元麻布春男の週刊PCホットライン

ユーティリティソフトというもの


■DOS時代に愛用したユーティリティ

 世の中には、ユーティリティソフトと呼ばれる種類のソフトウェアがある。たとえば、ディスクのメインテナンス、ファイル操作の補助、PCシステムの障害診断、メモリ管理、さらにはコンピュータウイルスの発見と駆除、といった機能を提供するソフトウェアだ。「ツール」と称されることも多い。オフィスアプリケーションがデータ作成の支援を行なうのに対し(たとえばワープロが文書、表計算ソフトがワークシートなど)、通常ユーティリティはこうしたデータの作成は行なわない。データ作成のプラットフォームであるPCの環境を維持・管理するためのソフトがユーティリティといっても良いだろう(データの生成を目的としないソフトには、他にゲームなどコンテンツと呼ばれるものがある)。

 市場では、この種のユーティリティソフトが数多く市販されているが、みなさんはお使いだろうか。筆者の場合、メインマシンたる仕事マシンには、現在のところ別売のユーティリティソフトは入れていない。正確には、Windows 98の発売元であるMicrosoftのPlus! 98が入っているのだが、正直言ってデスクトップテーマ以外あまり使っていない。インストールしなけりゃ良かったかな、と思うことさえあるくらいだ。

 だが、筆者が昔からユーティリティソフト嫌い?だったわけではない。たとえば、この種のソフトの代名詞的な存在であるノートンユーティリティだが、筆者が最初に購入したのは、確かまだVersion 4.0の頃。Version 3.x(確か3.5だったように思う)を買おうか迷っているうち、Version 4.0が出るという話を聞き、どうせならそれを待とう、ということになった。まだ、ノートンユーティリティの発売元が、Symantecではなく、Peter Norton Computingだった時代のことだ(それまでのSymantecは、日本でいうカード型データベースソフトのQ&Aで知られる会社だった)。もちろん、まだDOS/Vなど登場する前の話であり、ノートンユーティリティも英語版である。

 だが、せっかく購入したノートンユーティリティ Version 4.0だが、利用した期間は極めて短かった。MS-DOS 4.0がリリースされたからだ。それまで使われていたMS-DOS 3.3には、パーティションサイズに32MBという「壁」があった(今なら、メインメモリで32MB以上搭載するのが普通であることを考えれば、隔世の感がある)。これがMS-DOS 4.0で2GBへと一気に拡大されたのである(ただし、ST-506やIDEではBIOSの制限から最大パーティションサイズは528MB止まりであった)。ユーティリティもこれに対応すべく、バージョンアップが行なわれた。それがVerison 4.5でこのバージョンを愛用したものである。

 筆者がノートンユーティリティに対して絶対的な信頼感を持つようになったのは、ある事件をきっかけにしてのことだ。なんと、デフラグ(Norton SpeedDisk)の作業中に、電源ケーブルにつまずいて、ケーブルを引っこ抜いてしまったのである。当然、ディスクの中身はパーになったものと思い、あきらめつつPCの電源を入れたところ、システムは何の問題もなかったかのように起動してしまった。この事件のインパクトは大きく、すっかり信奉者となってしまったのである。


■Windows時代になって使わなくなったわけ

 そんな筆者が別売のユーティリティを使わなくなったのは、Windowsになってからのことだ。特にWindowsのバージョンが新しくなればなるほど、ユーティリティを常用しなくなった。その理由の1つが、こうしたユーティリティが(たとえ機能的に劣るにしても)Windowsに標準添付されるようになったことであるのは間違いない。Windows 3.1に組み合せたMS-DOS 6.xには、メモリ管理ソフトやアンチウイルスソフトが添付された。Windows 95にはデフラグやスキャンディスクがついてきた。そして、Windows 98では、SCSIやATAPIに対応したバックアップソフトまでついてくるようになったのである。別売のユーティリティを買う必然性はかなり小さくなったと言って間違いない。

 だが、少なくとも筆者にとって、これだけが理由ではない。OSが変わったのと同様、ユーティリティソフトもWindows時代になって変わってしまった。それも筆者があまり好まない方向に。たとえばDOS時代のユーティリティソフトは、DOS自体がシングルタスクということもあって、アンチウイルスのような例外(TSR)を除き、システムに常駐しなかった。呼ばれるまで、ハードディスクでジッと我慢しておいて、イザという時には活躍する、まるで古典的な正義の味方というか、縁の下の力持ち的な存在だった。

 Windows時代になって、同時に複数プログラムを利用することが当たり前になると、ユーティリティソフトも常駐し、常時システムの監視をするものが増えてきた。それにともなって、こうした常駐型のユーティリティと、他のアプリケーションや、特定のハードウェア(のドライバ)とのコンフリクトも増えてきたように思う。こうしたコンフリクトが発生した場合、アンインストールで解決すれば良いのだが、必ずしもそうとは限らない。システムを救うためのユーティリティをインストールしたことが、逆にシステムにとっては致命傷になるという、実に困ったことになってしまうことすらある。

 本来ユーティリティソフトは、ハードディスクやメモリといった、システムの動作にクリティカルなパートを任せるだけに、利用に際しては信頼が鍵となる。少なくとも、完璧なアンインストールができないようでは、恐ろしくて使えない、というのが筆者の考えだ。ユーティリティのインストールに際しては、本番のマシンにインストールする前に、テストマシンでまず実験インストールし、動作チェックを行なうと同時に、完全なアンインストールができるかどうかを確認したほうが無難だ(安全にアンインストールできないアンインストールユーティリティなどという、笑い話はごめんである)。

 もう1つ、Windows時代になって筆者がユーティリティを使わなくなったのは、ビジュアルデザイン等が派手な傾向になったことにも原因があるように思う。すでに述べたようにユーティリティというのは、それ自体では何の生産活動も行なわない縁の下の力持ち、というのが筆者の認識である。そんなユーティリティの自己主張が強くては、本末転倒という気がしてならない。だが、派手なデザインのユーティリティ、デフォルトインストールで、画面の一角をデンと占めるユーティリティが実に多いのである。これにウンザリとしてしまう。

 と書いてきたところで、紙数が尽きてしまった。今回は、こんな筆者が久しぶりに購入したWindows 9x用の汎用ユーティリティを取り上げる予定だったのだが、そこまで至らなかった。次回は、この話題の続きにしたいと思う。

[Text by 元麻布春男]


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