最初はモデムやISDNターミナルアダプタの注目機器を取り上げるが、モデムについては、すでにV.90が勧告され、各メーカーから対応製品が登場しているため、特徴のある製品のみを紹介しよう。ISDNターミナルアダプタについては、世界的に見て、日本市場の製品が最も先進的であるため、日本市場に登場しそうな製品、日本市場にはないスタイルの製品についてレポートする。
しかし、今春から今夏に掛けて、両社が相次いでUSB対応のモデムチップセットを発表したため、今回は両社ブースでサンプル品を見ることができた。
Rockwell V.90USBモデム |
Lucent USBモデム |
Lucent USBモデム背面 |
USB接続のモデムの利点は、電源がPCからUSB経由で供給されること、Plug & Playに完全対応していることにある。最近のモデムはコストダウンを図るあまり、あの美しくないACアダプタばかりを採用しているが、USBモデムでは電源ユニットそのものが廃される。そのため、背面にはUSBコネクタとTEL/LINE端子しかない。モデムそのものもかなり小型化されるだろう。Rockwellのサンプルボードはサイズ的にかなり大きいが、ボイス機能のためのマイク端子などが並んでいる。この他にも、貴重なPCIバスやISAバスをモデムカードに占有されない、レガシーインターフェイスのない先進的なPCでも利用できるなど、さまざまなメリットがある。
また、通信機器メーカーやOEM供給メーカーなどでも、いくつかUSBモデムを見ることができた。実際に稼働する製品を触った限り、特に不具合はないようだが、他のUSBデバイスが接続されたときの動作がどうなるのかなど、まだまだ気になる点も多い。
Creative Labs ModemBlaster USB |
Multitech MT5634ZDA-USB |
MT5634ZDA-USBの背面 |
サウンドカードなどでおなじみのCreative Labsは、最近目立った通信機器を発売していなかったが、今回は数機種を'99年の第2四半期から第3四半期にかけて発売するとアナウンスしている。ModemBlaster USBもそのひとつで、電源不要、V.90対応というスペックになっている。発売は'99年第2四半期の予定だ。この他には、アナログ回線を2本利用するModemBlaster 112K、ADSLモデムのModem Blaster ADSLなども発表していた。
総合通信機器メーカーのMultitech SystemsのMT5634ZDA-USBは、同社の従来のMultiModem ZDXシリーズ同様、コンパクトなボディを採用している。もちろん、外部電源は不要で、背面はスッキリしている。モデムチップセットはLucent製を採用しているようで、すでに出荷が開始されているそうだ。
KINGMAX USBモデム |
AOpen 通信関連機器 |
台湾のKINGMAXが出品していたUSBモデムは、数年前のポケットモデムのようなデザインを採用。上面にTEL/LINE端子、底面にUSBポートを備えている。一見使いやすそうに見えるが、実用上両側にケーブルが出るのは……。
日本でもマザーボードなどで知られるAOpenも数多くの通信機器を出品していたが、同じ台湾のTAICOM社が他の展示会で出品していたものとほぼ同じデザインであるところを見ると、OEM供給を受けた製品、あるいは逆にOEM供給している製品ということなのだろう。デザイン的には特に見るべきものはない。
uniaccess panache |
モデムではないが、USBを利用しているということで、個人的にも非常に気になったのがスウェーデンのuniaccessが出品していたpanacheシリーズというISDNターミナルアダプタだ。USB搭載のISDNターミナルアダプタと言えば、NECのAtermIT65シリーズなどが知られているが、海外でUSB搭載ISDNターミナルアダプタを見たのは筆者もはじめてだ(ちなみに、本体の上に置いてあるCCDカメラは製品に含まれていない)。
ハッキリ言って、外見はあまりカッコいいものではないが、Windows 95/98での扱い方がAtermIT65シリーズと大きく異なる。AtermIT65シリーズでは仮想COMポートを割り当て、そこにISDNターミナルアダプタを接続しているが、panacheシリーズではネットワークアダプタとして認識させている。残念ながら日本市場への参入は考えていないようだが、アナログポート搭載モデルなどもラインアップしているので、日本向けにカスタマイズすれば、AtermITシリーズの好敵手になるかもしれない。
Paradise WaveCom56K |
OLITEC SmartMemory56K |
まず、米Paradiseに米UNICOのWaveCom 56Kが展示されていた。何と言っても、6種類もあるというカラーリングが強烈だが、ハンズフリーホンの機能も搭載しており、本体上面に留守番電話のようなボタン類を並べている。ボイスモデムと言われると引いてしまうが、ハンズフリーホンというと何となく使えそうな気がしてしまうのは筆者だけではないだろう。ちなみに、モデムチップセットはLucent製を採用している。
お次は、スマートメディアに対応した液晶ディスプレイ付きモデムだ。フランスのOLITECのSmartMemory56K(http://www.olitec.com/smart.html、フランス語)は4/8/16MBのスマートメディアに、留守番電話のメッセージやFAXの送受信データなどを記録することが可能だ。ちなみに、製品に同梱されている4MBのスマートメディアに、約40分の録音メッセージ、約200ページのFAX送受信データを保存することができる。ハンズフリーホンの機能も搭載しており、LCDには発信者番号などを表示させることができる。スマートメディアというと、デジタルカメラばかりが注目されているが、実はこういった利用方法も便利ではないだろうか。特に、最近では主流が16MBに移行したため、4/8MBのメディアを余らせているユーザーも多いはず(かく言う筆者もその一人)。その余ったメディアを転用できるというのもうれしい。個人的にもぜひ一度遊んでみたい製品のひとつだ。
3JTECH Pegasus56K |
3JTECH PhaseModem |
日本向けにも販売されていることで知られる台湾の3J Techのブースでも面白い製品を2つ出品していた。ひとつは赤外線ポートを備えたPegasus56K、もうひとつはリモートで電源をON/OFFできるPhaseModemだ。
Pegasus56Kの方はIrDA準拠の赤外線ポートを備えており、赤外線ポートを持つノートPCやWindows CEマシン、PDAなどの外付けモデムとして利用できる。電源はPS/2ポートから取ることもできるようになっている。国内ではT-ZONEが販売を予定しているそうだ。
PhaseModemは日本のピーシーフェーズ株式会社が開発したもので、外部から電話をかけると、電源コネクタに接続されたPCなどをON/OFFできる。この製品は日本国内では開発元のピーシーフェーズが販売し、米国では3J Techが代理店として販売するとのことだ。
PRETEC CF Type2カード |
AceISDN TA-T40 |
ノートPCやWindows CEマシン、PDAなどをターゲットにした製品としては、米PRETEC ElectronicsのCF Type2のカード類も実物を見ることができた。CF Type2はデジタルカメラなどで採用されているコンパクトフラッシュにI/Oの機能を盛り込んだ規格で、国内では富士通が製品を発表している。同社ではすでにCF Type2対応のV.90モデム、10Base-T/2準拠イーサネットカード、SCSIカード、シリアルカード、パラレルカードなどをリリースしている。
PCカードの約1/3しかないコンパクトさ、ほとんどの製品が3.3V駆動という省電力がセールスポイントだが、コンパクトフラッシュの面積にすべてのパーツが実装できないため、外部にカードと同サイズのアタッチメントが出てしまっている。ただ、PCカードと違い、スロットに2枚のカードを挿すことはないため(少なくとも現状では)、実用上の問題はそれほどないだろう。価格的にもV.90モデムカードで約200ドルと高くないので、CF Type2を採用するノートPCやWindows CEマシンが増えてくれば、日本でも販売されることになるかもしれない。
一方、日本向けに数多くの製品をOEM供給しているAcer Netxusは、液晶ディスプレイを搭載したAcerISDN TA-T40を出品していた。アナログ3ポートを備え、64/128kbpsでのデジタル通信に対応するなど、現在の日本国内のISDNターミナルアダプタと同等のスペックを実現している。広いCOMDEX/Fall'98の会場で、唯一、日本の製品に太刀打ちできる可能性がある製品だった。
Motorolaチップ搭載 AMRカード |
WARPSPEED AMRカード(PCtel製) |
PhoebeMicro AMRカード (Rockwell製チップ搭載) |
AMR I/Fのカードは対応マザーボードがまだそれほど多くないが、Motorolaのブースでは、同社製チップを搭載したカード類がまとめて展示されていたり、OEM供給メーカーのブースではRockwell製チップを搭載したものやPCtel製カードが展示されているなど、かなり流行りそうな気配を見せている。来年にはすべてのマザーボードがAMR/MDCに対応することになるという分析もあり、今後、目を離せないカテゴリーになりそうだ。
[Text by 法林岳之]