非同期通信レポート 第41回

COMDEX/Fall '98 Telecomレポート ネットワーク編

TEXT:法林岳之


注目のネットワーク機器

 前回のモデムやISDNターミナルアダプタに続き、今回はCOMDEX/Fall '98で見かけたネットワーク機器について紹介しよう。ネットワーク機器では、5月に同じラスベガスで開催された展示会NETWORLD+INTEROPが専門だが、COMDEX/Fall'98でもSOHOユーザーをターゲットとした製品がいくつか出品されていた。


コストパフォーマンスに優れた無線LAN製品

 NETWORLD+INTEROP'98のレポートで海外メーカーの無線LAN製品を紹介したが、日本市場では利用したくてもコストが高く、なかなか個人ユーザーが手を出せないのも事実だ。

PROXIM Symphony
PROXIM Symphony

 しかし、COMDEX/Fall '98では、ホームユースをターゲットにした製品を見ることができた。米PROXIMは、ホーム向けの無線LAN製品『Symphony』を出品していた。写真左から、10Base-T準拠のEthernetポートを備えたSymphony Cordless Ethernet Bridge(399ドル)、デスクトップPC用のSymphony ISA Card(149ドル)、ノートPC用のSymphony PC Card(199ドル)、56kbpsモデムを内蔵したSymphony Cordless Modem(299ドル)という製品構成になっており、価格もかなり手頃な設定になっている。周波数帯は2.4GHz帯を採用し、データ転送速度は最大1.6Mbps、到達距離は150フィート(約45m)を実現。LANには最大10台までのクライアントを登録することが可能だ。

 Symphonyのラインアップの内、Symphony PC Card以外はすべて親機となるモードを持っているため、最小構成ならSymphony PC CardとSymphony ISA Cardを1枚ずつで、わずか350ドル程度で無線LAN環境が出来てしまうわけだ。この程度なら、日本国内で販売しても、おそらく1セット5万円以下で購入できるはずだ。国内代理店はまだ決まっていないが、すでに数社と交渉を持っているそうで、今から発売が楽しみだ。個人的にも今回のCOMDEX/Fall '98で最も気に入った製品のひとつだ。


急速にバリエーションが増えてきたルータ

MultiTech Serial Port Proxy Server
MultiTech
Serial Port Proxy Server

 昨年のCOMDEX/Fallに比べ、急速に種類が増えてきたのがルータだ。米国をはじめとするマーケットでもルータの人気は非常に高く、SOHO向けの安価な製品が増えている。ただ、ISDNが普及している日本に比べ、米国はアナログ回線の利用率が非常に高いため、既存のモデムと組み合わせるIPルータに注目が集まっているようだ。

 まず、米MultiTech Systemsのブースに展示されていたSerial Port Proxy Serverから紹介しよう。非同期通信レポートを欠かさず読んでいる人なら記憶にあるだろうが、これはCOMPUTEX TAIPEI'98のレポートで取り上げたARGUS TECHNOLOGIESCelerAccess300のOEM供給品だ。

 Serial Port Proxy Serverはシリアルポートに直接、装着するタイプのIPルータで、DTE速度は最大460.8kbpsまで対応する。セットアップはウィザード形式の専用ユーティリティで行ない、シリアルポートに接続するモデムやISDNターミナルアダプタの情報はユーティリティ内で設定する。コンパクトで性能的にも十分なものを持っているため、COMPUTEX TAIPEI'98で見かけた当時から注目していたが、MultiTech Systemsに採用されたことで、今後はさらに販売を伸ばすことになりそうだ。


SerComm IB3340
SerComm IB3340
WebRamp 300シリーズ
WebRamp 300シリーズ

 同じ台湾勢では、昨年のCOMDEX/Fall '97のレポートやNETWORLD+INTEROP'98のレポートでも紹介したSerCommがIPルータにプリントサーバーの機能を盛り込んだIB3340という製品を出品していた。この製品は2つのシリアルポートと1つのパラレルポート、4ポートの10Base-T HUBを搭載しており、複数の通信機器とプリンタを一括して管理することができる。もちろん、セットアップや管理は、Webブラウザを利用する。ちなみに、シリアルポートは230.4kbpsまで対応しており、ISDN回線の128kbps同期通信モードでも十分なパフォーマンスが得られるようになっている。

 IPルータとプリントサーバーという組み合わせは、このクラスの製品ではあまり見かけないが、考えてみれば、非常に理にかなっている。モデムやISDNターミナルアダプタを共有するのであれば、同じようにセントロニクス準拠のプリンタポートしか持たないプリンタも共有したいからだ。メニューの日本語化という手間はあるが、日本市場でもそれなりに支持が得られそうな製品だ。

 一方、ISDNルータからアナログルータ、IPルータまで、豊富なバリエーションを持っているのがRamp Networksだ。同社のWebRamp M3シリーズというルータのラインナップを持っていたが、9月にWebRamp 300シリーズという新しいラインナップを発表している。基本的なデザインコンセプトは受け継がれており、4ポートHUB、DHCPサーバー、NATなどの機能も搭載されている。3つのシリアルポートを備えたWebRamp300e/310e、ISDNルータのWebRamp Entreあたりは、日本市場でもニーズがありそうな製品だ。

PROTEC WebShare
PROTEC WebShare
PROTEC WebBeetle
PROTEC WebBeetle

 カナダのPROTECは、WebShareWebBeetleという2つのIPルータを出品していた。WebShareの方は1台の外付けモデムを3台のPCで共有する構成だが、WebBeetleの方はSOHO市場をターゲットにしているそうで、デザインも変更し、シリアルポートが2つというシンプルな構成だ。ただ、シリアルポートのDTE速度が115.2kbpsまでとなっているのはやや残念だ。

UMAX UGATE II
UMAX UGATE II

 PC/AT互換機や周辺機器などで、日本でもおなじみのUMAXUGate IIというIPルータを出品していた。これも2つのシリアルポートと4ポートHUBを備えたIPルータで、セットアップはWWWブラウザから行なうようになっている。


HomeLANは成功するか?

 NETWORLD+INTEROP'98のレポートで、家庭内のアナログ回線用の配線を利用したHomeRunというネットワークシステムについて紹介したが、PC Watchでも既報の通り、1Mbpsでのデータ転送を行なうHomePNA(Home Phoneline Networking Alliance)という規格が決まり、今回は各社からこの規格に準拠した製品が出品されていた。

ActionTec HomeLANデモ
ActionTec
HomeLANデモ
WISECOM V.90/HomePNAカード
WISECOM
V.90/HomePNAカード
PhoebeMicro V.90/HomePNAカード
PhoebeMicro
V.90/HomePNAカード

 たとえば、米ActionTecは、HomeLANで2台のPCを接続し、ネットワークゲームで対戦させるというデモを行なっていた。端から見ている限り、ストレスなく使えており、十分なパフォーマンスが得られていた。同社はすでにHomePNA準拠のPCIバス用カードを発売している。

 また、台湾CIS GroupのWISECOMPhoebeMicroのように、V.90対応内蔵モデムにHomeLANの機能を盛り込む製品も登場した。これならば、貴重なPCIバスをHomeLANカードのみに占有されてなくても済む。写真を見てもわかる通り、両製品ともRockwell製チップを採用している。

EPIGRAM iLine10
EPIGRAM iLine10
NETGEAR iLine10
NETGEAR iLine10

 こうした動きに対し、早くも10Mbps対応製品のデモンストレーションを行なうメーカーもあった。たとえば、米EPIGRAMiLine10だ。iLine10はHomePNAの上位互換に位置するもので、すでに米3Com米TexasInstruments米NETGEARなどが支持を発表している。今回のCOMDEXでは、EPIGRAMやNETGEARのブースで、デモンストレーションを見ることができた。

 10Mbpsと言えば、現在の主流になっている10Base-Tとほぼ同等の速度が得られるわけで、家庭内ネットワークのニーズはこれだけでカバーできることになる。最終的には導入コストということになるのだろうが、これだけの名立たるメーカーがサポートすることを考えると、意外に早い時期にHomeLANは10Mbps時代へ移行してしまうかもしれない。もちろん、日本国内でも製品がリリースされることになるだろう。ただ、ホーム市場ということを十分に考慮した価格設定がなされることを期待したい。

[Text by 法林岳之]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp