元麻布春男の週刊PCホットライン

花子9を購入した理由


■ラフスケッチ制作のための図形プロセッサ

 いまさら言うまでもなく、筆者の商売はこうしたPC関連の原稿を書くことである。仕事のほとんどは、テキストの作成と編集と考えてもらって構わない。だが、原稿書きに付随して、他の作業も若干生じる。1つは原稿で取り上げた製品等の写真を撮ることであり、もう1つは原稿を補足するための図版を制作することである。もちろん図版といっても、イラストレーターなどその道のプロが描くような、精緻なものではない。はっきりいえば、その道のプロに、読者に見せても良いレベルの図を描いてもらうためのスケッチを制作するのが、筆者の仕事の一部となっている。

 問題は、これにどんなツールを使うか、である。Adobe IllustratorやCorel Draw!といった汎用のドロー系ツールを使っていたこともあるのだが、こうしたツールは高級すぎて、筆者の腕には合わなかった。たとえば、プロのほとんどが使っている(MacかWindowsかは別にして)Illustratorだが、正直言って筆者の手に余る。頭の中にPostScriptのインタープリタが入っているプロならともかく、そんなものなどカケラも存在しない筆者には、作図の概念自体が理解しづらい。Illustratorを使ううち、PostScriptインタープリタが頭の中に入るのかもしれないが、その道のプロでない筆者には、そこまで使いこむ時間がない。他にやるべきことは山ほどある。

 で、筆者がスケッチに愛用しているのがVisioだ。ドラッグ&ドロップで部品を配置し、線で結ぶというVisioの手軽さは、筆者にとってちょうど良い。プロフェッショナル的には、足りない機能も多いのかもしれないが(実はそれすらも良くわからないのだが)、筆者はこれにほぼ満足している。満足のあまり、未だにVersion 4を利用している?くらいだ。

 Microsoft Officeにしても、このVisioにしても、最近のアプリケーションは、筆者にとって過剰なほどの機能を備えている。特に不満がなければ、バージョンアップする必要がない、というのが率直な気持ちだ。Officeもつい最近まで95を使っていたのだが、メール等にアタッチされて他所からやってくるWordやExcelのファイルがみな97になってしまったため、やむなく97にバージョンアップしたくらいである。

 それはともかく、Visioで唯一不満だったのは、「うずまき(螺旋)」を手軽に描く方法が見つからなかったことだ(サポート窓口に問い合わせたところ、Visioの最新版でもこれは同じとのことだ)。たとえばCDやDVDなど、うずまきを描きたいことは意外と多い。にもかかわらず、うずまきを簡単に描けるツールは意外とないのである。もちろん、うずまきが描けないわけではないが、それにはかなりの手間がかかる。これだけが、問題だった。


■うずまき図形のために花子9購入に踏み切る

うずまき
 かねがねそう感じていたところに、花子9のダイレクトメールが届いた。筆者はIMEにあまりこだわりがなく、今使っているのもMS IME 98なのだが、以前購入したLotusのSuper Officeに、ATOKがバンドルされていたおかげで、立派な?正規ユーザーだったのである。そこでフッと考えたのが、上記のうずまき問題である。販売店にいってパッケージを見ると、何と裏側にテンプレート図形として、うずまきが掲載されている。優待販売価格12,000円(実際は店頭ディスカウントもあり1万円を切る)は、Visioのバージョンアップ料13,000円(Version 4から最新版の場合)に比べても魅力的に思えた。良く考えれば、純血ソフトウェアハウスとしては、最大規模を誇るジャストシステムであるにもかかわらず、同社のソフトを購入したことはない(バンドルのATOKを除く)。これは、うずまきプロセッサとしてだけでも、購入せねばなるまいと勝手に思いこんだのであった。

 購入した花子9だが、すでに述べたように、同社のアプリケーションをちゃんと使うのは、これが初めてのこと。以前は、ユーザーインターフェイスに、独自ウィンドウシステムであったジャストウィンドウの影響などもあったらしいが、この花子9の操作性に特に違和感は感じなかった。むしろ、海外からの移植系アプリケーションに時々見られる、Mac臭さ(こればっかりは馴れの問題だからどうしようもない)もなく、比較的好印象を受ける(どのメニューにどのツールが用意されているかは、未だにちゃんと覚えられていないが)。驚いたのは、同社が部品ファイルと呼ぶ、一種のクリップアート。小学校や中学校の教材作成用をはじめとして、年賀状用、さらには建築や医療用のものまで、膨大な数が付属する。こうしたある種の泥臭さ(決して悪い意味で言っているのではない)は、Adobeなどのアプリケーションにはない部分だという気がする。仮に雑誌等での評価が低くても、現場で重宝されるのはこうした泥臭いアプリケーションかもしれない。

 それはさておき、筆者にとって肝心のうずまきだが、図に示した通り、ちゃんと描けた。この図は、DVD-Videoの片面2層RSDLメディアのトラックの構成を示したもので、1層目を内周から読み始め、最外周に達し2層目に切り替わるとき、2層目のトラックが1層目と逆の向きのうずまきになっており、今度は外周から内周に向かって読み出していくことを説明するための図だ。要するに、1層目と2層目が同じ向きのうずまきで、両方を内周から外周に向かって読み出す場合に比べ、切り替えの際にシークが生じないため、映画が途切れずに(止まらずに)再生できるのである。

 えー、この程度の図でいいの、と思われるかもしれない。その通りである。ハッキリいって、このままでは雑誌には掲載できないクオリティの図だろう(断っておくが、これは花子のせいではなく、筆者の問題である)。だが、筆者にとって重要なのは、この図が5分で描けることであって、最終的なクオリティではない。この程度の図でも、何を言いたいのかが分かれば、その道のプロたるイラストレーターは、ちゃんとそれらしい図にしてくれる。筆者ごときが、頑張って描いたとしても、何時間かけようが、足元にも及ばない。ならば、ラフスケッチとして、伝えたい情報を、できるだけ短時間で描けることが重要だ。この図が5分で描けただけで、その他の機能はほとんど使ったことがないにもかかわらず、元はとれたと筆者は感じたのである。花子の難点としては、サポートしているファイルフォーマットが少ない(海外製ソフトは極めて充実している)ことだが、筆者の用事は最悪BMPファイルでも足りる。致命的な問題ではない。

 ただ、これで今後図形の作成を全面的に花子に移すかといえば、そうではない。筆者が描きたい図は、すべて花子を使って描くことが可能だろうが、やはりVisioの方が馴れている。Visioで描きにくい、と感じたら花子を使う、という形になるだろう。

□ジャストシステム「花子9」製品情報
http://www.justsystem.co.jp/product/applicat/hanako9/index.html
□ビジオ・ジャパンのホームページ
http://www.visio.co.jp/

[Text by 元麻布春男]


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