになった「III」以降ですら、根を詰めてプレイしても数週間はかかる。普通にプレイしていたら1~2カ月では、とてもクリアは不可能だろう。以前、輸入ソフトを扱うショップの店頭で「I」から「III」までを1枚のCD-ROMに収録したボーナスパッケージを見かけたときに「これ1枚あったら1年は遊べるだろうなあ」と本気で考えたものだ。
世界的なロールプレイングゲームの代表といえば、やはり「ウィザードリィ」「ウルティマ」の名が挙がると思うけれど、シリーズを通して全てが楽しかったゲームとしては、個人的にはこの「マイト&マジック」に匹敵するものはないだろうと確信する。そんなシリーズだ。
ステータス一覧 | 武器の装備画面 | 苦労して宝箱を開けると…… |
今回の「マイト」では、これまでの同シリーズから大きく変わった点がふたつある。ひとつは、世界が完全な3Dになったこと。ポリゴンを使用し、建物や山などを完全な立体物として扱うようになった。また、移動も90度単位だったものが全方向に移動できるようになり、より自由で複雑な探索行ができるようになっている。これまでは「山」とは名ばかりでただの平面だったり、川もブロック単位で流れていて「ルール」という名の味気なさを強要されていたが、今回は文字どおり山を登り、橋を渡りといった行動を堪能できる。場合によっては高いところから落ちてダメージを受けることもあるだろう。急な斜面を滑落して、登れなくなってしまうこともあるかもしれない。町とフィールドの区別もなくなったので、場合によってはモンスターが町中に進入してくることすらありえるのだ。「自由」で「自然」なシステムに、より一層の磨きをかけたシリーズ最新作。それがこの「マイト&マジック6 ~ザ マンデート オブ ヘブン~ 完全日本語版」だといえる。
その分、システムにかかる負担は大きくなった。自宅の環境では快適に動いているけれど、友人宅のK6/233 + 64MB RAM + Mistique220(4MB)の環境では、表示に多少のガタつきがあったことを付記しておこう。快適なプレイのためには、最低でも3Dアクセラレータボードは必須だと思っておいた方がいい。
それに伴い、操作性も変更になった。移動はキーボードで行ない、何かを調べたり、攻撃対象を指定するときにはマウスで画面上をクリックする。個人的には、こうした複数のデバイスを使う操作性には賛成しかねる部分もあるのだけれど、どちらか一方のデバイスだけでは操作しづらいのも確かだし、最近の3Dゲームではマウスとキーボードの併用は一般的なスタイルになってきているので、やむを得ないところなのかもしれない。
もう一つの違いは、ゲームの進行がリアルタイムになったこと。街の中でボーっと立っているだけでも時間は過ぎていく。ダンジョンの中でなにもせずにいれば、いずれモンスターの餌食になってゲームオーバーになってしまう。それが今回のシステムだ。戦闘も基本的にはリアルタイムで、行動できるメンバーから逐次攻撃したり、魔法をかけたりする。力や魔力だけでなく、速さも重要なパラメータになっているといえるだろう。この点に関しては変更もできる。リアルタイムの戦闘に馴染みのない方は、戦闘中にENTERキーを押せば、いつでも普通のロールプレイングゲームと同じようにターン制に切り替えることができるのだ。ただし、ターン戦闘の間は移動することができないというハンデを負うことになる。リアルタイム制なら敵に近づいて攻撃し、離れて敵の攻撃を避けるといった戦いかたもできるが、ターン制の場合、素早さや防御力などのパラメータに頼った戦闘になる。
また、セーブはどこでも(戦闘中でも)できるけれど、ロード直後はリアルタイム制になっているので、敵が近くにいる場所でのセーブにはくれぐれも注意するようにしよう。どちらの戦闘方法を選ぶかはプレーヤーの好みの問題だけれど、最初のうちはターン制、慣れてきたらリアルタイム制とターン制を使い分けていくようにするのがいいだろう。従来の「マイト」とは一味違う戦闘が楽しめるはずだ。
王様へ謁見する | 不気味なダンジョン | 色々なイベントが待ち受けている |
まずレベルアップ。このゲームでは一定以上の経験値を得た後、街の訓練場で代金を支払い、訓練を積んでからでないとレベルアップすることはできない。また、訓練には1週間の時間がかかる。1人ずつより、全員まとめてレベルアップした方がムダに時間を使わなくていいことも覚えておきたい。
次にスキル。スキルには武器や防具の扱いから、交渉、罠の感知や解除、アイテムの鑑定など、さまざまなものがある。たとえば、スキルを持っていないと武器や鎧を装備することもできないし、罠のかかった宝箱には苦労させられることになるだろう。また、魔法もスキルのひとつになる。新しい魔法は、ギルドで代金を払って呪文書を購入し、それを読むことでしか覚えることができない。逆に言えば、戦士でも魔法を使えるようになるし、魔法使いでも重装備を着込むことができるわけだ。スキル自体も街のギルドに代金を支払って習得することができ、レベルアップで得られたスキルポイントを振り分けることで熟達していく。そして、武器スキルが上がれば与えるダメージが増え、防具なら受けるダメージが減り、魔法なら効果が強くなり、鑑定や罠の解除は成功率が上がっていく。限られたスキルポイントをいかに振り分けていくかも重要なポイントになっていくわけだ。たとえば「罠の解除」は、最初から持っていないとつらいスキル。早い時期に覚えておきたいものとしては「弓」のスキルがある。弓は、剣などの近接武器とは別に装備することができ、矢などを消費しなくても射ることができる。魔法に頼るのが難しい序盤では、無尽蔵に射てる弓は強い味方になるはずだ。
もうひとつ「マイト」独自のパラメータとして、パーティの「知名度」がある。最初は誰も知らないパーティでも、行く先々でクエストを達成し、人々に害をなすモンスターを排除していけば、やがて有名になっていくことだろう。知名度は、これを数値化したものだ。知名度が高くなれば、それまでかたくなな態度をとっていた人々もうちとけ、やがて重要な情報を与えてくれるかもしれない。また、店で買い物をするときも、最初は高い値段をふっかけられるかもしれない(品物の「価値」と「売価」をそれぞれ確認できるところもニクい)が、知名度が上がれば安く買うこともできるようになる。さらに、この知名度とは別に「評判」というものも存在する。これは「凡庸」を中心に「功名」「悪名」に分かれていて、たとえば勇者なら「功名高い」し、お尋ね者なら「悪名高い」というようになるわけだ。ただ功名を上げればいいというものではなくて、中には高潔な人物に対して好感を持たない人物も存在する。どちらの道を選ぶかは、プレーヤーの好み次第だ。
最後に時間の概念を紹介しよう。現実世界と同じように、この「マイト」の世界でも時間の流れは存在する。宿に泊まれば1日が経過するし、レベルアップには1週間が必要になる。そして、月が変わり、やがては1年が経過していく。キャラクタには年齢があり、年とともにパラメータに変化が訪れる。そしてやがては……。時間の経過が影響を与えるのはパーティーばかりではない。街の中の店は営業時間が決まっていて、武器の店などは昼間、酒場などは夜しか開いていない。また、この世界に存在するサーカス団は、1年周期で各地を回っていて、何月にはどこの街、というように移動を続けている。
この時間の概念はクエストにも関連していて、中には1年のうち特定の日にしか発生しないものもあって、うっかり発生日を見逃すと、もう1年待たなければいけない、なんていうことにもなりかねない。
もっとも、これも「マイト」の特徴なのだけれど、全てのクエストを達成しなければいけない理由はどこにもない。一切依頼を受けず、思うがままに世界を放浪したって構わないのだ。世界にちりばめられたクエストや、謎の数は多い。どのクエストを、どんな順番で受けるか、あるいは受けないか。全てはプレーヤーの自由。国産の、いわゆる「お使いロールプレイングゲーム」に慣れてしまっているプレーヤーからは「何をしたらいいのかわからない」という声も聞かれるほどだ。
同時に、クエストはいくつでも並行して受けることができる。今、どんなクエストを受けているのかわからなくなっても、すぐに一覧表示されるようになっているので、そうそう迷うことはないだろう。一貫した基本システムの上に蓄積されたノウハウは、ユーザーのさまざまなトラブルに対処できるように考慮した、新しい「マイト」を生み出すことに成功した。ひとしきりプレイした後に感じた第一印象は、こんな感じだった。
同じ敵がたくさん登場すると、ちょっと不気味かも | モンスターの描き込みもリアルだ | とにかく敵がワンサカ出て来る | こいつが噂のスケルトン。ファンタジーではお馴染みのモンスターだ |
街の中もポリゴンで構築されている。気を付けないと敵は街の中にまで入り込んでくる |
世界全体が5×3のエリアと小さ目になり、各エリアも狭くなったように感じはするものの、それでも十分に広い「マイト&マジック」の世界。クリアには最低でも100時間を要するというこのゲームは「ロールプレイングゲームが好き」という方に一度は触れてみてほしいタイトルだ。シリーズではあるけれど話のつながりはないので、これまでプレイしたことのない人でも問題なくゲームに入ることができると思う。誰にでも、というわけにはいかないけれど、趣味のあう人ならこれ1本だけで年末年始は十分に楽しむことができるだろう。この春に先行して国内販売された英語版にあわせて攻略本も発売されているので、セットで購入してもいいかもしれない。このゲームに関しては、ヒントを見ることは恥ではない。少なくとも僕は、そう確信する。
最後になるけれど、アドバイスをひとつ。このゲームではキャラクタメイキングの際に、事前に登録されているパーティーを選択してゲームを始めることもできる。このパーティーは、非常によくバランスが取れており、最初から装備も十分に整っている。闇雲にキャラクタを作成しても、あとあと苦労するのは見えているので、慣れないうちはこのパーティーを使ってプレイすることをおすすめしたい。今回は、自分でキャラクタを作成しても名前をつけることができないので、キャラクタへの愛着という意味ではどちらを使っても、それほど変わりはないように思うし。
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※このレビューはプレβ版を使用してのものです。製品版では若干仕様が変更される場合もあります。
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