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IDF速報:Intelが2000年のノートPCのビジョンを発表


開催地:カリフォルニア州 Palm Springs Convention Center
開催期間:9月15~17日(現地時間)


●Intelが公開したMobile Power Guideline 2000

 Intelのヴィジョンにある2000年のノートPCの姿は……13.3から14.1インチの大型TFT液晶ディスプレイ、96MBのDirect Rambus DRAM(RDRAM)のメインメモリ、ATA66インターフェイスのハードディスクドライブ、DVD-ROMドライブ、MPEG-2再生支援機能を備えたAGP 2X対応のビデオチップ、6MBのビデオメモリ、無線LAN機能などを備え、IEEE-1394インターフェイスをオプションで備える。これが、Intelの開発者向けカンファレンス「Intel Developer Forum(IDF)」で示された、2000年のパフォーマンスノートPCの姿だ。そして、'99年後半以降のIntelのモバイル向けハイエンドMPU「Mobile Coppermine(コード名:カッパーマイン)」が、もしウワサされているような高度な消費電力管理機能を備えているとしたら、MPUも450MHz以上(AC電源とドッキングベイで利用した場合)で動作しているだろう。

 Intelは、IDFで、2000年のノートPCの省電力ガイドラインである「Mobile PowerGuideline 2000」のドラフト仕様(リヴィジョン0.8)を発表した。冒頭のビジョンは、そのガイドラインのベースとしてIntelが想定する、2000年のノートPCだ。Intelの目指すノートPCの姿と言い換えてもいいだろう。そして、Mobile Power Guideline2000とは、これだけの仕様を、モバイルという制約の中で実現するための、消費電力削減のガイドラインということになる。具体的に言えば、液晶を除いたトータルの消費電力を24.6Wと、現在の上限とほぼ同じ水準に据え置こうと呼びかけているのだ。


●ミニノート向けに新版のMMX Pentium 266MHzも発表

 また、Intelは、この新しいMobile Power Guidelineから、ミノニートというカテゴリも設けた。こちらは、MPUと2次キャッシュを合わせた消費電力を5W(パフォーマンスノートは9.5W)に抑え、オーディオとモデム処理をソフト化することなどで、液晶を除いたトータルの消費電力を16.7Wに抑えるという。5Wというのは、かなりきつい数字だが、'99年中盤以降、0.18ミクロンで製造したモバイル向け、2次キャッシュ統合チップを投入すれば、達成できるに違いない。 また、Intelは、この市場を重視し始めた印として、IDFで、消費電力を大幅に引き下げた新バージョンのMMX Pentium 266MHzも発表した。IDF2日目のキーノートスピーチで、IntelのRobert Jecmen副社長(Mobile and Handheld Product Group、GeneralManager)によると、この新MMX Pentium 266MHzの消費電力は4W半程度になるという。0.18版のPentium II/Celeron系MPUが登場するまでは、この新MMX Pentiumが5W以下が望まれるミニノート市場をフォローしてゆくことになる。


●1,299ドルノート実現に向けて走るIntel

 しかし、Intelがモバイル市場に仕掛けるポイントは、パフォーマンスノートとミニノートの2ジャンルだけではない。Basic Mobile PCとIntelが呼ぶ、1,299ドル以下の超低価格ノートの実現にも、本腰を入れ始めた。Robert Jecmen副社長は、スピーチの中でローコストデザインのためにIntelがさまざまな要素を提供することを明かした。それは「2次キャッシュをインテグレートしたCeleron、ローコストチップセット、それにソフトテクノロジ群とリファレンス規格群だ」という。

 Jecmen副社長によると、ソフト技術とリファレンス規格の例は、先週発表したモバイル向けのドーターカード規格「The Mobile Audio/Modem Daughter Card (MDC)」だという。これは、Intelが推進してきた、オーディオとモデムのデジタル部分とアナログ部分を切り分け、そのインターフェイスを標準化する「AC '97」規格をベースにしたものだ。この規格では、カードにはAC '97/MC '97(AMC '97)準拠のコーデックチップしか載せない。デジタル部分の処理は、従来通り専用DSPを使っても、CPUがソフトで処理しても構わない。

 そして、Intelは、'99年のチップセットに「AC-LINK」と呼ばれる、コーデック接続用のインターフェイスを搭載すると言われている。つまり、このチップセットとMDCを組み合わせれば、オーディオ用DSPやモデム用DSPがなくても、サウンドを鳴らしたり通信したりできるようになる。その分、消費電力とコストと実装面積が少なくなるわけだ。IDFの展示会場でも、複数のメーカーが同規格に沿った超小型のドーターカードを展示していたが、多くのメーカーが、デジタル部分はソフト処理するシステムを前提に考えているという。

 Intelは、デスクトップでは低価格化の波に乗り遅れて、x86互換メーカーにローエンド市場のかなりの部分を食われてしまった。しかし、ノートPCでは、その同じ失敗を繰り返すつもりはないようだ。しかし、これはIntelにとって付加価値の高いモバイルMPU市場も、また低価格化へ向かうということを示しているのかも知れない。

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('98年9月17日)

[Reported by 後藤 弘茂]


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