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370ピンソケット対応Intelマザー「BI440ZX」がひっそりとデビュー


■370ピンソケットが公式デビュー

 かねてからウワサになっていた370ピンソケットが、ひっそりと公式デビューした。わざわざ「公式」と断るのは、先日開催されたCOMDEXで、台湾ベンダの多くが370ピンソケットを採用したマザーボードを展示しており、Intelが公表していないにもかかわらず、事実上発表されたも同然の状態になっていたからだ(しかも、どうも今回はIntelの「しばり」はかなり緩かったような印象が強い)。

 一応、370ピンソケットを簡単に説明しておくと、PPGAパッケージ(Plastic Pin Grid Array:要はMMX Pentiumと同じようなパッケージ)のCeleronプロセッサが採用するソケットの規格である。現行のSlot 1対応SEPPパッケージより、さらにトータルコストを下げるのが目的であり、技術的に目新しい特徴があるわけではない。L2キャッシュをプロセッサと同じダイ上に集積することが難しかった時代(外付けのSRAMを用いるしかなかった時代)は、PPGAのようなソケット向けのパッケージはかえって高くついたのだが、第2世代Celeron(Mendocino)のように、同一ダイ上にL2キャッシュを集積可能となっては、やはりソケットの方が安くつく、ということである(基板のコストが不要のため)。

 ただし、今回の370ピンソケット(Intelの表記では370-pin socket)のデビューはかなり変則的だ。この原稿を書いている時点で、IntelのWebサイトのCeleronプロセッサのページには、まだ370ピンソケットの情報はない。370ピンソケットの情報があるのは、Celeron向けマザーボードのページ。ここで370ピンソケット対応のBI440ZXというMicro ATXマザーボードの情報が公開されてしまった。Webページにも、ダウンロード可能なPDFによるドキュメントにも、しっかりと370ピンソケットという表記がある。

 このBI440ZX(開発コード名Bimini)というマザーボード、末尾の型番を見ればわかる通り、440ZXという新しいチップセットを用いている。この440ZXについても、すでにデータシートがアップロードされているし、他のチップセットとの機能比較も公開されている(http://developer.intel.com/design/pcisets/linecard.htm)。これを見ればわかる通り、この440ZXも機能的に新しいものはほとんどない。440BXと440ZXには、440LXと440EXの関係(440EXは440LXとピン互換で、いくつかの機能を省略した440LXの廉価版)がそのまま当てはまりそうだ。要するに、440ZXは440BXの廉価版である。強いて目新しさをさがせば、FSBクロック66MHzと100MHzの両方に対応する440ZXと、FSBクロック66MHzのみをサポートした440ZX66の2種類があることだが、これも低価格追求が目的であり、両者の間に機能的な違いはない。もちろん、FSB66MHzのPentium IIが事実上フェードアウトしてしまった以上、440ZXはPentium IIとCeleronの両方に対応したチップセット、440ZX66はCeleron専用チップセット(440EXの後継)という位置付けになるのだろうが、それは機能的な違いによるものではない。


■440ZX66は440EXの二の舞になってしまうのか?

 筆者も理由は知らないのだが、以前このコラムで書いたように、Intelは基本的にマザーボードの新製品についてプレスリリースを出さない。ひっそりとWebでデータを公開するのみである。だが、少なくともこれまでは、新しいチップセットが登場する時は、プレスリリースが出ていた。ところが、この440ZXはいまだにプレスリリースが出ておらず、データシートが先行してしまっている。なぜこのような、つれない扱いを受けているのか。やはり機能的な目新しさがないからだろうかとも思うのだが、理由はわからない。

 ただ、プレスリリースが出ないことで、1つだけわからないことがある。それは440ZXおよび440ZX66の価格だ。通常、プレスリリースには、1万個ロット時の価格やサンプル価格が掲載されており(本当にこの価格で売られているのかどうかは別にして)、ある程度の目安になっていた。価格から、そのチップの位置付け等を推定することも可能だった。440ZXの場合、スペックから位置付け(440BXの下位)を知ることは可能なものの、440ZXと440ZX66間の価格差がわからない。両者の間に440ZXをやめて、積極的に440ZX66を使いたいとOEMが考えるだけの価格差があるかどうかがわからないのである。

 440ZXはCeleronとPentium IIの両方に対応できるが、440ZX66ではCeleron専用のマザーボードとなってしまう。マザーボードOEMとしては無視できない違いだ。元々廉価なMicro ATXマザーボード用のチップセットとして設定されていた440EXは、Celeron専用になることが嫌われてか、あまりヒットしなかった。これは、現在秋葉原で売られているMicro ATXマザーボードの多くが、440BXベースであることからも明らかである。果たして440ZX66は440EXの二の舞になってしまうのか、440ZXと棲み分けるのかは、価格情報なしでは予測できない。

□Intelのデベロッパ向けサイト(英文)
http://developer.intel.com/
□370ピンソケット対応マザーボード「BI440ZX」製品情報(英文)
http://developer.intel.com/design/motherbd/bi/bi_ds.htm
□関連記事
【12/1】Intel、440ZXの概要を開発者向けWebで公開
http://www.watch.impress.co.jp/pc/docs/article/981201/intel.htm
【10/28】本連載第12回:Celeronを正式サポートしたIntelの新マザーボード
http://www.watch.impress.co.jp/pc/docs/article/981028/hot012.htm

[Text by 元麻布春男]


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