詳細は、IntelのWebサイトを見ていただくとして、ごく簡単に2つのマザーボードの特徴について触れておこう。SE440BX-2は、これまで販売されてきたSE440BXのマイナーチェンジ版。主な変更点は、オンボードのサウンドチップが、Crystal Semiconductor製から、ヤマハのコントローラチップであるYMF740とAnalog Devices製のAC'97 CODECであるAD1819Aの組み合わせ(MU440EXと同じ)に変わったことだ。
RC440BXはGatewayが採用しているマザーボードで、オンボードにNVIDIAのRIVA 128ZXによるAGPグラフィックスと、CreativeのAudioPCI 64V互換のサウンド機能を持つ。オンボードペリフェラルの選択がGatewayっぽい気がするのだが、BIOSが最近のIntel製マザーボードには珍しくAMI製なのも、GatewayのOEMと関係があるかもしれない。RC440BXのもう1つの特徴は、ATX版とマイクロATX版(ATX版のISAスロット部をカットした格好)の2種類が用意されることだが、この特徴とGatewayの関係はわからない。
実は、このSE440BX-2とRC440BX以外にも、Intelはこの秋2つのマザーボードをリリースしている。1つは、デルのDimension Vシリーズが採用しているAR440BX(Aruba)、もう1つがIntel製マザーボードとしては今のところ唯一PCIスロットを5本持つWS440BX(Warm Springs)だ。この2つは、おそらくOEM専用で、SE440BX-2やRC440BXのように外販はされないものと思われる。
こうした考えは、Celeronが2次キャッシュを持たないCovingtonの時代は、杞憂に過ぎなかった。CovingtonベースのCeleronは、ごく一部を除き不評で、Pentium IIの市場を荒らす心配など必要なかったのである。ところが、Celeronに128KBの2次キャッシュを持つMendocinoコアが追加されると、様子が変わってきた。MendocinoベースのCeleron 300A/333MHzは、市場で好評を博すと同時に、Intelが心配していた事態、Pentium IIの代用品として利用され始めたのだ。
すなわち、多くのPCベンダは、Pentium IIベースのPerformance PCと、CeleronベースのBasic PCの2つを、別々のシステムとして用意するのではなく、1つのベースシステムを用意し、顧客の注文に応じてPentium IIとCeleronのどちらかをインストールして出荷することを望んだのである。CeleronはIntelの思惑通り、Pentium IIとは異なるセグメントのプロセッサではなく、廉価版のPentium IIになってしまった。CeleronがPentium IIの市場を食っていると言っても良いだろう。そして、440BXベースのマザーボードでCeleronをサポートしたことで、Intel自らも、この状況を認めてしまった。市場は、必ずしも100%、Intelの思惑通りに動いてはいない。
とはいえ、これをもって、Intelが危機に面していると捉えるのは早合点に過ぎるだろう。Intelにとって最悪なのは、CovingtonベースのCeleronのように、出すプロセッサが売れないことである。確かに、MendocinoはIntelの予定通りの売れ方ではないものの、売れていることに違いはない。また、製造原価的に、クロック300MHzや333MHzのPentium IIを安く売るよりは、Celeron 300A MHzや333MHzを売った方が、利益も確保しやすいハズだ。現状でもIntelは、最悪のシナリオはまぬがれているのである。とりあえず、この場は市場の流れに任せ、'99年以降、Performance PC向けプロセッサへのKatmai New Instructionの導入、ソケット版Celeronの投入など、少しづつ2つのプロセッサのセグメンテーションができれば良いと考えているのかもしれない。
筆者は、常時Intel製マザーボードを1枚は確保するようにしており、今も実験マシンの1台にSE440BXを用いている。仕事柄、ベータ版のビデオカードの評価等を行なう機会が少なくないのだが、こうしたベータ版のカードは、Intel製のマザーボード以外では、たとえIntel製チップセットであろうとトラブルが生じることが極めて多い。ビデオチップベンダやカードベンダの多くが、Intel製マザーボードをリファレンスとして用いている以上、テスト用になくてはならない存在なのである。
□米Intelのデベロッパ向けサイト(英文)
(マザーボード、チップセットなどの製品情報はデベロッパ向けページにしかない)
http://developer.intel.com/
□米Intelのマザーボード情報のページ(英文)
http://developer.intel.com/design/motherbd/
□インテルのホームページ
(10月27日現在、SE440BX-2/RC440BXに関する情報は掲載されていない)
http://www.intel.co.jp/
[Text by 元麻布春男]