今年もまだ見ぬ製品の参考出品を期待して会場へ足を運んだわけだが、昨今の不況を反映してか、 出展を見合わせた通信事業者も。その点では今ひとつ盛り上がりに欠けたとも言えるが、会場はなかなか盛況だった。
NEC AtermIT75/D、IT60/D |
NEC Atermワイヤレスセット |
ISDN関連製品から見てみよう。年末商戦を控えているということもあり、新製品ラッシュとなっているが、COM JAPAN'98では発表されたばかりの新製品が数多く出品されていた。
ISDNターミナルアダプタで最大のシェアを持つNECのAtermシリーズ。昨年から販売していたAtermIT65EXシリーズの後継となるAtermIT75/D、AtermIT60/D、ISDNダイヤルアップルータのAtermIR450/D、専用子機のAtermRS10をセットにしたAtermワイヤレスセットなどを展示していた。
ISDNターミナルアダプタのAtermIT75/Dは前面と背面の両方にUSBポートを備えた製品で、ノートPCなどを持ち帰ったときに前面のUSBポートに接続して利用できるのがポイント。上面にある“でかけるボタン”を押せば、外出時に掛かってきた電話を携帯電話やPHSに転送することも可能だ。2つのUSBポートの同時利用ができないのが残念だが、Atermシリーズはバージョンアップでさらに高機能化が進んできたこともあり、今後に期待といったところだろう。
AtermIT60/DはAtermIT75/Dの普及モデルで、変更点は前面のUSBポートがないこととアナログポートが2つになっていることだ。しかし、アナログポートはブランチ接続ができる上、USBポートを備えながら、実売価格で3万円以下が見込まれる点は魅力的だ。
NEC AtermIR450/D |
Atermワイヤレスセットは同社が販売していたAtermIW60に、リモートステーション専用子機のAtermRS10をセットにしたものだ。AtermRS10にはデータ通信ポートとアナログポートが1つずつ備えられており、NEC独自方式ながら64kbpsでワイヤレス接続ができるようになっている。価格も実売で6万円台を実現しており、かなり手頃になっている。ISDNを導入したいが、部屋のレイアウトの制限などで悩んでいるユーザーにはおすすめの製品だ。
AtermIR450/DはAtermシリーズ初のISDNダイヤルアップルータで、4ポートHUBと液晶ディスプレイ、USBポートを備えているのが特徴だ。USBポートは他のAtermシリーズのようにCOMポートとして扱うのではなく、USB-LANドライバにより、Ethernetポートと同等に見せている点が異なる。LANカードを装着できないようなユーザーや装着したくても空きスロットがないコンパクトなPCでもルータの恩恵が受けられるわけだ。個人的にもかなりこの製品は期待している。
NEC COMSTARZ ROUTER |
一方、同じNECでも企業通信システム部が販売するCOMSTARZシリーズでは、先日発表したCOMSTARZ ROUTER(CMZ-RT-DS)が展示されていた。こちらは液晶ディスプレイ、4ポートHUB、4つのアナログポートを備えたISDNダイヤルアップルータだ。
従来製品をベースに新機能を搭載しているわけだが、外観こそ変わったものの、製品名(型番ではない)が変わっていないので、モデルチェンジをしたという印象が薄いのが気になるところ。同じ製品名で通すのもひとつの方法論だが、個人的にはAtermシリーズのように数字を含めた型式を付けた方がいいように思えるのだが……。
NTT マルチメディアホン テレッセ |
ISDN関連の新製品ラッシュはまだまだ続く。ISDNのサービスを提供するNTT自身からも『テレッセ』という新製品が発表されている。テレッセはカラー液晶ディスプレイを備えたISDN電話機なのだが、WWWページのブラウズ、FAXの送受信、電話帳、カレンダー、メモ機能を搭載し、キーボード、アナログポートなどを備えたオールインワン設計となっている。デザイン的にもなかなかの意欲作だが、DSUを内蔵していないことや画面の外部出力端子がないことなどがホーム向けとしてはやや気になる。価格的には10万円を切るレンジを狙っているそうだ。
台湾 TAICOM IRoute128など |
また、外国勢では台湾のTAICOM DATA SYSTEMSも出展していた。同社は国内メーカーに数多くの通信機器をOEMしていることで知られているが、今回は縦型デザインの液晶ディスプレイ付きISDNルータ『IRoute128』やISDNターミナルアダプタの『IS128』(どこかで見たことがあるような……)を展示していた。
IRoute128はNATやIPマスカレード、DHCPサーバ機能、SNMP機能など、ISDNダイヤルアップルータとして必要とされる機能をひと通り備えており、停電対策やアナログポートからの設定といった日本のISDNターミナルアダプタのトレンドもしっかり押さえている。最終的には価格設定とデザイン次第になるのだろうが、期待できる製品と言えるだろう。
アンリツ Surfin'boy 1/Pro デモ |
この他にも、アナログ回線を2本接続し、最大112kbpsで接続できるアナログ回線用ルータ『PRoute112』などを展示していた。アナログ大国の北米市場向けのようだが、なかなか面白い製品だ。
また、低価格のISDNダイヤルアップルータ『Surfin'boy 1/Pro』を販売するアンリツでは、この製品をメインにデモンストレーションを行なっていた。個人ユーザー向けのISDNダイヤルアップルータをステージでデモするのはあまり見たことがないが、来場者の関心も高いようで、参加する人も多かった。やはり、それだけISDNダイヤルアップルータの注目度は高いということだろう。
まず、207シリーズについてだが、外見は大きく変わったものの、目新しい機能はなく、個人的には少々がっかりした。小型軽量化も結構だが、もう少し芸のある携帯電話を開発してもらいたいものだ。最近のトレンドを見れば、後ほど紹介する207シリーズ以外のものの方が注目すべきだろう。
NTTドコモ P207 |
NTTドコモ D207 |
NTTドコモ N207 |
さて、NTTドコモのブースで注目したのがWORLD PC EXPO'98のレポートでも少しだけ紹介したモバイル関連製品だ。まず、下の2つの写真を見て欲しい。
NTTドコモ LibrettoモバイルパックIII |
PCカードスロットの 位置に注意! |
一見、何の変哲もないLibrettoなのだが、実はPCカードスロットが左側についている。LibrettoシリーズでPCカードスロットが左側になったのは、最新のLibrettoSS1000シリーズから。しかし、このLibrettoモバイルパックIIIの外見はLibretto70。従来のLibrettoシリーズはPCカードスロットが右側にあることで、データ通信カード一体型の携帯電話やPHSを利用する場合、ポインティングデバイスが使いにくいと不評だったが、NTTドコモは東芝にこういう仕様のものを作らせてしまったというわけだ。(なーんだ、東芝さん。やれば、できるじゃん)
この他にも、デジタル通信カードを標準添付したり、FDDをUSB接続のものにしたりと、モバイル環境をよく考えた構成になっている。実売価格も15万円を切っているようなので、かなりお買得と言えそうだ。
NTTドコモ モバイルギアII for DoCoMo |
同様に、モバイルギアII for DoCoMoもNEC製と異なる構成になっている。こちらは先日発表されたカラー版の新モバイルギアII(MC-R510)で採用されているPDC/DoPaインターフェイスが搭載されている。つまり、専用ケーブルで本体と携帯電話を接続するだけで、データ通信ができるというわけだ。ちなみに、NECが販売しているモノクロ版モバイルギアII(MC-R300)には、このインターフェイスは搭載されていない。つまり、これまたNTTドコモのスペシャルモデルというわけだ。
NTTドコモ ポケットボード |
また、NTTドコモのブースでは、ポケットボードの新色も展示されていた。昨年の参考出品から1年経つわけだが、ポケットボードのこの1年間の普及は特筆に値するだろう。かく言う筆者も『できるポケットボード』などという予想外の書籍を執筆したわけだが、昨年の時点でここまでブレイクするとは正直言って考えてもみなかった(昨年のレポートのコメントを読み返すとよくわかる)。
今回追加された新色はクリアホワイトとクリアブラックで、ハードウェアやソフトウェアの仕様はまったく変わっていない。しかし、この2色なら男性が持っても違和感がないので、さらにユーザー層を拡大することになるかもしれない。これから1年、ポケットボードの市場がどのように成長するのか、変わっていくのかを期待しながら見守りたい。
今までもいろいろな記事で触れてきていることだが、これからの携帯電話/PHSに求められるのは文字メッセージをはじめとするメール機能だ。ポケットボードの市場が爆発的に伸びたことやJ-PHONEのSkyWalkerサービスが好調であることからもわかるように、インターネットメールとやり取りができる携帯電話/PHSのメールサービスは新しい市場を生み出している。
携帯電話/PHSの将来像の話と言うと、必ず「IMT-2000というのがあって……」、「W-CDMAでは動画も見られて……」という話になるのだが、これらはいずれも2000年以降の話でしかない。サービスが根づくのに必要な時間も考えれば、まだまだ現実的に製品を云々する時期にない。これから1~2年というスパンで見ると、やはりメール機能や情報サービスが、これからの携帯電話/PHSの成否を握っているというのが筆者の持論だ。
三菱電機 Moem-D |
今回のCOM JAPAN'98でもこうしたメール機能を重視した携帯電話やPHSが数多く出品されていた。まず、最初は三菱電機がNTTドコモ向けに販売するMoem-Dだ。Moem-DとはMObile Express Messengerの略で、携帯電話にPDA機能を取り込んだ構成になっている。メール一発キーを使えば、10円メール、NIFTY SERVEのメールを送受信できるのが特徴だ。
また、こうしたメール機能付き携帯電話では、電話番号の他に相手のメールアドレスも登録できるのだが、Moem-Dにはパソコンと接続するためのアプリケーションソフトが添付されており、電話番号やメールアドレスなどをPCから登録することが可能だ。IntelliSyncにより、Microsoft Outlookのデータとシンクロさせることもできる。PIMの機能としては、アドレス帳、メモ帳、スケジュール帳、世界時計、電卓が搭載されている。液晶画面も大きく、視認性はかなり良好だ。ただ、ノートPCと並んだ写真を見てもわかるように、サイズがかなり大きい。最近のコンパクトな携帯電話と比べ、ふた回り以上は大きいという印象だ。
シャープ SH601em |
一方、シャープからはSH601emという新製品が登場する。こちらもメール機能を搭載した携帯電話だが、ボタンを外側に付けたフリップ式を採用している。このフリップを閉じた状態で電話、開けた状態でメールを送受信できる設計になっており、ストラップの先に付ける収納式タッチペンが添付されている。
SH601emも10円メールとNIFTY SERVEのメール、漢字ショートメールを送受信できるが、これらを受信箱で統合的に管理できる上、ディスプレイに表示されるフォントも液晶用の独自のものを採用するなど、なかなか使い勝手を良く考えている。ただ、パソコンとの連携はオプションで提供されるデータリンクキットを別途購入しなければならない。ボディサイズは従来のSH206などとほとんど変わらないので、現在の携帯電話から買い換えてもあまり違和感を覚えることはないだろう。個人的にもおすすめしたい製品のひとつだ。
ツーカーホン TH381 |
他の携帯電話事業者では日産のブースでツーカーホングループがデモンストレーションを行なっていた。ツーカーセルラー東京/東海、ツーカーホン関西は10月末からSkyMessageというメールサービスを開始し、今回もそのデモンストレーションを行なっていたのだが、実はこのサービスに対応した端末は今のところ、東芝製のTH381しかないのだ。
通常、新しいサービスを始めるのであれば、ある程度は端末にバリエーションを用意するものだ。すでに、他の事業者が同様のサービスの提供をしているのだから、物理的に作れなかったというわけでもないだろう。にも関わらず、1機種しかないというのはちょっとさみしい。
年内には三洋電機製のものも登場するそうだが、端末のバリエーションを増やし、もっと積極的にアピールをしなければ、他の携帯電話事業者を追随するのは難しいように感じられるのだが……。同グループの今後の展開に期待したい。
DDIポケット電話 小型情報端末 |
PHS陣営では最大手のDDIポケット電話がPメールDXを拡張し、インターネットメールと接続が可能なサービスを開始する。サービスは12月1日から開始予定で、現在販売されているPメールDX対応端末でもこのサービスが利用できるようになる。たとえば、三洋電機のブースで展示されていたPHS-J70などもそのひとつだが、DDIポケットではこのサービスを意識した新しい情報端末も出品していた。
三洋電機 PHS-J70 |
このPメールDXのメールサービスでは、メールアドレスを自由に設定(ドメイン名は@pdx.ne.jp)でき、メールボックスも1MBまでを31日間も保存してくれる。料金も30秒で10円とリーズナブルな上、メール着信通知や一斉送信、送信予約、メール転送などの機能もサポートされる。PHSによるメールサービスでは最も使い勝手が良いと言えそうだ。
また、同時にDDIポケット電話ではPHSを使った情報サービスも開始する。これはPメールDX対応端末で、テキストや簡単なデータ(BMPファイル)などを受信し、ニュースや株価、ビジネス情報などが見られるというものだ。具体的なコンテンツ名は明らかにされていないが、地図データなども送信できるとなれば、ポケットベルなどとはまた違った使い方やサービスが登場してくるかもしれない。
通信事業者以外では、ノキアのブースが盛り上がっていた。なかでも、先月、J-PHONE向けに出荷されたDP-154EXがその独特の存在感で人気の的だったが、先週発表されたばかりの赤外線ポート付きの携帯電話も注目を集めていた。
NOKIA 赤外線ポート付き携帯電話 |
スライドカバーを開けた状態 |
Nokia 9000 Communicator |
現在の携帯電話はインターフェイスがシリアルポートに限られているため、あまり自由な使い方ができない面もある。そこで、赤外線ポートを搭載することにより、PCとの連携や携帯電話同士のデータ共有など、今までとは違った使い方が可能になる。
さらに、カバー部分(アクティブ・スライドという)を開けると、電話に応答できるようになっており、使い勝手もなかなか良い。ドコモの207シリーズも結構だが、個人的にはこういう芸のある携帯電話がもっと登場して欲しいところだ。ちなみに、この製品は来年の第1四半期に国内の携帯電話事業者からリリースされる予定だそうだ。
また、同社のブースではヨーロッパなどで販売しているNokia 9000 Communicatorのデモンストレーションも行なわれていた。PDAと携帯電話の機能を一体化したものだが、メールサービスが普及し始めた日本の携帯電話市場を考えると、そろそろこういった製品を使う下地はできているように感じられるのだが……。
DDIポケット電話 |
NTTドコモ(NTTパーソナル) |
PIAF |
今回は、DDIポケット電話が「'99年中に全国一斉にスピードアップ」、NTTドコモが「現在、サービス提供を検討中」、PIAFが「技術的な仕様は決まっている。サービスについては各事業者が検討中」と、表現こそ違うものの、64kbpsPIAFSのサービス提供が近いことを感じさせる発表をしていた。
PIAFSの64kbps化は、基本的に現在の32kbpsを2チャンネル束ねて転送するもので、技術的にはそれほど難しくないそうだ。しかし、いざサービスを提供するとなると、既存の端末をどうするか、基地局はどう整備するか、料金体系をどうするか、既存のサービスとどのように共存するかといった問題が出てくる。こうした部分がクリアされてからでなければ、実際のサービスは始まらないわけだ。いずれも正式な時期は明らかになっていないが、早ければ、地域を限定して年内に開始し、遅くとも来年半ば過ぎまでにはほぼ全国レベルで利用できるようになるのではないかと見ている。
富士通 Windows CE 2.11マシン |
先月、米国でWindows CE 2.11が発表になったことは既報の通りだが、富士通のブースでは早くも英語版が動作するものが参考出品という形で展示されていた。
富士通 CF Type2カード |
細かいスペックなどは発表されていないが、A5サイズのボディに、640×480ドット表示が可能な液晶ディスプレイ、PCMCIA Type2とCF Type2のスロットを左右にひとつずつ装備。Windows CE 2.11からサポートされたUBSポートは装備していない。重量は900g以下で、バッテリ駆動時間は10時間程度となっている。ちょうど同社が販売するINTERTopをWindows CE化したと考えればわかりやすいだろう。
また同社ではCF Type2準拠のカード製品として、56kbpsモデム、デジタル携帯電話用カード、10Base-T準拠のLANカードなども展示していた。このCF Type2のカードは、デジタルカメラでおなじみのコンパクトフラッシュにI/Oインターフェイスを付加した規格で、カードサイズは現在のPCMCIA Type2の約1/3のサイズしかない。もちろん、通常のCFカード同様、アダプタをつければ、既存のPCカードスロットにも装着できる。ただ、実装面積がかなり狭いため、56kbpsモデムなどは一部の部品をモジュラージャック側に内蔵することでまとめているそうだ。
CF Type2については、NECのモバイルギアII(MC-R510)がすでに対応を済ませているが、カードそのものが増えてくれば、他のノートPCや携帯情報端末などにも搭載されることになりそうだ。
[Text by 法林岳之]